※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

404 / 819
404 女主人の理不尽な命令

「じゃあ、香蛾(こうが)、両手を頭の後ろに置いて身体を見せな」

 

 宝玄仙が言った。

 

「は、はい……」

 

 香蛾はそう言ったものの身体がぐったりとしてすぐに動くことができなかった。

 宝玄仙が部屋の中に出現させた『箱湯』と呼んだ四角い湯の塊りの中で、全身を洗われて香蛾の身体はこれ以上ないというくらいに火照っていた。

 それこそ、宝玄仙、沙那、孫空女は洗い粉を自分たちの手に載せて隅々まで直接に手を洗ったのだ。

 多分、何回か気をやったとも思う。

 彼女たちの柔らかくて優しい手管は、完全に香蛾の官能を呼び起こしてしまった。

 

 そして、やっと湯から出ることを許されたときには、香蛾は気だるい感覚が全身を覆ってしまっていてすぐに反応することができなかった。

 『湯箱』は消滅したが、香蛾はぼうっとしていた。

 

 いま、宝玄仙から手をあげるように言われた気もするが、まだ頭が朦朧としてすぐには反応できないでいた。

 一方で、胸に置いている両腕の下の乳房がふっくらと品よく膨らんでいることをはじめとして、自分の身体が随分と変わっていることにも気がついた。

 痩せすぎて肉がなかった身体にしっかりと肉がついているし、なによりも全身の肌がとてもきれいで人形のようだった。

 本当にこれが自分の身体なのだろうか……?

 香蛾はびっくりしていた。

 

「ひぎっ」

 

 するといきなり、股間に激痛が走った。

 なにが起きたのかわからない。

 強い衝撃的な痛みが股間に迸ったのだ。

 

「手加減してもの凄く弱い電撃にしてやったけど、これがこいつらならこんなものじゃあ済まないよ、香蛾。わたしがなにか言ったら絶対服従だ。手をあげろと言われたら、手をあげる。四つん這いになれと言われたらすぐになるんだ。さもないと、道術でまた、電撃を送り込むよ」

 

 すでに宝玄仙は服を着終わっている。

 沙那と孫空女はまだ裸だが、そのふたりが宝玄仙の身体の周りで動き回って、布で宝玄仙の身体を拭き、衣類を身につけさせたのだ。

 いま、宝玄仙は香蛾に正面を向けて椅子に座り、背後から孫空女に宝玄仙の髪の毛を櫛ですかせて、布で髪の水気をとらせていた。

 

「で、電撃ですか……?」

 

 いまの激痛がそうなのだと思った。

 それにしてもあれが弱い電撃なのだろうか。随分と痛かったが……。

 とにかく香蛾は慌てて両手を頭の後ろにあげた。

 

「沙那、今日の主役は香蛾だからね。お前たちは服を着ていい……。ただし、それを着な」

 

 孫空女に髪をあたらせている宝玄仙が沙那に言った。

 沙那は、香蛾が立っている横の寝台に裸のまま腰掛けて手持ちぶたさにしていた。

 沙那と孫空女が宝玄仙に服を着せ終った後、沙那は宝玄仙から、お前は剣術はいいが、化粧や髪の手入れなどはいまいち下手だとか言われて宝玄仙から追い払われていたのだ。

 

 宝玄仙が沙那に着るように言ったのは、四人で湯箱に入る前に、宝玄仙自らが荷から出して寝台の上に丸めて投げた布の塊りのようだ。

 ぱっと見た感じでは、布片でしかなく、服のようには見えないが、どうやらそれを身につけろと言っているらしい。

 沙那も小首を傾げながらその布を手に取った。

 

「こ、これって……」

 

 立ちあがって布を拡げた沙那の顔が真っ赤になった。

 香蛾も驚いたが、服をいうよりは小さな前掛けだ。

 しかも、布がやたらに小さい。

 つまりは、それはただの大きめの手拭いとしかいいようがない。

 その手拭いに紐がついていて、それで首と腰を縛って身体につけるようになっている。

 しかし、あの布では、沙那の身体の前側は隠しても、背中側はまったく隠さない。

 

 沙那は小さな嘆息をすると、まず短い辺についている紐を首にかけた。

 そして、ちょうど腰の部分に当たる布の縦辺の横についている紐を背中に回してそれを後ろで結ぶ。

 

「な、なんですか、これ──?」

 

 沙那は呆れた声をあげた。

 それを身につけ終わった沙那が悲鳴のような声をあげた。

 沙那がまとった前掛けは、あまりにも沙那の身体に比べて小さくて、その一枚布は沙那の乳房の半分と股間までをかろうじて隠しているにすぎなかった。

 しかし、沙那の驚きの声はそれが理由ではない。

 

 確かにその布は服とも前掛けともいえないほど小さい。服というよりはただの布切れで、背後は腰の括れた部分に紐があるだけでまるで身体を隠していない。

 だが、沙那が驚くのも無理はない仕掛けがまだあったのだ。

 乳首に当たる部分に小さな丸い穴が開いていて、沙那の小さな乳首がぷっくりと布の外に突き出ている。

 裸よりも恥ずかしいその恰好に、香蛾も思わず顔が赤らんでしまった。

 

「よく似合うじゃないか、沙那……。じゃあ、食堂に行って、水差しをもらって来ておくれよ。これから香蛾の調教だからね。喉も乾くに違いないしね──」

 

 宝玄仙が何気ない口調で言った。

 その言葉で沙那の顔が傍目からわかるくらいに蒼くなった。

 

「ま、まさかこの格好で行けと……? う、嘘ですよね、ご主人様」

 

 沙那が引きつったような表情で言った。

 その眼は大きく見開いている。

 

「靴は履いていいよ。裸足じゃあ、脚が汚れるだろうからね……」

 

 宝玄仙の顔に酷薄そうな笑みが浮かんだ。

 香蛾はぞっとした。

 沙那の眼が大きく見開いたまま、左右に首が降られた。

 その顔には恐怖そのものが浮かんでいる。

 

「なに突っ立っているんだい、沙那。早く行かないかい」

 

「ほ、本気じゃないですよね……。こ、こんな格好で……」

 

 沙那の両手は小さすぎる前掛けをぎゅっと押さえている。

 香蛾にも沙那の驚愕と恐怖の感情がひしひしと伝わってくる。

 

「はがああっ──」

 

 次の瞬間、沙那が絶叫してその場に崩れ落ちた。

 そして、床の上に転がって、文字通りのたうち回った。

 その怖ろしい悲鳴と沙那の苦しみように、香蛾はびっくりした。

 

 驚きのあまり、香蛾は視線を床の上で転がり回る沙那の身体から孫空女に移した。

 この沙那のもがき苦しみが、宝玄仙の道術に原因があるのは明らかだ。

 それで孫空女がなにか宝玄仙を諌めるようなことを言わないのかと思ったのだ。

 

 しかし、孫空女の表情にも恐怖と驚愕が映ったものの、孫空女はすぐにはっとしたように、その沙那から眼を逸らせた。

 そして、そのまま苦しむ沙那を見ないようにして、一心不乱に宝玄仙の髪を乾かす作業に戻った。

 それがこの一行の不文律なのか、宝玄仙の理不尽な沙那への命令や仕打ちに対して、孫空女は一切たしなめる気はなさそうだ。

 

 その絶対的な服従の関係に香蛾は圧倒されていた。

 香蛾も奴婢として、生まれたときから奴隷だったが、香蛾の主人だった死んだ老人はあんなふうに奴婢を扱わなかったのだ。

 確かに自由はなく、鞭で打たれたりすることもあったが、それは理由があるからであり、故郷の国では理不尽に奴婢を痛めつけたり、殺したりすることは法で禁止されていた。

 やがて、やっと沙那の苦悶の踊りが終わった。

 全身にびっしょりと汗をかいている沙那が脚をふらふらさせながら立ちあがった。

 

「同じことを何度もやらないと、命令に従うつもりにならないのかい、沙那? さっさと下に行って水差しを取って来るんだよ。いまどきの時間じゃあ、宿の主人くらいしかいやしないよ。誰かが冷やかしで襲って来てもお前なら、軽くあしらえるだろう──。ほら、行っておいで──。それとも、まだ二、三回いまの電撃を浴びないとその気にならないかい?」

 

「い、行きます……」

 

 沙那は悲痛な顔で言った。

 その息はまだ荒く、その手は片手で剝き出しの乳首を隠し、もうひとつの手はしっかりと股間を布の上から押さえている。

 布はあまりにも短くて、沙那の股間の付け根のほんの下の部分までしかない。

 あれでは、ほとんど全裸で部屋の外に行けと言っていると同じだ。

 

 あまりにも可哀そうな沙那への命令に、香蛾は自分の顔がさらに蒼くなるのを感じた。

 沙那が諦めたように意気消沈して、戸を開けて部屋の外に出て行く。

 

「さて、お前だよ、香蛾……。お前には、その身体と顔をあげた代償として、この宝玄仙の調教を受けてもらう……。わたしの調教を受けるということは、ああいうことだよ。どんな理不尽な命令にも逆らえないんだ。逆らってもいいけど、命令に従うまで、耐えられない苦痛が与えられるだけさ。わかったかい……?」

 

「は、はい」

 

 香蛾は頭の後ろの両手にぐっと力を入れながら頷いた。

 さっき裸同然の格好で外に行かされた可哀想な沙那の姿が思い浮かぶ。

 香蛾の全身は宝玄仙に対する純粋な恐怖が沸き起こっていた。

 とても親切で優しい人だと思っていた香蛾の宝玄仙に対する感情がどんどん彼女への畏怖に変化していく。

 

 この人は本当はどんな人なのだろうか……。

 もしかしたら、自分は心を許してはならない人に、魂を売り渡してしまったのではないだろうか……?

 

「はぐっ──」

 

 次の瞬間、さっき股間に受けた痛みに似たものが香蛾の尻たぶを襲った。

 これも電撃だろう。

 思わず身体をうずくまらせた香蛾の背中をまた電撃が襲った。

 慌てて身体をまっすぐにする。電撃で焼けるような感触が肌から全身に走り、ますます宝玄仙に対する怖さが香蛾に突き刺さる。

 さっきの沙那ののたうち回りようから考えると、香蛾への電撃は確かに手加減をされているのだろう。

 しかし、生まれて初めての道術による電撃の鞭に、香蛾に心の底からの怯えが生まれる。

 

「これが宝玄仙の奴隷の痛みだよ。覚えておきな。わかったら、まずは宝玄仙の奴隷になって調教を受けると誓うんだ」

 

「ほ、宝玄仙様の奴隷になって……、調教を受けます……。そ、それに、言いつけに従います……。こ、この身体をくださってありがとうございます……」

 

 香蛾は言った。

 

「上出来だよ、香蛾」

 

 宝玄仙の顔がにっこりと微笑んだ。

 しかし、香蛾にはその微笑みに恐怖以外のものを感じることができないでいた……。

 なんて怖い微笑みだろう。

 

「それにしても、お前、実は痛いのが好きだろう……?」

 

 突然、宝玄仙が含み笑いをして言った。

 

「い、痛いのは嫌いです──」

 

 思わず言った。

 するとまたさっきの痛みが尻たぶに走った。

 少しだけ、電撃の強さが増した気がした。

 

「嘘をつくんじゃないよ。そんなに乳首を勃たせてなにを言ってるんだい。ほらっ、これだよ──」

 

「はがっ」

 

 乳首に指で弾かれるような小さな痛みが走った。

 これも道術に違いない。

 香蛾は思わず身体を胸を押さえそうになり、慌てて自重した。

 

「はら、ちゃんと乳首が勃っているじゃないか。痛くて感じる変態じゃなければ、道術の電撃で乳首を勃たせたりしないんだよ。ほら、認めな。たまたま拾った娘が叩かれて悦ぶ変態とは驚いたけど、お前は変態だよ」

 

「あ、あたし、変態なんですか……?」

 

 香蛾は、泣きそうな声で言った。

 宝玄仙の言った通りにふと見ると香蛾の乳首はしっかりと勃っている。

 

「自分が変態だと繰り返しな」

 

 宝玄仙が言った。

 

「あ、あたしは変態です……」

 

「もう一度」

 

「あたしは変態です」

 

「もう一度」

 

「あたしは変態です」

 

「もっと大きな声だよ──」

 

「あ、あたしは変態です──」

 

「もう一度」

 

「あたしは変態です──」

 

「もう一度」

 

 何十回も繰り返し言わされた。

 そのうち、なぜか香蛾の身体は熱くなり、びっしょりと汗をかいていた。

 緊張のせいか喉は乾くし、全身によくわからない疼きのようなものも走っていた。

 これはなんなのだろうか……?

 宝玄仙の言う通りに自分は変態なのだろうか。

 

「脚を拡げな」

 

 宝玄仙が言った。

 そして、尻に痛みが走る。

 香蛾は慌てて脚を開く。

 しかし、内腿に電撃の痛みが襲った。

 

「もっとだよ。そんな可愛らしい脚の開きじゃない。膝を左右に割るように開くんだ。がに股だよ。宝玄仙の奴隷は脚を拡げろと言われたらそうやるんだ──。そうだろう、孫空女?」

 

「えっ、う、うん……?」

 

 突然話を振られた孫空女が戸惑ったような声をあげた。

 

「この新米奴隷に見本を見せな」

 

 孫空女は一瞬、表情を変えたが、慌てて櫛と布を横の寝台の上に置いて香蛾の前に出た。

 孫空女はまだ全裸だったが、その両脚をがばりと開いて、さらに両膝を割るように腰を屈めた。

 

「ほらっ、こうだよ、香蛾──。この格好になりな」

 

 そう言った宝玄仙が立ちあがって、孫空女の背後に立った。香蛾は宝玄仙が動くことでなぜか圧倒された気分になった。

 急いで孫空女と同じ姿勢になってがに股になる。

 

「その格好になったら、次は許されるまでそのままだ──。この孫空女を見な、香蛾。これが見本さ。この孫空女はどんなことをされても、命令がない限り、この姿勢を崩さないよ」

 

 宝玄仙が笑いながら、孫空女の背中側から股間にすっと手を伸ばした。

 

「なっ……、なにさ……、あっ、あっ……や、やめてよ……、ご、ご主人様」

 

 孫空女が真っ赤な顔になって身体をくねらせ出した。孫空女の正面に立っている香蛾の位置からはよく見えないが、宝玄仙が孫空女の股間を背後から触っているのは明らかだ。

 孫空女の全身はあっという間に真っ赤になり、全身から汗のようなものが浮き出した。

 その表情には官能の色が浮かび、口から甘い息を出し始める。

 すると宝玄仙の顔はますます興に乗った感じになり、孫空女の無防備な股間を激しく動かしだす。

 すぐに香蛾にもはっきりと聞こえるような淫らな水音が孫空女の股間から聞こえ出す。

 香蛾はこの淫靡な光景に眼を奪われていた。

 

「ご、ご主人様……、だ、駄目っ……。そ、そこは……お、お尻は堪忍……、ご、ご主人様、お尻は堪忍して──ああっ、や、やだっ、あっ──」

 

 孫空女の膝ががくがくと揺れ始める。

 

「ほら、見本だからね。姿勢を崩すんじゃないよ。もしも姿勢を崩せば罰だからね」

 

 宝玄仙はますます愉しそうな表情になっている。

 もう、宝玄仙の指が孫空女の肛門を弄くっているのは明らかだ。

 しかも、指を深く肛門に入れているのではないのだろうか。

 そして、それまで片手だった孫空女の股間を責める宝玄仙の手が両手になった。

 孫空女はそれを避けるでもなく、手で払い除けるわけでもなく、懸命に歯を食いしばってそれに耐えようとしている。

 もう孫空女が切羽詰った状態でいるのは明らかだ。

 

「はああっ──、い、いくよおっ──」

 

 孫空女の身体ががくがくと揺れた。

 そして、大きく身体を仰け反らすと不安定な姿勢に耐えられなくなったのか、がっくりと膝をその場に割ってしゃがみ込んだ。

 

「ふぎいいいっ──」

 

 次の瞬間、孫空女の口からけたたましい悲鳴が湧き起こった。

 さっきの沙那のように全身を両手で抱いて床にのたうち回っている。

 

「わかったかい、香蛾──。どんなに理不尽な仕打ちをされようとも、命令に逆らえばこうなる。よく見ておきな。これが命令に従うことができなかった宝玄仙の奴隷の姿さ」

 

 宝玄仙が冷ややかな視線で孫空女を見下ろしている。

 その視線の下で孫空女が絶叫して身体を床で転がり回っている。孫空女は必死になって、許してくれと叫んでいた。

 

「や、やめてあげてください──」

 

 その時間があまりにも長いので、香蛾は思わず叫んだ。

 その瞬間、孫空女の苦悶の悲鳴は終わり、がっくりと脱力した。

 しかし、孫空女はすぐには動けないようだった。

 ふと見ると視線がおかしい。

 半分気を失っているような感じだ。

 余程の苦しみだったのだろう。

 香蛾にさっき与えられた電撃など、これに比べれば本当に手加減されているというのはよくわかった。

 

「ご、ご主人様、帰りました。入れてください──。は、早く──」

 

 切羽詰ったような声が戸の外から聞こえた。

 沙那の声だ。

 

「さて、じゃあ、お前の股間を見せてごらん」

 

 宝玄仙がすっと香蛾の股間に指を伸ばした。

 

「はあっ」

 

 宝玄仙の手が香蛾の股間に触れたとき、まるで稲妻に打たれたかのような衝撃が香蛾を襲った。

 全身が脱力して立っていられない程だ。

 しかし、すぐに宝玄仙の指は香蛾の股間から離れた。

 

 宝玄仙がその指を香蛾の顔の前にかざした。

 指と指の間にねっとりとした粘着性のある液体がついている。

 

「なにもしないのに、お前の股ぐらはこれだけ濡れるんだよ。自分がそんな性癖を持っているのがわかったかい──? 飛んだ拾い物だったけど、お前は誰かの性奴隷にならなければ満足できないような変態だよ。それにしても驚いたねえ……。たまたま、拾った娘がそんな性癖とはねえ」

 

 そして、なにがおかしいのか、宝玄仙はしばらくそのまま笑い転げていた。

 その間、部屋の外からは沙那の哀願がずっと続いていた。

 やがて、宝玄仙がやっと道術で沙那が部屋に入るのを許したのか、廊下に通じる扉がばたりと開いた。

 水差しを胸に抱えた沙那が脱兎の如く飛び込んでくる。

 

「ご、ご主人様、ひ、酷いです──」

 

 沙那が抗議の声をあげている。

 

「宿の主人はお前のその格好を見て、なにか言っていたかい、沙那?」

 

「び、びっくりしてましたよ……。も、もう、ご主人様──」

 

 沙那の顔はまだ真っ赤だ。

 まだ異常に興奮しているのは確かだ。

 宝玄仙はまた、声をあげて笑った。

 

「ははは……。それでお前はなにか言ったのかい?」

 

「わたしは、奴隷女でご主人様の調教でこんなことさせられているのだと答えました。お願いですから外でなぶるのは堪忍してください」

 

 沙那はそう言って、水差しを部屋の奥に置きにいった。

 

「だけど興奮したろう、沙那?」

 

 宝玄仙がその沙那に含み笑いをしながら言った。

 

「そ、そんなこと……」

 

 沙那が心外だというような表情を顔に浮かべた。

 

「そうかい? なら、点検するよ。お前の股にいまから触るからね……。もしも、恥ずかしいことをされて、股ぐらを濡らしたりしていなければ、今日のお前への嗜虐はなしにしてやろう。だけど、もしも、濡れていたりしたら……。そうだね、今度はその格好で宿の外にも行ってもらうからね」

 

「わっ、わあっ──。み、認めます。わ、わたし、恥ずかしいことをさせられて股を濡らしちゃいました──だ、だから、もう堪忍してくたさい──」

 

 沙那がやけくそのように叫んだ。

 真面目そうな沙那の告白に香蛾はびっくりしてしまった。

 

「ほらね、香蛾、これでわかったろう? こんな、真面目そうな沙那でもひと皮剥けば、こんな変態なんだ。苛められて感じるような変態だって恥ずかしくはないのさ……。ところで、いつまで呆けてるんだい、孫空女──。お前にも沙那と同じ前掛けがあるだろう。さっき、言い付けに従えなかった罰として、それを着て宿の前で立ってな。朱姫には、いま香蛾に着せるまともな服を買いに行かせている。朱姫が戻るまで宿の外に立ってるんだ」

 

「そ、そんな、堪忍してよ。あんな格好──」

 

 床にしゃがんだままだった孫空女が、沙那の姿に一度眼をやり、顔色を変えて悲痛な声をあげた。

 香蛾も驚愕した。

 今度は食堂に行って戻るだけじやなく、外にしばらく立っていろという宝玄仙の命令だ。

 なんだか宝玄仙の命令はどんどん理不尽さが増しているような気がする。

 

「早く着な。裸がいいならそのままでいいけどね……。もうすぐ、『移動術』で宿屋の外に跳躍させるよ。そしたら、朱姫の姿をお前の眼が認めるまで、なぜか足が地面から離れなくなるからね」

 

 宝玄仙が愉しそうに言った。

 

「そ、そんな、酷いよ──」

 

 孫空女は叫んだが、それでも素早く寝台に残っていた前掛けをとると、それを身につけた。

 しかし、沙那に比べて首ひとつ背が高い孫空女には、その前掛けが短すぎて、乳首の上まで布をあげると、完全に股間が露出してしまい剥き出しになっていた。

 それで孫空女は焦った仕草で懸命に首にかける紐の長さを調整してなんとか、ぎりぎり股間が隠れるくらいに前掛けをさげた。

 その結果、孫空女のふたつの乳房は完全に布の外に露出した。

 

「いい格好じゃないかい、孫空女──。じゃあ、お前には乳首の穴あきの代わりに、これを書いてやるよ」

 

 宝玄仙が手を叩いて笑いながら言った。

 すると、真っ白だった孫空女の前掛けの表面に文字のようなものが浮き出た。

 

「な、なに書いたのさ、ご主人様?」

 

 それを見た孫空女が悲鳴のような声をあげた。

 

「沙那、読んでやりな」

 

 宝玄仙が言った。

 

「……“私はここに泊まっている女主人の性奴隷です。ご自由にご覧ください”……。そ、そう書いてあるわ、孫空女……」

 

 沙那が顔を引きつらせたまま言った。

 

「そ、そんな、ご主人様。こ、こんな悪ふざけやめてよ──」

 

 孫空女が叫んだ。

 

「なに、ちょっかい出されそうになったら、構うことはないから『如意棒』で蹴散らしてやりな。脚は動かないけど、手は自由なんだ。せいぜいその格好を見物されてくるんだ」

 

 宝玄仙は言った。

 すると、いきなり孫空女の姿がその場から消滅した。

 きっと、『移動術』とかいう道術で宿の入り口に跳躍させられたのだろう。

 部屋が静まり返った。

 香蛾もあまりの衝撃で口を開けなかったが、その横の沙那はもっと悲痛な顔をしていた。

 

「沙那」

 

「は、はい、ご主人様」

 

 沙那はすっかりと宝玄仙にのまれているようだった。

 沙那の緊張が香蛾にも伝わってくる。

 

「この浣腸器の液体を香蛾の尻に一滴残らず注ぎな……」

 

 宝玄仙が沙那になにかを放った。

 なにかの細長い管のようなもので中には液体が入っているようだ。

 浣腸器というものがなにかわからないが、沙那のびっくりした表情からは相当のものであることが予想された。

 

「……ひと言でもなにか拒否すれば、この浣腸液がお前の尻に道術で注がれて、道術で孫空女の隣に立つことになるよ……。でも、それも面白いかねえ……。朱姫が戻るまで我慢すればいいだけだしね──。うん、そうだね。やっぱりやめたよ。お前は香蛾の調教に参加しなくていい。その代わり、お前も孫空女の隣で立ってな。あいつもひとりじゃあ寂しいだろう」

 

「そ、そんなあ……。や、やります。調教をやらせてください、ご主人様。頑張りますから──」

 

「うるさいねえ、気が変わったんだよ──。浣腸液を尻でたっぷりと飲んで孫空女の横に立ってな。漏らして宿屋の前を汚すんじゃないよ」

 

 宝玄仙は笑った。

 沙那は悲痛な声をあげながら、ふっと姿を消した。

 

「ははは、面白かったねえ。後で様子を見に行こうか、香蛾……。多分、朱姫はまだ半刻(約三十分)は戻らないよ。まあ、だけど、あいつらもかなりの猛者だからね。滅多なことじゃあ、誰にもなにもさせはしないさ──」

 

 宝玄仙は笑った。

 

「あ、あんな、酷いこと……。あ、あたしを美人にしてくれたり……。それなのに、いまみたいな酷いことをしたり……。宝玄仙様は悪い人なんですか? それとも、いい人なんですか……?」

 

 香蛾は思わず言ってしまった。

 そして、自分の口から出たその言葉にはっとした。

 こんな怖い人に、なんて自分は無遠慮なことを言ってしまったのだろう……。

 

 ても、宝玄仙には気を悪くした感じはなかった。

 むしろ、その言葉に興を覚えたようににっこりと笑った。

 

「お前はどっちだと思う?」

 

 そして、宝玄仙の手が再び香蛾の無防備な股間にすっと伸びてきた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。