「あはあっ、か、感じちゃう──」
沙那が顔の上にある
まるで尿を洩らしたかのような大量の愛液が沙那の顔にべっとりと垂れる。
「す、凄い……。じょ、上手……。こ、こんなの初めて──、ああっ」
愛華が感極まったような声をあげた。
沙那はもう捨て鉢な気持ちになり、一心に顔の上の愛華の股間に舌を擦り続ける。
愛華の縮れの少ない繊毛を舌で撫でつけ、花唇の周囲を舐め、女芯に舌をすぼめて中を抉り、そして、肉芽を舌先で跳ねたり回しりして、考える限りの刺激を加えるのだ。
舌でやる奉仕はそれこそ徹底的に宝玄仙に教えられている。
とりあえず、その通りやったら、少しの時間で愛華の肢体は狂乱を示し始めた。
自分の技巧が特段に優れているとは思わないが、顔の上の愛華の女陰は真っ赤になって淫液を垂れ流し続ける。
仰向けの沙那の身体はまだほとんど動かない。
その沙那の身体に上下逆さまに愛華の裸身が覆い被さっている。
沙那はなんでこんなことになったのかまだ理解できないまま、とにかく、愛華の求めに応じて、愛華への奉仕を始めた。
愛華が淫情の激しい性質であることはすぐにわかった。
この女は、沙那が知る限り、なかなかの感じやすい身体の持ち主だと思う。
そうでなければ、こんなに少しの舌の奉仕だけで、これほどに反応しないだろう。
もっとも、沙那も、宝玄仙によってそれなりの性技を叩き込まれている。
舌でする奉仕など、それこそ、舌がすり減るほどやらされた気がする。
「凄い、凄い……凄い……ひううっ……」
沙那が口を大きく開けて、しばらくの間、女陰をなぞりあげていると、やがて、愛華が短い声を放ち、身体を仰け反らせた。
愛華の女陰が開いていく。
それとともに、沙那の舌も奥に奥にと進んでいった。
とにかく、大量の愛液だ……。
それがどんどんとこぼれてくる……。
「も、もう駄目──」
愛華が叫んだ。
腰が小刻みにぶるぶると震えた。
さらにまとまった愛液が沙那の顔に迸った。
愛華の女の香りが沙那の鼻をさらに激しく刺激する。
「ふふふ……。いっちゃったわ……。あ、あたしばかりごめんね。ところで、そろそろ、この香りを覚えたかしら……? これからは、桔梗の香りに代わって、この匂いがあなたの手足を弛緩する引き金になるわ……。しっかりと身体に刻み込むのよ……。じゃあ、あたしも奉仕するわね……。あなたほど上手じゃないかもしれないけど、いままでのあたしたちのお詫びと、
愛華が沙那の股間に顔をつけた。
そして、沙那の股間に舌を動かした。
「うっ、あっ……いっ……ああっ……」
愛華の舌が沙那の股間に這い出すと、沙那もまた電撃のような衝撃を感じた。
決して技巧的とはいえないが、感じやすい沙那にはそれで十分だった。
肉芽の上側から花唇の中心を下るように舐めあげられ、さらにその舌が今度は下側からねっとりと擦りあげられると、もう、それだけで沙那の腰は痙攣のような動きを止められなくなった。
「うふうっ……」
沙那は微かに腰を跳ねあげた。
もしも、肢が弛緩されていなければ、もっと激しい反応だったかもしれない。
「沙那さんも感じやすいのね……。ねえ、本当にここで一緒に暮らさない? あたしたちって、結構いい奴隷仲間になれるんじゃない?」
愛華が沙那の股間に舌を這わせながら言う。
「じょ、冗談言うんじゃ……。あはあっ──」
沙那の言葉は愛華の舌で中断されてしまった。
そして、愛華の舌の愛撫が執拗に続く……。
沙那は愛華に責めあげられるまま、舌で突かれては峻烈な快感に震え、引かれては肉の溶けだすような愉悦に悲鳴のような声をあげた。
「敏感で素敵な身体ね……。あたしももっとちょうだい──」
愛華が淫情に酔ったような声で言った。
仕方なく沙那もねっとりと顔の上の愛華の股間をまた舐めあげる。
お互いに相手の股間に顔を接し合って、相手の股間を舌で舐める。
愛華の激しい反応を感じながら、愛華の奉仕を受けるうちに、沙那の身体はどろどろに溶けていった。
もうすぐいく……。
沙那は愛華の熱い股間を奉仕しながら、愛華の舌で与えられる刺激に芳烈な快感のうねりを感じていた。
「うっ、い、いくっ、いく、いくっ……」
沙那は押しあがる快感の嵐のままに、自分の身体を絶頂の頂点に昇り詰めさせた。
絶頂するときにはいくとはっきり口にするものだ……。
そうしつこく教えたのは宝玄仙だった。
沙那は宝玄仙から教えられたもの以外の性愛を知らない。
昇天しながら頭に浮かんだのは、なぜか冷酷で我が儘で、そして、無邪気で子供のように真っ直ぐな宝玄仙の顔だった。
宝玄仙に会いたい……。
孫空女や朱姫に会いたい……。
沙那は絶頂の余韻に浸りながら心からそう思った。
そして、舌を動かし続ける……。
「あたし、いくわ──。いく、いく、いくっ……」
愛華が官能美を発散させながら二度目の絶頂の姿を沙那の顔の前で晒した。
この狂った兄妹のうち、もっとも狂っているのはこの愛華だった。
愛華は兄の信伸や妹の
その深い理由はまだよくわからない。
いずれにしても、愛華がそういう扱いを愛寧や信伸にから受けることを強く望んでいるということはわかる。
いずれにしても、すべての鍵を握っていたのは、この愛華だった。
愛寧が桔梗の魔草の香りで沙那の身体を弛緩させるように仕向けたと言っていたが、実際は、愛華の『縛心術』だった。
つまり、沙那が侵されていたのは桔梗の魔草の毒ではなくて、『縛心術』による暗示だった。
その暗示のきっかけを愛華は、桔梗の香りから、愛華の体臭に変えようとしているようだ。
すでにもう暗示は置き変わったのだろうか……?
朱姫という『縛心術』の得意な道術遣いと始終一緒にいる沙那には、大きな道術を持った道術遣いの刻む『縛心術』には、ほぼ抵抗など不可能であることを知っている。
愛華の身体が反転した。
今度は、沙那の身体に添うように身体を横たえる。
「顔をきれいにさせて……」
愛華が酔ったような表情で沙那の顔に舌を伸ばした。
自分の愛液でびしょびしょに汚れた沙那の顔を舌で掃除をしようというようだ。
愛華の舌が沙那の顔を這い回る。
「はんっ」
沙那は甘く鼻を鳴らすような声をあげてしまった。
愛華が沙那の顔を舐め回す一方で、沙那の股間に手でまさぐりだしたのだ。
愛華の手は、沙那の太腿の内側から股間の中心に向かって汗と愛液を沙那の股間全体に伸ばすように押し広げていく。
その感触がくすぐったいようであり、また、とてつもない快感であり、沙那は再び官能の頂点に身体を引き揚げられていった。
「また、いくのね、沙那……。やっぱり、素敵、あなたって素敵──」
沙那の激しい興奮にあてられるように、愛華も興奮したような口調で言った。
「い、いくっ──」
全身が痙攣した。
沙那は弛緩した身体を仰け反らせて、再び昇天して果てた。
「ね、ねえ、あなたの身体の弛緩を解くわ……。だ、だから、あたしを責めて──。ねえ、責め殺して──」
愛華が完全に淫情に酔った表情で叫んだ。
そして、気がつくと、確かにいつの間にか手足の弛緩がなくなっていた。
どうやら愛華は、沙那との性愛に酔ってしまい、沙那を責めるだけでは物足りなくなって、沙那の拘束を解くことにしたようだ。
考えてみれば、愛華の性癖は被虐だ。
責められて苛められることで途方もない快感を覚えるのだとすれば、自分が沙那を責めるだけでは満足できなくなったに違いない。
いままで監禁して兄妹で責めていた沙那を解放すれば、沙那がどうするかなどもうどうでもよくなったのだろうか。
それとも、それくらい愛華の被虐性は激しいものなのだろうか……。
沙那は身体をがばりと起こした。
愛欲に酔った愛華の身体に馬乗りになる。
「いままで、よくもやってくれたわね。望みどおりに殺してあげるわ──」
沙那はすっと愛華の首に手を伸ばした。
ゆっくりとその細い首を絞めつけていく。
「愛華……。覚悟しなさい」
沙那はじわじわと愛華の首を締めつける両手に力を加えていった。
愛華の顔が白くなる。同時にまるで快感を受けているかのように愛華の表情が淫欲に染まった。
沙那は膝で愛華の股間を押しつけるようにして動かした。
首を絞められて大きな官能を感じている愛華に、本物の快感を与えたのだ。
愛寧はたちまちに大きな痙攣をしたかと思うと、首を絞められたまま全身を仰け反らせて大きな絶頂の姿を沙那に晒した。
沙那は愛華の首に手をかけながら、これまでで最大の反応で絶頂する愛華の恥態を見守っていた。
*
「『縛心術』は解いたままよ……。信伸と愛寧がやったことは謝るわ。あなたとしては収まらないものもあるかもしれないけど、このまま出て行ってくれないかしら、沙那」
愛華はさっきまでの痴態がなかったかのように静かに言った。
彼女はすでに服装を整えている。
沙那は、そんな愛華の謝罪の言葉を聞きながら、そばに置かれた服に手を伸ばして逐次に服を着ていた。
ずっと裸身でいた……。
考えて見れば、服を着るなど久しぶりだ。
奴隷だと言われて、ここに来てからずっと裸身でいるのを強要されていたのだ。
やがて、服を整えた沙那は、最後に外套代わりにしていた黒布で身体を覆った。
張須陀の隠れ処から持ってきたものだ。
これで、とりあえずの身支度が終わった。
「……言いたいこともあるし、確かに、このままじゃあ収まりつかないこともあるけど、あんたらが崖から落ちて死にかけていたわたしを助けてくれたのは事実なんだし、すべてを水に流すことにするわ……」
沙那は言った。
仕返しをしないと約束しさえすれば、このまま愛華は沙那を行かせる雰囲気だ。
沙那としては、信伸と愛寧には腹が煮えるような思いもあるが、それは忘れることに決めた。
もしも、沙那がふたりに仕返しをしようとすれば、今度は全力で愛華はそれを阻止しようとするだろう。
その場合、まず、沙那に勝ち目がないことは確かだ。
愛華が沙那の前にすっとなにかの草の束を差し出した。
干した緑色の草で全部で百枚はあるだろうか……。
それが木の蔓のようなもので束ねられている。
「
「烏金草ですって?」
沙那は声をあげた。
“こんなもの”どころの話じゃない。
烏金草といえば、幻の魔草と呼ばれ、沙那も書物によって知識としては知っているだけで、実物を見るのは初めてだ。
これはいま愛華が話したとおりの効果があり、王侯貴族や分限者の間でもてはやされる万病の治療薬のひとつだ。
これだけまとまった量があればひと財産だ。
それを惜しげもなく沙那に渡す愛華に沙那も驚いてしまった。
だが、とにかく貰っておくことにした。
ここから出られたら附国のあの宿屋に戻るつもりだったが、本当に愛寧が言っていた通りに、宝玄仙たちが出立した後なのであれば、宝玄仙たちを追うために路銀は必要だ。
これを少し財に換えれば、当面の旅の路銀としては十分だ。
「ありがとう。遠慮なく貰うわ」
沙那はそれだけを言った。
衣類と一緒に雑嚢がひとつだけあった。
沙那のものではないが、愛華が準備をしてくれたものだ。
沙那は魔草の束を雑嚢にしまい、その雑嚢を肩から下げた。
「じゃあ、行くわ、愛華」
沙那は立ちあがった。
愛華が先導し、玄関まで案内した。
戸を開けると薄っすらとだが東の空が明るくなり始めていた。
「信伸と愛寧がまだ起きないようね」
なんとなく沙那は言った。
そう言えば、愛華との性愛ではお互いに随分と大きな声をあげたと思う。
ひとつ屋根の下であんなに騒いだのに、こんなにも起きないものなのだろうか……?
「あのふたりはあたしが道術を解除しない限り、眼を覚ますことはないわ……。もう、後のことは心配いらない……。行って……。ただし、この家には二度と近づかないでちょうだい……。ここから離れれば、かけ直した暗示が有効になるわ。あたしの体臭に反応するほかに、どういう暗示がかかっているのかは教えない。とにかく、信伸や愛寧になにかをしようとすれば、あなたの身体が動かなくなるという暗示が復活する。それだけは言っておくわね」
愛華は言った。
沙那は頷いた。
脅迫めいた物言いは気に入らなかったが、沙那としても、もうこの兄妹に関わるつもりはない。
復讐などもういい。
二度と接触する気もない。
「ところで、愛寧があれほど嗜虐的で、あなたにつらく当たるのは、愛華の道術?」
何気なく訊ねた。
愛寧の愛華に対する態度は、実の姉に対する態度としては異常だ。
なにかの道術によって愛華は、愛華をあえてああいう性格と性癖を表に出すように操っているような気がした。
沙那がそう質問すると、愛華は陰のある笑みを浮かべた。
「……二年前のことよ」
愛華はぽつりと言った。
「二年前のあの事件がどうかしたの?」
二年前と愛華が言えば、愛華の留守中に愛華の愛人が徒党を組んで、この家を襲ったという事件のことに決まっている……。
「あたしの愛人だった男がこの家にやってきたとき、心の傷を負ってしまったのは、信伸だけじゃないのよ……」
愛華は静かに言った。
「信伸だけじゃないって……?」
「愛寧もよ……。当時、あたしは山に一度入れば、だいたい十日は山を駆け回って貴重な山草を集めるということをやっていたわ。その方が楽なのよ。本当に価値のある草はずっと山奥にあるしね。だから、あたしはすぐには戻っては来られなかったの」
「十日……?」
「ええ……。結局、信伸と愛華がここで暴行と凌辱を受けたのは十日間だった……。そして、その時間が取り返しのつかないものになってしまった……。十日後に戻ってきたあたしが見たのは、耐えがたい凌辱により、精神を崩壊させた愛寧と信伸の姿だったわ……。凌辱と暴力を受けながら、ふたりともまるで人形のように無反応になっていた。完全に心を毀されていたのよ……」
「毀された……」
十日間ものあいだの凌辱……。
毀されたふたり……。
愛寧が語ったこととは異なるが、沙那には、愛華が語ろうとしているものこそ、真実なのだろうと思った。
「……おかしな薬物も大量に摂取させられていた……。ここにはそういうものがたくさんあるから……。連中は面白半分でそういう薬物もふたりに使ったのよ……。とにかく、信伸と愛寧は酷い状態だった……。あたしはそれを見て怒り狂って、男たちを道術で殺した……。そうよ、連中を殺したのはあたしよ……」
「だったら……」
沙那は人を殺めた経験に、苦しみのようなものを感じている愛寧のことを思った。しかし、沙那の言葉は、愛華の言葉に遮られる。
「あたしは、変わり果てたふたりに絶望した。身体の傷はすぐに治ったけど、心の傷はどうにもならなかった……。あたしは、なによりも、大好きな兄妹をそんな目に遭わせるきっかけを作った自分を呪ったわ……。あたしは自分のおかしな性癖を満足させるために、時折、城郭で娼婦のようなことをしていたのよ……。信伸は真面目な性格でね……。あたしの異常な性癖を満足させるには、少しばかり常識人すぎたのよね……」
愛華は自嘲気味に笑った。
信伸が常識人……?
沙那は内心で首を傾げた。
信伸の嗜虐的な性格も、愛寧の残酷さも、心が壊された者のそれではない。
二年前にそんなことがあったとしても、いまのふたりは喜々として愛華を奴隷として虐げ、沙那を嗜虐した。
とてもじゃないが信伸が常識人とは思えない。
沙那や愛華に対する嗜虐は冷酷で常軌を逸している。
なによりも、少し見て気に入ったからといって、沙那を監禁して調教しようとするなど異常もいいところだ。
……ということは、あの信伸は本来の信伸ではなく、なにかの演技なのだろうか……?
そんな感じには思えなかったが……。
「あのふたりのいまの性格は、ある意味ではあたしが作ったものなのよ……。あたしは、この家で信伸と愛寧を毀した連中を道術で殺してから、あらゆる道術でふたりを治そうと試みたわ……。でも、どうしても駄目だった……」
「駄目?」
「どんなに『縛心術』で凌辱の記憶を忘却させようとしても強く刻まれたふたりの恐怖心は取り除けなかったし、あるいは、なんとか失った感情を戻そうと治癒してもふたりはいつまでも反応のない人形だった……。あたしは絶望した……」
沙那は、愛華の態度を疑問に感じた。
少なくとも、信伸と愛寧のふたりは「異常者」ではあるが、心を毀された感じではない。
随分と元気ではあったが……。
「正直に言うわ。それまでのあたしは、あのふたりをあまりにも常識すぎて、つまらない者だと感じていた……。あなたももうわかっていると思うけど、あたしはかなり異常で変態的な性癖でしょう? だから、物足りないと思っていたのよ」
「物足りないって……」
沙那はちょっと呆れた。
すると、愛華が苦笑した。
「そりゃあ、確かに愛していたけど満足はしていなかった。いつも不満に思っていた……。だから、信伸や愛寧と兄妹としてではなく、男と女として生涯をともにする約束をしながらも、城郭でほかの男に抱かれたりしたのよ……。あたしは乱暴に扱われるのが好きなの。だから、あんな性格の捻じれた男に身体を許してしまったのね」
愛華は言った。
つまりは、愛華の撒いた種により、信伸と愛寧がここで酷い暴力と凌辱を受けたのは事実なのだろう。
そして、一度は精神に異常をきたして、日常生活を送れない程に毀れた……。
そういうことのようだ。
いずれにしても、愛華の言い分では、かつての信伸と愛寧は、いまの信伸と愛寧のようではなかった感じだ。
そうだとすれば、いったいそれからなにがあったのだろう?
「いまの信伸と愛寧をあなたが作ったとはどういう意味なの、愛華?」
沙那は言った。
「あらゆることを試した結果、ついに、あたしは、あのふたりの心を復活させる方法に辿りついたのよ。それは、ふたりの隠れていた怒りの感情、あるいは、残酷な感情を極限にまで活性化させることだった。それによって、反応の消えていたふたりは、人としての反応を示すようになった……。あのふたりの中に隠されていた激しい憤怒、冷酷さ、嗜虐性、苛酷さ、残酷さ、暴虐性……。そういう負の感情をどんどん膨らませることで、あんなに無反応だったふたりが、やっと人としての振舞いを取り戻すことができたのよ……」
「えっ?」
「あたしは嬉しかった。あのふたりが戻ってきた……。それからは、簡単だった。あのふたりの冷酷性を維持するようにすればいい……。あのふたりのあたしに対する怒りの感情さえも極限に肥大化させたわ──。ついに、それで信伸も愛寧も復活したのよ……。あれから二年……。最近では信伸も一時は失っていた性の機能も取り戻すことができるようにまでなった……。あたしが失くしかけた家族をあたしは取り戻すことができたんだわ」
「つ、つまり、信伸も愛寧も道術で作った性格だということ? 本来のふたりではなくて……」
沙那は驚いた。
「本当のふたりよ……。ただ、隠れていただけの部分を表に引き出しただけよ……。いずれにしても、陵辱と暴力によって潰されてしまって肉体を動かすことさえ拒否した心は、ふたりに隠れていた強い負の感情の部分を最大限に増幅することで、再び肉体に結びつけることができたのよ。とにかく、ふたりは、ただ息をする人形の状態から、人としての力を取り戻した……。しかも、あたしがもっとも望むかたちで……」
愛華は言った。
沙那は愛華の表情から、愛華が喋ったことが出鱈目でも、なにかの出任せでもない真実だということを悟った。
そして、理解もできる。
ある意味、宝玄仙がそうだ。
二年にもわたる闘勝仙の残酷な仕打ちから抜け出すために、宝玄仙は人格を分離して、攻撃的な部分を再構成して、新しい人間を自分の中に作ることによって闘勝仙に復讐を果たした。
おそらく、似たようなことが信伸や愛華に起きたに違いない……。
「それで、あのふたりの心を維持するために、あなたがあえて奴隷の立場に甘んじているということ……?」
沙那は言った。
すると愛華が破顔した。
「それが信伸や愛寧が再び心の破綻を起こさないために必要なことであるというのは事実よ……。でも、あたしが苛められることで興奮する変態だということも事実なのよ。あたしは、いまの生活に満足している。そして、これが永遠に続けばいいと思っているわ」
愛華は笑った。
「愛寧に自分が道術遣いだと思わせているのも、いまのが理由?」
「そうね。愛寧は自分が道術遣いであり、また、再びあんなことがあっても、今度は道術で対応することができると思い込むことで平静を保ってもいるのよ。それがなくなれば、また愛寧は心の底に自分を隠れさせてしまうわ。それくらい、あの子の感じた恐怖は大きかったのよ……。可哀想に……」
愛華は言った。
沙那はもう質問はしなかった。
そして、黙ってこの家を出た。
愛華は、沙那が一緒に外に出てきて、山街道まで沙那をそのまま送ってきた。
だが、それ以上は見送る気はないようだ。愛華は沙那に別れを告げる態勢になった。
「じゃあ、行くわ、愛華……。わたしがいなくなれば、あなたは信伸と愛寧に大変な折檻を受けるでしょうね」
沙那は最後に言った。
「ぞくぞくするわね。信伸がひと目惚れして奴隷二号にしようとしたあんたを、嫉妬した奴隷一号が逃がしてしまったんですものね。きっと死ぬような目に遭わせられるわ……。本当に愉しみ……」
愛華がうっとりとした表情で言った。
沙那は一度肩をすくめてから、もう振り返ることなく山街道を城郭に向かって歩き出した。
*
ほら、動くんじゃないわよ、お姉ちゃん。これはあんたのやったことへの罰なのよ。
そうやって、夕方まで素っ裸で股を拡げて山芋を女陰で咥え続けるのよ。
落としたら承知しないんだからね。
まだ、三刻(約三時間)しか経っていないわよ。
罰が終わるまで、まだ五刻(約五時間)もあるわ。
許可なく腰を使うんじゃないわよ──。
なに?
痒いの?
そりゃあ、そうでしょうねえ。
ただの山芋じゃあないもの。
耐えられないような痒みが走るように特別な薬液に浸け込んだものだからね。
そんなものを入れられたら、痒くて痒くて死にそうになるのは当たり前よ。
ほら、見て、お兄ちゃん……。
この奴隷女の苦しそうな顔……。
本当に無様よね。
涙どころか鼻水まで垂らしちゃって……。
えっ?
ああ、鼻の穴を塞ぐの、お兄ちゃん?
それは面白いわ。
ほら、じゃあ、この山芋を小さく切ってお前の鼻の穴にも入れてあげるわよ、お姉ちゃん……。
それで鼻水は止まるでしょう?
ふふふ……。
ちょっと待って、小さく切るから……。
さあ、できたわ。
じゃあ、入れるわね……。
ところで、お姉ちゃん、言っておくけど、背中で握った左手首を離しちゃだめよ。
もちろん、がに股に開いた脚も閉じないのよ。
もしも、姿勢を崩したら、今度は三日間は山芋を入れて、自分では出せないように貞操帯をするわ。
でも、それも面白そうね……。
どっちでもいいわ。
だから、抵抗したら?
あっ、そう……。夕方まで我慢するの?
まあいいわ。我慢できるなら、我慢すればいいわ。
でもほんのちょっとでも抵抗したら、それで終わりだからね。
もちろん、股に挟んだものを落としても同じよ……。
そら、右の鼻の穴……。次は左と……。
あはははは……。
結構、面白い顔になったわ。
これからはずっとそうしてすごしたらどうなの?
そうしたら、もう二度とお前に声をかけるような男もいないだろうしね。
ところで、お礼はどうしたの、お姉ちゃん。
どうしたの?
あれっ、泣いたの?
惨めなの?
ふんっ、こんなことじゃあ、あたしやお兄ちゃんの腹は収まらないのよ。
お兄ちゃんが奴隷二号として飼おうと思っていた沙那を逃がしてしまうなんて……。
あたしが看病疲れで寝てしまった隙に沙那が逃げようとしたのを、あんたは知っていて見逃したんでしょう?
なんで?
あたしたちを馬鹿にしているの?
それとも、お兄ちゃんが沙那ばかり相手にすらから嫉妬した?
まあ、いいわ──。
本当はあんたなんか、死んでしまえばいいと思っているんだけど、お兄ちゃんがあんたが折檻に耐えれば許すと言っているから、それでよしとすることにするわ。
その代わり覚悟しなさい──。
沙那が受けるはすだった折檻の分も全部お前に与えるからね。
倍よ。
今日から倍の責め苦よ──。
覚悟するのよ。
こらっ──。
動くんじゃないと言っているでしょう。
本当に聞き分けのない奴隷ねえ……。
動くなという言いつけを守ることさえできないの?
なに?
痒くて、我慢できない?
狂ってしまいそうなの?
じゃあ、そのまま狂ってしまえばいいじゃない。
はははは──。
わかったわよ、わかった……。
じゃあ、少しだけ動いてもいいわ。
腰を動かして、山芋の痒みを癒しなさい。
だけど言っておくわよ。
腰を使ったら、山芋の成分がもっと染み込んで、さらに痒くなるわよ……。
それでもいいなら始めなさい──。
始め──。
さっそく、お姉ちゃんが始めたわよ、お兄ちゃん。
ふふふ……。
もう感極まっているみたい。
もうすぐ、お姉ちゃんはいくわよ、お兄ちゃん……。
えっ、なに?
もっと、お姉ちゃんを苛めるの?
任せておいて、お兄ちゃん……。八刻(約八時間)も山芋を入れっぱなしにするなんて、絶対に成功させはしないから……。
今日から三日間、ずっと山芋で苦しみ続けさせてやるわ。
最後の一刻(約一時間)を残したところで、直接芋を鞭打ちをしてでも落とさせるわ。
万が一、その時までお姉ちゃんが山芋を咥えたままだったらだけど……。
でも、この調子では無理ね……。
多分、もうすぐ落とすわ。
山芋を離さないことより、腰を振る方に夢中になっているもの……。
じゃあ、また見てて……。
お姉ちゃんがまたいきそう……。
どうしたの、お姉ちゃん?
達したのね……。
遠慮なく、もっとやりなさい。
どうせ、我慢できないんでしょう?
どうしても鞭で打って欲しければ、そう言うといいわ。打ってあげるから。
えっ?
もう打つの?
駄目よ。
まだ、耐えられるはずよ、お姉ちゃん。
発狂寸前の痒さにまでなったら打ってあげるわ。
もう、狂うって?
そんなことはないわね。
さっきから、狂うと言いながら、ちっとも狂わないじゃないの。
つまり、あんたはあたしたちに嘘を言ったのよ。
罰として、その物欲しそうな乳首にも山芋の汁を塗っていあげるわね。
ほらっ、嫌なら動いてごらん……。
背中に回した手で避けてみれば?
痒くて股間を掻きたいんでしょう?
掻けばいいじゃない。
その代わり、明日から三日間、山芋を女陰に咥えたまま貞操帯を嵌められて生活するだけのことなんだから……。
大きな声を出すんじゃないわよ、お姉ちゃん──。
そんなに乳首に山芋の汁を塗られると感じるの?
だったら、もっと続けてあげるわ。
ううん……。それどころか、全身にこの刷毛で山芋の汁を拡げてあげる。
うるさいったら……。
まだ、乳房に塗っただけじゃないの……。
次はお尻よ……。
太腿にもお腹にも塗るわ……。
そうだ。脇の下にも塗るわ。
手を頭の後ろで組みなさい……。
早くすんのよ、愚図──。
動くんじゃないわよ──。
じゃあ、脇の下に塗るわよ……。
ほら……。
あははは──。
落としたわね。
脇を刷毛で擦られたくらいで暴れるからよ。
いずれにしても、これで女陰に三日間、山芋を股に入れてすごすというのは決定よ。
残りの時間はお尻よ。
前だけじゃなく、お尻に山芋を入れられてすごしたくなければ、我慢しなさい。
ほら、新しい山芋を挿すわ。
お尻出して……。
じゃあ、食事よ、お姉ちゃん。
考えてみれば、あんた、今日はまだなにも食べさせてないものね。
これをあげるわ。
さっき、あんたが股ぐらから落とした山芋よ。
ほら、口を開いて──。
もっともっと、苛めてあげるわね。
苛められるのが好きなんでしょう?
お姉ちゃん……。
(第59話『奴隷二号』終わり、第61話『追跡者』に続く。)