「た、頼むぅぅぅぅ──。なんとかしてくれぇ──。か、痒い──。か、痒い──」
宝玄仙はその姿を見て嘲笑った。
「なにを言ってるんだい。お前に使ったのは全部、お前の砦に保管してあった薬じゃないかい。どうせ、こんな痒み剤を使って、
気も狂わんばかりの尻の痒さに口から大量の涎を垂らしている権白狼の顔を宝玄仙は強く踏みつけた。
砦の真ん中にある集会場の大広間だ。
その広間のほぼ真ん中に宝玄仙は椅子に座っている。
その足元に、全身を拘束されて床に顔を密着させられている権白狼がいる。
権白狼はひたすら全身を激しく振って泣き喚いていた。
大量の痒み剤を尻に塗りたくられて放置され続けているのだ。
こうやって、権白狼を責め始めて数刻が経っている。
もっとも、大半の時間を責めたのは、ここで権白狼を責めるように宝玄仙が命じた女たちであり、宝玄仙が嗜虐に加わったのは一刻(約一時間)程度でしかない。
しかし、時間はもう夜半をすぎているだろう。
だが、この広間には権白狼が
思ったよりも
それで、権白狼が女たちの顔を覚えないようにつけさせていた目隠しは外させた。
目隠しの外された権白狼の眼は、あまりの痒さにすでに光を失っている。
いまは、腕を後手縛りにして、両方の膝を短めの木の棒の両端に結んで脚を閉じられないようにし、その身体をうつ伏せにして膝を立てさせた格好で鉄の首輪を嵌めさせ、さらに首輪と脚の間の棒を床に取り付けた金具で床に固定している。
つまり、脚を開いて尻を高くあげてうつ伏せになり、床に顔を付けている恰好だ。
その恰好で大量の掻痒剤を尻に塗っている。
朱姫がいろいろな責めを試したらしいが、この尻に掻痒剤を塗って放置する責めが一番つらそうなのでそうしてやっているようだ。
「た、たまらん──。ああっ、なんでもする……。なんでもするから尻を掻いてくれ──」
権白狼はそんな不自由な態勢で、ひたすらに尻を大きく振って少しでも痒みを癒そうと懸命だ。
全身が高揚した汗びっしょりの身体を激しくのたうたせている。
権白狼は半狂乱だ。
「お前の尻を掻けだって? 冗談言うんじゃないよ。なんで、わたしがお前の汚い尻を掻かなきゃならないんだい──。お前の尻に薬剤を塗ったのは、お前が
宝玄仙はそうからかって、声をあげて笑った。
権白狼がさらに悲鳴のような泣き声をあげる。
宝玄仙が言った通り、何度も掻痒剤を権白狼の尻に重ね塗りしたのは、さっきまで、朱姫とともに、この大広間にいた女たちだ。
その女たちを
自分たちを理不尽に
だから、女たちがいなくなる前に、なんで痒さを癒してもらわなかったのだと意地悪を言ったのだが、 もっとも、それは実は無理だというものだ。
女たちに、掻痒剤を塗っても痒さを癒すことを禁止しておいたのは宝玄仙なのだ。
宝玄仙が雷雲の治療のために不在にしていた前夜半の間、権白狼は掻痒剤を塗られては放置され、また塗り足されては放置されということを繰り返していたはずだ。
本来であれば、とっくの昔に痒さで発狂していたところだったかもしれないが、そこは責めにかけては百戦錬磨の朱姫がいる。
権白狼が痒さで正気を失うぎりぎりのところで調整していたはずだ。
「そ、そんなあ……あがああ……か、痒い──。す、水晶──。頼む。その棒を挿してくれ──。後生だ──。その棒を尻に挿してくれ」
権白狼は高くあげている尻を激しく揺すぶった。
この部屋には、いまは宝玄仙と朱姫と
水晶は、雷雲に沙那と孫空女を抱かせている間、この部屋で朱姫の『縛心術』で少しばかり、心の治療をさせていたが、いまは、宝玄仙と朱姫とともに、権白狼を責めることをやらせていた。
もっとも、水晶は余程、嗜虐には向かないのか、好きなようにいたぶって仕返しをしろとけしかけても、かえっておろおろするだけだ。
いまも権白狼に泣き叫ばれて、宝玄仙に持たされた尻孔調教用の棒を持って、権白狼の後ろで当惑して狼狽えるばかりだ。
あれでは、まるで水晶が嗜虐されているような感じだ。
「水晶さん、好きなだけ仕返しすればいいじゃないですか……。こいつが水晶さんを犯したんでしょう? 思いつく限りの嫌がらせをやってやればいいですよ」
朱姫が少し離れた卓から声をかけた。
その卓には、この砦で適当に集めてきた食べ物が置いてあり、朱姫はそこで赤い色の果実を口にしていた。
「そ、そんなことを言われても……」
水晶は権白狼の後ろで途方に暮れた表情のままだ。
宝玄仙は苦笑した。
「いいから、その男の肛門にその棒の先端を当ててみてくださいよ、水晶さん」
朱姫がさらに言った。
「こ、こうですか……」
水晶がおっかなびっくりという感じで、権白狼が振り立てているお尻に持っていた棒の先端を当てた。
「うおおおおっ──」
その途端にもの凄い勢いで権白狼が尻を左右に振りだした。
「うわっ」
そのあまりの激しさに水晶がびっくりして、その手を引っ込めた。
すると、権白狼が大声をあげて泣き叫んだ。
宝玄仙は大笑いした。
「いいじゃないかい、水晶。その調子で焦らし責めにしな。そんな感じだよ──」
痒みを癒してくれると思った棒を取りあげられたかたちになり権白狼はますます哀れに泣いている。
宝玄仙はその情けない姿に手を叩いて悦んだ。
「そ、そんなつもりじゃあ……」
「そんなつもりでいいんだよ。馬鹿だねえ……」
宝玄仙は言った。
そのとき、奥の部屋から戸が開いて雷雲が入ってきた。
「ら、雷雲殿……」
水晶が雷雲の顔を見てほっとした表情になる。雷雲の態度は堂々としていて、なにかを吹っ切れたような感じだ。
どうやら、沙那と孫空女を抱かせたことがいいきっかけになったようだ。
宝玄仙はほっとした。
微笑みながら水晶に歩み寄った雷雲は、尻を振りたてて叫んでいる権白狼に一度視線をやった後、ふと視線を水晶の持っている責め棒に送った。
水晶は慌てたように持っていた棒を背中に隠した。
しかし、その棒を雷雲が微笑みながら取りあげた。
「おい、権白狼、昨日は世話になったな……。俺のことを覚えているだろう?」
雷雲は権白狼の顔の前に回り込むと、すっとしゃがみ込んで権白狼の顔を覗きこむようにした。
「あっ、お前は雷雲──? な、なんで……?」
権白狼はびっくりしている。
おそらく、眼を潰して手足を切断してやった雷雲が、いま、こうやって五体満足に立って自分を見下ろしているという事実が理解できないに違いないようだ。
「ここにいる宝玄仙殿の道術で手足も眼も復活してもらったのさ……。それよりも、責める者と責められる者──、これが逆転するというほど、世の中に面白いものはないな。そう思うだろう、権白狼?」
そして、驚いたことに権白狼の棒で開脚させている股倉に手を伸ばすと、睾丸と肉棒を片手で刺激し始めたのだ。
権白狼は怒声をあげて、全身を揺すって手を避けようとするが、全身を縛められている身では、雷雲の無遠慮な愛撫を受け続けるしかなく、たちまちに権白狼の声に荒い鼻息が混じり出した。
「なるほど、男の珍棒を触って、なにが愉しいのだと昨日は思っていたが、これはこれでなかなか面白いかもしれんな。そんなにここを硬くするんじゃないぜ、権白狼──」
雷雲がせせら笑いながら言った。
そして、しばらくそうやって権白狼の性器をいたぶって権白狼から一度離れる。
権白狼をいたぶる雷雲の表情は、怖れを知らない傍若無人さが垣間見えていて、なかなかの生意気な小憎らしさに溢れていた。
おそらく、この雷雲が本来の雷雲なのだろう。
身体を回復する前の雷雲からは、ここの賊徒たちによって、婚約者の水晶を犯され、男としての尊厳を奪われ、心が崩壊しそうになっているように感じだったが、どうやら沙那と孫空女はよい仕事をしたようだ。
あいつらのことだ……。
どうせ無自覚にいきまくって、雷雲を呆れさせたに違いないのだが、あれだけの女傑を自分が性の技で完全に屈服させたとなれば、雷雲も失いかけた自信を取り戻しただろう。いまの雷雲は、なかなかいい感じだ。
これなら、もう大丈夫だろう。
「どら、また遊んでやるよ。これはどうだい?」
雷雲は今度は前側から再び権白狼の股間に手を伸ばした。
権白狼は吠えるように悲鳴をあげる。
雷雲はそうやってしばらく権白狼の性器を弄くったり、捻ったり、あるいは、睾丸を強く握ったりして、権白狼に悲鳴をあげさせ続けたが、やがて飽きたように権白狼の性器から手を離した。
権白狼が吠えるような泣き声をあげた。
「ところで、水晶殿、あなたはこいつにどんな仕返しをしてやったのだ?」
雷雲が水晶に視線を向けた。
「わ、わたしは……」
すると水晶が困惑した表情をした。
「水晶さんは責めるのが苦手みたいです……。性癖を解放させる暗示を与えてあげたら、却ってなんにもできなくなってしまったんですよ、雷雲さん。だから、あたしたちが権白狼を責めなさいって、一生懸命に言ってもなにもできなかったんですよ。ふふふ……。水晶さんは、実は苛められるのが好きなんです」
朱姫が悪戯っぽく言った。
「しゅ、朱姫さん、変なことを言わないでください──」
水晶は真っ赤になった。
「変なことってなんですか、水晶さん──。本当のことじゃないですか。さっき、水晶さんの心の重しを取り除くための『縛心術』にかかってもらいましたよねえ……。あれは、水晶さんの性癖を解放する術も入っていたんですよ。実は水晶さんって、普段はもっと颯爽としているんじゃないですか? 」
「そ、そんな」
「でも、いまは、なにか落ち着かなくて、とても甘えん坊の気分になっているでしょう? あたしは術師だからわかるんです。水晶さんは、苛められると欲情する人です。間違いありません──」
朱姫がきっぱりと言った。
さっきまで、朱姫には『縛心術』で水晶の心の治療をさせていた。
すなわち、雷雲の眼の前で、権白狼たちに輪姦されたことを心の負担に思わないようにするための処置だ。
朱姫は、『縛心術』の達人だ。
心の治療は朱姫の得意分野だ。
水晶は、いまは、もう権白狼に犯されたことについての心の負担のようなものはないはずだ。
それは、水晶の知っているところで、雷雲も別の女を抱いたということでも、気が軽くなっている。
お互いのことだから大丈夫だという暗示を朱姫が与えて、雷雲に対する負い目のような負担も取り除いたようだ。
そして、同時に朱姫は、水晶の隠されている性癖を表に出させる暗示も与えたはずだ。
宝玄仙がそうするように朱姫に命じていたからだ。
いずれにしても、性愛について真面目すぎる性格では、最初の性愛が輪姦だったというのは、水晶の今後の人生に一生ついてまわる負担になってしまう。
だから、少しくらい性に解放的な性格に変えてやることにした。
そうすれば、最初の性愛の思い出など、最初に虫に刺されたときの記憶程度に取るに足らない記憶のひとつとなっていく。
いずれにしても、水晶の隠れている性癖を解放した結果については、宝玄仙は聞いていなかった。
なるほど、水晶は被虐的な性癖のようだ。
言われてみればそんな感じだ。
「そ、そんなことありません──。苛められて欲情するなど……。それじゃあ、まるで……」
水晶は怒ったように朱姫になにかを言いかけたが、雷雲の顔を横目で見て慌てたように口をつぐんだ。
「まるでなんですか、水晶さん……? 言っておきますけど、雷雲さんは水晶さんの夫になられるんですよね。だったら、性癖のことは隠さない方がいいと思いますけどね……。それに正直に告げておいた方がいいんじゃないですか? 実は賊徒たちに犯されたときに興奮して感じてしまったと──。そのことが負い目になり、雷雲さんに顔向けできない気持ちになり、それで死にたくなったと……」
「朱姫さん──」
水晶が怒鳴った。
その眼は涙ぐんでいる。
たったいま、朱姫が口にしたことは、絶対に雷雲には知って欲しくなったことなのだろう。
朱姫を睨みながら、雷雲の顔をちらちらと覗き見する水晶の態度から、それがはっきりと読み取れた。
「水晶殿……」
雷雲が狼狽えた様子の水晶の両肩に手を当てて、そっと自分に向かせた。
「ひっ」
水晶はぎくりと身体を竦ませる。
「いまのは本当か?」
「い、いまのって……?」
水晶の顔は凍りついている。
だが、宝玄仙には雷雲の表情に含み笑いのようなものが混じっていることに気がついた。
どうやら、雷雲は、水晶が権白狼たちの凌辱に実は感じたのではないかという朱姫の指摘に、面白さは感じても深刻なものは感じなかったようだ。
むしろ、それに動揺している水晶の態度を面白がっている気配だ。
「実は苛められるのが実は好きだということだ」
「そ、それは……」
水晶が顔を真っ赤にした。
そして耐えきれなくなったかのように顔を下に伏せる。
すると雷雲が苦笑した。
「なるほど、俺たちは、これから婚儀を経て夫婦になろうというのに、お互いの性癖のこととか、あるいは性の相性とか少しも知らずにいたのだな。俺はこと性交において、あなたに当たり前のこと以外をすれば幻滅されると思っていたし、婚前に手を出すなど、あなたには絶対にやってはならないことのように思ってきた。だが、考えてみれば、それは間違いだったかもしれないな……。例えば、俺は──」
すると雷雲は、いきなり水晶の下袍の下に手を入れて、水晶の股間に手を入れようとした。
「な、なにをするんです──」
驚いた水晶が両手でそれを阻止して押さえた。
「邪魔をするな、水晶殿……、いや、水晶──。両手は背中で組め──」
びっくりするような雷雲の大音響は部屋中に轟いた。
水晶の口から悲鳴が迸った。
「両手を背中で組め──。聞こえんのか、水晶──」
もう一度雷雲の大声が響く。
水晶の身体が硬直した。
しかし、まだ、雷雲の命令には従っていない。
力が入っている様子は消えたが、まだ、両手は下袍の下から手を入れようとする雷雲を阻止しようとする態勢のままだ。
「言うことを聞くべきですよ、水晶さん……。あなた方は“異常な夫婦”なんですから……」
朱姫がそう言った。
すると水晶の顔がはっとしたようになった。
そして、両手がゆっくりと背中に回り、その手がしっかりと組まれる。
雷雲の手は水晶の下袍の中にしっかりと収まり、水晶の股間にしっかりと届いたようだ。
雷雲の腕によってたくしあげられている下袍の下になった雷雲の手がゆっくりと動き出す。
「はんっ──」
水晶が大きな声をあげて、身体を小刻みに震わせ出した。
しかし、背中に組まれた両手はそのままだ。
「実を言えば、俺はこういう少し乱暴で意地悪な抱き方が好きなのだ。だが、そんなことが水晶にばれれば、俺はあなたに嫌われると思っていた……。だから、一生隠しておくつもりだったのだが……」
雷雲がそう言いながら、水晶の股間を揉む手を激しくしたようだ。
水晶の身体の悶えが大きくなる。
「ら、雷雲殿……、も、もう、悪戯はやめてください……、こ、こんな……」
水晶が顔を歪めて訴えた。
しかし、雷雲はますます悦に入ったような表情になる。
やがて、水晶は狂おしく全身を波打たせだした。
早まる雷雲の手の動きに耐えられなくなったように、膝ががくがくと動き出す。
口とは裏腹に水晶の顔には、明らかな欲情が浮き出ている。
これまでとは違う雷雲の嗜虐的な扱いに興奮をしているのは間違いない。
「口ではそう言うが、股ぐらはちっとも嫌そうじゃないぞ。もう、下着はぐしょぐしょだな。どうやら、水晶は汁が多い性質のようだ。婚約をしていたのに、俺はそんなことも知らなかったのだな……」
雷雲は自嘲気味に笑った。
だが、水晶はそれどころではないようだ。
ますます、興に乗って動き出す雷雲の指に翻弄されている。
顔は上気して真っ赤だ。
鼻息は荒くなり、口から甘い吐息とともに嬌声もこぼれ出す。
「このまま気をやって見せてくれ、水晶」
「そ、そんなことできません、雷雲殿──。あ、ああっ……い、いい加減におやめ……ください──」
水晶が両手を背中に組んだまま腰をもじつかせて叫んだ。
すると雷雲が今度は、顔を朱姫に向けた。
「朱姫、さっき水晶にかけたあなたの言葉は、おかしな感じだったな。あれは『縛心術』かなにかなのか?」
雷雲が言った。
しかし、水晶の股間を責める下袍の下の手はそのままだ。
水晶はますます大きな身悶えをはじめる。
「強いものじゃありません。ただ、隠れている性癖を表に出す暗示の言葉を言っただけです。その言葉を耳にすると、水晶さんは隠している被虐の性癖が身体を支配し、雷雲さんの言葉には逆らえなくなるんです。そういう暗示を与えました。その代わり、水晶さんの性欲は実はすごく昂ぶってしまうから、ちゃんと抱いてあげないといけなくなるんですが……」
「どんな暗示の言葉なのだ?」
「異常な夫婦……です」
朱姫がそう言うと、水晶の反応が大きくなった。
おそらく、さらに欲情が高まったのだろう。
「なるほど、異常な夫婦か……。俺たちに相応しいな」
雷雲が笑った。
「そ、その言葉を口にしないで──」
水晶が悲鳴をあげた。
「ならば、異常な夫婦に相応しい姿を見せろ、水晶。太腿の力を完全に抜け。このままいくんだ……。い、じょ、う、な、ふ、う、ふ……」
雷雲が暗示の言葉を水晶の耳元でささやいた。
「あはあああっ」
水晶の全身の力ががっくりと抜けたのがわかった。
雷雲の指がさらに水晶の股間に埋まり込んだみたいだ。
おそらく、下着の横から水晶の女陰に指を直接入れたのだろう。
「あはああ──」
突然、大きな声をあげたかと思うと水晶は、上半身を思いきり仰け反らせて腰を激しく前後に動かした。
がくりと倒れかけた水晶の身体を雷雲が抱きとめた。
「腕を離していいぞ……」
雷雲が言った。
水晶が雷雲にしがみついた。
そして、さらに全身を震わせて総身を悶えてよがった。
やがて、水晶は、すべての力を失ったかのように立ったまま雷雲にもたれかかる。
雷雲はその水晶をしっかりと抱く。
「俺はこんな抱き方が好きな男だ。俺の性癖を受け入れてくれ、水晶……。いま、俺はお前を賊徒たちに奪われかける前よりも身近に感じる……。改めてお願いする。俺の妻になってくれ──。いや、やはり、頼むのはやめだ。俺はお前を妻にする。奴隷妻だ。普段は俺を助けてくれる頼もしい相棒だが、性愛のときにはお前は俺の奴隷妻だ。いいな──」
雷雲は言った。
そして、水晶の口に唇を合わせる。
ふたりはむさぼるような接吻を始めた。
宝玄仙はにんまりとした。
「まあ、収まるところに収まったというわけだね……。ところで、朱姫、お前は、また、この前と同じ暗示の言葉を使ったのかい? 陳達と長女金のときにも同じ暗示を使わなかったかい?」
宝玄仙は朱姫に言った。
「だって、同じように夫婦なんですから、同じ暗示の言葉でも問題ないですよね」
「まあ、そうだけど、正確には、まだ夫婦じゃないよ。夫婦でない期間は、暗示の言葉が“夫婦”だと不便もあるんじゃないかい?」
なんとなく宝玄仙は言った。
「そのことなんですが、宝玄仙殿にお願いがあるんです」
雷雲だ。
すでに雷雲は水晶から口を離している。
だが、両手はしっかりと水晶を抱きしめたままだ。
「お願い?」
宝玄仙は雷雲と水晶を見た。
「俺たちは、明日にはここを出て朱紫国に戻ろうと思います。その前に、ここで結婚の婚儀をしたいのです……。婚儀と言っても、簡単なもので本格的な儀礼は、里に戻ってお互いの親族を招いてのものになると思います」
「そうかい」
「しかし、多くの者が死んだし、その始末もあるし、それに喪に服す期間を待たねばならんので、正規の結婚の儀はかなり、先のことになるのは間違いありません。だから、ここでふたりだけであげておきたいのです。その立会人になって欲しいのです。あなた方に……。俺はあなたの立ち合いで水晶と夫婦の縁を結ぶ儀式をしたい──」
「断る理由はないようだね。その代わり、わたしのお願いも後で聞いてもらうよ」
宝玄仙は言った。
「そう言えば、そんなことを言っていましたね。わかりました。どんなことでも命じてください……。というわけだ、水晶──。明日は、宝玄仙殿の前で夫婦の誓いをしよう──。拒否は許さない。表の夫婦としての儀式はもう少し先になると思うが、俺の奴隷妻としての儀式は、先にここでやってもらうからな」
「ら、雷雲殿……」
水晶が涙を浮かべてぎゅっと雷雲に抱きついた。
「はがああああ──。なんとかしてくれ──なんでもする──なんでもするから──」
ずっと呻き続けて腰を振っていた権白狼が、ついに発狂したような大声を発した。
もの凄い力で拘束された高尻の姿勢の身体を揺すっている。
しかし、もちろん、拘束が緩む気配はない。
権白狼のだらしなく開いた口からは涎が垂れっぱなしだし、眼が完全に焦点を失っている。
激しく動くことにより、手首の首輪の部分の肌が破けて血が滴り出している。
「おお、権白狼、お前のことを忘れていたぜ。どうだ、俺が痒みを癒してやろうか?」
雷雲が水晶の身体を離して、権白狼に言った。
そして、持ったままだった責め棒に気がついて、再びそれを権白狼の顔の前にかざした。
すると権白狼が吠えるように身体を揺すぶった。
「おうおう、そんなに嬉しいか……。わかったぜ。俺も情け深い男だしな。痒みを消してやるよ。ただし、条件があるけどな……」
雷雲は不敵な笑みをすると、水晶に命じて朱姫のいる食材が集めてある席から平らな皿を持ってこさせた。
そして、それを受け取ると権白狼の顔の下に置く。
皿が眼の前に出されたことに呆気にとられた表情の権白狼の前で、雷雲はいきなり下袴の前から一物を取り出した。
そして、床に密着している権白狼の頭の上から小便を始めた。
「うわっ……。な、なんだ──?」
一瞬だけ正気に返った感じの権白狼が狼狽えた声をあげた。
その権白狼の頭の上に雷雲の尿が注がれる。
どうやら権白狼の顔の前に置いた皿に小便をしているようだが、皿と権白狼の顔が同じ位置にあるので、当然、権白狼の頭に上から注がれるかたちになっているのだ。
「わっ、しょ、小便か──。ら、雷雲か──?」
権白狼が叫んだ。
「ああ、俺の小便だ。喉が渇いたろう。たっぷりと飲んでくれよ。その皿の小便を全部飲み干したら、痒みを取り除いてやるぜ」
雷雲が一物を股間にしまいながら言った。
宝玄仙は噴き出した。
自分の小便を飲まそうというのはなかなかの冷酷さだ。
宝玄仙は気に入ってしまった。
「ほ、本当だな……?」
権白狼の顔が屈辱で歪んだのは一瞬だ。
いまは痒みの苦しさが上回っているのだろう。
すぐに舌を出して、皿に溜まった小便を舐める仕草になった。
「なにやってんだ、権白狼──。口で飲むんじゃねえよ。鼻で吸え──。鼻で全部吸い取ったら、痒みを癒してやる」
「な、なんだと──」
権白狼の顔が怒りで真っ赤になった。
「そりゃあ、いいねえ……。雷雲、お前は最高だよ。いい友人になれそうさ。そういう馬鹿げた嗜虐は大好きさ……。ほらっ、権白狼、鼻で飲みな。その小便を全部ね。そうしたら、痒み責めは勘弁してやるよ──。そうだ。それだけじゃあ、面白くないね──。朱姫、唐辛子の瓶があったろう。それ持っておいで──」
宝玄仙は声をあげた。
朱姫がすぐに真っ赤な唐辛子の入った小瓶を持ってくる。
宝玄仙はその蓋を開けて、中身を全部、雷雲の尿が溜まっている平らな皿にぶちまけた。
「ほらっ、特性の汁を作ってやったよ。全部、飲むんだ。まごまごしていると、道術でどんどん痒みをあげていくよ。ほらっ、鼻を皿に入れないかい──」
宝玄仙は手でぐいと皿を権白狼の顔にさらに押しつけた。
権白狼は泣き出してしまった。
「……ここはもういいよ、雷雲。水晶はお前に抱かれたいような顔をしているし、お前もそうさ。適当な部屋を見つけて、水晶を抱いておいで……。お前たちはもう大丈夫そうだ……。宝玄仙の治療はこれで全部終わったよ」
宝玄仙は雷雲と水晶に振り向いて言った。
雷雲は感謝と畏敬のこもった顔を……、水晶は動揺と羞恥の混じったような顔を宝玄仙に向けた。
ふたりがほぼ同時に頭を下げる。
「そう言えば、沙那と孫空女はどうしたんだい、雷雲? あいつらを抱いたことが、お前の立ち直りのきっかけになったことは事実なのだろうけど、随分と早くなかったかい?」
水晶を連れて立ち去りかけた雷雲に、ふと疑問に持って宝玄仙は訊ねた。
雷雲の立ち直りのきっかけになればと思って、沙那と孫空女を雷雲に抱かせたのだが、その時間は一刻(約一時間)くらいしかなかった。
別に性愛としては十分な時間だが、あいつらにしては、なんとなく早いという気もする。いったい、どうしたのだろう。
すると雷雲は複雑そうな表情で微笑んだ。
「彼女たちは随分と疲れていたようですね、宝玄仙殿……。まあ、無理もないですよ。たったふたりで、ここの賊徒を制圧しただけでなく、聞けば、それまでにかなりの距離を走り、馬で駆けたようですし……。俺も責めすぎたところもあって、途中で疲れて……」
雷雲がそう言ったので、宝玄仙は驚いてしまった。
あのふたりのことだから、あっという間に連続絶頂して、雷雲を驚かせたに違いないが、まさか、自分たちだけ達して、雷雲を置き去りにしたということはないだろうか……。
しかし、雷雲の雰囲気には、なんとなく、その気配がある……。
「ま、まさかと思うけど、あいつらお前の相手を最後までやってから寝たんだろうねえ。お前は何回くらい精を放ったんだい?」
宝玄仙は訊ねた。
「いやいや、彼女たちの身体は十分に堪能しましたよ……。ただ、あんまり早く達するので、なかなか息が合わないし、まあ、彼女たちも疲れていたようだし……」
「お前、あいつらに精を放てなかったのかい──」
宝玄仙は驚いて声をあげた。
「いやいやいや……。彼女たちは素晴らしい女性たちでしたよ──。俺はすっかりと満足しましたから──」
宝玄仙の権幕と怒りにたじろぎの表情を見せた雷雲が言った。
「いや、いい、これはこっちの話だから……。冗談じゃないよ。宝玄仙の供ともあろう者が、伽を命じた男の精を出させることなく、先に寝てしまうなんてね──。こりゃあ、生半可な罰じゃあ不十分だよ──。この禿げ坊主と一緒に、鼻で辛子入りの小便をすすらせてやる──。朱姫、ふたりを叩き起こしておいで──。いや、やっぱりいい。わたしが連れてくる──。朱姫、お前はここで権白狼の面倒を看てな」
宝玄仙は怒鳴った。
そして、沙那と孫空女がいるはずの部屋に向かう。
「待ってくれ、宝玄仙殿──。あのふたりには満足させてもらった。本当だ──」
雷雲が叫んで宝玄仙を止めるように追いかけてくる。
宝玄仙は振り返った。すると朱姫がその雷雲を止めていた。
「まあまあ、こっちはいいです。いつものことですから……。気にしないでください。それよりも、ご主人様が戻る前には消えておいた方がいいですよ。ご主人様の本気の責めは、なかなかに過激ですから、ここにいたら、今夜、おふたりが愛し合う機会を逸してしまうかもしれませんよ」
朱姫がそんなことを言っている。
宝玄仙は苦笑した。
「しかし……」
「“しかし”じゃないです。さあ、行って……。行かないと水晶さんが可哀そうですよ。あの暗示は、本当に利くんですから──。欲情したのになんにもしてもらえないのは女はつらいんですよ──。い、じょ、う、な、ふ、う、ふ……。ねっ?」
「そ、それはやめて──」
水晶が朱姫の暗示の言葉に顔を真っ赤にして、我慢できなくなったかのように両手で自分の股間を押さえた。
「ふぎゃああ──」
すると突然に権白狼が、奇声をあげて暴れ出した。
どうやら、大量の辛子の入った雷雲の小便を鼻で啜ろうとして、その刺激に悲鳴をあげたようだ。
宝玄仙はその哀れな姿に、しばらく手を叩いて笑い続けた。
(第65話『盗賊団と魔女』終わり、第66話『寝取られ男女の結婚式』に続く)