※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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430 淫らな見張り

「あんっ……、そ、そんな悪戯したら駄目です……」

 

 陳女(ちんじょ)が身体をくねらせて小声で訴えた。

 もっとも、その口調は拒絶というよりは甘えという感じだ。

 陳達(ちんたつ)は、構わず洛葉の玄関のすぐそばの陰で、陳女を背後から引き寄せて下袍の中に手を入れて尻を擦った。

 下袍の下の陳女の股間はなにも帯びていない素肌だ。

 陳達はその柔らかい陳女のお尻の感触を手のひらで愉しみながら、戸の向こうの洛葉の部屋の様子に耳を傾けた。

 

 もうすぐ夜が明ける──。

 ふたりで長屋の隅にある洛葉の家を外から見張っていた。

 

 年寄りのひとり暮らしである洛葉(らくよう)の家は、三棟並ぶこの長屋のもっとも通り沿いにある。

 長屋のそれぞれの家はすべて胸の高さほどの木の垣根に囲まれているが、陳達と陳女は、洛葉の家の玄関のすぐそばの垣根に右半身を身体を預けるようにしていた。

 洛葉がこの十日ばかり毎夜必ず家に出現するという幽霊の正体を確かめるためだ。

 

 洛葉は、一年ほど前から、大家がこの長屋の一軒を住まわせて世話をしている老婦であり、大家がかつて大恩を受けた男の未亡人らしい。

 陳達もまたこの身寄りのない老婦の暮らしの足しになればと思い、商売である古着の加工の縫物仕事を回している。

 それで、その内職仕事の受け渡しをこの陳女にやらせていたのだが、そのときに陳女は洛葉から、この十日連続で出るという幽霊について相談を受けたらしい。

 

 それを受け、洛葉には断わりを入れなかったが、とりあえず幽霊が出るという明け方近い時間に洛葉の家を外から見張ってみることにしたのだ。

 毎日出るということであるから、ここで見張っていればなにかわかるかもしれない。

 壁の薄い長屋のことだし、外からでも中で異変があればわかるだろうと思ったし、わからなければ、明日の夜、今度は洛葉に断わって今度は家の中で一緒にすごしてみるつもりだ。

 

 しかし、明け方に近いとはいえ、まだ真っ暗闇の夜だ。通りを歩く者もおらず、辺りはしんと静まりかえっている。

 それで、ただ待つのも手持ちぶたさになり、なんとなく陳達は、半分悪戯気分で、陳女の背後から陳女の身体を自分に引き寄せると、陳女の下袍を捲ってその中に手を入れてみたのだ。

 

 こんな破廉恥なことをして怒るのかと思えば、陳女は羞恥に身体をくねらせながらも、陳達のやりやすいように身体を陳達に預けてくる。

 数刻前までこの陳女の身体をいたぶっていて、陳達には、まだ、そのときの欲情の余韻があった。

 それで、身支度をする陳女から下着をとりあげ、上衣と下袍だけを身につけさせて、外に連れて来たのだ。

 陳女は、陳達の破廉恥な要求に困ったような表情になりながらも、逆らうことなくそれに応じくれた。

 

「声を出すんじゃない……。幽霊が出てもわからないじゃないか、陳女」

 

 陳達は笑って、背後から陳女の耳元にささやく。

 

「だ、だって……」

 

 耳に声をささやかれた陳女が、くすぐったそうに顔を背けた。

 陳達はなんだか、そんな陳女の仕草がかわいくなり、下袍の中で尻たぶの感触を味わっていた指を双臀の亀裂に添ってすっとなでおろした。

 陳女が甘い息と噛み殺したような小さな声を吐きながら、くねくねと身体を崩れ落としかけた。その陳女を陳達ががっしりと抱きとめる。

 

「も、もう……、こ、こんなところで、い、悪戯は……」

 

 陳女の荒い息遣いとともに、顔をこっちに向けかけた。

 しかし、陳達はその動きを邪魔するように、指をお尻の亀裂から、ぐっと陳女の股間側に伸ばす。

 

「あっ……」

 

 陳女が小さな息を吐いて、上半身を前に倒しかけた。だが、すぐに態勢を立て直して身体を起こす。

 それをまた陳達が股間を弄くって悶えさせる。その快感に負けて、また陳女が身体をくねらせる。

 そんなことを続けた。

 

「こ、ここに……な、なにしに……来た……、ああ、んっ、ですか……? あっ……、もう……、困った、人ですね……ふんっ……」

 

 なんだか幽霊の見張りというよりは、夫婦で夜の屋外で密かな淫行に耽っているようなことになったが、まあ、それもいいだろう……。

 洛葉の相談を解決してくれと、面と向かって頼まれたわけではない。

 こうやって、見張っているのはまったくのお節介だ。

 なにも見つけることができなくても、それはそれでいいのだ。

 

 それよりも、陳達は、外でこうやって陳女と淫靡な行為をするのがこんなに興奮するものだとは思わなかった。

 陳達の一物は、またすっかりと元気になり、下袴の中で大きく膨らんでいる。

 それを陳女の下袴の布越しに擦りつけるように、陳女のお尻に密着させる。

 すると陳女の身体のくねりがますます大きくなり、息遣いも荒くなっていく。

 

 こんなに幸せでいいのだろうか……。

 陳達は夜闇に隠れて陳女をいたぶりながら、改めてそう思った。

 

 陳女……、つまり長女金は、自分には過ぎた女房だと思う。

 彼女は、元は国都で国軍の女将校をしていたほどの優秀な女であり、しかも、大変な美人だ。

 それだけじゃなく、本当に心の優しい善人でもある。

 困っている者があれば放っておけず、今日のことでも、ひとり暮らしの老人である洛葉から、幽霊が出て困っていると言われれば、頼まれてもいないのになんとかしてやることはできないかと陳達に相談してきた。

 そういう素直なお人よしのところは、本当にいい女だと思う。

 そして、なによりも素晴らしいのは、これだけの女でありながら、陳達の性的欲求には、どんなことでも応じてくれるところだ。

 

 どんなことでもだ──。

 

 いまも、夜とはいえ、こうやって普段の生活をする長屋の外で淫靡な行為を仕掛けても、困った仕草はしても決して拒否はしない。

 陳達の変態行為は困ったことだが、夫である陳達がやりたいのであれば、まあ、受け入れてもいい……。

 そんな感じだ──。

 

 その包容力と受動力には感嘆してしまう。

 こんなに幸せでいいのか……。

 

 どこかで、強烈なしっぺ返しがあるのではないか……。

 そんな恐怖を陳女に悪戯しながら思ったりする。この恐怖が陳達の行為をさらに過激な方向に導く。

 それはわかってはいるのだが、そういう自分を陳達はとめられないでいた……。

 

 いままでの詰まらない半生を取り戻すかのように、陳達は毎日陳女と淫らな行為に耽っていた……。

 生まれたときから、陳達は人並み外れて大きくて醜い鼻をしていた。

 その醜い鼻という劣等感が、陳達に、どちらかと言えば引っ込み思案で、人との関わりを避けるような半生を送らせてきた。

 国都でもある程度成功した商売人となり、蓄えもできたが、陳達には友人もいなければ、心を許す女どころか身体を許してくれる娼婦さえいなかった。

 陳達の劣等感はどんどん根深いものになっていった。

 悶々としていじけた人生を送っていた……。

 

 それが一変したのが、あの沙那たちや宝玄仙たちとの関わりだ。

 彼女たち四人は、義憤から縁も所縁もない長女金を結界牢から救い出すために行動したのだが、そのため国軍の追及を受ける羽目になり、女主人の宝玄仙が捕えられて、その供の三人も逃げ場を失いかけ、偶然に山道で出遭った陳達に救いを求めた。

 それが転機だった。

 

 このときなぜか陳達は、彼女たちを助けたいという気になった。

 それで、陳達が想像もしなかった美女たちと身体の関係を持つことになるとともに、彼女たちの活動に協力した。

 国軍に捕らえられた宝玄仙を助けようとする彼女たちのために、国都の中にある自分の家を彼女たちの拠点として提供し、陳達も軍に入って密偵まがいのことをして情報を集め、必要な物資を提供したりした。

 その結果、見事に彼女たちは宝玄仙を救出することに成功した。

 だが、彼女たちに陳達が協力したことがいずれ発覚するおそれがあり、陳達も財を処分して国都を脱することになった。

 

 その代償は、救出した宝玄仙をはじめとする美女四人とのさらになる十日間の淫行であり、その十日で陳達はありとあらゆる性愛を体験した。

 その中で陳達が発見したのは、自分に備わる隠れた性癖だった。

 つまり、陳達は、自分がまともな性行為そのものではなく、どちらかといえば異常で嗜虐的な性行為で激しい興奮をするということを知ったのだ。

 

 拘束した相手を弄ぶ……。

 

 排泄器官であるはずの肛門を性交の場所として使う……。

 

 相手が嫌がることや恥ずかしいことを強要して羞恥に悶えさせる……。

 

 そういうことをすると異常に陳達は興奮した。

 そして、あの十日間、それらのすべてに彼女たちも応じてくれた。

 夢のような十日間だった。

 一生分の女運をここで使い果たしたと思った。

 

 それから宝玄仙たちと別れて、知り合いを頼ってこの城郭にやってきた。それがこの長屋の大家だ。

 その大家の世話で長屋の一軒を借り、売りに出していた小さな店を買い取って古着屋を開いた。

 国都でも流行った陳達の古着屋は、ここでもあっという間に繁盛し、ここで生計を立てる目途もつけることができた。

 新しい陳達の人生が始まった。

 

 相変わらず女には縁はなかったが、それはもうよかった。

 彼女たちとすごした日々がある。

 もう、いじける必要はないのだ。

 どんな男でも羨むような時間を自分はすごしたのだと思えば、他人に嫉妬することがなくなった。

 人と関わるのが嫌で家に引っ込むということもなくなった。

 大きな鼻をからかわれても怒るということもなくなった。

 陳達は生まれ変わったつもりで、ここで新しい人生を始めることにした。

 

 内に籠るのではなく、外に眼を向けるのだ。

 人と積極的に関わり、友人を作り、そして、困っている者があれば自分のできることはやってあげることにした。

 あの宝玄仙たちが、自分たちの得にもならないのに、長女金を助けようとしたように……。

 

 そうすると驚いたことにすべてが変わった。

 陳達に対する他人の接し方が変わったのだ。

 国都では、陳達を馬鹿にしているとしか思えなかった、陳達の鼻へのからかいも、実は親しみのこもった気持ちからのものだとわかった。

 友達もたくさんできた。

 世間を疎ましく感じていた自分はなくなり、それだけではなく、なぜか自分に自信を持てるようになった。

 あんなに嫌いだった自分の大きな鼻も自分の個性のひとつとして愛着を持てるようになったのだ。

 

 自分は変わった。

 本当にそう思う……。

 国都を出て、ここに来てよかった。

 そう思った。

 

 そして、半年──。

 また、陳達の人生を一変することがやってきた。

 宝玄仙たちが、新しい土地で暮らす陳達を訪ねてきて、しかも、長女金を嫁にしろといって連れて来たのだ。

 長女金は、国都でも有名な女性だった。

 若いが善良で優秀な女将校として国都の住人に慕われていただけではなく、美人将校としても知られていた。

 不当な判決で二年間も晒し者のようにされていたが、それが長女金の価値を少しも落とすとは陳達は思っていなかった。

 もちろん、自分のような醜男が長女金を嫁にできるなどとは思いもしかなかった。

 その長女金が陳達の嫁になってもいいという……。

 

 冗談かと思ったら、宝玄仙も長女金も本気だった。

 長女金の告白も聞いた。

 結界牢では、数限りない男囚と関係をしたと言った。

 自分は汚れた女だと言っていたが、陳達はなんのことかわからなかった。

 長女金があの結界牢の中で、死んでいく男囚を自分の身体で慰めたいと思って接していたということは、宝玄仙たちから教えられていたし、むしろ誇らしいと思っていた。

 そう言うと、長女金はなぜか涙を流した。

 

 そして、再び十日ほど、あの狭い家で宝玄仙たちとまたすごし、彼女たちは去ったが、長女金は陳達の嫁として残った。

 さすがに長女金という名のままではまずいので“陳女”と名乗らせた。

 こうやって、陳女は陳達の嫁になった。

 

「もう、我慢できなくなった、陳女」

 

 思念に耽りながら、下袍の中の陳女の無防備な股間に触れているうちに、陳達の欲情は頂点になった。

 陳達は下袴の外に膨れあがった怒張を出してむき出しにした。

 そして、背後からめくりあげている下袍の下に怒張を差し込むと、陳女の尻たぶを開いてぐいと肛門を開いて先端を押しつけた。

 

「な、なにを──」

 

 陳女がびくりとして身体を竦ませるのがわかった。

 こんな場所で、陳達の男根が自分の双臀に割り込もうとしていることに気がついた陳女は、さすがに後ろからでもわかるくらいに全身を真っ赤にした。

 そして、瞬間的に、身体をねじってそれから逃れるように動いた。

 だが、すぐに力を抜いて態勢を戻す。

 

 受け入れてくれる気になったようだ。

 陳達はその身体をしっかりと背後から抱え込んで腰を掴む。

 さらに身体を前倒しにして、陳女に陳達の男根を受け入れやすい態勢をとらせる

 

「こ、こんなところで……。だ、駄目……ですよ……。か、感じちゃい……ます……。ああっ……だ、駄目……あんっ……」

 

 口では嫌がるが、陳女の身体は陳達の男根を肛門で受け入れるように動いてくれる。

 

「あっ、はっ……、あ、あなた──」

 

 陳女の息遣いが激しくなる。

 陳達は緊張で硬直している陳女の肛門にゆっくりと男根を埋めていった。

 意図的なものなのか、それともそれが本心なのかわからないが、陳女には野外における肛姦を完全に受けれているわけではなく、心の底では嫌がっているが、耐えてこの破廉恥な行為を受け入れているのだという気配を醸し出している。

 それがいい……。

 

 そんな取り乱した感じの陳女の反応は、実に激しく陳達を興奮させ、欲情を呷る。

 陳達は一気に押し出た。

 陳女は全身を小刻みに震わせながら、横の長屋の垣根に手を置いて身体を支えるように手を伸ばした。

 

 そのとき、ふと誰かの話し声が聞こえたような気がした。

 陳女の肛門が緊張と動揺でぎゅっと締まった。

 

「おう、これは……」

 

 陳達はその締めつけの強さに顔をしかめた。

 

「あっ、ご、ごめんなさい……。だ、だって……」

 

 陳女が狼狽えた様子でささやいた。

 しかし、その締めつけは緩まない。

 まだ、陳女の緊張は続いているのだ。

 だが、陳達には、その声が、洛葉の部屋ではなく隣の家からだとわかった。

 

「……洛葉さんの隣は確か居酒屋に務める若い娘じゃなかったかな……?」

 

 陳達は陳女にささやいた。

 確か、いつも派手な服装をしている若い娘だ。

 酒場の女であり、夜通し働いて朝方戻り、昼すぎまで寝ているという生活をしているはずだ。

 結構美人だが、その分男関係も派手だと男仲間が噂しているのを耳にしたこともある。

 陳達の飲み友達である周達も、何度かその娘が働いている酒場に通い、いい寄ったりしていたはずだ。

 もっとも、いいようにあしらわれて相手にしてもらえなかったとも言っていた。

 もしかしたら、噂とは違って堅い娘なのかもしれないと周達が愚痴をこぼしていたのも覚えている。

 

「か、花凛(かりん)さんよ。も、もう、戻っているのかしら……。と、ところで、ね、ねえ、抜いて……」

 

 陳女が拗ねたような声で言った。

 

「どうしようかな……?」

 

 陳達はわざと陳女の肛門に突き刺さっている一物を上下に強く動かした。

 

「んんっ──」

 

 陳女が大きな息を吐くとともに、膝をぐらりとさせた。

 

「感じるのか、奥さん?」

 

「も、もう、意地悪……、あんっ……」

 

 陳女が諦めたようにぐったりと身体を陳達に預けた。

 陳達は本格的に肛門に挿さった怒張を動かそうとした……。

 陳女がそれを受け入れるように身体を動かした。

 

 “出て行け……。すぐにここを出て行け……”

 

 そのとき、そうはっきりと告げる女の声が洛葉の家から聞こえた。

 

「あ、あなた──」

 

 陳女が汗にまみれた顔を陳達に向けた。

 

「ああっ」

 

 陳達は頷いた。

 遊びの時間は終わりだ。

 陳女の双臀に入っていたものを一気に引き抜く。

 

「あはうっ」

 

 抜いた途端に陳女ががっくりと膝を落とした。

 慌てて陳達は陳女の腰を掴んで支えた。

 

「も、もう、本当に意地悪ですね、あなた……」

 

 陳女が拗ねたような表情で陳達に微笑んだ。

 そして、衣類を直しながら洛葉の家の玄関に向かうと、そっと戸に触れた。

 

「鍵はかかってないみたいです……」

 

 陳女が振り返った。

 陳達は黙って頷くと、陳女が静かに戸を開けてすっと中に入っていく。

 陳達もすぐについていこうと思ったが、ふと眼の端に誰かが動く気配を感じた気がした。

 洛葉の家が含まれるこの棟の端だ。

 建物の端の物陰で誰かが動いたと思った。

 

「そっちは頼む、陳女」

 

 陳達はそう言うと、返事を待たずにその人影に向かって歩いていった。

 もうすぐ明るくなってもいい時間だが、まだ暗い。

 陳達は長屋の垣根沿いに歩いて、人がいたと思った路地を覗いた。

 だが、誰もいない。

 

「気のせいか……」

 

 陳達はひとり言を呟くと、身体を反転して陳女が入った洛葉の家の前に戻ろうとした。

 そして、路地から出た瞬間に、いきなり背後から後ろ髪をがっと握られた。

 

「動くんじゃねえよ、色男──」

 

 どすの利いた声が背後から浴びせられた。

 

「なっ」

 

「声を出すな。ぴくりとも動くんじゃねえ。次は警告しねえぞ──。ぶっすりといくからな」

 

 鼻の下にすっとなにかが置かれた。

 それが短剣の刃だとわかり、陳達はぞっとした。

 

「これは警告だ……。あの洛葉という女に関わるな、色男。お前らに関係のない女だだろう」

 

 後ろから陳達の髪を掴んで陳達の顔に短剣をかざしている男が言った。

 

「だ、誰だ、お前……?」

 

 陳達は懸命に息を整えながら言った。

 顔の前の短剣はまったく動かない。

 陳達は自分の背に冷たい汗が流れるのを感じた。

 

「誰でもいい。洛葉に関わるな……。次はなにも言わずに、背中に刃を突きたてるぜ」

 

 男はそう言って、すっと刃を陳達の下半身におろす。

 

「……それにしても、いいことしてたじゃねえか。あんな美人の嫁さんといちゃいちゃとは羨ましいぜ」

 

 背後の男が鼻で笑った気がした。

 次の瞬間、短剣の刃がさっと動いた。

 

「あっ」

 

 陳達は叫んだ。下袴の腰紐ごと横の部分が切断された。

 すると、いきなり髪を掴んでいた手が離れて、こめかみを思い切り打たれた。

 一瞬で視界がなくなり身体が動かなくなる。

 

「騒ぐなと言ったろう。聞き分けのない男だな」

 

 痛みで屈んだ髪を再び後ろから引っ張られて身体を起こされる。

 同時に短剣がさっと動いて反対側の下袴の横も切断される。

 下袴が足首まで垂れ落ちた。

 さらに、一気に下着を膝まで降ろされる。

 下半身を剥き出しにされて、一瞬だけ抵抗しようとしたが、短剣の刃が一物の下に置かれて、陳達は動くことができなくなった。

 

「これは警告だ。わかったな──。お前のあんな変態趣味にも応じてくれる可愛い女房にも言っておけ……。余計なことに関わるなとな……。さもなければ、このお前のこれが入っていたあの女の穴に短剣をぶっ挿すぞ」

 

 男はそう言うと、短剣の刃の腹で陳達の一物をぴしゃぴしゃと叩いた。

 そして、短剣がすっと股間からなくなり、髪を持つ手も離れた。

 そのとき、少し離れている洛葉の家の玄関から陳女が顔を出した。

 

「あ、あなた──?」

 

 陳女が声をあげるとともに、闇の中だがさっと陳女の顔が赤らむのがわかった。

 

「なにをしているんです? ふふ、またなにかの悪ふざけですか……? 幽霊は消えてしまいました。洛葉さんも目を覚ましたみたいで、どうぞ中にと呼んでいますよ。もう、それはしまって頂けませんか?」

 

 陳女がはにかんだような笑みを浮かべると、こっちに駆け寄ってくる。

 

「ば、馬鹿、陳女──。俺の後ろだ──」

 

 陳達は無防備にやって来る陳女に警告の悲鳴をあげた。

 

「後ろ?」

 

 陳女は陳達の血相に思わず立ちどまったが、わけがわからない様子で首を傾げた。

 陳達は慌てて背後を見た。

 そこには誰もいなかった。

 

「どうかしたのですか、あなた?」

 

 陳女も陳達のただならぬ気配に顔を曇らせている。

 

「と、とりあえず、俺の息子も無事だったようだな」

 

 陳達はどっと流れる汗を感じながら、下着と下袴をあげるために身体を屈めた。

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