「き、着てきたよ、ご主人様……」
孫空女は、身体の前でぎゅっと裾を手で押さえるようにして、宝玄仙と朱姫が待っている部屋に入った。
なんとなく、屠殺場に引き出された家畜の気分だ。
今日の宿は、二部屋続きの部屋であり、宝玄仙と朱姫、そして、孫空女と沙那という組み合わせでそれぞれに休むことになったのだが、例によって、孫空女と沙那のどちらかが、宝玄仙と朱姫の夜の遊びの相手をしろと命じられた。
遊びの相手といえば、どういう意味かというのはわかりきっている。
沙那と公平にじゃん拳で決めて、孫空女が負けた。
沙那の喜びようというのは、見ていてむかつくほどだった。
その沙那は、すでに隣室で掛布にくるまって眠っている。
一方で負けた孫空女は、宝玄仙から着替えて来いと言われて、真っ白い着物を渡された。
それ以外には、一切身に着けるなということだから、仕方なくそうしたが、渡されたのは丈の短い一枚物の薄い着物だった。
帯のようなものはなく、着物の内側と外側に小さな紐がついていて、それぞれに結ぶようになっている。丈は太腿の半分くらいだ。
短いし、薄いし、合わせ部分は一箇所だけだし、すごく頼りなくて恥ずかしい。
「よく似合いますよ、孫ちゃん」
朱姫が愉しそうに声をかけてきた。
宝玄仙も朱姫もこの部屋にある椅子に腰かけている。
「そ、孫ちゃん?」
孫空女は、朱姫のおかしな呼びかけに、思わず問い返した。
「いいから、そこに寝な。今日はなにもしなくていいよ、孫空女……。そういう遊びなんだ」
宝玄仙がにやにやと笑いながら、顎で寝台を指した。
この部屋には、寝台がふたつあり、宝玄仙が示したのは、そのうちの手前の方だ。
なにをされるかわからないが、抵抗も質問も無意味だということを知っているので、言われた通りに横になる。
「待ってください、ご主人様──。涎掛けを忘れていました」
朱姫がそう言って、横に置いていた小さな布を取りだして、寄ってきた。
「な、なんだい、それ?」
孫空女は身体を起こしかけながら、孫空女の首にその布をかけようとしている朱姫に声をかけた。
それは、赤ん坊がよくするような涎掛けだ。
色は薄い桃色で、わざわざこしらえたように思える。
「いいから、寝ていろ、孫空女──。お前は今日は赤ん坊なんだ──」
すると、宝玄仙から大喝された。
「あ、赤ん坊?」
孫空女は慌てて、仰向けの体勢に戻りながら言った。
「そうですよ、孫ちゃん。今日は、赤ん坊の孫ちゃんです……。お姉ちゃんがお世話してあげますね。宝母さんにも、甘えていいですよ」
朱姫が孫空女の首に涎掛けの紐を回しながら言った。
赤ん坊ごっこ……?
どちらの考えかしらないが、おそらく朱姫だろう。
孫空女は、その馬鹿げた名の遊びに鼻白みそうだ。孫空女は、黙ってされるままになりながらも小さく嘆息した。
「じゃあ、孫空女、身体を弛緩させるよ。赤ん坊だから、身体は動かないだろうからね」
朱姫が孫空女の首に涎掛けを着け終ると、宝玄仙が孫空女の身体に道術をかけてきた。
「あっ」
孫空女は思わず声をあげてしまった。
全身の筋肉がすっと力を失ったのだ。
指先くらいはかすかに動く。
しかし、それ以外は完全に力が入らない。
「さあ、じゃあ、まず、お乳を飲みましょうね、孫ちゃん……。でも、朱姫お姉ちゃんは、お乳は出ないので哺乳瓶であげますね」
朱姫がそう言いながら、白い液体の入った哺乳瓶を取り出して、再び寝台にやってくる。
「な、なに、それ? お、おかしな薬じゃないよねえ、それ?」
思わず孫空女は横になったまま、声をあげた。
このふたりの準備する飲食物に碌なものはない。
すると、朱姫の指がすっと孫空女の足の裏に伸びてきた。
そして、指でくすぐり始める。
しかし、全身が弛緩して動けない孫空女には、それに抵抗できない。
「わっ、わっ、や、やめてっ、朱姫……く、くすぐったいよ……ひっ、ひひひっ、や、やめっ──」
朱姫のくすぐりに孫空女は悲鳴をあげた。
「赤ちゃんのくせに、言葉を使っちゃだめですよ、孫姉さん──。ちゃんとやってください。さもないと、赤ちゃんごっこはやめて、くすぐりごっこに変えますよ──。わかりましたか?」
朱姫が孫空女の足の裏を執拗にくすぐりながら、叱るような口調で言った。
「ひゃははは……わ、わかったから……や、やめてよ……朱姫……く、くすっぐたい……ひゃはあ、ひゃ、ひゃあああ……」
「わかってないじゃないですか、孫姉さん……。赤ちゃんは、“あぶう”とか“ぶう”とか言うんですよ。赤ちゃん言葉以外を使ったら、くすぐり地獄ですといっているじゃないですか」
朱姫はさらにくすぐりながら言う。
「そりゃあいいねえ……。じゃあ、孫空女の足の裏のくすぐりに対する感度を十倍ほどにあげておくよ。足の裏を責められると、狂い泣くようにね……ふふふ……」
宝玄仙が横から愉しそうに口を挟んだ。
すぐに身体に宝玄仙の道術が入り込んだのがわかった。
その途端に、いままでくすぐられていた足の裏が、発狂するような衝撃に変わった。
足の裏から、とんでもないくすぐったさが襲ってきた。
「ひぐうっ、ぎゃあははは……ははは……ひゃあ、ひゃあ……あぶう、あぶう……ぶう……ひゃあはは……」
あまりのくすっぐたさに、孫空女は必死になって、あぶうとか、ぶうとかの赤ちゃん言葉を繰り返した。
しかし、足の裏のくすぐったさで息が止まる……。
言葉が喋れない……。
死ぬ……。
孫空女は悲鳴をあげた。
やがて、息がとまって悲鳴もあげられなくなった。
すると、やっと、朱姫が足の裏のくすぐりをやめた。
孫空女は、弛緩した全身をがっくりと脱力させた。
なんとか懸命に息を整える。
「じゃあ、やり直しですよ、孫ちゃん……。お乳の時間です。全部、飲むんですよ……。さもないと、こちょこちょしちゃいますよ」
朱姫が寝台に完全にあがって正座になり、孫空女の上半身を両膝に抱えるように載せた。
そして、孫空女の首を腕で抱き、手に持っている哺乳瓶の吸い口を孫空女の口に寄せる。
こうなったら、仕方がない……。
とことん、付き合うまでだ……。
孫空女は口をあげて、哺乳瓶の先を咥えた。
ぬるい……。
中身はほんのりと甘みのある生ぬるい液体だ。
なにかの薬剤が混じっている感じがした。
だが、観念して飲んだ。
なにが入っていても、諦めるしかない……。
「なんか、不思議な気分ですよ、ご主人様……。本当に赤ちゃんを抱っこしているような気分になります」
朱姫が愉しそうに、宝玄仙に言った。
そのあいだも、孫空女はずっと哺乳瓶で中の白い液体を飲まされ続けている。
時折、休ませるように哺乳瓶を離され、孫空女は、それに合わせて、“あぶう”とか“ばぶう”とか声を出す。
恥ずかしくて、顔が真っ赤になるのがわかったが、そうしなければ、足の裏のくすぐり責めだ。
もう、腹をくくって、赤ちゃんになりきって声を出した。
そして、すっかりと哺乳瓶一本分の液体を飲まされた。
「じゃあ、背中を擦ってあげますから、げっぷをしましょうね……。お、重い……」
朱姫が孫空女の身体を抱えて、肩に上半身を載せるようにした。そして、手のひらで孫空女の背中を軽く叩くようにする。
「ほう、様になってるじゃないか、朱姫」
宝玄仙が笑った。
「あたしも、それなりにいろいろな経験がありますから……。はい、じゃあ、孫ちゃん、げっぷですよ」
孫空女は口から軽いげっぷをした。
一本分の哺乳瓶の液体を飲まされて、背中をさせられると自然に出た。
なんか変な気分だ。
「じゃあ、交替ですよ、ご主人様……」
朱姫が孫空女を寝台に横にしながら言った。
「おや、次はわたしもかい?」
朱姫のやることを興味深そうに見ていた宝玄仙が、戸惑ったような声をあげた。
「もちろんですよ。でも、ご主人様は、お母さん役ですから、母乳をあげてくださいね」
「母乳かい?」
宝玄仙も驚いている。
「もちろんですよ──。ご主人様だったら、道術で母乳くらい出せますよねえ……。孫姉さんもちゃんと、赤ちゃんをやってるんですから、ご主人様もお母さんをやってあげないと可哀そうですよ」
朱姫が言った。
「仕方ないねえ……。じゃあ、やるかねえ」
宝玄仙が苦笑しながらやってきた。
その顔はなんか照れたように赤い。
宝玄仙も恥ずかしいのかもしれない。
なぜか、孫空女は自分の心臓の鼓動が急に激しくなるのがわかった。
「じゃあ、だっこするよ」
宝玄仙が寝台にあがってきて、朱姫と入れ替わるように正座にして、両膝の上に孫空女の上半身を乗せた。
「あぶう……」
孫空女は赤ん坊のような声を出した。
「お、お前、赤ん坊なんだからね……。舌を使うんじゃないよ……。ただ、吸うだけだよ──」
宝玄仙が照れたような表情で自分の上衣をくつろぎ始めた。
「ご主人様、そんな興醒めを言っちゃ駄目ですよ。ちゃんと、孫姉さんは赤ちゃんをやりますよ」
朱姫が寝台の横から笑いながら声をかけてきた。
宝玄仙がすっかりと上半身をもろ肌脱ぎになった。
胸当てを片手でずらして、片方の乳房を孫空女の口に寄せてくる。
「じゃあ、孫ちゃん、飲んでおくれ……」
宝玄仙が自分の乳首を孫空女の口に咥えさせた。
ごくりと唾を飲み込んでから、孫空女はその乳首をちゅうちゅうと吸い始めた。
孫空女は、ちゅうちゅうと音をたてながら、宝玄仙の乳首から出てくる生温かいものを吸い続ける。
宝玄仙はくすっぐたそうで、それでいて、なにか恍惚としているような表情だ。
宝玄仙の乳首からは、口で吸うと、本当に母乳のようなものが染み出てくる。
恥ずかしいとか、淫らとかいうよりも、なんだか、本当に母親に抱かれて母乳を飲んでいるような、不思議な昂揚感に孫空女は包まれた。
しばらくのあいだ、そういう時間が宝玄仙と孫空女を包んだ。
だが、そういう心地よい時間は長いものではなかった。
突然に激しい尿意が襲いかかってきたのだ。
すぐに、さっき朱姫に飲まされた液体のせいだと思った。
なにかの薬剤が混ざっているのはわかっていたが、どうやら利尿剤だったようだ。
「おや、随分と、太腿をもじもじとさせはじめたじゃないかい、孫空女……。いや、孫ちゃん」
宝玄仙が乳房から孫空女の口を離しながら言った。
おしっこをしたい──。
そう言おうとして、さっき、赤ちゃん言葉を使うように強要されたことを思い出した。
言いつけに背けば、朱姫も宝玄仙も容赦なく、くすぐり責めに孫空女を遭わせるだろう。
「あっ、あぶう……あぶう……」
孫空女は、猛烈に迫ってきた尿意をふたりに訴えた。
「あらあら、どうしたのかしらねえ、孫ちゃん? もしかしたら、身体が痒いのかなあ? こことか掻いて欲しい?」
朱姫が合わせ布の衣服をくつろげて、孫空女の乳房にすっと指を差し入れた。
「あぶううっ、ぶうっ──」
朱姫が指でころころと乳首を回すように動かした。堪らず孫空女は声をあげた。
「頑張るじゃないかい、孫ちゃん……。わたしは、朝までくすぐり責めでもいんだけどね……ふふふ……。それにしても、この赤ん坊がこんなに暴れるのはなんでかねえ……」
宝玄仙もくすくすと笑いながら、ただ布が重なっているだけの着物の裾に手を入れて、股間あたりに手を入れて、撫ぜまわしてくる。
「あぶうっ、ぶうっ」
尿意がそこまで来ている。
孫空女は必死で、それを訴えようと赤ちゃん言葉で訴えた。
「お腹がすいたのかもしれませんね、ご主人様──。あたし、この哺乳瓶をもう一度飲ませてみます」
「そうだね。でも、なんか、下腹部の震えが激しいから、ここが寒いのかもしれないよ。わたしは、ちょっと、ここを揉み動かしてみるさ」
宝玄仙が尿意の震える孫空女の下腹部をぎゅっと押し動かしだした。
一方で、朱姫は、あの利尿剤入りの哺乳瓶の中の液体を再び飲ませようとしてくる。
それで、やっと、孫空女は、このふたりがすべてをわかっていて、孫空女をからかっているのだと悟った。
しかし、どうにでもできない。
もしも、言葉で尿意を訴えようにも、それをすれば、このふたりは、それを喜々と受け取って、孫空女の身体を弛緩させているこの状態で擽り責めにするに決まっている。
第一、孫空女の尿意はわかっているのだから、訴えることは無駄だ。
そして、結局のところ、孫空女は朱姫の持っていた利尿剤入りの液剤を飲まされ、そのあいだ、ずっと宝玄仙の手によって、膀胱を上から揉み動かされる苦痛に耐えた。
「もしかしたら、孫ちゃんは、おしっこをしたいのかもしれませんよ、ご主人様」
「ああ、そういうことかい……。それで身体を震わせていたんだね」
二本目の哺乳瓶を空にしたところで、朱姫と宝玄仙がわざとらしく、そう言った。
もう、どうでもよかった……。
それよりも、漏れる……。
「あ、あぶっ……」
苦しい……。
孫空女は歯を喰いしばった。
「じゃあ、おむつをしましょうか」
朱姫が言った。
孫空女はびっくりした。
「あぶうっ」
いい加減に解放して欲しかった。
しかも、布におしっこをするなんて、本当に赤ん坊になったみたいで嫌だ。
だが、朱姫と宝玄仙のふたりは、孫空女の訴えなど、まるで無視して、いつの間にか準備していた布を取りだすと、孫空女を仰向けに寝台に寝かせ、合わせ着物を完全にはだけさせて、股間を露わにした。
「……さあ、おしめが終わって、いいというまで赤ちゃんは、おしっこをしたら駄目ですよ……。粗相をしちゃったら、こちょこちょを朝までですからね」
朱姫がそう言いながら、鼻歌のようなものを口ずさみながら、布を孫空女の股間に何枚か巻いて、おしめのかたちにした。
「さあ、いいですよ、赤ちゃん。しなさい──」
朱姫が言った。
おしめに尿をするなど、こんなに恥ずかしいことはないが、いずれにしても尿意は限界だった。
孫空女が股間の筋肉を緩めると、耐えに耐えていた尿が一気に吹き飛び、重ねられている布の中に苦痛の噴水を流出させた。
「こりゃあ、随分な音だよ──。こらっ、孫空女──。仮にも赤ん坊役なんだから、もうちょっと、慎みをもって小便をしないかい──。音が布の外にまで派手に聞こえるほどの激しい尿をするんじゃないよ──」
「あぶうっ……」
宝玄仙のからかいの言葉に、やっと尿の終わった孫空女は、あまりの恥ずかしさに、首を横に向けて、ふたりから視線を逸らせた。