擦り切れた股間が痛くて、どうしてもがに股になってしまう。
十人ほどの男たちに繰り返し犯されて、膣のあちこちが切れたのか、内腿には血の痕のようなものが精液とともにこびりついている。
しかし、よろけて歩みを緩めようものなら、容赦なく背中に鞭を打たれるので、懸命になって脚を進めていた。
もちろん全裸だ。
水晶は布一枚許されない素裸のまま、一般の賊徒の兵たちがあちらこちらにいる賊徒の砦の広場を横切って、性奴隷の棲み場所というところに連れられている。
陽はすでに高い。
昨日、広場にある集会場で権白狼をはじめとする賊徒の幹部たちに犯されて、最後にはそこで失神したまま夜をすごした。
犯されていた間は、
集会場には凌辱の名残はあったが、頭領の
そこには水晶を見張るための兵らしき男がふたりいるだけで、水晶は手首を前手に縄で縛られて、首輪につけられた鎖を柱の一本に繋げられていた。
手首の縄も首輪の鎖も外れそうにはなかった。
そして、陽が昇ってかなり経った頃に、やっとやって来た秀という賊徒の幹部とともに、いま奴隷用の檻に向かわせられているところだ。
ここで十人いた男たちの中でも、水晶ではなく雷雲を主体に犯していた男だ。
男が性欲の対象というよりは、男に犯される雷雲が泣き喚くのが愉しくてそうしているような気配だった。
「砦の奥に将校用の兵舎があるんだが、その地下が女奴隷の棲み処だ。そこがお前たち性奴隷が暮らす場所ということになる。普段、性奉仕する場所はそこの一階だ。そこで大体は夜の四刻(約四時間)は誰かに犯されるということになるな。お前は将校用の性奴隷だから少し待遇がよくて、三日働いて一日は休みという感じだ……」
秀がべらべらと喋り続ける。
半分は嫌がらせだろう。
どこまでも底意地の悪い男だ。
水晶はだまっていた。
「……言っておくが、それは運がいいことなんだぞ。兵士用の性奴隷は、休みなんかねえし、奉仕の時間も決められていねえ。非番で空いている兵も抱きに来るから、事実上四六時中、誰かの性器を受け入れているという状態だろう。お前もいつかは兵士用の性奴隷に格下げになるときもあるかもしれねえが、そのときは、男を受け入れながら眠ったり、物を食べたりするような技を覚えなきゃならねえ。そうじゃないともたねえぞ……」
秀の物言いに、周りの子分のような者たちがどっと笑う。
水晶は脚を勧めながら歯噛みした。
「……まあ、そう言っても、俺も二箇月以上もった兵士用の性奴隷には接したことはねえ。まあ、兵の人数に対して性奴隷の数が少なすぎんだよな。だから、将校用とは別にしてあるんだ」
水晶を連れているその秀という男が笑った。ほかに集会場で水晶を見張っていたふたりの賊徒の兵が鞭と水晶の縄尻を持って水晶を誘導している。
秀はそのふたりを監督するように指図しながら、水晶に性奴隷としての心得を歩きながら話しているのだ。
水晶はそれを悄然と聞いていた。
ここの賊徒たちは主だつ幹部を「将校」と呼び、一般の賊徒を「兵」と呼んで区分しているようだった。
賊徒の組織管理に軍隊管理を使っているのだ。
盗賊団の賊徒といっても、なかなかに砦に秩序が保たれているのはそれが理由かもしれない。
この賊徒に捕らえられて、婚約者の雷雲の前で犯されたのは昨日のことだった。
朱紫国から円国に向かう隊商に婚約者の雷雲とともに参加して、この南非地方に巣食う賊徒の襲撃を受けたのだ。
物騒な地方というのは承知しており、それに対抗する手段もとっていたのだが、頼みの護衛隊も奇襲を受けて全滅して皆殺しにされた。
護衛隊で生き残ったのは、護衛隊に属する道術遣いとして参加した雷雲だけのようだ。
また、隊商側については、ことごとく捕えられて、すでに奴隷としてその日のうちに売り払われたと聞いた。
残っているのは、水晶と同じように性奴隷にするために残された若い女が十人ほどということだ。
もっとも、捕えられてすぐに、ここの頭領の権白狼に犯されるために、集会場と呼ばれる建物に連れられていた水晶は、ほかの娘とずっと接していない。
最後に彼女たちを見たのは、水晶がその集会場に入れられる直前であり、昨日の宴の催しとして兵たちに輪姦されようとしている状況だった。
隊商を編成したのは、朱紫国にいる大商人である水晶の父親だ。
そういう意味では、水晶は、彼女たちに対して責任もあると思う。
彼女たちに対する悔悟の情でいっぱいだった。
申し訳ないと言えば、雷雲に対してもそうだ。雷雲の前で犯された。身体をなぶられて愉悦の声もあげた。
何度も犯されて泣き叫んだ。
それをすべて雷雲の眼の前でやった。
汚されたのだ。
この隊商の任が終われば、晴れて夫婦になるはずだった。
それがこんなことになって残念だ。
雷雲は水晶とともに、賊徒たちの余興のひとつとして、水晶と同じように輪姦された。
男なのに、お尻を男たちに犯されたのだ。
昨夜、輪姦される途中で水晶が完全に失神した後、夜が明けて集会場に拘束されたまま放置されていたときにはもう雷雲はそこにはいなかったから、雷雲がどうなったかはわからない。
実力のある道術遣いだったが、霊気の源である眼を潰されて、道術遣いとしての力を失わされてしまっていた。
雷雲がいまどうしているのかわからないが、雷雲だけは放免される約束だ。
おそらく、水晶は遅かれ早かれここでもうすぐ死ぬことになるだろう。
雷雲に心の傷はあるだろうが、どうかそれを克服して生き延びて欲しいと思う。
それができる男だと思うし、雷雲の心の強さはほかの誰よりも水晶がよく知っている。
こんな経験などで雷雲は駄目にならない。
雷雲は素晴らしい男性だ。
とにかく生き延びて欲しい。
悔しいとは思うが、水晶たちの仇をとるなど考えずに、無事に故郷に戻って欲しいと思う。
集会場から出たところは、賊徒たちが集まる大きな広場になっている。
昨日の宴の名残はもうない。
広場に出された直後にまとまった騎馬の一隊が砦を出て行くのが見えた。
どこかをまた襲撃するような感じだった。
ほかにも多くの賊徒がいる。
まだ、酔い潰れて地面に横になっている者もいるが、大部分は訓練のようなことをしていた。
賊徒のわりには規律もあり、動きがいい。
普段から身体を鍛えて武芸を磨き、連携行動なども訓練しているのだと思う。
そういう彼らをたかが賊徒だと侮ったために、隊商は彼らの勢力圏内で油断をしてしまい、彼らの襲撃をまともに受けてしまったのだ。
歩いていると賊徒以外にも、仕事をしている老人や子供もいる。
だが、彼らは賊徒というよりは、水晶と同じようにこの賊徒に飼われている奴隷という感じだった。
足枷か手枷をつけられて、鞭で打たれながら作業をさせられている。
誰も彼も酷く痩せていて弱っていた。
「生理になったら、その日と翌日はさらに休みが追加される……。もっとも、ここの性奴隷は、あまり生理になる女はいねえ。ここの男はどいつもこいつも、遠慮なく中出しするからな。あっという間に孕んでしまうんだ。孕んでしばらくは使うんだが、どうしようもなくなれば処分する──。そうならないようにするには、酢がいいらしいぞ。女陰に酢を染み込ませた綿を忍ばせておくんだ。それが男の精を殺して、孕まないで済む」
秀は喋り続ける。
水晶は全く返事をしないのだが、それは気にしていないらしい。
随分と機嫌がよさそうだ。
「酢をもらうには、お前たちを監視する当番兵に頼むといい。当番兵は将校用の女に手を出すことは禁止されているから、向こうから手を出すことはないはずだが、なに、肉棒でもしゃぶってやれば、なんでもこっそりと融通してくれるさ……。兵士用の女に成り下がれば、そうはいかねえぞ。監視役の当番兵でも犯し放題だから、なにかを頼もうにも代替えになるものはない。孕めば死だ。まあ、生き残るためには、まずは将校用の性奴隷から格下げにならないように頑張ることだな。おい、聞いてんのかい──」
秀が水晶の生尻に手をやって擦った。
「いやっ」
水晶は悲鳴をあげた。
「ははは、お前は見てくれはいいようだが、弱って容姿が衰えれば、やっぱり格下げだ。将校用の性奴隷には、食事は普通に与えられるはずだから、頑張って食べることだ。ここにやってきた女の大半は、食べなくて弱って死んでしまう。まあ、女の代替えはいくらもあるからいいんだが、やっぱり、いい女は手に入り難いから、お前にもできるだけ長く生き伸びて欲しいものさ」
広場をすぎ、裏に入ったところで大きな煙が見えた。少し距離がある場所にたくさんの人間が集まっている。高い炎も見える。
大変な喧騒であり、なんだろうかと思って水晶は何気なくそっちを見た。
「な、なんですか、あれは──」
水晶は絶叫した。
燃えているのは人間だった。
しかも、隊商に属していた老人などだ。
どうやら、この裏広場のあちこちの樹木に縄で縛られていた気配だが、ここに二十人程の賊徒がいて、その賊徒によってひとりひとり拘束をほどかれて、この裏広場の中心の巨大な穴の前に連れていかれているのだ。
巨大な穴の中では、油でも燃やしているのか巨大な炎があがっている。
そこで行われているのは、まるで流れる作業のような殺戮だ。
拘束をほどかれた老人は、すぐに丸裸にされて衣服を取りあげられて、棒で叩かれて動けないようにされ、そして、そのまま身体の手足を持たれて、炎のあがっている大きな穴に放り込まれているのだ。
すでに半分の老人は殺されているようだ。
周囲には人間の燃える悪臭が激しく漂っている。
「や、やめさせてください──」
水晶は絶叫して、その場にしゃがみ込んだ。
「こ、こらっ、勝手に座るな──」
恫喝の鞭が水晶がしゃがんでいる地面の土を跳ねた。
無視した。
それよりも、棒で叩かれて、まだ生きているのに、炎の穴の中に突き落とされていく同朋たちの姿に狂ったように必死の哀訴の声をあげた。
「待て、待て……。こりゃあ、道が悪かったな。ちょうど、役立たずの捕虜を処分しているところだったのを忘れていたぜ……。まあ、しょうがねえんだよ。あの連中は奴隷商人にも売れもしねえし、重作業のできねえような年寄りだし、置いておいても仕方がねえんだ。食い物が必要なだけ損だしな」
「そ、そんな、そんな、そんな……。だったら、逃がしてくれればいいじゃないですか──」
水晶は人間が焼かれるその凄惨な光景に涙を流しながら訴えた。
「うるせえなあ……。頭領の命令だ。役立たずは殺せとな──。それに、捕えた捕虜を許さねえのは見せしめの意味もある。俺たちが容赦のねえ賊徒だと思い知らせとかないと、縄張りにしている町や農民の連中が逆らう可能性もあるしな」
「あああああっ……」
水晶は泣き叫んだ。
しかし、すぐにもっと衝撃的な光景が眼の前で起こった。
数台の荷台に載せた人間の束がそこに運ばれてきたのだ。
注目すると、それは人間の女だった。
どうやら死んでいるらしいが、それがやはり黒煙をあげて燃えている大きな穴に横付けされて、身体を放り込まれ始めた。
「ひいいっ」
もう言葉を発することができなかった。
眼の前で起きていることがとても現実のものと思うことができない。
「……昨日の宴で死んだ性奴隷の女だ。頭領の命令でお前以外の性奴隷を寄ってたかって犯し殺してしまったんだ。だから、いま兵に処分をさせているところだ」
秀が事もなげに言った。
そして、もう立てと命じられて、無理矢理に縄尻を引っ張られて立たされる。
「ま、待ってください……。だったら、わたしと一緒にここに来た娘たちは……」
水晶は叫んだ。
昨日護衛隊を全滅させられた隊商が降伏したときに、水晶と一緒にほかの者とは別にされた若い女が十人ほどいた。
彼女たちは、水晶が集会場で権白狼や雷雲のいる場所に引きたてられる直前に、広場で兵たちから輪姦され始めていたが……。
「あの中だ──。もういいだろう──。ほら、歩け……」
秀が水晶の縄を持っている兵を促した。水晶は手首を引っ張られて歩かされる。
水晶はそれでもその光景を首を曲げて見続けた。
そのとき、荷台に載っている娘のひとりの身体がごろりと荷台から落ちた。
「あっ、
水晶は悲鳴をあげた。
百蓮という十二歳の少女で、この隊商に加わっていた者では最年少の娘だ。
あのまだ幼さの残る身体は間違いない。
だが、水晶を驚かせたのは、その百蓮の手がかすかに動いたように見えたのだ。
「ま、待って、待ってください。百蓮が……。あの娘は、まだ生きてます。助けて──」
水晶はそう言って、繋がれている手首を強引に引っ張り戻して立ちどまった。
怒声を上げた兵の鞭が水晶の背中に炸裂した。
痛みなど気にならなかった。
水晶は鞭をあげる兵を無視して、秀の脚にひれ伏した。
「お、お願いです──。まだ、あの娘は生きているの──。殺さないで──」
水晶は叫んだ。
秀もやっとそれに気がついたようだ。
しかし、それほど心を動かした様子もない。
「おお……。確かにあれはまだ生きているな……。だが、死にかけていることも確かだろう。もう、どうしようもない。諦めな──」
秀は言った。
発狂したように哀願をする水晶を尻目に、地面に倒れた百蓮の身体が兵たちによって持ちあげられた。
まだ、生きている──。
手と足を持たれて宙にあげられた百蓮は、失神から目覚めたように首を動かしたように見えた。
だが、その次の瞬間、そのまま炎の穴の中にその身体が放り入れられた。
「いやあああっ──」
水晶は絶叫した。
そして、一瞬、気が遠くなった。
そのままどうなったかわからない。
ふと気がつくと、水晶は悲鳴をあげたまま、両脇を兵にとられて歩かされていた。
いつの間にか兵舎らしき建物の前にいた。
兵たちが水晶の脇を離したので、水晶は再び地面に崩れ落ちるような感じになった。
さっき生きたまま炎に入れられた百蓮の姿が忘れられない。
絶対に生きていた。
それなのに殺された──。
そのことが繰り返し水晶の頭をよぎる。
「おいおい、いちいち、ほかの奴隷の死に心を動かしていたんじゃあ、お前もすぐにそっちに入ることになるぞ。ここじゃあ、奴隷の死は茶飯時だ。すぐに馴れるさ……」
「な、なんということを……。あ、あなたたちの全員にいつか酬いがあるわ。こ、こんなこと許されるわけがないわ……」
水晶は激しく慟哭しながら叫んだ。
「やれやれ……。そんなことよりも、もうすぐお前の仲間入りになる新しい女奴隷たちがやってくる。集会場を出たときに騎馬で出動した一隊を見ただろう……。いま、あの一隊が奴隷狩りをしにいっているんだ。なにしろ、夕べは性奴隷の女をことごとく殺してしまったために、それを補充しなきゃならんのだ……。すでに死んだ女のことを考えるよりも、その女たちのことを考えてやりな。わずか一日とはいえ、そいつらにとってはお前が先輩なんだ」
秀があっけらかんと言った。
そういえば、まとまった騎馬集団がここから出て行ったのを見たのを思い出した。
どうやら、あれはまた新しい奴隷を集めに行っているのようだ。
そう考えていて、はっとしたことがある。
雷雲──。
雷雲はどうなったのか……?
放免するという約束だったが、本当にそうなっただろうか……。
もしや、さっきの炎の穴に入れられたのでは──?
「ら、雷雲殿はどうなりましたか──? 教えてください、秀様──。雷雲殿は水晶に免じて許されると頭領がおっしゃってくれました。どうなったか、教えてください──」
水晶は顔をあげて秀に訴えた。
するとその秀がにやりと微笑んだ。
「おう、あの色男か……。あの男がどうなっているか知りたければ一緒に来い……。まあ、死んではいないことだけは教えてやるよ。まだな……」
不吉な秀の物言いに心がざわめいたが、もう従うしかない。
水晶は立ちあがって、その兵舎の中に足を踏み入れた。
まだ昼間であるせいか、兵舎にはほとんど人気がない。
やがて、最奥に地下に進む階段があった。
そこを降り始める。
すぐに水晶を連行していた兵のひとりが壁の燭台を手にとって足元を灯す。
「随分と丈夫にできているだろう? ここを逃亡することは不可能だ」
降りたところに鉄格子があり、その鉄格子を前にして秀が言った。
その奥が牢のようだ。
「ここには五つの檻がある。つまり、最大でも将校用の性奴隷は五人までということだ。何度も言うようだが、長生きしたければ兵士用の性奴隷には落ちないように努力することだ。扱いはまるで違う。兵用の性奴隷になるということは死だ」
秀は言った。
どうでもいいと思った。
殺すなら殺せばいい……。
もう死ぬことは覚悟している。
兵が鉄格子の鍵を開けて格子を開く。
さらに奥に進む。
水晶は、地下牢の並ぶ廊下の奥で、淡い光に浮かんでいるなにか小さな人影が見えた気がした。
「ご対面だ……」
そして、水晶は愕然とした。
小さなものと思ったのは人間の男だった。
しかも雷雲だ──。
小さいという印象は、その雷雲の肘と膝の先が存在しなかったためだ。
四肢を切断されて、犬のような姿になった雷雲が地下牢の最奥の壁に首輪で繋がれている。
薄暗くてはっきりとはわからないが、首輪と壁を繋ぐ鎖はひどく短くて、雷雲は壁に顔を接してお尻をこちらに向けているようだ。
それでも、その身体つきで、紛れもなく雷雲だと確信した。
手足のない雷雲は、まるで眠っているように床に胴を密着して横たわっている。
「ら、雷雲殿──」
水晶は絶叫して駆け寄ろうとした。
しかし、縄尻を持った兵がぐいと引っ張ってそれを阻む。
「あれは頭領の格別の計らいで、ここで飼うことになった犬だ。瞬時に傷を塞いでくれる便利な仙薬があるから、たった一日でああいう姿にすることもできるのだ。ああやって尻をこっちに向けているのは、いつでもあれの尻を犯せるように俺がしてやったのさ──。お前たち、水晶をその牢に入れておけ」
秀がそう言って、最奥にいる雷雲に近づいていった。
水晶はずっと手前のもっとも階段に近い牢に入れられる。
「ら、雷雲殿──雷雲殿──。そ、そんな、雷雲殿──。どうしてこんなことに──」
水晶は泣き叫んだ。
だが、その水晶の身体は、開かれた牢の扉から強引に放り入れられる。
牢の中には柔らかそうな絨毯が引きつめられていたが、それ以外にはなにもない。
広さは人間が三人ほど余裕で寝れるほどで、それなりの広さがある。
しかし、それよりも雷雲だ。
雷雲は放免してくれるはずだった。
それがどうしてあんなことになっているのか。
水晶は、自分が入れられた牢の鉄格子に顔をくっつけて、力の限り雷雲の名を呼んだ。
「う、うごおおお──」
水晶の声にやっと気がついたのか、雷雲が身体を起こして吠えた。
だが、なにか声がおかしい。
「おう、水晶、そこからでも聞こえるだろう? この雷雲は、舌を斬られて声が出せなくなったんだ。頭領によれば、これからお前が犯されるときは、こいつを必ず連れていき、お前が悶えよがる声をそばで聞かせるそうだ。しばらくはそばにいられるんだ。よかったじゃねえか……。頭領に感謝するんだな」
秀は顔をこっちに向けて、大声で雷雲の名を呼ぶ水晶に叫んだ。
その間、雷雲は顔を壁に向けたまま懸命に声をあげている。
「ら、雷雲殿──。な、なんて姿に──。ああっ──。嘘つき──。嘘つき──。嘘つき──。雷雲殿を放免すると約束したくせに──」
水晶は縛られた手首で鉄格子を掴んで、吠えるように泣いた。
「おう、そう言えば、そうだったな……。だったら、そうしてもいいんだぜ、水晶……」
秀は嘲笑した。
「だが、こんな眼も見えず、言葉も喋れず、そして、手も足もない雷雲を砦から放り出したらどうなると思う? 雷雲を砦の外に放り出してもいいが、そんなことをすれば、あっという間に野犬の餌食になって死ぬだけだ。それでもいいなら逃がすがな」
秀は声をあげて笑った。
水晶は泣き叫んだ。
「どれっ、雷雲……。例の傷薬の仙薬も尻穴にも塗ってやったんだ。切れた肛門もきれいに治ったんだろう? じゃあ、一発やらせろよ、色男……。檻にお前の女を連れて来たから、お前が犯されて泣く声を聞かせてやれ」
雷雲にそう言っている秀の声が聞こえた。
そして、雷雲の泣きじゃくる声も地下牢に響き渡る。
やがて、肉のぶつかるような音と雷雲の嗚咽も……。
水晶は激しく慟哭しながら、聞こえてくる音を遮断しようと拘束された腕で耳を塞ごうと身体をその場にうずくまらせた……。
「ああ、お前の尻は最高だぜ、雷雲──。おお、お前も気持ちよさそうじゃねえか。すっかりと勃起させて……。どれっ、擦ってやるよ──。ほらよ──」
秀の大きな笑い──。
そして、快感を覚えていることがはっきりとわかる雷雲の喘ぎ──。
その光景を嘲笑する兵の声──。
それらが前手縛りのために完全には塞ぐことのできない水晶の耳にはっきりと聞こえ続けた……。
(第64話『寝取られた恋人』終わり、第65話『盗賊団と魔女』に続く)