「さあ、頑張りましょうね、沙那姉さん……。やめちゃ駄目ですよ。運動を続けてください……。少しでも速度が落ちたら電撃ですよ」
朱姫がくすくすと笑った。
沙那は床に仰向けに寝そべらされて、寝台に両脚をあげるようなかたちで膝から先を乗せている。
その脚が寝台から離れないように固定されていて、沙那はさっきから、朱姫に床につけている上半身を起こして、膝に乳房を触れさせるという運動をさせられているのだ。
その前は、うつ伏せの上体逸らしだったし、さらに前は、昨夜、朱姫にやらせた『無限足踏み台』でやる駆け足運動だ。
孫空女は、宝玄仙と一緒に、朱姫が沙那に運動を強要して責める光景を呆れるような思いで見ていた。
昨夜の仕返しというわけだが、昨日、沙那が喜々として朱姫を責めたのを同じような嬉しそうな顔で、今度は朱姫が沙那を責めている。
孫空女は嘆息した。
昨夜と今夜で、攻守交替させたのは、宝玄仙の命令だが、それは宝玄仙特有の気儘で意地悪な責めのひとつだ。
責め手が責められ、責められた者が今度は同じ者を責める。
それが面白いというのだ。
孫空女には、それのなにが面白いのか理解できないが、ああやって、責め手になったときに、お互いを喜々として責め合う沙那と朱姫の姿を見ていると、宝玄仙も正しいのかなと思うときもある。
とにかく、少なくとも昨夜の沙那は、驚くくらいに冷酷で、そして、愉しそうだったし、ひと晩で攻守交替した朱姫は、本当に沙那をいたぶるのが嬉しそうだ。
今夜の沙那は、両手を背中に回して縄掛けされている。
それは昨夜の朱姫と同じだが、沙那の身体には両乳首と肉芽に『振動片』が装着されている。『振動片』とは、小さな布切れであり、身体に触れさせると、その部位を包んで半透明になり、道術で好きなように振動させることができるという朱姫の霊具だ。
沙那は、それを装着させられたうえに、昨夜朱姫が嵌められていた貞操帯をしっかりと股間に喰い込まされていた。
しかも、貞操帯の内側は前後に張形が嵌っている。
それをずっと動かされながら運動を強要されている沙那は、もう何度も達していて、意識も朦朧としている状態だ。
「い、いくううっ──」
沙那が上体をあげる途中で、全身をぶるぶると震わせて、身体を反らせるような仕草になった。
また、軽く達したに違いない。
沙那の身体はがくんと床に落ちた。
「はぐううううっ──いたいいいい──」
すると、今度はその沙那が絶叫して身体を跳ね起こした。
おそらく、乳首と肉芽の『振動片』に朱姫が弱い電撃を流したのだ。
弱いといっても全身の中でもっとも敏感な場所だ。
そこに直接に電撃を流される沙那には、堪らないだろう──。
「も、もうやめて──ゆ、許して──。降参──。降参よ、朱姫──」
沙那が泣き声をあげた。
一度は電撃の力であがった上体も、もうあがらないのかすぐに床にばたりと落ちた。
いずれにしても、沙那も限界だろう。
朱姫は、三個の『電撃片』と股間の張形をずっと動かしながら運動を強要しているのだ。
どれも最弱の運動らしいが、全身が性感帯のように敏感な沙那には、ずっと断続的な絶頂を繰り返しながら、激しい運動をしなければならないという過酷なものだ。
もう、沙那も達しきすぎて身体がおかしくなっているに違いない。
朱姫がもう一度電撃を加えたが、今度はがくんと身体を跳ねさせただけで、もう起きあがらなかった。
ただ、床に身体を倒して、激しく身体で呼吸をしているだけだ。
「仕方ありませんねえ……。じゃあ、これが最後の運動です。沙那姉さんは、逆立ちくらいはできますよね……。背中を壁側にして、足を床に保たせて、逆立ちしてください。そこの砂時計が落ち切るまで、姿勢を保てたら、今夜は許してあげます……。その代わり、途中で崩れたら、最初の駆け足からやり直しです──。さあ、逆立ちしてください」
しかし、沙那は首を横に振った。
「はあ……はあ……はあ……、も、もう……む、無理……。い、いくら……電撃で脅してても……できないものは……で、できない……はあ……はあ……、あんた……また、……はあ……はあ……、淫具を動かすでしょう……。耐えられるわけ……ない……」
沙那は激しく息をしながら言った。
いまこの瞬間も、沙那の全身に装着されている淫具は動き続けているのだ。
沙那の身体は淫靡な汗と体液で光っていて、ここまで淫靡な香りが漂ってきている。
逆立ちが始まったら、朱姫は、その振動を最大限に動かすに決まっている。
そうなったら、沙那が耐えられるわけがないのだ。
すると、ずっと愉しそうにふたりを眺めていた宝玄仙が口を開いた。
「しょうがないねえ……。だったら、沙那、やる気の出る条件を付けてやるよ。その砂時計に道術をかけて、砂の落ちる時間を半分にしてやる。しかも、最後まで逆立ちを保ったら、その瞬間に、また、朱姫と攻守交替だ。それでどうだい?」
宝玄仙の言葉に、沙那が口元をあげて反応した。
「そ、それなら、やる──。やります……。見てなさいよ、朱姫……。仕返しはきついわよ……はあ、はあ……」
沙那が朱姫を睨んで、にやりと笑った。
「いいですよ。その代わり、途中で逆立ちが崩れたら、最初からですからね、沙那姉さん──」
「わ、わかったわよ……。じゃあ、縄を解いて……」
沙那を拘束していたのは、『魔縄』と呼ばれる道術で制御できる縄だ。
朱姫が霊気をかけると、ぱらりと沙那の腕を縛っていた縄が解けた。
「さあ、じゃあ、沙那姉さん、どうぞ」
朱姫が、まだしゃがんだまま腕を擦っている沙那を促した。
沙那は、朱姫をひと睨みすると、意を決したように壁に向かった。
そして、床に両手をついて、壁に両脚を跳ねあげた。
「じゃあ、開始だ──。朱姫、砂時計をひっくり返しな」
宝玄仙が声をあげた。
朱姫が砂時計を逆さにした。砂が勢いよく落ち始めた。
「ひっ、ひっ、ああっ、ああっ、ああああ……あはっ、はあっ──」
すぐに沙那が逆立ちをしたまま悶えだした。
沙那の全身の淫具が暴れはじめたに違いない。
それでも沙那は懸命に歯を喰いしばって姿勢を保っている。
沙那の全身からは、夥しく汗が吹き出した。しかも、ぶるぶると震えている。
かなりの強さで淫具を振動されているのだと思った。
「ひいいっ、ひいっ、いく、いくうっ──だ、だめええ──」
沙那がわけのわからない言葉を発し始めた。
そして、一瞬、全身が伸びきったようになった。
達したようだ。
だが、それでも崩れない。
両腕だけは、しっかりと身体を支えて保っている。
砂は半分を切った。
「思ったよりも頑張りますね、沙那姉さん」
朱姫が感嘆したような声をあげた。
しかし、その朱姫の顔には余裕がある。
なにかを企んでいるようだと孫空女は思った。
朱姫は荷が置いてある場所に向かうと、すぐに戻ってきた。
大きな筆を二本持っている。
それをにやりと笑って両手に持ち、逆立ちを続けている沙那の前にしゃが込むと、その二本の筆で沙那の無防備な脇の下をくすぐりだしたのだ。
「や、やめえ──。ひ、卑怯よ、そんなの──ひうううううっ──いや、いや、いや、いやあっ──」
沙那が絶叫した。
「なにが卑怯なんですか──。誰が、覚めるのは、いま装着している淫具だけだと言ったんですか? 勝手に沙那姉さんがそう思っただけでしょう……。ほら、ほら、くすぐったいですよね……。腕が震えてきましたよ──」
朱姫が執拗に筆を沙那の脇の下をまさぐりながら笑った。
沙那は苦しそうに笑い続け、やがて、力尽きたというよりは、筆を少しでも避けようとして腕を動かし、それで体勢を崩して、その場に崩れ落ちてしまった。
「ああっ」
床に身体を倒しながら、沙那は絶望的な悲鳴をあげた。
「残念でしたね、沙那姉さん──。じゃあ、やり直しです」
朱姫が筆を横に置くと、床に落ちていた『魔縄』を広い、疲労困憊している沙那の両手を強引に背中に回させて、再び縛り始めた。