407 婚約者の前で
兵たちが騒いでいた。
宴が始まるからだ。
ここは、盗賊団の首脳部用の集会所だが、建物が砦の広場に面していて、外の声がよく聞こえる。
兵たちの喧騒には女たちの悲鳴も混じっているから、酒の支度とともに早速、兵たちは性処理用の女たちを輪姦しだしたに違いない。
頭領の
この集会所でも、すでに酒盛りは始まっている。
そこに外から鍋で作った料理が小鍋に入れて運ばれてきた。
その小鍋から取り分けた料理が、さらに各人に椀で配られる。
「おう、道術遣い。待たせたな──。いまから、昨日の襲撃の成功の祝いの宴を始めるところだ。雷雲、お前にも酒を飲ませてやろう」
料理が運ばれたところでやっと権白狼は、部屋の中心に忘れられたように放置されている雷雲に視線を向けた。
昨日の襲撃で捕らえた道術遣いだ。
「……い、いらん」
捕らえた道術使いは、部屋の真ん中で両手を天井から伸びた鎖で手首を束ねられた手枷を吊られている。
両脚は床についているものの、打ち付けた杭に左右の足首に繋いだ足枷を繋げられている。
つまり、雷雲は両手を真っ直ぐに上にあげて、両脚を肩幅に開いた格好で拘束されているのだ。
この状態で、雷雲をほぼ一日放置させていた。
最初はかなり大声で怒鳴っては拘束された身体を暴れさせていたが、いまではかなり大人しくなっている。
昨日は久しぶりに大きな襲撃をした。
この道術遣いの雷雲を含む三十人ほどの護衛隊が含まれる百人ほどの隊商を襲ったのだ。
そして、成功した。
最初に伏兵で混乱させることができたのと、手強かった若い道術遣いの雷雲を気を失わせて無力化することに成功したのが大きかった。
かなりの熟練の護衛隊だったようだから、うまく待ち受けの罠に向こうが嵌ってくれなければ危なかったかもしれない。
こちらは総攻めの二百人の襲撃をして、被害は二十人ほどだった。
それに対して、隊商側は道術遣いを生け捕りにした以外は約三十人の護衛隊は全滅し、残りの七十人程の隊商は護衛隊が全滅すると降伏した。
積み荷はほぼ無傷で捕獲できた。
皆殺しにした護衛の死体は、その場に放逐したが、こちらの二十人の遺体はその場に埋葬した。
被害はあったが、得るものは得たのだ。
まあ、勝利と言っていいだろう。
だが、奇襲に成功して最初に護衛隊長を殺せたのに、思ったよりも被害が大きかったのは、あの若い雷雲という道術遣いの存在があったからだ。
こちらの犠牲はある意味、雷雲ひとりにやられたといっていい。
護衛隊は、奇襲により混乱しても、この雷雲を中心に態勢を取り直し反撃してきた。
雷雲は、単に霊具を活用した攻撃道術で対抗していただけでなく、最初の奇襲で指揮官を失い、混乱しかけていた護衛隊を巧みに指図してもいたのだ。
しかし、その雷雲が毒薬で気絶してしまったことですべてか終わった。
雷雲が倒れると、護衛隊は再び秩序を失ってばらばらになった。
あとはひとりひとり取り囲み各個に掃討しただけだ。
皆殺しである。
ただし、こちらを手こずらせた雷雲だけは残した。あれだけの犠牲を強いた男を簡単に死なせるつもりはない。
たっぷりといたぶってから処分しようと思っていた。
ただのいたぶりではない。
男としての尊厳をずたずたにして、屈辱と恥辱にまみれてから死なそうと思っている。
そのため、首に自殺防止用の首輪の霊具を嵌めさせている。
それを嵌めていると、自殺をしようとすると身体の自由がなくなり、自殺できなくなるのだ。
もともと奴隷の自殺防止のための霊具で、霊気のない者にも扱える簡単なものだ。
荷には油、綿、絹などの貴重な交易品のほか、大量の銀も含まれていた。
交易の戻りには向こうでなにかを仕入れるつもりだったのかもしれない。
それで三十人という大きな護衛隊が一緒だったのだ。
それをこれほどの少ない被害で手に入れることができたというのは運がいいことだった。
銀はすべて兵にすべて配分した。
ここで惜しんではならないのだ。
吝嗇の賊徒の頭領など誰もついてこない。
奪ったものを惜しげもなく手下に渡す。
そういった器を示すことで、気前のいい頭領として権白狼に対する忠誠を繋ぎとめることができるのだ。
それに、奪った銀など兵に分け与えても惜しくはない。
それ以上に儲けたものがあったからだ。
七十人ほどの隊商たちそのものだ。
たまたま奴隷商が砦にやってきていて、使えない十人ほどの老人を除いてすべて買い取ってくれた。
兵たちの慰み用として若い女を五人ほど残したが、そのほかはすべて売り払った。
かなりの代価になった。
権白狼は満足した。
これで当面は今回のような危ない仕事をしなくてもいい。
隊商を襲った場所の近くにあったあの町や、あるいは近傍の村からあがる上納だけで部下を養っていけるだろう。
いずれにしても、今日は宴と決めた。
宴のための準備は終わった。
新しく増やした性処理用の女五人と以前から飼っている十人ほどの女もすべて出した。
ほかにも柵で飼っている猪を二頭、酒甕も解放した。
大きな鍋がふたつ準備されて早速にも解体された猪の肉や野菜、茸や木の実などが煮られているはずだ。
士気はいやがうえにも盛りあがっているだろう。
「宴は半日だ、
「わかりました、頭領」
陶旺は酒の入った椀を口に運びながら頷いた。
権白狼や陶旺を含めた十人ほどの将校格は、兵たちのように砦の広場ではなく、広場に立てられているこの建物の中に集まっている。
ここは重要な話し合いを行う集会場所でもあるが、こうやって酒盛りをする場所でもある。
権白狼はここで、この雷雲を使ってちょっとした余興をするつもりだ。雷雲に対する腹いせの意味もある。
「遠慮するな、雷雲。この酒は俺からの贈り物だ。普通は女を調教するために使うのたが、俺の部下を大勢殺した道術遣い殿には特別に飲ませてやる」
権白狼は眼の前にあった酒瓶を寄せると、手元にある粉薬を三つ、四つと入れていく。
入れているのは強烈な興奮剤だ。
馬を種付けするときに使う薬剤だが人間にも効く。部下たちは権白狼がなにをしようとしているをわかっているから、にやにやしている。
だが、雷雲には判らない。眼が見えていないのだ。
その眼はしっかりと閉じていて、悔し涙のように乾いた血の流れがついている。
権白狼は、雷雲をここに捕らえたとき、まだ意識が戻るに前に雷雲の眼を針で潰させていた。
多くの道術遣いは眼を霊気の根源にする者が多いということは聞いたことがあった。
そして、やはりこの雷雲の道術遣いとしての根源も眼だった。
それはすでに殺した護衛のひとりを拷問することで白状させた。
もしも、この道術遣いの霊気の根源がわからなければ、権白狼は雷雲の意識が戻る前に殺していただろう。
しかし、たまたま護衛のひとりが雷雲の道術遣いとしての致命傷の部位を知っていた。
それも、雷雲を殺さなかった理由のひとつだ。
霊気を失った道術遣いなど全く怖くない。
だから生かしてたままここに連れてきた。
「な、なにをするつもりだ」
視力のない雷雲は狼狽えた声をあげている。
雷雲は矢毒で気を失ったまま、この砦につれてきてすぐにこの格好にしている。
だから、気がついたら視力を失い、こうやってこの建物の真ん中に立勢で拘束されていたというかたちだ。
さんざんに喚くから、ここが盗賊の砦であり、自分が頭領の権白狼であることくらいは教えてやったが、それ以外は自分のそばで語られる権白狼たちの会話で認識するしかない。
ある程度はなにがあったかわかっていると思うが、それでも、まだわけもわからないに違いない。
道術遣いかなにか知らないが、まだ歳は二十代の半ばだろう。
その若さで護衛の中心になっていたのはそれなりの実力なのだろうが、まあ、運がなかったのだ。
「それよりも、仲間たちがどうなったか知りたくはないか、雷雲? そろそろ教えてやってもいいぞ」
薬剤が酒に完全に混ざるのを待つ間の時間潰しといて権白狼はそう言った。
「な、仲間たちをどうした……?」
雷雲が眼の閉じられた顔をこっちに向けた。
「お前の護衛隊の仲間は、お前を除いてすべてあの場で皆殺しにした。お前らのような未熟な護衛隊を雇ってしまった隊商の商人たちは片っ端から奴隷商人に売り飛ばした。どうしても売り物にならなかった老人たちは全員殺した。わかったか──」
権白狼は哄笑した。
「こ、殺して……。売り飛ばした? な、なんということをするのだ、貴様──。ゆ、許さんぞ」
「許さなければどうするのだ、道術遣い? だったら道術を遣ってその拘束を外してかかって来い──。どうした、ほらっ……。お前と一緒だった隊商は商人も護衛も全滅だ。それをやったのは、この南非に巣食う盗賊団の頭領のこの権白狼だ。死ぬまでの短い時間、覚えておけ」
「ち、畜生──。お、お前らを殺してやる。ご、権白狼だな……。覚えておくぞ。絶対にな──」
雷雲が喚いた。
「だったら早くした方がいいぞ。お前はもうすぐ死ぬのだからな。ほらっ、道術を遣ってみろ……。丸ひと晩も放置してやったのに、道術遣いのくせに脱出もできんのだろう……」
権白狼は笑った。
すると雷雲が本当に悔しそうな表情をした。
ふと見ると、薬剤が完全に反応し終わり、白色の酒がすっかりと桃色に変色している。
権白狼は端にいる
秀が立ちあがって、権白狼が準備した酒の瓶を受け取る。
それを持って立姿で拘束されている雷雲に近づいていく。
「い、いらんと言ってるだろう」
秀が近づく気配に、雷雲が真っ赤な顔をして叫んだ。
「まあ遠慮をするな。これからのことは、酒でも飲まなければ耐えられんぞ」
権白狼は笑った。
椀を持った部下が雷雲が両手を吊られて拘束されている雷雲に近づく。
雷雲が悪態をつきながら首を横に激しく振る。
それを見たほかの部下もふたりほど立ちあがった。
首を振って抵抗する雷雲の顔を両側から抑え込む。
「ん、んんんっ──」
雷雲が必死の形相で口を閉じる。
だが、秀が笑いながらが片手で雷雲の鼻を摘まんだ。
雷雲の顔がみるみる赤くなっていく。
「ぱはっ──」
ついに雷雲の大きな口が開いた。
すかさず秀が雷雲の口に瓶を突き挿す。
「おう、たっぷりと飲め──」
権白狼は自分の手元の酒を飲みながら笑った。
秀は喉の奥に瓶を突っ込む。
かなりの興奮剤入りの酒が雷雲に流し込まれた。
やっと秀が酒瓶を外す。
「げほっ、はがっ……」
結局のところかなりの酒を飲んだようだ。
三人の部下が戻ってくる。
「おい、合図をしたら連れてこさせろ、陶旺……」
権白狼は横の副将にささやいた。
「準備はしてありますが、頭領も悪趣味ですね……。あっさりと殺してやればいいのでは?……」
陶旺は苦笑した。
「なに、余興だ……。それに俺は色男も嫌いではなくてな。女もいいが若い男もいい……。ああいう若い男の尻をほじるのもいいぞ。お前もやらんか、陶旺?」
権白狼は笑って応じた。
「遠慮しときます。俺は女専門ですから……」
陶旺が笑った。
しばらく待つと雷雲の身体に変化が生じてきた。
全身から汗が噴き出している。
顔は真っ赤に充血し大量の汗も噴き出てきた。
なによりも、股間が大きく膨れている。
下袴の中で男根がこれ以上ないというほどに勃起しているのだ。
「どうした、道術遣い? 一物を大きくしているが俺たちを相手に欲情したか? この砦には男の相手ができる者も結構いる……。なんだったら、俺が相手をしてもいいぞ。お前もかなりの色男だしな。お前のようなやさ男の尻を犯すのも、若い女を犯すのと同じような愉しみがあるというものだ」
権白狼は笑った。
「き、貴様……、さ、さっき飲ませたのは……た、ただの酒じゃないな──」
雷雲が叫んだ。
「ただの酒だ……。さて、では準備がすっかりと整ったところで余興でも始めるか……。ところで、雷雲──。俺はさっき、商人は奴隷にして売り飛ばしたと言ったが、実は五人ほど残した者がいる。それは売り飛ばさん。この砦に残す。俺たちの性処理用として飼うつもりだ。商人の中に全部で五人の若い女がいたな。それはまだ、砦に残っている」
権白狼は言った。
「な、なに?」
雷雲がぴくりと反応した。
「その中で飛びきりの美女がいたな……。お前たちの雇い主の娘とかいう
「す、水晶殿を……。ま、まさか──。そんな」
雷雲が声をあげた。
「水晶殿か……。聞けばお前と婚約をしているそうだな。今回の隊商の仕事が終われば祝言をあげるつもりだったとか……。売り飛ばした商人のひとりがそう口にしていたな。これから、死ぬ身では遺していく婚約者の行く末が気にかかるだろう? だが、安心しろ。ここで性処理用の女として飼ってやる。たから、安心して死ぬがいいぞ」
権白狼は笑った。
「な、なにを考えているのだ、権白狼──。水晶殿には手を出すな……。い、いや、出さないでくれ。頼む。なんでもする……。まだ、生きているなら彼女は助けてやってくれ──」
雷雲が必死の顔で叫んだ。
「もちろん助けてやるさ。俺の専用の女として飽きるまでは使ってやる。飽きれば兵たち用に回す。兵たち全員の性便所ということになれば、だいたい数箇月で使いものにならなくなるが、俺が飽きない間は生き残れるということだ」
「き、貴様──」
雷雲が吠えた。
興奮した様子の雷雲の姿を認めると、権白狼は合図をした。
再び秀が雷雲に近づいていく。
そして、雷雲の下袴に手をかけた。
「な、なにをするのだ──。や、やめんか──」
雷雲が悲鳴のような声をあげて暴れ出した。
しかし、拘束されている身ではなんの抵抗もできない。
あっという間に雷雲の下袴と下着は足首まで下げられて、大きく勃起した肉棒が剝き出しにされた。
十人の仲間が一斉に哄笑した。
「おい、連れて来い」
権白狼は言った。すると横の陶旺が合図をした。
建物の外から、ふたりの兵に後手縛りの縄尻を取られた水晶が入ってきた。
まだ服は着せたままだが、集会所の外で待たされている間に、自分と同じように捕らえた女たちが、兵たちに次々に輪姦されるのを見せられたはずだ。
この女だけは手を出すなと命じているから、水晶だけはなんにもされていないが、それで自分の運命をもう悟っただろう。
うな垂れて歩いてくる水晶の顔は真っ蒼で、身体は小刻みに震えている。
「あっ、雷雲殿──」
水晶が突然叫んだ。
部屋の真ん中で哀れな姿になっている雷雲を認めたのだろう。
そして、剥き出しにされたその股間に気がつき、はっとしたように眼を背けた。
「水晶、そう嫌わんでもよかろう。仮にも婚約者の一物であろう……。よくわからんが、ああやって拘束してやったら、なぜかそなたの婚約者殿は一物を大きくなさるのだ。我々としても、どうしてよいかわからずとりあえず剥き出しにしてやったのだが、これからどうやったら、そなたの婚約者殿は満足されるのか教えてはくれんか? 尻をほじればよいのか? それとも、幹を擦ればいいのであろうか?」
権白狼の芝居がかった物言いに、部下たちが一斉に哄笑した。
「す、水晶殿か──。水晶殿なのだな──。すまない……。こんなことになって。すべて、俺の未熟のせいだ。すまん──」
雷雲の眼から涙が流れ出した。
渇いた血の痕がその涙に濡れて流れだしていく。
「ああ、ら、雷雲殿──」
水晶の悲鳴が口から洩れた。
そして、閉じられたままの雷雲の両眼に気がついてはっとした表情になった。
「ら、雷雲殿……。ま、まさか眼が……。そ、そんな……。眼が──。ああ、なんとしたことを……。ら、雷雲殿になにをしたのです。ま、まさか……」
縄尻を取られたまま権白狼の前に連れてこられた水晶がきっと睨んだ。
「ほうほう、なかなかの気の強さだな。この状況になっても、それだけの表情ができるか……?」
権白狼はほくそ笑んだ。
なかなかに気の強そうな女だ。
「わ、わたしたちをどうするつもりですか──?」
水晶はなおも睨んでいる。
身体は恐怖で震えているが、それでも気丈な態勢を崩さないのは大したものだ。
「なにをするか教えてやる──。だが、その前に自己紹介だ。まずは、俺は頭領の権白狼だ。覚えろ」
「と、頭領の権白狼殿ですね……。わかりました。では、わたしたちをどうするつもりか教えてください」
水晶ははっきりと言った。
権白狼は内心で感嘆した。
水晶の身体の震えがとまったのだ。
なかなかの度胸だ。
大の男でもこうはいなかい。
「その前に最初に質問だ。歳は?」
「じゅ、十九です」
「十九か……。わかった。では、次の質問だ。この道術遣いとは何回くらい性交をした?」
「なっ……」
水晶が顔を真っ赤にして絶句した。
「答えろ──。そこにいる一物を剝き出しにした男はお前の婚約者だそうだが、まさか、生娘ということはあるまい。だが、どのくらい乳繰り合った?」
権白狼は酒を飲みながら言った。
「く、下らんことを聞くな、権白狼──。答える必要はない、水晶殿──」
雷雲が吠えるような声をあげた。
「うるさい奴だ。いまからお前の婚約者を犯すところだ。黙ってそこで聞いていろ。見せてやれないのが残念だがな──」
権白狼は叫んだ。
「う、うるさい──。水蓮殿──。こうなってはもう覚悟を決めよう。ここで死んでくれ。俺も死ぬ──。一緒に死んでくれ──」
雷雲が狂ったように叫んだ。
「やかましい──。死ねるものなら死んでみろ。お前の首にも水晶の首にも自殺防止の霊具の首輪が嵌められているのだ。自殺したくても、できんわ──。それよりも、婚約者の娘が視線のやりように困っておるではないか。早く、勃起を収めんか」
「ち、畜生──。畜生──畜生──」
雷雲が閉じたままの両眼から涙を流しだした。
「うるさい男だ──。おい、誰かその一物を切り取ってやれ。男根がなくなれば少しは大人しくなるだろう」
権白狼が声をあげるとまた、秀が笑って立ちあがる。
秀が短剣を出して薬剤のために勃起している肉棒を掴んで短剣を振りあげる。
「な、なにするんだ──」
雷雲が声をあげた。
眼が見えない雷雲は短剣が振りあげられたことよりも、自分の勃起した男根が掴まれたことに狼狽えた声をあげたのだ。
その狂乱の態度に短剣を構えた秀がぷっと噴き出した。
「この野郎──。男に一物を掴まれてそんなに気が動転した声を出すんじゃねえよ。こうしてやろうか……?」
秀が短剣を一度おろすと、掴んでいた手で男根を鷲掴みにしてしごきだした。
「ごおっ、や、やめんか……やめっ、やめてくれ──」
雷雲がけたたましい悲鳴をあげて拘束された身体をのたうたせた。
「頭領、これはこれで、面白いかもしれませんよ。俺にこいつの尻を犯させてもらえませんかねえ?」
「おいおい、お前も男色だったのか、秀?」
権白狼は呆れた声をあげた。
「いや、普通は女ですけどね……。でも、こんな色の白い色男なら十分にできますよ。頭領もそうですよね? まあ、こんな男の尻を犯すのは、これはこれで女をなぶるのと同じような愉しみがあるというわけで……」
秀が笑った。
権白狼はそんな秀を少し待てと制する。
秀がやっと雷雲の男根から手を離す。
「さあ、水晶──。どうする? この婚約者の一物をちょん切ってしまっていいか?」
権白狼は水晶に視線を向けた。
「そ、そんな……。お願いです……。あの人を助けてください……」
水晶は悲鳴のような口調で言った。
「わかった……。じゃあ、まずはお前の縄を解いてやる。俺の女になると誓え──。そうすれば、あんなやさ男はどうでもいい。どうせ、もう道術を遣えない役立たずだ。逃がしてやってもいいぞ」
「ほ、本当ですか──?」
水晶が声をあげた。
「その前にさっきの質問に答えんか、水晶?」
権白狼は一喝した。
水晶の身体がびくりと跳ねた。
その間に陶旺が水晶ひ近づいて縛っていた縄を斬った。水晶の身体から縄が外れてその場に落ちる。
「す、水晶殿──。そんなことを答える必要はない。頼む、一緒に死んでくれ──」
雷雲が吠えている。
「うるさい男だ──。水晶、ちょっと下袍の中の下着を脱げ。そいつであいつの口を封じてやる」
「なっ?」
突然の命令に水晶が羞恥の悲鳴をあげた。
「いやなら、猿ぐつわの代わりに一物を切断させる……。おいっ」
権白狼は秀に合図をする。
秀が再び短刀を構えた。
「や、やめてください──。脱ぎます。脱ぎますから……。もう、覚悟はしました。それよりも、あの人を助けてくれるというのは本当ですね?」
「ああ、俺も大勢の賊を束ねる頭領だ。嘘はつかねえよ」
権白狼は言った。
水晶は決心をしたように下袍に両手を入れると、さっとその場で下着を両脚から抜き取った。
水晶が脱いだ下着を陶旺が取りあげて、雷雲のいる方に放った。
狂ったような声をあげる雷雲の口に秀がその下着をねじ込む。
そして、さらに、その口の上から秀が手拭いを噛ませて首の後ろで縛った。
「ところで、水晶、まだ質問に答えてないぞ……。というか、もしかしたら、お前は生娘か……?」
権白狼は言った。
「き、生娘です」
水晶が顔を下に向けたまま小さな声で答えた。
権白狼は大笑いをした。
「おいおい、雷雲。お前はこんな美しい婚約者がいるのに、まだ手も出さんかったか。なら、ありがたく寝取ってやろう。俺のために水晶の処女を守ってくれて感謝するぞ」
雷雲が猿ぐつわの下で吠えた。
そして、激しく暴れるのだが、そのために勃起を収められない男根がぶらんぶらんと揺れる。
雷雲はその情けない姿にすっかりと手下を殺された溜飲がさがった気がした。
権白狼は視線を水晶に戻す。
「さて、じゃあ、水晶、命令だ──。その場で下袍を捲りあげろ──。そして、股間を剝き出しにして、お前の婚約者に聞こえるような大きな声で俺の性奴隷になると誓え──。そうすれば、あの男の命だけは助けてやる」
権白狼は言った。
水晶が両手を下袍の前に強く当てたまま、真っ蒼な顔になった。