「蹴り破って連れ出せ──。武器も持ってねえ、素っ裸の女だ。かかれ──。叩き破るんだ──。引き摺りだせ──」
後天袋の大声がして、戸が外から蹴り破られた。
最初に飛び込んできた男の顔を美麓は、両手を組んで横殴りに殴った。
「うわっ」
美麓が殴った男が悲鳴をあげて倒れる。
するとその男が立っていた場所にわずかな隙間ができた。
美麓は男たちを突き飛ばして、その隙間に飛び込んだ。意表を突かれるかたちになった男たちの横をすり抜けて、囲みの外に出ることに成功した。
寝台に胡坐で座っていた後天袋の顔色が変わった。
「ひいいっ」
美麓が寝台に飛びあがろうとしたのを見て後天袋が悲鳴をあげた。
おそらく、美麓に殴られるのでもするかと思ったのかもしれない。
だが、美麓が狙ったのは、後天袋が尻の下に敷いていた美麓の衣類だ。
後天袋が転げ落ちるように寝台から逃げた。
美麓はとっさに、上着一枚だけを手に取る。
しかし、それ以上は無理だった。
背後から追いかけてきた男たちが美麓に殺到する。
ひとりが美麓の足首を掴む。
美麓は身体を反転させて、その男の顔面に膝蹴りを食らわせた。
そして、態勢を崩したその男をほかの男たちに蹴り飛ばす。
「お、お前ら、早く捕まえろ──」
後天袋が狼狽えた声をあげて、廊下に出る扉に走る。
一瞬、人質にすることが頭によぎった。
しかし、美麓は手に入れた上衣だけでも着ることを優先した。
その間に後天袋ひとりが廊下に飛び出た。美麓は慌ててそれを追いかける。
「待て──」
誰かの手が美麓の腰に巻いた布にかかった。
「きゃああっ」
思わず声が出た。
握られた腰の布が奪われる。
だが、なんとか身体を掴まれずに済んだ。
美麓は後天袋を追うように廊下に飛び出した。
「な、なに──?」
思わず立ちすくんだ。
部屋の外には、さらに多くの後天袋の手下が棒を持って集まっていたのだ。
美麓は舌打ちした。
後天袋を人質にすることはもう不可能だ。後天袋はすでに棒を持った手下たちの後ろだ。
廊下にも十人ほどの後天袋の部下が棒で武装して集まっていた……。
なんで、自分はさっき服を着ることなど先にしようとして、後天袋を捕まえる機会を逃してしまったのだろう……?
やっぱり、自分はどうかしている……。
焦っては駄目だ。
あのまま飛びかかったら、後天袋を人質にすることに成功したかもしれないのに……。
美麓は歯噛みした。
「この女──」
部屋の中からさっきの男たちが出てこようとしていた
体当たりで戸にぶつかり、身体半分外に出ていた男の胴体を思い切り挟んだ。
そして、身体をまた反転して、階段側にいる棒を持った男のひとりに猛然と飛びかかった。
廊下は狭い──。
全員で飛びかかろうにも、そうそう、できるものではない。
とにかく遮二無二突破する──。
それしかない……。
「ぐわあっ」
うまい具合に頭突きが眼の前の男の鼻にぶつかり、その男から棒が奪えた。
「しまった」
叫んだのは別の男だ。
その男の棒を奪った棒で叩き落とす。
棒を振り回す。
その棒を避けようとして、美麓の前に空間ができた。
棒を回しながら階段に突き進む。
立ちはだかる男は棒で殴り倒す。
前が空く。
美麓の勢いに、前にいる部下たちの顔に恐怖が浮かぶのがわかった。
後ろから迫る男たちは、美麓の棒で身体を叩かれてうずくまった仲間に阻まれている。
一瞬、美麓の頭に希望が灯る。
階段を降りさえすれば──。
外に出られれば──。
「待ちな」
若い男が階下からあがってきた。
どうやら階下で待っていた後天袋の数名の若い者のひとりらしい。喧騒の間に階段をさっとあがってきたようだ。
棒を持っている。
美麓はその若い男に打ちかかりながら、ちらりと階下を見た。
階段には、その若い男のほかにはまだ誰もいない。
階下に残っていたのも数名だけのようだ。
逃げられる……。
美麓は確信した。
「どきな、あんた──」
棒と棒が激しくぶつかる。
一瞬だけ痺れるような衝撃が両手首に伝わった。
次の瞬間、はっとした。
棒がない。
いつの間にか棒を払われていた。
美麓の持っていた棒がころころと階段の下に落ちていくのが見えた。。
「もう、終わりだよ。観念しな」
その若い男の構える棒がすでに美麓の両脚の間に差し入れられていた。
次の瞬間、身体が宙に浮かんだ。
ものの見事に、その若い男から脚を払われたことがわかったのは空中だった。
美麓は腰から階段に倒れ落ちた。
倒れた美麓の身体を若い男が踏みつけた。
「よくやったぞ、
五人、六人と倒れた美麓の身体の上にのしかかってくる。
美麓はたちまちにさっき着たばかりの上着を剥がされて、縄に後手に縛られてしまった。
「ち、畜生……」
美麓は縛られた身体を押さえつけられながら歯噛みした。
もう少しだったのに……。
さらに、肩幅ほどの余長をとって両足首にも縄が結ばれる。
これで歩くことはできるが、走ることはできない。
最早、逃亡は不可能だ。
美麓は全裸に後手縛りに縄をかけられた姿のまま階下に引き摺りおろされた。
裸身を隠そうとしゃがみこんだ美麓を後天袋の部下たちが取り囲む。
「危ないところだったな……。それにしても、お前がこんなに棒が遣えたとは知らなかったぜ、高白」
どこに隠れていたのか後天袋が、素っ裸で縄を掛けられた美麓の前に出て来て言った。
後天袋が高白と呼んだのは、最後に美麓を倒した若い男だ。
なんてことのない線の細い色白の若者だ。
この男に不覚をとったことで、美麓は逃げることができなかった……。
口惜しさが全身を走る。
「美麓……。表で馬車が待っているぜ。一緒に来い」
後天袋がさらに言った。
馬車に載せられれば終わりだ。
そのまま、黄眉という殺人鬼の亜人のところに連れていかれる……。
美麓は焦った。
なにか逃げる手立ては……?
「ね、ねえ、もう、観念するわ……。で、でも、あ、あたしをただ亜人に引き渡してもいいの? あ、あんたたち全員だって相手をするわよ……」
美麓は言った。
こうなったら自分の身体の毒という武器しかない。
うまく輪姦でもしてくれれば、逃亡の望みはまだ残る。
もっとうまく誘えればいいのだが、突然には男を誘う甘い言葉など出てこない……。
しかし、後天袋がせせら笑った。
「そうはいかねえぜ、美麓。お前の魂胆はわかっている。お前の身体の体液が毒であり、うっかりとお前を抱けば命に関わるということはわかっているんだ。誰もお前を抱こうとする者はいねえから安心しな」
美麓は驚いた。
どうしてそれを知っているのだろう……?
美麓が女であったことだけじゃなく、体液に備わる毒の秘密まで……。
それを知っているのは……。
「……ところで、高白、縄で縛っているとはいえ、こいつには用心ならねえ。お前のさっきの腕を見れば、実はお前に武芸の嗜みもあるということも本当のことのようだ……。お前が少し前に俺に言ったように、こいつの見張り役として一緒に馬車に乗った方がいいだろうな。今回の大事な情報を持ってきたのもお前だ。約束通りに、これからは幹部待遇にしてやるぜ。黄眉殿にも紹介してやる」
「ありがとうございます、兄貴」
高白と呼ばれた若者が嬉しそうに破顔した。
「……ところで、兄貴……。この女の逃走防止にちょっとした仕掛けをしたいんですけどいいですか?」
両側から別の男たちに縄を掴まれて美麓が立たされたときに、不意に高白が言った。
「仕掛け?」
後天袋が眉をひそめる。
「これですよ」
高白がとりだしたのは革の貞操帯だ。
腰の両側の部分が細くなり、股間を通した部分とともに、腰の背後で集めて留めるようになっているものだ。
飾りのようなものはない。
ただの革帯だ。
「おう、それは、俺たちのあじとに放ってあったもので、あの女道術遣いからとりあげた品物じゃねえか。そんなものが逃走防止になるのかよ、高白?」
質問の声をあげたのは、後天袋ではなく別の男だ。
なんとなく、この場では後天袋に継ぐ地位にある者という感じがする。
「使い方があるですよ、皆さん……。これは、実は霊具なんです。しかも、道術遣いでなくても扱えるものです……。こう使うんですよ……」
高白が意味ありげな笑みをしたかと思えば、その貞操帯を拡げて美麓に近づいてくる。
嫌な感じがして、思わず美麓は股を閉じようとした。
しかし、太腿を左右から掴まれて脚を閉じるのを阻止される。
「ひいっ」
突然に貞操帯の股間の部分から無数の触手が湧いたのが目に入った。
美麓は大きな悲鳴をあげてしまった。
「おお──」
どよめきも周囲から湧き起こる。
「確かに霊具だ。どういう仕掛けだったんだ、高白?」
後天袋が目を丸くしている。
「後でお教えしますよ……」
高白はそう言いながら、触手がうねっている部分を美麓の股間の下に通した……。
「や、やめてぇ──」
美麓は絶叫した。
だが、容赦なく股間部分に触手が生えた貞操帯が股間にぴったりと装着される。
「ひゃあっ……いやっ、ひゃあ、やっ、いやああっ……」
股間全体を触手にうにょうにょと這い回られて、美麓は身体を仰け反らせて絶叫した。
しかし、暴れようとする全身を四方八方から捕まれて、背中側で貞操帯が引き絞れられる。
そして、なにかの鍵がかけられるような音もした。
「は、外してぇ──、お、お願い──」
美麓は耐えがたい刺激に、悲鳴をあげてその場に崩れ落ちた。
貞操帯の内側で触手が股間を苛んでいる。
股間に密着した触手が美麓の肉芽を擦り、束になって女陰に入り込んできている。
また、蟻の門渡りと呼ばれる部分をくすぐり、肛門の中にも次々に触手が潜ってもきている。
しかも、女陰と肛門に入ってくる触手はただ入り込むだけではなく、美麓の敏感な部分を探すように動き回り、そこを繰り返し刺激してくるのだ。
ふたつの穴に入り込む触手は数束になって、ある部分は入り込み、ある部分は抜けていったりもする。
つまり、女陰と肛門に挿入と排出の両方の刺激を受けながら、しかも、股間のあらゆる部分をあらゆる感触で、しかも同時に刺激される。
とてもじゃないが耐えられるようなものではない。
美麓はたちまちに熱い愛液を垂れ流しながら絶頂に向かって快感を引き揚げられていく。
「よし、担いで、馬車に載せろ──」
後天袋の声がして美麓は四人の男から身体を担がれた。
しかし、美麓はそれどころじゃない。
股間を貞操帯の触手が襲い続ける。
「ああ、あああっ」
美麓は担がれて運ばれながら、触手の責めによってひっきりなしにやってくるおこりのような疼きの繰り返しに我を忘れて悶え続けた。
*
「んぐうう──」
幌を被った荷駄馬車の荷駄部分に積まれた小さな檻に全裸に後手縛りの縄を掛けられた美麓は入れられていた。
その檻の中で美麓は股間に履かされている触手付きの貞操帯に苛まれているのだ。
貞操帯の内側にびっしりと生えている触手の責めによる連続絶頂に晒されたのは最初の一刻(約一時間)だけだ。
短い時間で続けざまに連続絶頂してからは、今度は一転して寸止め責めが始まったのだ。
美麓としては、その寸止め責めが開始されてからの方がつらかった。
激しい刺激で美麓が絶頂しそうになると、まるでそれを計ったかのようにぴたりと触手の動きが停止する。
そして、そのまま美麓の快感が鎮まるのを待ち、再び触手が美麓の股間を責めだす。
やがて甘美感が股間から全身を駆け抜け、どうしようもなくなって感極まるとまたぴたりと触手が止まる。
この繰り返しだ。
そうなるとわかっていても、耐えられるものじゃない。
そんな美麓を同じ馬車の荷台に載っている後天袋の部下たちが冷やかして笑いからかっていたが、それも数刻以上同じ状況が続けば飽きてきたのか、いまではすっかと美麓は放置されていた。
荷駄馬車の中には美麓を見張るという名目で四人の男がいるが、いま、起きているのは美麓の檻のすぐ隣にいる高白という若い男だけだ。
ほかの三人はもうすっかりと眠り込んでいる。
ほかには、この馬車を操る御者がひとりと御者台の後ろの座席に座っている後天袋、
そして、馬車の横を馬で進む後天袋の部下がふたり──。
合計八人であり、それが黄眉の屋敷に向かう一行の人数だ。
これに黄眉に引き渡す品物としての美麓が加わっている。
「ああっ……」
何十度目かの寸止めに続いて、再び激しい愉悦に吠えるような声をあげていた美麓は、またしても絶頂のぎりぎりでぴたりと動きをやめた触手に耐えがたい焦燥に見舞われてしまった。
「どうしたのさ、我慢できなくなったの、美麓?」
檻に身体を預けるように身体をもたれさせた
考えてみれば、この男のせいでもう少しで逃亡に成功するのを阻まれたのだ。
毒遣いの美麓と呼ばれている美麓だが、暗殺者としてそれなりの武芸の腕もあるし、棒であろうと剣であろうとある程度は人並み以上に遣える自信はあった。
その美麓が完全に子ども扱いだった。
逃亡しようとした美麓の前に立ちはだかったこの高白から棒を弾き飛ばされたのも、足を払われてひっくり返されたのも、それをされて初めて相手の棒の動きがわかったくらいだ。
こんなにも美麓を圧倒する武芸者などそういるものではないはずだ。
それにも関わらず、後天袋の三下にしか見えないこの若い男がそれほどの武芸の持ち主であり、それが美麓を捕らえる人数の中に加わっていたのは不幸なことだった。
しかし、運が悪かったでは済まされない。
このままでは、美麓はこの下種な男たちに連れられて、黄眉という殺人鬼の亜人に売られてしまう。
そして、人間の美女を剥製にするのが趣味だというその変態亜人に殺されるのだ。
なんとか逃亡しなければならない……。
だが、この貞操帯をさせたままでは……。
そして、こんな状況の陥ることになった直接の原因であるこの高白に対する激しい憎悪が湧き起こった。
「う、うるさいよ」
高白の神経に触る揶揄に、美麓は檻の中で悪態をついた。
もう身体はどろどろになっている。
溢れかえる程の愛液が貞操帯の縁から滲んで腿をつたって足の指にまで染みているほどだ。
もうすぐ、触手が動き出すはずだ。
また、触手が動き出すときの気持ちよさは、もう言葉にならないほどだ。
しかし、その触手にしばらくの間、激しい愉悦を与えられて全身を震わせた後は、突然にぴたりと動きを停止する触手に、大きな焦燥感と飢餓感を抱かなければならないに違いない。
つらい……。
寸止め責めなど初めて受けているが、こんなにもつらいものだとは思わなかった。
女の尊厳を奪いながら、少しずつ美麓の精神を削り取っていくような責めだ。
このまま、これを続けられては、たった一回の絶頂のためにすべてを投げ出してしまいたいような気持ちに追い詰められるような気がした。
「欲しいんでしょう、最後の刺激が……。そんなに、脚を擦り合わせて物欲しそうな顔するんじゃないわよ。見ているこっちが恥ずかしくなるわ」
高白がからかうように言った。
「う、うるさいわよ」
美麓は思わず怒鳴り返すとともに、そう言われて初めて、自分の脚がそんな風に動いているのを知った。
それで、つかの間耐えていたが、気がつくと、いつの間にか、また腰と腿を物欲しそうにもじつかせてしまっていた。
情けなくて泣きそうだ……。
「いいものをあげようか……。乳首を檻の外に出すように胸をこっちに向けなよ、美麓」
不意に高白が言った。
「はっ?」
突然の命令に美麓は訝しんだ。
「ひぎいいいっ──」
だが、次の瞬間に股間に激痛が走り美麓は文字通り檻の中で飛びあがった。
最初はなにが起こったのかわからなかったが、一瞬後には、股間に喰い込んでいる触手全体から電撃が走ったのだとわかった。
それは小さな電撃かもしれなかったが、直接股間に与えられる電撃は強烈だった。
電撃が止まった後でも美麓は、自分がしっかりと恐怖に包まれるのがわかった。
「な、なに……い、いまの……?」
美麓は戸惑いの声をあげた。
「早くしなさい。もう一度、お見舞いするわよ。今度はもっと電撃を強くしてもいいのよ、美麓」
高白が酷薄な声で言った。
それがなにを意味するのかわからなかったが、美麓は慌てて片方の胸を高白が身体を預けている側の檻に押しつけた。
その胸の乳首に高白が、さっとなにかをつけた。
きゅっと絞られるような感覚が乳首に走る。
「あっ……」
ひんやりとした刺激に思わず声をあげた。
しかし、すぐにその乳首でちりんちりんと音がした。
すると不意に乳首が震えはじめた。
「ははあっ……」
美麓の口から甘い声が迸る。
檻の格子を通して片側の乳首に付けられたのは吸盤付の鈴だった。
その鈴が鳴ることで美麓の乳首を包んでいる吸盤が震えだしたのだ。
そして、驚いた……。
この玩具に覚えがある……。
ちょっとした子供の玩具であり、性具としても使えるので面白半分で美麓は、それをある女の股間に装着して置き去りにした……。
これはそれと同じものだ……。
「これを見てよ、美麓……」
高白が自分の指にある指輪を見せた。
「な、なによ……?」
束の間の振動の後でやっと吸盤の振動が停止した。
その指輪がなんだというのだ。
「これは、『変化の指輪』という霊具であって、この帯を締めて誰かの体液を飲めば、その人間にそっくりの身体になるという霊具よ。あんたに教えてもらった後天袋の屋敷に忍び込んだときにこれがあったのよね……。それで咄嗟に身に着けたの」
高白が言った。
いや……。
さっきまでの男言葉ではない……。
声こそ男だが喋り方は若い女のような響きがある……。
つまり……。
美麓は思わず唾を飲み込んだ。
「わたしは沙那よ……。こっそりと忍び込んだ後天袋の屋敷に、たまたまいた若い男の姿をこうやって借りているだけよ……」
「さ、沙那──?」
思わず声をあげた。
しかし、その美麓を高白の姿をした沙那が睨んだ。
「声を出すんじゃないのよ、美麓……。ここでわたしが偽者であることをばらしたら、あんたの万が一の逃亡の見込みが零になるわよ。つまり、あんたの命をわたしが握っているということよ。それはわかったかしら? わかったら大きな声を出さすに黙っていなさい」
「な、なんで……?」
美麓は混乱した。
この高白は、沙那が霊具の力で変化した姿だという。
すると美麓の捕縛のとどめを刺したのはこの高白という三下の姿を借りた沙那だということだ。
そう言えば、後天袋は美麓を女だという情報をもたらしたのが、この高白だということを仄めかしていかなかっただろうか……?
では、美麓を後天袋に売ったのは沙那なのか……。
美麓は唖然とした。
「心配しなくても、あんたは助けるつもりよ。ただし、あんたが、ご主人様たちを救出することに協力したらね……」
高白の姿の沙那が言った。
しかし……。
「……ただ、その前に朝のお礼をしておくわ……。朝はよくもあんな仕掛けをしてから置き去りにしてくれたわね、美麓。股間にこんな霊具を取り付けて寝台に縛りつけていくなんてね……」
沙那が化けている高白の顔が、美麓が入れられている檻に寄せられて、にんまりと微笑んだ。
「やられたら、やり返す……。それがわたしの主義よ。しかも倍返しでね……」
沙那が手元からなにかの板を出した。
その板の模様に沙那の指が触れた。
「あふううっ……あはあああっ……」
突然にこれまででもっとも激しい動きで触手が動き出した。美麓を寸止めさせようという静かな動きではない。はっきりと絶頂をさせようという大きな動きだ。
そして、美麓がのたうつことで乳首の鈴が鳴り、吸盤もまた振動を始める。
「……悶えるのをやめて鈴が鳴るのを止めてご覧なさい、美麓……。そうしたら、檻から出してあげるわよ」
美麓はそんな冷ややかな沙那の言葉を聞きながら、激しい触手とそれに連動するように振動する乳首に吸盤から与えられる刺激に、いつまでも身体を暴れさせた。
そして、美麓の耳にちりんちりんという乳首に付けられた小さな鈴の音が、耐えることなく響き続けた。
「きょ、協力するから──。だから、とめてぇ──」
美麓は声をあげた。