けだるさを追い払い、沙那は起きあがった。
気がつくと朝になっていた。
沙那は自分が床の上に横になっているのに気がついた。
どうやら、沙那は寝台ではなく、床の上でそのまま眠ってしまったようだ。
昨夜は、寝台に拘束した宝玄仙を孫空女とふたりで責め続けた。やがて、ついに失神してしまった宝玄仙の拘束を解き、そのまま寝入った気がする。
宝玄仙はどうしただろう──?
「眼が覚めた、沙那?」
孫空女の声がした。そちらに視線を向けると、すっかりと身支度の終わった孫空女が、椅子に座って横たわる沙那を見下ろしていた。
「ああ、おはよう、孫女──」
起きあがろうとして、沙那は自分の手が後ろ手に拘束されていることに気がついた。腕全体が拘束されているのではない。どうやら、両手の親指だけが硬く縛られているようだ。
また、ふと気が付くと、沙那は自分が今までに着たことのない服を着ているのに気がついた。
いつもは、動きやすい上下とも白の上衣と
しかも、上衣は沙那の胸の大きさに比べて随分と大きさが小さく、胸の部分のぼたんは、沙那の胸によって、いまにもはじけ飛びそうだ。
それだけでなく、生地が薄くて、よく見れば、沙那の勃起した乳首が突き立っているのがわかる。
とにかく、裸に近いような恥ずかしい格好だ。
「こ、これ、どうしたの、孫女? わ、わたし、どうして縛られてるの? それに、この服……? それとご主人様は?」
沙那は驚いて、孫空女に矢継ぎ早やに訊ねた。
「ご主人様は出掛けたよ、沙那。用事があるとか言っていた。それと今日は、ここにもう一泊して明日出発だってよ」
「それはいいけど、どうしてわたしは、こんな格好しているの?」
「ご主人様が今日は、沙那にこれを着させろって。覚えているかどうか知らないけど、沙那は裸で寝たんだよ。それで、それをあたしが着せたんだ」
孫空女はにやにやしている。なにか変な感じだ。
こんな破廉恥な服は宝玄仙の嫌がらせだろうか。まあ、昨夜の今日だから、なにか仕返しを企んでいるのかもしれないが……。
「じゃあ、手を後ろでくくられているのはなぜ?」
「ああ、それ?」
孫空女が首にかけている奇妙な首飾りを揺らした。見たことのない不思議な首飾りだ。よく見ると親指大ほどの小さな人間の頭のようなかたちをしたものが九個ほど紐で繋がっている。
「それは、今日一日、沙那で遊ぶためだよ。これでね……」
孫空女が言った。
「ど、どういうこと、孫空女?」
沙那は呆気にとられた。孫空女の表情は、まるで孫空女が宝玄仙になったかのようだ。なにかこれから沙那に嗜虐的な悪戯でもしようかというような顔だ。
沙那はとても嫌な予感がした。
「ちょ、ちょっと待って。遊ぶってなによ、孫空女? それにその首飾りはなに? 霊具なの?」
「味わってみる?」
孫空女は首飾りの一個をぱちんと指で弾いた。
「いたあっ」
沙那は股間に走った激痛に悲鳴をあげてひっくり返った。孫空女が、首飾りのひとつを弾いたとき、沙那の股間にも強く叩かれたような衝撃が走ったのだ。
「気をつけた方がいいよ、沙那。その服でそんなにはしたなくひっくり返ると恥ずかしいからさあ」
孫空女がけらけらと笑いながら言った。
沙那はひっくり返ったために、ただでさえ短い下袍がまくれ上がって陰部がもろ出しになっているのに気がついた。
股間を覆う下着は身につけていない。慌てて身体を起こす。
「だいたい予想がつくだろう、沙那? この首飾りの霊具は沙那の身体に繋がっていて、いろいろなことができるのさ。それは、おいおい教えてあげるけど……」
「ねえ、どういうこと? わたしにはさっぱり事態が呑み込めないの。なぜ、あなたがそれを持っていて、わたしをこれからどうしようというの?」
「わからないの、沙那?」
「わからないわ──」
「今日はあたしが、沙那を調教するんだよ。ご主人様にそう言われたからね」
孫空女は肉食獣が獲物を前にして舌なめずりするような表情をした。沙那は呆然とした。
「さあ、下に食事に行こうか、沙那」
孫空女が立ちあがった。
ここの宿は二階が宿で一階が食堂になっている。一階の食堂には泊り客だけではなく、食事だけをする客もやってくる。
沙那は、昨夜ここで夕食をとったとき、かなりの客が食堂にいたことを覚えていた。朝だから夕食程ではないだろうが、料理で評判の店らしく、それなりの客はいるだろう。
「ちょっと待ってよ、孫女──。わたし、こんな格好で下になんか行かないわよ──」
冗談じゃなかった。こんな短い下袍で下着もつけず、しかも、いまにも弾け飛びそうな小さな薄物の上衣──。ある意味、裸よりも恥ずかしいかもしれない。
「行くんだよ──。そうじゃないと、あたしがご主人様に怒られるんだよ」
孫空女は後ろ手の沙那の腕をとり、強引に立ちあがらせる。孫空女の力にかなうわけもなく、沙那は無理矢理に部屋の外に連れ出された。
そのまま、階下に降りる階段に連れて行かれる。
「お、お願い、孫女──。は、離して」
やっぱり、一階の食堂ではかなりの客が食事をとっていた。こちらに目を向けているわけではないが、もしも、見られたら、この丈では沙那の下着を着けていない股間が丸見えだろう。
「いいよ──。じゃあ、ひとりで歩いてくるんだね」
二階と一階の中間の踊り場の部分で孫空女が沙那の手を離した。そして、勝手にどんどん歩いていく。そのとき、急に股間に衝撃が走った。まるで、肉芽が前後左右に滅茶苦茶にゆすぶられている。それだけではない。膣や肛門の中になにか異物が入ったみたいな感じになり、それも激しく揺り動かされる感覚が沸き起こった。
「ひうっ──」
沙那は大きな声をあげて、そこにしゃがみこんだ。沙那は自分の声で、一階のかなりの客の注目を集めてしまったことに気がついた。慌てて、立とうとするが、股間で暴れ回る刺激に立つことができない。
ふと、孫空女が目に入った。孫空女は、もう空いている席を見つけて座っている。食事を頼みながら、これ見よがしに首飾りのいくつかの飾りこすり合わせている。どうやら、あの飾りを擦り合せている間、沙那の股間に強烈な快感が走るようになっているようだ。
「いひいっ──」
あまりの強烈な刺激に嬌声を止められない。多くの客たちが呆気にとられて、沙那の痴態に目を奪われているのがわかる。
「いやっ──、やあっ──、いやあ──」
恥ずかしい──。
こんなところで──。
みんなが見ているところで──。
どうしよう……。
でも、快感が昇ってくる──。
我慢できない……。
どこかが刺激されて快感で身体が溶けていくのとは違う。
快楽そのものが下半身から脳にせりあがるのだ。
耐えるとか我慢するのとかとは次元の違うものが沙那に襲い掛かる。
不意にその股間の刺激がぴたりと止まった。
顔をあげる──。
孫空女は、首飾りから手を離している。
沙那は、上気した顔を隠すように下を向くとともに、立ちあがり二階に向かって踵を返した。
冗談じゃない──。
あんな痴態を見られて一階なんかに行けるものか──。
「ひがああああ──」
全身に走った電撃に沙那はそのままひっくり返った。
これも、あの首飾りの力というのは間違いないだろう。いったい、幾つの効果があるというのだろう。
「おい、あの女、下着を着けてねえぜ──」
「尻が丸出しだ。おい、見ろ──」
はっとした。ひっくり返ったせいで、尻が剥き出しになったのだ。慌てて、起きあがる。
もう、一階の人間のほとんどが沙那に注目している。
ふと見上げると、いつの間にか孫空女が怖い顔をして、そばに立っている。
「いま、戻ろうとしたよね、沙那──」
「し、したわよ──。当たり前でしょう──」
沙那は言った。また、部屋に戻ろうとした。しかし、その腕を孫空女が掴んだ。
「一緒に食事をするんだよ。言うことをきかないと食堂の真ん中で素っ裸にするよ」
孫空女の物言いに沙那はびっくりしてしまった。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ、孫女……? あなたが、わたしにそんなことを言うなんて……」
沙那は困惑した。いつもの孫空女なら絶対に言わない言葉だ。いくら、宝玄仙に命令されているからとはいえ、沙那に対するこの仕打ちは信じられない。
「嘘だと思うのかい?」
孫空女は沙那を睨んだ。
「て、手を離してよ、孫女」
沙那も孫空女を睨み返す。
「一緒に食事をするかい?」
「いい加減にしてよ──。怒るわよ、孫女──」
「そう……。じゃあ、罰を与えることにするよ。逆らうとどういうことになるか、肌身で知るといいよ……」
いきなり口の中になにかを入れられた。するとそれが口の中で拡がり、口が閉じられなくなる。
「んんんっ──」
沙那は言葉にならない抗議の声をあげた。
しかし、孫空女はいつもの馬鹿力でぐいぐいと沙那を一階の食堂に引っぱっていく。
沙那は無理矢理一階の食堂の真ん中に連れれて行かれた。食事をしていた者が一斉に沙那と孫空女を取り囲むように卓の向きを動かす。
これはどういうことか──?
宿の亭主が、あらかじめ打ち合わせをしていたように、入り口を閉じて、内側から鍵を閉めたのだ。
よく見ると食堂にいるのは男だけだ。人数が三十人くらいだろう。孫空女に引きずってこられた沙那に全員が歓声をあげる
いや、これは本当に打ち合わせをしていたのだ。孫空女がなにも言わないのに、沙那のいる場所に空いた卓が運ばれてきた。
ど、どういうこと──?
さっきは気がつかなかったが、一階の食堂の天井から一本の太い縄が垂れさがっている。
すると、孫空女が沙那を担ぎあげて、真ん中の卓の上に載せた。その卓の上で、一度、指を結んでいた縄が解かれ、高後手に縛り直された。さらに、その天井から伸びた縄に繋がれる。沙那は激しく逃げようとするのだが、あの孫空女の馬鹿力で抑え込まれると、どうしても逃げることができなかった。
「んふう──」
ついに、後手縛りで天井から吊りされた沙那は、異物で塞がれた口の中で抗議の言葉を叫んだ。
「そんなに暴れると、みんなに下袍の中を見られちゃうよ、沙那」
孫空女がにやりと笑う。いつの間にか卓の周りにびっしりと男たちが集まっていた。
沙那は、それだけで動けなくなってしまった。動くと下袍の中が丸見えになる。
『女淫輪』の力でいつも発情しているようなみっともない股間を見られたくはない。
すると、後ろ手に結んだ天井から伸びる縄がぐいぐいと引き上げられる。背中側の腕が天井方向に引っぱられる。沙那は無理矢理に卓の上に立たされてしまった。
沙那は周りに集まる男たちの刺すような視線に気を失いそうだった。
懸命に股を擦りあわせる。
「んんっ、んんんっ──」
沙那は孫空女に哀願の視線を向ける。孫空女は素知らぬ顔だ。そして、にやりと微笑むと、集まっている卓の上から水の入った杯をとった。そして、首飾りのひとつをその中に漬ける。
なにが起きるのか、とてつもなく嫌な予感がする。
そして、孫空女は首飾りを浸していた杯の中の水の半分を沙那の片方の足首に注いだ。そして、残りの半分の杯の水を、思い切り振りあげて、天井に投げた。
「んふん──」
その直後、水に濡らされた片方の足首が凄い強さで天井に引っ張られ始めた。沙那は不自由な全身を懸命に暴れさせた。逃げられるはずのない態勢だが逃げようとした。
どうやらさっき孫空女が投げた飾りのひとつが天井にくっつくことで、水で濡らされた片脚の足首だけが、その天井の飾りにくっつこうとしているようだ。霊具による道術だとは思うが、卓の上に立たされている沙那は、当然、片脚を大きくあげた姿勢を強要されることになる。
しかし、この態勢で片足だけ上にあげたりしたら、どんな格好になるか予想はつく。
懸命に力を入れる。
それでもじわじわと片脚が引きあがる。限界まで使っている筋肉がぶるぶると震える。
「さすがは、会陽の鬼娘という二つ名をもつ沙那だね。頑張るじゃない」
孫空女が言った。
引っ張られる足がつるように痛い。
回りの男たちの揶揄の声が響きわたる。
嫌だ。こんなところで、股倉をさらけ出すなんて──。
沙那は懸命に足を力入れた。
「じゃあ、これには耐えられるかなあ?」
孫空女は首飾りを外すと、紐を外して、九つの飾りをばらばらにした。それを沙那の足元に並べる。
「みんな──。この飾りはねえ、この若い女のあちこちの敏感な部分に繋がっているのだよ。舐めまわすのもよし。擦るのもよし。振るのもよし。なんでもやっていいよ。早い者勝ちだよ。どれがどれだかわからないけど、この女をこの霊具でいかせることができる男はいるかい──」
孫空女が叫んだ。
「ふぐんんんんんん──」
やめてっ──。
沙那は悲鳴をあげる。
男たちの手が一斉に卓の上に伸びる。あっという間に飾りはなくなった。
次の瞬間、全身のあちこちから衝撃が走る。
舐められる。
触られる。
擽られる。
甘噛み。
擦られる──。
それが身体中の敏感な部分から襲ってくる。
「うおおおお──」
部屋中から雄叫びがあがった。沙那の足があっという間に限界まで引きあがったのだ。
気を失うような羞恥の姿で、耐えようのない快感が込み爆発する。
お尻が──。
胸が──。
両方の乳首──。
肉芽──。
膣の最奥と中間──。
尿道の入口──。
そこにばらばらの刺激が加わる。
そして、もう一箇所──。
全身のあちこちを痒みのような疼きのような得体のしれないなにかが動き回る。
耐えられない──。
肢がびくびくと震える。
「んんんん──」
訳のわからないなにかが、脳天を貫いた。
「いったぞ──」
男たちがはやし立てる。
それでも全身のおこりはやまない。
いま、あの霊具はどこの誰が操っているのか。滅茶苦茶な刺激が次々に襲い、そして、変化する。
こんなの耐えられるはずがない──。
二度目の絶頂もやってきた。
もう、やめて───。
沙那は消えゆく意識の中で絶叫した。
三度目の連続絶頂と同時に、大勢の見知らぬ男たちに見られながら達し続けるという羞恥の限界に沙那の意識は飛んだ。
「この女、潮を噴いたぞ──」
意識を失う直前に、沙那はそうどっとはやし立てる男たちの嘲笑を聞いた気がした。
*
けだるさを追い払い、孫空女は起きあがった。
気がつくと朝になっていた。
孫空女は自分が床の上に横になっているのに気がついた。
どうやら、孫空女は寝台ではなく、床の上でそのまま眠ってしまったようだ。
昨夜は、寝台に拘束した宝玄仙を沙那とふたりで責め続けた。やがて、ついに失神してしまった宝玄仙の拘束を解き、そのまま寝入った気がする。
宝玄仙はどうしただろう──?
「眼が覚めた、孫女?」
沙那の声がした。そちらに視線を向けると、すっかりと身支度の終わった沙那が、椅子に座って、横たわる孫空女を見下ろしていた。
「ああ、おはよう、沙那──」
起きあがろうとすると、両手首と両足首が突然に背中方向に勝手に動いた。
『
このとき、孫空女は自分が全裸であることに気がついた。
「こ、これ、どうしたんだよ、沙那? それにこれなんだよ? それと、ご主人様は?」
孫空女は驚いて、沙那に矢継ぎ早やに訊ねた。
「ご主人様は出掛けたわ、孫女。用事があるとか言っていたわ。それと、今日はここにもう一泊して明日出発だって」
「それはいいけど。いま、『緊箍具』を沙那が動かしたの?」
「そうよ──。これを見て、孫女」
沙那が首にかけている奇妙な首飾りを揺らした。見たことのない不思議な首飾りだ。よく見ると親指大ほどの小さな人間の頭のようなかたちをしたものが九個ほど紐で繋がっている。
「これは霊具よ。これをつけていると、わたしでもご主人様のような道術が使えるのよ。この部屋に限ってだけどね」
沙那が言った。
「なにをする気なの、沙那?」
「今日一日、孫空女で遊ぶのよ」
孫空女は呆気にとられた。まるで、沙那の表情は、まるで沙那が宝玄仙になったかのようだ。なにかこれから、孫空女に嗜虐的な悪戯でもしようかというような顔だ。孫空女はとても嫌な予感がした。
「ちょ、ちょっと待って、遊ぶってなんだよ、沙那?」
「使ってみる?」
沙那は、ぞっとするような残酷な色を浮かべた笑みを浮かべた。
「な、なにをする気だよ?」
孫空女は、じゃらじゃらと首飾りを鳴らす、沙那に向かって言った。
「でも、その前に、これをつけてあげるわ」
沙那は、どこからか、真っ黒いベルトを取り出すと、孫空女の腰に巻いた。
「これで、あなたは、そのベルトの部分が床から離れなくなったはずよ。逃げてみて、孫女」
沙那は、孫空女の眼の前に小さな筆を取り出した。そして、孫空女の背後に回ると、剝き出しになっている孫空女の股間を筆でひと撫でした。
「いひいっ──」
いきなり、敏感な肉芽を柔らかな毛先で擦りあげられる快感に孫空女は悲鳴をあげた。身体を思わずのけぞらせようとするが、ベルトの部分だけがぴたりと床にくっついて離れない。その結果、孫空女は、ほとんど沙那の筆から逃れる手段がない。
「ほら、孫女、逃げられたらやめてあげるわ。逃げられない限り、ずっと続けるわよ」
沙那の筆が背後から孫空女の股間を動き回る。肉芽の周りを円を描くように動いたかと思うと、肉襞の周りをさすりあげる。そして、いまや、孫空女の最大の急所になりかけている肛門の入口をなぞる。
「ああ……っ……。も、もうやめてよう、沙那──。今日の沙那はおかしいよ──」
孫空女は 身体を仰け反らせた。
「お尻とお豆とどっちがいい、孫女?」
い、意地悪……し、……しないで……うわあっ──、あ、あ、あ、ああっ」
沙那に肛門と陰核を交互に刺激されて、あっという間に、孫空女は絶頂に達した。
「ふ、ふ、ふ、いやらしいわね、孫女も。こんな朝から愛液を噴き出しちゃって」
「も、もう、なんで、こんなことするんだよ、沙那──?」
孫空女は、いったばかりの余韻にひたりながら、うらめしく言った。
「だから、遊びよ───。あ、そ、び」
沙那は孫空女から離れると、首飾りをじゃらじゃらっと鳴らした。
すると、孫空女の周りに突然低い壁が出現した。
孫空女はぎょっとした。壁といっても高いものではない。せいぜい、大人の腰くらいの高さしかないだろう。だが、孫空女がぎょっとしたのは、壁のせいではない。
下から急に沸き起こって来た水のせいだ。
なぜだかわからないが、じわじわと水が床から沸き起こり、少しずつ容器の中に溜まっていく。
「な、なにこれ?」
「水はどんどん増えていくわ。わたしは食事をしてくる。その間どうやったら、溺れなくて済むか考えてね。あっ、それから、この部屋はご主人様の結界が生きているから、いくら叫んでも無駄だからね」
沙那は、そう言うと部屋の外に出ていった。
抗議の暇はなかった。
孫空女は、水嵩の増えていく容器の中に身動きのできないまま、ひとり残された──。
もう、水は、孫空女の口を完全に沈め、鼻の穴ぎりぎりのところまであがってきている。孫空女は、精一杯に身体を仰け反らせているのだが、どうやってもそれ以上、身体を上にあげることができない。
無駄だとわかっていても、孫空女は水の中で叫んだ。もしかしたら、これをどこかで見ていて、助けてくれるに違いない。沙那がこんなことをするわけがないのだ。
もう、水は鼻のぎりぎりまであがった。
死ぬ。そう思った。
その時、部屋の扉が開いた。
助かった──。
そう思った。やっぱり、これはただの、「遊び」だった。沙那がこんなことするわけがない。ちょっとばかり脅かしただけだ。それにしても、これは怖かった。後で文句を言ってやろう──。
だが、いつまで経っても、沙那はなにもしようとしない。
水が鼻の穴に入ってきた。孫空女は、水の中で悲鳴をあげた。
「さっき、言ったことを覚えている、孫女?」
沙那の声がした。
「わたしは、どうやったら、生き延びられるか考えろと言ったのよ」
沙那の声は冷たかった。孫空女は水の中で叫んだ。
しかし、どうしろというのか──。
「死にたくなければ、水の飲むのよ──。ほらっ」
沙那は言った。
孫空女はやっと、この仕掛けの意味がわかった。どれくらい飲まなければいけないかわからないが、とにかく、水を飲んだ。
水を飲む───。
飲む──。
飲む──。
飲む──。
苦しい──。
それでも、飲まなければ──。
どれくらい、水を飲んだだろうか。
お腹が苦しい。
やっと、鼻の穴が水面から出た。
しかし、放っておくと水かさは増える。
飲まなければ死んでしまう──。
どうしたの、沙那──?
このままじゃ、本当に死んでしまうよ──。
孫空女は水の中で叫んだ。
水を飲みすぎて苦しい。吐きそうだ。
もう飲めない──。でも飲まなければ死ぬ──。
飲むのをやめて、溺れかけたら、沙那は助けてくれるだろうか。
もう、やめたい。
お願い──。
沙那───。
「頑張っている、孫女に贈り物よ」
孫空女の淫孔になにかが突き刺さった。それが霊具の張形だとわかったのはすぐだ。ぶるぶると厭らしく振動しはじめたのだ。ただでさえ、限界まで仰け反らせている身体を張形の振動が妨害する。加えられる股間の刺激に力が抜ける。姿勢を崩すために、鼻に水が入りはじめる。
鼻息が荒くなる──。
もうひたすらに水を飲むだけだ──。
しかし、張形の振動が孫空女の力をだんだんと奪っていく。
「孫空女、まだ、聞こえている?」
沙那の声──。
孫空女は、水の中からの呻き声で返す。
「この首飾りねえ、あなたの例の内丹印も操作できるんですって。とりあえず、感度二十倍でどうかしら。あっという間に沈んじゃうかなあ──」
やめて───。
すぐに全身が熱くなった。
水だと思っていたものがまるで熱湯にでもなったようだ。
張形の振動で孫空女はたちまちにのぼりつめる。そして、もう、顔を水の上に出すことができなくて、水の中で絶頂に達した。
それでも全身の震えはやまない。
胯間の霊具は、まだ動き続けている。
こんなの耐えられるはずがない──。
二度目の絶頂もやってきた。
もう、やめて──。
孫空女は消えゆく意識の中で絶叫した。
もう、鼻は完全に水の中だ。
水の中での三度目の絶頂──。
ついに、孫空女の意識は完全に失われた。
*
「眼が覚めたかい、沙那、孫空女?」
宝玄仙は、全裸で肌をくっつけ合って横たわっていたふたりに声をかけた。夢の中の話とはいえ、現実との区別がつかないふたりは、わけがわからないのだろう。
沙那と孫空女は呆然としている。
「ご、ご主人様……?」
「こ、これは……?」
沙那と孫空女がそれぞれに口を開く。
「いいから立ちな──」
宝玄仙は手の持っていた乗馬鞭を床に打ちつけた。ふたりが身体をびくりと反応させた。そして、慌てて、身体を起こそうとする。
「痛あっ──」
「いぎいいっ──」
沙那と孫空女が絶叫した。ふたりの向かい合った乳首と乳首を糸で結びつけていたのだ。無造作に起きようとして、それぞれが乳首を引っ張られたのだ。
「ぐずぐずしないんだよ」
宝玄仙は手近だった沙那の白い尻に乗馬鞭を打ちつけた。
「ひぎいいっ───」
沙那が仰け反った。
「うぎいっ」
それとともに、乳首を思いっきり引っ張られた孫空女も悲鳴をあげる。
「ご、ごめん、孫女」
「さ、沙那───。と、とにかく、立とう」
「うん」
孫空女と沙那が抱き合いながら身体を起こす。ふたりに拘束はしていない。
だが、たった二本の糸で、沙那と孫空女というふたりの女傑が、ほとんど身動きできなくなっている。面白いものだ。
宝玄仙は、ふたりに道術を送り込み、血の滲んだふたりの乳首と、鞭による沙那の傷を治療する。血も傷もなくなり、ふたりは元の真っ白な肌と薄桃色の乳首を取り戻す。
「も、もしかして……ご主人様、昨夜のこと根に持っている……よねえ……?」
孫空女がおずおずと言った。
「ふたりの気持ちはよくわかっているつもりだよ。そして、久しぶりに眠れた。悪夢なしでね。本当にありがとう……。だから、思いっきりお礼をしたいと思っているのさ」
宝玄仙は、また、鞭で空気を鳴らした。裸で向き合って抱き合う沙那と孫空女がびくりと震えた。
「せ、折檻は覚悟していました。でも、鞭でぶつなんて、ご、ご主人様らしくないのでは……」
沙那がおずおずと言った。
「お黙り──」
宝玄仙は、沙那の白い尻にまた鞭を打ちつけた。
「ひぎいいいっ──」
沙那が悲鳴をあげた。それとともに、がくがくと身体を震わせた。
「さ、沙那──?」
沙那を抱きしめながら、ただの痛みではない沙那の様子に孫空女が眼を白黒させている。
沙那の股間から迸った愛液の垂れが足をつたい落ちている。
「ご、ご主人様……。こ、これは……?」
沙那が上気した顔をこちらに向けた。
「たったいま、ふたりには強い痛みを感じると、それが快感に変化するようにしてやったよ。今日は、鞭で打たれるたびに、絶頂に達することができるはずだ。嬉しいだろう? そのうち、道術なんてかけなくても鞭で尻を打たれれば、快感を絞りとれるようになるかもね」
宝玄仙は孫空女の尻に二度続けて鞭を打ち据えた。
「ふぐううっ──」
孫空女が膝を震わせて、身体を崩れ落ちさせた。それを慌てて沙那が掴む。
「ほらっ、しっかりおし──。お前が倒れたら、沙那の乳首が千切れ落ちちまうだろうが──」
宝玄仙は、もう一度孫空女の尻を引っ叩いた。孫空女が股間から白間液を噴き出しながら、白目を剥く。
「いたっ」
沙那が支える手から孫空女の身体がこぼれ落ちた。孫空女に吊られるように、沙那がその身体に覆いかぶさる。沙那もまた、乳首が引っ張られることで強い淫情を感じてしまい嬌声をあげた。
「ほら、立ちな──」
宝玄仙は上になっている沙那の尻に乗馬鞭を四、五回連続で鞭を叩きつけた。激しい快感に次々に襲われた沙那が身体を仰け反らせた。今度は、沙那によって乳首を引っ張られた孫空女が乳首の刺激に快感の声をあげた。
続けざまに絶頂を味わったふたりは、抱き合ったまま激しく呼吸をしている。そのふたりの傷を宝玄仙の道術が癒す。
「ところで、わたしの淫夢はどうだった、沙那、孫空女?」
「淫夢?」
顔をあげたのは孫空女だ。沙那もまだ虚ろな視線をこちらに向ける。
「淫夢だよ──。淫らな悪夢を見なかったかい、沙那に孫空女?」
「あ、あれは、ご主人様の仕業なのかい?」
「そうさ、孫空女。目が覚めてはこうやって淫乱な調教を受け、眠ったり、気を失ったりしても、やはり、淫夢に襲われる。夢と現実の両方でこうやって責められると本当に屈服してしまうのさ───。覚悟をしな。動機はどうあれ、二度と宝玄仙の上に立とうなんて思えないようにしてやるよ」
宝玄仙は鞭で空気を鳴らした。
「そ、そんな。もう許して……く、ださい……」
沙那が息も絶え絶えに言った。沙那にはさっき達したばかりの余韻がまだ残っているようだ。
「今度はもっと激しくやるよ──。次の一発目から激痛でいってしまったら、もうひとりの相手の身体に最大級の電撃が加わるようにする。だから、耐えるんだよ。思わずいってしまったら、とんでもないことになるからね──。さあ、立つんだ」
沙那と孫空女が、恐怖の表情をしながら立ちあがった。
「さて、どちらにしようかねえ──。どっちがぶたれても、いくんじゃないよ。いくとどうなるかわかるかい?」
沙那と孫空女の尻を交互に鞭の先で撫ぜる。ふたりが身をすくませる。
「じゃあ、それ行け──。絶頂の渦巻き地獄だよ──。気を失ってこい。淫夢が待ってるよ」
宝玄仙は力の限り沙那と孫空女の尻に鞭を一回ずつ叩きつけた。
「あああ……うぐううっ──」
「はがああっ──」
どちらが鞭による激痛を快感に変えられたことにより絶頂してしまったのかわからない。あるいはふたり同時にいってしまったのかもしれない。
とにかく、ひとりが達してしまったことで、もうひとりの人間の身体に怖ろしいほどの電撃が迸った。痛みを歓喜の欲望に感じるように道術を加えられているために電撃の痛みで絶頂に達してしまう。
そして、絶頂に達したことで、もうひとりに電撃が加わって絶頂し……。
これにより、相手に電撃が加わりまた絶頂し……。
一度どちらかが絶頂してしまうと、ふたりとも完全に気を失うまで、連続絶頂をするしか快楽から逃げる方法はない──。
「ほ、ほ、ほ、絶頂の渦巻き地獄から解放されるには、気を失うしかないよ」
聞こえているのか聞こえていないのか、沙那と孫空女が股間から潮のようなものを噴き出しながら、口から泡を吐き出し始めた……。
*
「起きなさい、沙那」
全身に冷たい水を浴びせられた。沙那は我に返った。
沙那は自分が卓の上で立たされたまま気を失っていたのだということがわかった。そして、沙那の片脚は大きく引きあげられたままだ。
「そ、孫女──。い、いい加減に解いて──」
口の中の異物は取り除かれていた。沙那は卓の前で腕組みをしてにやにやしている孫空女に叫んだ。
沙那の周りには、まださっきの男たちが取り囲んでいる。沙那は羞恥で気が遠くなりそうだった。
男たちは、沙那の無毛の股を覗いている。そして、『女淫輪』により勃起した沙那の陰核を指差しながらげらげらとはやし立てている。
その沙那の肢の下に孫空女は小さな桶を置いた。
「ど、どういうことよ、これは?」
「別にどうということはないよ、沙那。みんなが、ちょっとした見世物を披露して欲しいと言うからさあ。みんなで話し合った結果、沙那に、立小便でもして貰おうと思ってね」
そう言いながら、孫空女は、いつの間にか元の形に戻った首飾りをいじくりながら言った。また、その霊具を使って沙那に道術を加える気だというのがわかった。
「あ、あんた、なに考えているのよ──。ば、馬鹿なことを言わないで、縄を解いてよ──。そ、それよりも脚をおろさせて」
「駄目だね」
孫空女が首飾りを鳴らした。すると、沙那の頭が透明の仮面のようなものに包まれた。
「な、なに?」
沙那は声をあげた。自分の声が透明の仮面に反射して、こだまとなって耳に届く。その仮面の中に水が出現して、その水面が沙那の顔をせりあがってくる。水面が沙那の口にまで上昇し、沙那は慌てて口を閉じた。
「その水には沙那がもの凄く、おしっこがしたくなる『仙薬』が入っているよ。飲まない方がいいかもね。みんなの前で立小便するのがそんなに嫌ならね……」
そう言って、孫空女がにやにやと笑っている。その間にも水嵩はどんどんあがってくる。もう、水は鼻の孔のぎりぎりまでせりあがった。
沙那は上を向いて、水が鼻にかかるのを防いだ。だが、耳の下から上に向かって、どんどん水面があがってくるのがわかる。
この透明の仮面も道術の力らしく、どうやっても沙那の前から水が逃げていかない。そして、顔の前が水嵩がどんどん増える。
孫空女の狙いはわかっている。このままであれば、いずれは沙那の顔の全部が水でいっぱいになる。水面に口と鼻が隠されないようにするには、眼の前の水を飲むしかない。
そうやって尿剤の入った水を飲ませる気なのだ。
こんなに大勢の見知らぬ男たちの前で立小便をさせられる──。
そう考えただけで、沙那は羞恥に気が狂いそうだ。
ついに、上を向いていた沙那の鼻の穴に水面が到達した。
仕方なく、沙那は、ひと口ふた口と水を飲む。甘い味のする水が沙那の胃の中に入っていく。
さすがは『仙薬』の効果だ。
それが胃に到達した途端に猛烈な尿意が沙那を襲った。
たったの数口飲んだだけの水でたちまちの効果が現れたその水を、沙那は、続けて飲まなければならない。そうしなければ顔が水に浸かり切り、沙那は窒息してしまう。
死んだって、立小便なんかするものか──。
沙那は歯を食いしばる。
しかし、水を飲まなければ死ぬ。
仕方なく、また、飲む。
さらに尿意が増す。
もう駄目……。
激痛が膀胱に走る。
そして、ついに限界がきた。
「おう──、始まったぞ」
男たちの歓声が起こった。
沙那は片足立ちになった脚に伝わる自分の尿を感じながら、絶望的な気持ちになった。
だが、さらに追い打ちをかけるような、孫空女のひと言が沙那を襲った。
「じゃあ、次は、水に含まれる『仙薬』を下剤に替えてあげるよ、沙那」
思わず上に向けていた顔を孫空女に向けた。孫空女の顔が嗜虐の笑みをたたえていた。
*
「起きなさい、孫女」
沙那の声をともに、全身に冷たい水を浴びせられた。孫空女は我に返った。
気がつくと大きな水槽のような大きな容器の中に立たされていた。両手首と両足首に鉄枷を嵌められ、さらにその鉄枷が鎖で繋がれていた。
もちろん、全裸のままだ。
水槽の中は孫空女の身体が浸かるくらい水がいっぱいで、孫空女の首だけを水面にあげている状態だ。
孫空女の首には、身体が沈まないように、天井から吊るされている首輪が嵌まっている。
魚──?
ふと気がつくと、水中には、びっしりと蛇のような細長い魚が動き回っている。孫空女は、びっくりして身体を震わせる。
「な、なにこれ───? ちょ、ちょっと、出してよ、沙那」
容器の壁は透明になっていて、壁越しに沙那の姿が見える。どうやら、道術で作られた容器のようだ。沙那は、嗜虐の笑みを湛えながら、首飾りをいじくっている。
沙那が首飾りを激しく動かした。それとともに、水中の魚が活発な活動を始め出す。
魚たちが孫空女の膝の裏をするりと撫ぜた。その途端、孫空女の肌に痺れるような刺激が走った。
熱い──。
魚に触れられた場所が急激に熱を帯びたようになる。その得体の知れない感覚に孫空女は戸惑った。
「あふっ──」
魚が孫空女の閉じられた肢の間を抉じ開けるようにすり抜ける。すると、その肌がなにかにかぶれたようにじんじんと疼き出す。
「ね、ねえ──。この魚なんなの、沙那──?」
孫空女は叫んだ。その間にも、魚は孫空女の裸体にまとわりつくように、触れてくる。その度に、得体の知れない感覚に孫空女が身体をくねらす。
「気がついた、孫女? その魚の肌にはね、もの凄く強力な媚薬効果があるの。あまり触られ過ぎると、身体が敏感になりすぎて、大変なことになるわよ。逃げた方がいいわよ」
「そ、そんな、逃げるっていっても……」
両手と両足を鉄枷で拘束された孫空女は、自由奔放に孫空女の身体を這い回る魚から逃げるなど不可能だ。
魚たちは孫空女の身体に媚薬を塗りつけていく。
「それから、孫女、言っておくけど、あまり、感じない方がいいわよ。魚の肌からの媚薬に感じてしまって、淫液でも染みさせようものなら、それを狙って、魚が群がるわよ」
沙那が愉しそうに言う。
しかし、その言葉が言い終わるか否かで、三、四匹の魚が孫空女の膣孔に向かって頭を潜りこませようとする。
「や、やああ──」
孫空女は、不自由な手を使って、それを引き離す。
だが、魚は、五匹──、十匹──、二十匹と数を増す。
そして、その魚の肌が触れた場所が猛烈な快感となって、孫空女を襲う。
「た、助けて──」
あまりの甘美な衝撃に水中で身体を砕けそうになり、孫空女は叫んだ。孫空女の抵抗が弱まったのを狙いすますかのように、孫空女の女陰に二匹の魚がついに入り込んだ。
「ひぎいいいっ──」
わけのわからない官能の衝撃に孫空女はたちまちに絶頂に跳ねあげられた。
凄まじい快感の暴発に孫空女は一瞬頭が白くなる。
だが、快感に身を委ねることは許されなかった。孫空女がいっている最中にも、別の魚が孫空女の後ろの孔に入り込む。
孫空女は絶頂に達しながら新たな絶頂を受けなければならなかった。ほかの魚も孫空女の乳首や脇や臍や横腹……。
とにかく、ありとあらゆる場所に魚が群がってくる。
「ま、また、いぐうう──」
絶叫しながら、孫空女はただただ全身を魚に襲われながら、焼き焦げるような身体を硬直させた。
*
沙那は、気がついた。
なにがどうなってしまったのか──。
そして、思い出した。
孫空女に「調教」される淫夢を見たのだ。そして、眼が覚めると、その孫空女の乳首と沙那の乳首を結ばれていて、鞭で叩かれた。
沙那も孫空女も、鞭の痛みを途方もない快楽として感じるように霊力をかけられていて、激しい痛みを与えられるたびに、痛みとともに、血液が沸騰するような絶頂に達し、それを繰り返された。
そして、最後には相手が達したら、自動的に電撃の痛みが襲うように術をかけられて、痛みと絶頂を交互に孫空女と繰り返して、完全に意識を失った。
ふと、身体をうごめく“なにか”に気がつき、沙那は絶叫した。
身体中を『魔蛭』がたかっている。その数は何千、何万という数だ。その『魔蛭』の海に全身をつけている。
その『魔蛭』が沙那の全身を吸っている。
痒みだが激痛なのかわからないものが沙那を襲っている。『魔蛭』は、沙那の孔という孔から入り込み、毒液を撒き散らしながら沙那の体内に侵入してくる。
孫空女──。
沙那の隣で、完全に白目を剥いてもがいている孫空女を認めて、叫ぼうとした。しかし、その口の中に『魔蛭』が入ってくる。
身体を起こそうと全身をばたつかせる──。
しかし、その身体もどんどん、『魔蛭』の海に引きずり込まれる。
全身がただれる──。
溶ける──。
全身がただ一個の淫核と成り果てたようだ。
ご主人様──。
完全に『魔蛭』に呑み込まれる寸前──。
沙那は、面白そうにげらげら笑い続ける宝玄仙の声を聞いた気がした。
*
「やっと、目が覚めたのね、孫女」
沙那が言った。
孫空女は、全裸で天井から吊るされていた。足元には、ぶよぶよとうごめく巨大な触手の塊りがあった。
その塊りの中に、全裸で拘束された孫空女がゆっくりと降ろされている。
「もう、いやだ──。助けて──助けて──助けてえっ──」
孫空女は足元に迫る触手に絶叫した。
触手の先っぽが、孫空女の股間を狙い打ちするように襲ってくる。
その孫空女の姿を見て、沙那がげらげらと笑っている。
いや、沙那じゃない。沙那の姿をしているが、あれは紛れもない宝玄仙だ。
沙那の姿をした宝玄仙が馬鹿みたいに笑っている。
孫空女は触手の巨大な口に呑み込まれた。
夢なら覚めて欲しい──。
いや、覚めても淫獄が待っている。
助けて──。助けて──。助けて───。
孫空女は触手の吐き出す媚薬の粘液で、まさに身体を溶かされながら、心の中で叫んだ。
夢に違いないのはわかっている──。
だが、この拷問そのものの淫夢はいつまで続けられるのか……。
それとも、いまは現実で気を失ったときが淫夢の中なのか……。
消えていく意識の中で孫空女が思ったのはそれだった。
(第7話『女主人の悪夢』終わり)
*
【西遊記:22回、沙悟浄】
玄奘一行は、流砂河という大河に差し掛かります。
その流砂河には、沙悟浄という妖怪が棲んでいて、岸辺で河を渡ろうとしていた玄奘に襲いかかります。
しかし、陸の戦いで孫悟空に敗れた沙悟浄は、今度は孫悟空を水中の戦いに誘います。
孫悟空は、水中の戦いが得手ではなく、沙悟浄との戦いに苦戦します。
だが、そこに観音菩薩が現われて、この沙悟浄もまた、玄奘の供になることが決まっていたと教えられます。
沙悟浄も、自分が襲ったのが観音に供になるように命令されていた玄奘であることを知り、供になることを誓うとともに、反省のために剃髪をします。
*
なお、沙悟浄の姿が河童であるというのは、児童書として日本語訳をした際の創作であり、原作には、「怖ろしい形相の剃髪の醜い妖怪」とあるだけで、具体的な姿はあまり描かれてしません。
また、三人の供のうち、もっとも強いのが孫悟空で、次が猪八戒です。沙悟浄は三番目であり、あまり武芸が達者な設定ではありません。