「小話集」は、以前投稿していたときに使用した章区切りの単話、拍手お礼で使用したエピソードなどを集めたものです。
まとめて、一話ずつ投稿します。
『絶頂の賭け』は、時期的には、孫空女が宝玄仙の供になり、帝国の国境を超える直前くらいの時期になります。
まだ、朱姫は仲間にはなっていません。
*
421 単話・逆転調教【市松】
「俺は黒髪だ。残りのふたりを誰が最初に喰うかは、お前らで決めていい──」
街道を進んでくる三人連れの女の姿がはっきりと確認できるくらいになると、頭領が言った。
すると、追剥たちが一切にひそひそと話し始めた。
「じゃあ、俺は栗毛……。いや、赤毛にするかな……」
「待て、待て──。俺はああいう気の強そうな女を責め抜いて泣かせるのが好きなんだ。俺が赤毛を犯したい」
「くじだくじ──。くじにしようぜ」
「馬鹿、そんな暇はあるかよ。そんなことをしているあいだに逃げられちまうじゃあねえかよ」
追剥たちの言い争いは、だんだんと激しくなってきた。
一方で、この追剥団の下っ端である
「誰が最初でも同じだろう──。どうせ輪わすんだからよう──。全員が穴にはありつけるから心配するな。とりあえず、女たちを捕まえてからのことだ。間違っても殺すんじゃねえぞ──。殺すのは犯してからだ。それと服は破くな──。破れた服は値打ちが下がる。しっかりと捕まえてから、慎重に素っ裸にするんだ。犯すのも、まずは服を脱がしてからだ──。わかったな──」
頭領が一喝した。
とりあえず、静かになる。
ここは街道を見おろす位置にある道沿いの丘であり、市松が一緒にいる彼らは、国境沿いの山越えの街道を旅する者を狙う追剥の集団だ。
人数は頭領を含めて十人であり、市松を入れれば十一人になる。
もっとも、頭領たちは、市松を一人前の仲間とは思っていないだろう。
市松もまた、まだ自分がこの連中の仲間だとは思っていない。
なにしろ、市松がこの盗賊団に加わったのはつい先日のことであり、それ以前は、小さな隊商の一員として下働きをしている小僧だったのだ。
身寄りはない。
歳は十五だ。
どこでなにをしたとしても、心配する係累はもういない。
だから、あの国境越えの隊商にくっついて西方諸国にでも流れ、そこからまた、どこかを旅でもしようかと考えていた。
だが、東帝国を越えようとしたところで、この国境沿いの盗賊たちの襲撃を受け、隊商の荷は奪われて商人たちは散り散りに逃げていったのだ。
逃げ遅れたのは市松だけであり、捕えられて殺されそうになった。
しかし、持ち前の口のうまさでここの頭領に取り入り、なんとかこの盗賊団の雑用係として加えてもらうことに成功した。
そして、いまは、市松がこの盗賊団に加わって最初の襲撃だ。
やってくるのは、三人連れの旅の女であり、この盗賊団にとっては格好の追剥の獲物らしい。
だが、こうやって隠れているあいだに、その三人のいずれも大変な美女だということがわかり、それで俄然、ここにいた連中が色めきだってきたのだ。
そして、誰が最初に、それぞれの女を犯すのかということでもめ始めたというわけだ。
「……とにかく、まずは、ひとりだけ剣を持っている栗毛の女を取り囲め。女三人だけで旅をするくらいだから、あの女はそれなりに、腕に心得えもあるのかもしれねえ──。だから、みんなで囲め──。残りのふたりは丸腰だ。どうということはねえ」
頭領が素早く言った。
盗賊団の男たちが大きくうなずく。
だが、後ろで聞いていて、市松は疑問に思った。
あの三人連れの女のうち、栗毛の女だけが剣を持っているのは確かだが、しかし、荷を持っているのも、栗毛の女だけだ。
もしも、栗毛の女が三人のうちの用心棒役だとすれば、栗毛の女だけが荷を担いでいるのは不自然だ。
荷を持っていては、咄嗟の襲撃に対応しにくい。
逆に、まったく荷を持たずに先導しているのは、背の高い赤毛女だ。
市松には、あの赤毛女こそ、一番強そうに思えた。
それに、真ん中で馬の横を歩いている女──。
天教の巫女服を身に着けているが、随分と装飾具が豪華だ。
もしかしたら、それなりの格式のある女神官ではないだろうか──。
天教の巫女といえば道術遣いだ。
そうであれば、こんな辺境の追剥などひとたまりもないのかもしれない。
そもそも、女三人で物騒なこの界隈の街道を旅するというのは不自然だ。
頭領たちの言うとおり、こんな物騒な地域を女だけの旅など不用心だ。
だからこそ、獲物だと思う前に、なにかあると考えるのが常識ではないのだろうか……?
だが、ここの頭領をはじめ、男たちの誰ひとりとして危ぶむ者はいない。
それどころか、捕えた後の皮算用に夢中だ。
まあいい──。
どうせ関係ない──。
市松が考えているのは、できればこの騒動に紛れて、この盗賊団から逃亡をすることだ。
おそらく、できるだろう──。
聞いている限りにおいては、これから女三人を捕えた後で、ここで輪姦が始まるようだ。
そうなれば、女たちを犯すのに夢中になり、新入りの雑用係ひとりがどこに行っても気にも留めないだろう。
市松は、騒ぎに紛れて、ここから逃亡することに決めていた。
「行くぞ──」
頭領が声をかけた。
わっという歓声とともに、それぞれの武器を手にした追剥たちが丘を駆けおりていく。
市松もとりあえず、得物として準備した棍棒を持って、一番後ろから丘をおりていく。
だが、思っているのは、隙があればすぐに逃亡しようということだけだから、その速度はゆっくりとしたものだ。
当然、ほかの者とはかなり離れて後ろからついていく態勢になった。
頭領たちは、奇声のようなものをあげながら、どんどんと盗賊たちは進んでいく。
市松はさらに速度を落として、最後には歩くような感じでゆっくりと斜面の下の街道に着いた。
「え、ええ──?」
しかし、市松が街道に辿り着いたとき、そこに待っていたのは驚くべき光景だった。
すでに闘いは終わっていて、追剥たちの全員があっという間にやられてしまっていたのだ。
十人の男たちのうち、三人は荷もおろさない栗毛の女に斬り捨てられていて、五人は赤毛女がいつの間にか取り出した金色の棒で打ち据えられ、さらに反対側の街道の下の崖に次々に蹴り落とされていた。
逃亡することができたのは、ひとりかふたりだろう。
頭領は倒れている男たちの中にはいない。
崖に落とされた者の中に入っていたのか、逃亡に成功した者の中にいたのかはわからなかった。
とにかく、あっという間の出来事だったようだ。
市松は呆然とした。
そして、市松は間抜けなことに、十人の荒くれ男たちが一瞬でやられてしまうほどの女傑たちの前に、棍棒ひとつを持っただけでやってきてしまうかたちになっていた。
「沙那、簡単に人を殺すんじゃないよ──。これでも天教の巫女なんだからね。殺生はご法度だよ──」
黒髪の巫女が不機嫌な顔で怒鳴った。
「申し訳ありません、ご主人様──。つい、咄嗟で……」
剣を抜いていた栗毛の女が剣を収めながら項垂れた。
この女は沙那というらしいが、この沙那と、もうひとりの赤毛の女が女主人らしい黒髪の女を守ったように思えた。
それなのに、逆に怒鳴られるなど、市松にはなにか理不尽なものを感じてしまった。
「まあ、いいじゃないか、ご主人様──。確かに、いきなりだったし、人数も多かった──。手加減なんかしていたら、ご主人様に怪我でもさせたかもしれないし、そうなったら、大変だったし……」
赤毛女がなだめるように口を挟んで、三人の死骸をさらに街道の下に蹴り落としていく。
市松はその間、茫然としていた。
なにをどうしていいかわからなかったのだ。
だが、その赤毛女が持っている金色の棒を市松に不意に向けた。
「うわっ──」
凄まじい棒捌きだ。
棒を向けられたときの素早さは市松の度肝を抜いた。
市松は悲鳴をあげて、その場に尻もちをついてしまった。
「それよりも、こいつどうする、ご主人様──? どうやら、仲間のようだよ──。そうなんだろう、お前──?」
口調は穏やかだが、金色の棒は市松の目の前に突き付けられていて、いまにも打ち据えられそうだ。
市松は恐怖で震えてしまった。
「どうということもないわよ、孫女──。もう、行きなさい、あんた──」
沙那という女が言った。
市松はなにも考えなかった。
とにかく、逃げるのだ──。
すぐに立ちあがろうとした。
「まあ、ちょっと待ちなよ……。よく見れば、可愛らしい顔をした少年じゃないかい──。ちょっと、物陰に連れていって三人で輪してやろうじゃないかい──。こいつだって、わたしらを襲おうとした追剥の一味なんだろう? 棍棒も持っているしね──。だったら、ちょっとくらいの罰を与えなくっちゃ」
黒髪の巫女が市松が立ちあがるのを邪魔するように、市松の前に立ちはだかる。
三人で輪わす──?
つまり、市松がこの美女たちに輪姦される?
市松はこの黒髪の女の喋ることの意味がわからずびっくりした。
それとも、まさかとは思うが、言葉通りの意味なのだろうか……?
男の市松をこの三人の美女が輪姦するとでも言っているのか──?
「な、なに言ってるんです──。そんなことしませんよ──。ほら、ぼやぼやせずに、逃げるのよ、お前──。行きなさい──」
沙那が慌てたように市松に怒鳴った。
だが、ほぼ同時に、黒髪の巫女が市松の足になにかを放った。
金属音が足首で鳴り、気がつくと鎖で繋がった足輪が両方の足首に嵌まっている。
「ひっ」
市松は声をあげた。
これは霊具だ──。
逃げられない──。
市松の身体はさらに恐怖に包まれる。
「どこにも行かせないよ、坊や──。さあ、一緒に来な──。少し戻ったところに、街道から隠れた林があったね──。さっき、昼餉を食べたところさ。そこに戻るよ、お前たち──。そこなら街道からは隠れているし、わたしが結界を作ってやる。この坊やを三人で喰うとしようよ──。孫空女、連れてきな」
黒髪の巫女が言った。
「い、嫌だったら、嫌です──。そんなことしません──。ご主人様、考え直して──。国境を超えるのが遅れますよ──。そんなことをしたら、また越境が遅くなっちゃう。今日中に天教の神殿に到着しません──。もう、予告の手紙は送ったから、向こうでもご主人様の到着を待っているんじゃないですか──? また、路銀稼ぎの祭典を受け入れるんでしょう?」
「いいだよ──。そんなのは──。別に時間の決まっている旅じゃないんだ──。追剥に襲われて遅れたと言えばいいんだ──。本当のことだしね……。それに、この前、本当のことを教えただろう──。この旅はただ、わたしが帝都でやらかしたことのために、逃亡しているだけのことだ──。それよりも、わたしに逆らうとはいい根性じゃないかい、沙那──。覚悟はいいね──」
黒髪の女が沙那を睨んだ。
「うふうっ」
次の瞬間、沙那が真っ赤な顔して腰と膝を曲げた。
なにをされたのかはわからない。
だが、なにか苦しそうだ。
真っ赤な顔になって両手で股間を押さえて、身体をもじつかせている。
「孫空女、連れて来いと言っているだろう──。それとも、お前も沙那と同じ目に遭いたいかい──」
「わ、わかったよ、ご主人様──。仕方ない……。さあ、お前はあたしらと一緒に来るんだ──。ちょっとあたしらの相手をするだけだ。多分、あのご主人様は、命までは奪わない……と思うよ……」
孫空女という名らしい赤毛女が、市松の腕を掴んで立たせる。
「あ、相手って、な、なんですか?」
市松は思わず言った。
すると、黒髪の女主人が笑いながら、いきなり市松の股間を握りしめてきた。
「うわっ──うわあっ──。な、なに? ちょ、ちょっと──」
市松は思いもよらないことに狼狽えた声をあげてしまった。
「女が三人──。そして、お前は若いが、男だろう──。だったら、やることはひとつだ──。お前がわたしらを強姦するんだ。わたしらを襲おうとした酬いとしてね──。まあ、お前の仲間は、全員が死ぬか、それとも足腰立たないようにされて崖下に捨てられたんだ。それに比べれば、いい思いをするだけだ。いいじゃないかい──。さあ、おいで──」
女主人が市松の股間を離すと、すたすたと道を引き返していく。
「ま、待って、ご主人様──。ひとりでいかないで──。沙那、一緒に行って──」
孫空女が慌てて声をかける。
だが、沙那はまだ腰を屈めたままであり、歩くことができないようだ。
その顔は苦痛だというよりは、とても淫らだった……。
もしかしたら、なにか淫靡な道術を掛けられたのだろうか……?
市松はごくりと唾を飲んでしまった。
「仕方がない──。急ぐよ、お前──。ま、待って、ご主人様──」
孫空女が片手に市松の腕を取り、女主人を追い始めた。
「ま、待ってください。お、俺もなにがなんだか……。俺って、殺されるんですか? なにもしてないです。ねえ、俺、下っ端で、しかも、これが最初の襲撃で、しかも、隙を見て逃げようとしてただけで……」
市松は狼狽えて声をあげた。
だが、孫空女の力は強い。
どんどんと引っ張られる。
「命を奪いやしないよ。お前がわたしたちを強姦するんだよ。それがしたかったんだろう」
前を進む宝玄仙という巫女が大笑いした。
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そして、翌朝まで、その三人の美女と滅茶苦茶、
一生分くらいの精を搾り取られたと思う……。