*
気がつくと、なにもない場所にいた。
移動中の馬車の中でまどろんでいただけだったので、一郎は驚いてしまった。
ここが現実に存在する場所ではないことは一瞬でわかった。
かと言って、まだ一郎自身の夢の中というわけでもない。
はっきりとした現実感がある。
強いて言えば、妖魔将軍ことサキの能力で操る「仮想空間」に似ていた。
同じ仮想空間ではあるが、まったく別のもの……。
そんな感じだ。
うまく表現できないが、一郎はそんな場所にさまよい込んでしまったようだ。
しかも、裸だ。
一糸まとわぬ格好で、一郎は見知らぬ場所に連れてこられたみたいだ。
「エリカ、コゼ、シャングリア──? スクルド? ガド?」
一郎はそばにいるはずの女たちの名を呼んだ。
しかし、彼女たちの姿はどこにも感じなかったし、一郎の魔眼の能力でも気配を感じる
ことはできなかった。
どうやら、ここに連れ込まれたのは、一郎だけのようだ。
そのとき、不意に誰かの気配を感じた。
「お前がそうなのかい?」
突然に女の声が背後からした。
その口調は少し戸惑いのような響きがあった。
“ホウゲンセン(宝玄仙)
人間族、女
放浪中の三蔵法師
年齢46歳
ジョブ
道術師[魔道遣い](レベル99)
生命力:300
戦闘力:15(素手)
魔道力(霊力):20000
経験人数:男:**、女**
淫乱レベル:A
快感値:200”
そこにいたのは、一糸まとわぬ裸の黒髪の絶世の美女だった。
一郎の魔眼には、ホウゲンセンという女の年齢は四十六とあるが、容姿も肌の美しさも三十代前後にしか見えない。
少し驚いたのは、本来恥毛があるべき場所に一本の毛もないことだ。
そのほかの部分が完璧な美しさと色っぽさを醸し出しているだけに、そこだけ童女のようにつるつるであるのは、少し滑稽であり、同時にエロッチクだ。
また、男といわず、女といわず、経験人数の多さはなんとしたことだろう。男は百人を超え、女だって五十人以上の経験がある。
随分と多恋の女性のようだ。
いずれにしても、このホウゲンセンという女がなにかを知っているのだと思った。
「お前が世界で一番の色事師だと魔人が選んだ男かい? 別にどうということのない普通の男に思えるけどねえ。道具だって平凡だしね。それともなにかの道術で見た目をごまかしているだけで、実は妖魔かい?」
ホウゲンセンが言った。
「道術? 魔道のことですか? いずれにしても、俺は魔術遣いなんかじゃありませんよ。ただの人間です。妖魔とやらでもありません。見た目は、俺が実際にその外見だからでしょう。ところで、魔人が選んだとはどういう意味ですか、ホウゲンセンさん?」
一郎が言うと、ホウゲンセンが目を見開いた。
「わたしの名を知っているのかい? どこかで会ったかい?」
「いいえ。あなたのように美しい女性には初めて会います。名前については、なんとなくわかりました。勘がいいんです」
一郎はうそぶいた。
魔眼のことは黙っていた。
相手が何者かわからない以上、こっちの切り札を暴露する必要はない。
「勘で名が当たるものかい。馬鹿なことを言うんじゃないよ」
すると、ホウゲンセンがけらけらと笑いだした。
その邪気を感じられない心から面白がっている姿に、一郎は少し戸惑った。
ホウゲンセンからは悪意を感じられない。
「ところで、ここに俺を連れ込んだのはあなたですか? それとも、さっき名が出てきた魔人?」
一郎は訊ねた。
「魔人は魔人さ。あいつがわたしになにかひとつ贈り物をしたいというから、この世界で一番の色事師を連れて来いとねだったのさ。そうしたら、この場所とお前が準備されたということだよ。だけど、わたしも意外だったね。もっと性経験の多そうな年配を想像していたからね。だけど、魔人が選んだんだから、やっぱり性の経験は多いんだろう?」
ホウゲンセンが興味深そうに言った。
「だから、魔人とは誰です?」
「北方帝国の氷の女王の
ホウゲンセンが一郎に値踏みするような視線をじろじろと向けてくる。
よくわからないが、どうやら氷の女王の魔人とやらと、このホウゲンセンのくだらない戯れに一郎は巻き込まれた感じだ。
おそらく、ここはやはり、「仮想空間」のようなものなのだろう。
しかも、その女王の僕の魔人の作る仮想空間なのだと思う。
そして、一郎はここに、その力により引き寄せられたようだ。
世界で一番の「色事師」として……。
一郎は嘆息した。
自分が世界一の色事師かどうかはともかく、迷惑な話だ。
ここがどこであるかということはどうでもいい。
問題はエリカたちのいる場所に戻れるかどうかだ。
「……俺が世界一の色事師かどうかはわかりませんよ。経験人数からすれば、五十人くらいのものでしょうか」
「そんなものかい……。まあ、多い方だとは思うけど、そんなんじゃあ、世界一の色事師とはいえないじゃないか。魔人め……。どんな願いでも叶えるとか大きなことを言ったくせに、失敗したんだね」
ホウゲンセンががっかりしたように言った。
なんだか、その意気消沈した表情が面白くて、一郎は思わず吹き出してしまった。
純粋──。
無邪気──。
それがこのホウゲンセンから受ける印象だ。
一郎は、このおかしな美女に興味が沸いてきた。
「ねえ、ホウゲンセンさん。もしかして、俺はあなたとセックスするためにここに呼ばれたんですか?」
訊いてみた。
「せっくす……? ああ、性交のことだね。まあ、そうだね。お前が希代の色事師だったらの話だけどね」
ホウゲンセンが言った。
「だったら、相手をしてもいいですよ。あなたをいい気持ちにするなんて簡単です。その代わり、あなたを満足させることができたら、俺を元の場所に返してください。突然に消えてしまっては、仲間が心配すると思いますしね」
「本当かい? やっぱり、お前は世界一の色事師に間違いないんだね?」
ホウゲンセンが破顔した。
一郎は思わず笑ってしまった。
なんで、この女性は性交に対して、こんなに一生懸命になれるんだろう。
「世界一かどうかなんて、俺にわかるわけないでしょう……。でも、あなたをいかせることくらいなら、あっという間にできますよ……たとえば、指一本でね」
「ほう、大きく出たねえ。だったら、相手をしておくれ。このわたしが、指一本で達するなんてことはあり得ないけど」
ホウゲンセンは笑った。
そして、その場にしゃがみ込み、膝で曲げた脚を大きく一郎に向かって開く。
「その代わり、本当に指一本で達したら、俺を元の場所に返してもらいますよ。約束してください」
「約束するよ」
ホウゲンセンは言った。
「二言はないですね」
一郎はホウゲンセンに近づいた。
そして、手の中に拘束用の縄があると想像した。
ここは一郎の仮想空間ではないが、その操り方についてはわかっている。
なんとなくだが、同じようにできる気がしたのだ。なんでも、サキの仮想空間から支配権を譲渡されて悪戯をしたことがある。そのときと同じ感覚が沸き起こっていたのだ。
果たして、次の瞬間、一郎の手の中には、縄束が存在していた。
「お、お前、いま、どうしたんだい? いまのは、取り寄せ術かい? お前はやっぱり道術師かい?」
ホウゲンセンが目を丸くしている。
どうやら、このホウゲンセンは魔術遣いではあるものの、この仮想空間についてはほとんど無知のようだ。
それにしても、魔道力が“20000”というのは凄い。
これまでの一郎が知っている最高の魔道遣いは、エルフ女王のガドニエルであるが、それでも、一郎の支配で限界突破したことで魔道力が膨れあがった数値で“12000”だった。
一郎の支配による淫魔師の恩恵なしで、“20000”というのは何者だろう。
ただ、道術師のレベルでは、“99”のようだが……。
「ただの好色男ですよ……。でも、あなたのような無邪気な女性は大好きです。いじめられるのが好きなマゾ女もね」
「ま、まぞ? 被虐女のことかい? わたしが?」
ホウゲンセンは呆気に取られている。
「隠しても無駄です。俺にはわかるんです……。それとも、自分でも気づいていないのかもしれませんね……。いいから、両手を背中に回してください。あなたの身体はそういう性行為を欲しているんです。俺にはわかるんです」
一郎は縄束を持って、ホウゲンセンの背中に回った。
「よくわからないけど、いざ本番となったら、やけにたくましい感じになったねえ。これは期待が持てそうだ」
ホウゲンセンが笑って細い両手を背中に回した。
一郎はその両手をしっかりと高後手に緊縛するとかたちのいい乳房の前後にも縄を巻き、しっかりと胴体に固定した。
「ず、随分と縄に慣れているねえ……」
ホウゲンセンが赤い顔をして言った。
一郎はほくそ笑んだ。
こうしているあいだにも、ホウゲンセンの快感値の数字がさがり続けている。
一郎の勘は正しかった。
なんとなくだが、この気の強そうな女性の本質は、かなりの被虐体質だと思った。
自由を奪われて、無理矢理に感じさせられるようなセックスに弱いのだ。
間違いない。
「脚を胡坐にしてください」
一郎は言った。
ホウゲンセンは言われたとおりにした。
一郎は脚を崩せないようにすっかりと脚に縄をかけてしまうと、脚に結んだ縄を首の後ろに回して、ぐいと引き絞ってから、再び脚の縄に繋げた。
「あっ」
ホウゲンセンが小さな声で叫んだ。
いわゆる「海老縛り」だ。
ホウゲンセンは胡坐をかいた両脚に向かって頭を曲げた状態から身動きできなくなったということだ。
一郎はホウゲンセンの身体を倒して、ごろりとひっくり返した。
「な、なんだい?」
尻を上にした羞恥の恰好にされたホウゲンセンが、初めて当惑の声をあげた。
「指一本でいかせるといったでしょう。あなたがここが弱いことは、すっかりとお見通しです。どこまで我慢できるか愉しみです」
一郎は淫魔師の力で、右手の人差し指にたっぷりの媚薬入りの潤滑油を浮きあがらせると、ずぶずぶとホウゲンセンの無防備な菊座の中に指を挿し入れた。
「ああっ、おおっ、ほおおっ」
いきなりホウゲンセンが不自由な身体を弓なりにして、吠えるような声を出した。
*
「ほおおっ」
ホウゲンセンがあられもない声をあげて緊縛をされた身体をぶるぶると震わせた。
「指一本で一度どころか、もう三回もいっていますよ、ホウゲンセンさん」
一郎は笑いながら指を一郎だけに見ることのできる赤いもやも道しるべに従い、ホウゲンセンの肛門の内側の粘膜をぐいぐいと擦った。
道しるべといっても、ホウゲンセンのお尻の中は赤いもやでいっぱいだ。
どこをどうやっても簡単に感じさせることができる。
「も、もうっ」
絶頂したばかりのホウゲンセンが一郎の指でまたもや昇りつめた。
一郎としても、こんなに感じやすい女性は初めてだ。
ふと見ると、さっきまではなかった赤いもやが乳首にも浮かんでいる。
いや、全身だ。
最初の二回くらいまでの状況のときと、連続絶頂し始めたときの身体が違う。
女が激しい愉悦に浸るようになると、身体の感度が上昇するのは知っているが、ホウゲンセンの場合はまったく別の女になったかのような感じだ。
一郎はステータスをもう一度覗いてみた。
“ホウゲンセン(宝玄仙)
人間族、女
放浪中の三蔵法師
年齢46歳
ジョブ
道術師[魔道遣い](レベル99)
生命力:300
戦闘力:15(素手)
魔道力(霊力):20000
経験人数:男:**、女**
淫乱レベル:SS
快感値:2↓↓”
淫乱度数、すなわち、身体の感度が変化している。
それにしても、“SS”などという表示は初めてだ。
「あなた、もしかして、身体の感度を強制的にいじられたことがあるんじゃないですか? しかも、それがいまだに完全には治っていないとか……」
一郎はホウゲンセンの指を抜いて訊いてみた。
「はあ、はあ、はあ……な、なんで、それを……」
ホウゲンセンが呆けた顔で言った。
やっぱりそうなのだと思った。
ただの勘だがそう思ったのだ。
レベル“99”に達するような魔術遣いだから、平素は自分の身体が異常活性しないように制御しているのだろう。だが、ひとたび、たがが外れてしまうと、「リミッター」が壊れたかのようにいき狂い状態になってしまうのだと思う。
「つまり、誰かに調教されたことがあるということですね」
一郎はホウゲンセンが息を整えるいとまを与えず、怒張を指を抜いたばかりの菊座に押し当てた。
「ちょ、ちょっと待っておくれ。お、お前、そんなに立て続けに……」
「待ちませんよ」
一郎は一気に突き進んだ。
なんて随分柔らかいお尻だろう。
一郎はホウゲンセンのお尻を犯しながら思った。
緩い……とかいうものとは違う。
しっかりと、ホウゲンセンのお尻は一郎の一物をぎゅうぎゅうと締めつけるし、適度な圧迫感もある。
しかし、それでいて幹に触れている粘膜が温かくて気持ちいいのだ。
まるで膣そのもののようだ。
一郎はその快感に我を忘れそうになった。
「あふうううっ」
ホウゲンセンがまたもや達した。
それとともに、強い締めつけと収縮が一郎が貫いているホウゲンセンのお尻の中で起きた。
「あっ」
一郎は次の瞬間、呆気なく精を放っていた。
搾り取られるような射精だ。
淫魔師になって以来、こんな風に達してしまったのは初めてかもしれない。
「ホ、ホウゲンセンさん、あなたの身体は素晴らしいです」
一郎は感極まって、思わず言った。
しかし、答えは返ってこない。
いまだにホウゲンセンは昇天の途中であり、それどころではなかったようだ。
*
「いやあっ」
ホウゲンセンはまるで少女のような声をあげた。
絶頂寸前で一郎は膣から性器を抜いたのだ。
そして、今度はアナルに撃ち込む。
ホウゲンセンのふたつの性器──。
これを一郎は愉しんでいた。
しかも、ホウゲンセンの気持ちを弄ぶかのように、絶頂寸前までいくと怒張を抜いて、もうひとつの穴に移動するというやり方でだ。
これをすると、女は天国と地獄を激しく繰り返すことになり、正気を保つことすらできなくなる。
しかも、絶頂ができないのに、新たな貫きが与えられるたびに感度だけはどこまでも上昇するのだ。
いまや、ホウゲンセンの身体は膨らみすぎた風船のようなものだ。
どちらの穴でも数回で爆発してしまう状況だ。
ホウゲンセンの絶頂が十回を超えたところで、一郎はこの責めに切り替えた。
いまやホウゲンセンは半狂乱だ。
一郎は怒張で三回肛門を律動させると、さっと抜いてしまった。
ホウゲンセンがそれだけで達しそうになったからだ。
少し間を置き、再び膣に挿入する。
しかし、今度は一気にホウゲンセンが快楽を上昇させた。
たった一度の律動でも達すると思った一郎は、最奥まで貫いたところで止め、胡坐縛りでうつ伏せになっているホウゲンセンの乳房を掴んでゆっくりと揉む。
「ほおおおっ」
ホウゲンセンが泣くような声をあげた。
「き、来て、お願いだよ。これ以上意地悪しないでおくれ」
ホウゲンセンが夢中になった感じで声をあげた。
「じゃあ、好きな方で最後にいかせてあげますよ。前と後ろのどちらの穴で最後の昇天をしたいですか?」
「……お、お尻……お尻で」
ホウゲンセンは泣き出しそうな声で言った。
「わかりました」
一郎は膣から性器を抜き、再び怒張を肛門を貫かせる。
「あうっ、あううっ」
動き出した途端に、ホウゲンセンはこれまで積もり積もったものを一気に吐き出すように絶頂をした。
しかも、がくがくと震えながら三度立て続けに気をやったのだ。
一郎はそんなのは初めて見た。
「あぐううっ」
ホウゲンセンが断末魔のような声を放った。
一郎もそれに合わせて精を迸らせる。
そのとき、ホウゲンセンの股間からぴゅっと潮のようなものが噴き出し、続いて、紛れもない放尿が飛び出した。
「お、お前、最高だよ……」
それが気を失う直前の最後の言葉になった。
*
縄を解くと、ホウゲンセンの目が開いた。
目が虚ろだ。
いまだに激しすぎる息をしている。
「す、すごいよ、お前……。そういえば、名を聞いてなかったね……。どこの誰なんだい……?」
ホウゲンセンがぐったりと横になったまま、顔だけをこっちに向けた。
「一郎といいます。ハロンドールの冒険者です。いまは、大公かな……。いずれにしても、いまは、旅の途中ですけどね……。クエストで……」
「イチロウかい……。だけど、はろんどーる……? それは聞いたことのない国だねえ。もしかして、魔人はとんでもない遠くから、お前を呼び寄せたのかもしれないね」
ホウゲンセンが笑った。
笑うと少女のように見えるから不思議だ。
魅力的な女性だ。
「身体を拭きましょうか」
一郎はそう口にしてから、手に布を載せた。
仮想空間は強く思えば、それが現実になる。
いまや、一郎は仮想空間については熟達の域に達している。
「希代の色事師殿にそんなことはさせられないよ……。まあ、わたしの身体が指一本動かないことは事実だけどね……」
ホウゲンセンは一郎に笑いかけ、次に空に顔を向けた。
「魔人、
ホウゲンセンが空間に向かって声をあげた。
その次の瞬間、大きな揺らぎのようなものが周りで発生する。
すると、三人の美女が出現した。
“ソンクウジョ(孫空女)
人間族、女
ホウゲンセンの従者
年齢28歳
ジョブ
戦士(レベル80)
魔道遣い[霊力](レベル5)
生命力:100
戦闘力:3000(素手)
魔道力(霊力):500
経験人数:男:**、女**
淫乱レベル:A
快感値:120
状態
内丹印”
“サナ(沙那)
人間族、女
ホウゲンセンの従者
年齢28歳
ジョブ
戦士(レベル40)
生命力:50
戦闘力:300(素手)
経験人数:男:**、女**
淫乱レベル:S
快感値:70
状態
内丹印”
“シュキ(朱姫)、真名[猪八戒]
半妖族、女
ホウゲンセンの従者
年齢21歳
ジョブ
魔道(レベル50)
生命力:2000
戦闘力:200
魔道力[霊力]:**[自在型]
経験人数:男:**、女**
淫乱レベル:A
快感値:150
状態
内丹印”
「ご、ご主人様、巻き込まないでください。わたしたちは、今回参加しなくていいとおっしゃったじゃないですか」
サナという栗毛の美女がいきなり抗議の声をあげた。
彼女だけでなく、ソンクウジョという赤毛の女性と、シュキという真名を別に持つ見た目が少女のような女性も全裸だ。
サナは一郎の視線を気にするように、身体を両手で隠して、ちらちらとこっちに視線を向けてくる。
なんだか可愛らしい。
一郎はほくそ笑んでしまった。
「参加しろとは言ってないさ。ただ、わたしはこのイチに責められて小便を洩らしてしまってね。それでお前たちに拭かせようとしたんだ……。まあ、だけど、そうだね。このお人は凄いよ。お前たちも一度経験しておきな。確かに天下一の色事師様だよ」
ホウゲンセンが笑った。
「あっ、だったら、沙那姉さんと孫姉さんとのおふたりはどうぞ。あたしは、ご主人様の身体の手入れをいたしますから」
シュキという小柄な女性がさっとホウゲンセンに寄っていった。
身体の手入れといっても、一郎が手にしているような布のたぐいは持っていないなあと思っていたのだが、そのシュキは当たり前のように、舌でホウゲンセンの身体を舐め始めた。
これには一郎も驚いた。
「えっ、そうだったんですか。だったら、わたしもご主人様のお手入れをいたします」
サナが慌てたようにホウゲンセンに寄っていこうとした。
しかし、ホウゲンセンがそれを制した。
「こっちは朱姫ひとりでいい。それよりもお前たちふたりは、その色事師様に相手をしてもらうんだ……。ねえ、イチ殿、いいだろう。このふたりはわたしの供なんだけど、是非ともわたしの快感をおすそ分けしたいんだ。今回だけはいろいろと迷惑もかけてねえ」
ホウゲンセンが言った。
「こ、今回だけって……いつもじゃないですか……」
サナがぶつぶつと言った。
「なにか言ったかい、沙那?」
「な、なんでもありません」
サナが拗ねたように言った。
一郎はなんとなくおかしてく噴き出してしまった。
すると、そんな様子を笑って見ていたソンクウジョという背の高い女性が一郎に視線を向けた。
「あたしたちのご主人様が世話になったね。ありがとう。外で見ていたけど、どこか遠くから連れて来られたみたいだね。まあ、ご主人様も魔人も悪気はなかったんだと思う。すぐに帰すと思うから心配しないでよね。でも、よければ、あたしと沙那の相手もしてくれると嬉しいよ。ご主人様の命令を実行しなかったとなると、あとで思い出したように罰を与えるのが、この宝玄仙という人でね」
「や、やっぱり、そうなるの、孫女?」
サナがソンクウジョの言葉に当惑したように言った。
「いやならいいよ。あたしは、後でご主人様に罰を与えられるのは嫌だしね。沙那だけ、そこで見てればいいよ」
「そ、そんなわけにいかないわよ……。じゃ、じゃあ、よろしくお願いします……」
サナが一郎に近づいてきて、身体の前を手で隠したまま頭をさげた。
「もちろん、嫌だったらいいよ。あんただって、相手をしない自由はあるしね。相手をしなくても、元の場所には戻すよ。あたしと沙那が責任を持って約束する」
ソンクウジョがきっぱりと言った。
よくわからない関係だと思った。
話の内容からすれば、ホウゲンセンのことを三人の女は“ご主人様”と呼ぶのだから、リーダーはホウゲンセンだと思うのだが、全体のまとめをしているのはソンクウジョという感じだ。
サナは、この四人の中では一番真面目なタイプだろうか……。
それに比べれば、シュキはお調子者の気配がある。また、シュキがすぐにホウゲンセンに寄っていったのは、おそらく“男嫌い”なのだと思う。
一郎の勘だが、その手の勘はまず外れることはない。
「ああ、朱姫……お、お前、悪戯が……」
そのとき、ホウゲンセンが甘えたような声を横であげた。
ふと見ると、シュキがホウゲンセンの股間に執拗に舌を這わせている。
なぜか、さっき解いた縄を使って、ホウゲンセンの右手首と右足首、左足首と左手首がそれぞれに縛ってあり、再びホウゲンセンが緊縛されている。
「ふふふ、ご主人様、感じているんですね。いつもより気持ちよさそう……」
シュキがホウゲンセンの股間に舌を這わせながら笑っている。
「こ、こいつにたじたじにされて、まだ余韻が抜けないんだよ……あああっ、そ、そこは──」
ホウゲンセンが大きな声をあげて首をのけぞらせた。
「ねえ、どうする? ああなったら、落ち着くまで待つしかないよ。あたしたちの相手をしてもらえるかい?」
ソンクウジョが声をかけてきた。
「ほ、本当に嫌だったらいいのよ。嫌ならそう言って」
サナだ。
「もちろん、嫌じゃないですよ。ふたりとも来てください」
一郎は再び手に縄束を出して、ふたりに向き合った。
ソンクウジョとサナはぎょっとした表情になったが、一郎が両手を背中で組むように指示すると、すぐにそれぞれに腕を背後に回して、一郎に背を向けた。
(第67話『小話集』終わり)