「んぐうううっ──」
「あらっ、ごめんなさい、手が当たっちゃったのよ、花凛さん」
陳女はあっけらかんと笑ったが、意図的に花凛の肉芽が吊られている糸を弾いたのは明らかだ。
花凛はもう我慢できなくなって号泣した。
懸命になんでも喋るから解放してくれと叫ぼうとするのだが、喋ろうにも口の中に布を詰め込まれてさらに猿ぐつわをされているので哀願をすることもできない。
もっとも、陳女は、すでに花凛が屈服していることがわかっていると思う。
だが、陳女は素知らぬ顔をしたまま、花凜の拘束を解こうとしない。
「駄目よ、花凛さん……。うちの人が戻ってくるまで白状なんてさせてあげないわ。だから、しっかりとこの糸責めを愉しんでね。これはつらいでしょう? わたしもやられたことはあるのよ……。ふふふ……。前に宝玄仙という方にね……。でも、そのうちに、お股がじんとなって、なんともいえない恍惚感がやってくるわ。それに、このぴくりとも動けない緊張感がいいでしょう? このまま半日も吊られたら、肉芽のことしか考えられなくなるのよ……。まあ、とにかく待っていてね、花凛さん。これから一日かけて、ふたりであなたの相手をしていあげるつもりなのよ……。だから、うちの人は、ちょっと店まで行って、臨時休業の処置をしに行っているの。もうすぐ戻ると思うわ」
陳女がうっとりとした表情を見せた。
冗談じゃない──。
花凛は四肢を拘束された身体を悶えさせることもできずに汗まみれになって呻き泣いた。
それにしても驚いた……。
この真面目そうな陳女に、こんな一面があったのだ。
そう言えば、王奇が陳女を脅して下袍を捲らせたとき、陳女は下袍の下に下着をつけていなくて、調教されているのかと、
そのときは、気が動転していたのでよくわからなかったが、もしかしたら、こういうことを日常からこの夫婦はやっているのだろうか……?
いずれにしても、どうやらとんでもない変態夫婦に捕らえられた……。
なんでこんなことになったのか……。
花凛は根元に糸を巻きつけられて天井から引っ張られることで、肉芽がまるで熱い刃物を当てられたように鋭敏な感覚になっていた。
全身は官能の芯にくさびを打ち込まれたように熱い。
花凜は身体が痙攣するように動くのを懸命に堪えながら考えた。
きっかけはわずか十日前だ。
つまり、たまたま務めている居酒屋にやってきた王奇という男から、うまい儲け話があると教えられてそれに応じたのだ。
それは次のような話だった。
花凜が住んでいる同じ長屋の隣家に
王奇は、それを兵牢でたまたま耳にしたらしいが、王奇は、それをふたりで奪ってしまおうと花凜に持ちかけてきたのだ。
王奇は、兵牢でそれを王奇に教えた男に知られることなく、こっそりとその財を横取りしてしまいたいし、そのためには、洛葉という老女を襲うのではなく、留守中に奪ってしまうのが都合がいいと考えたのだ。
だが、その洛葉という老女は、なかなか外出をしない生活を送っている。
そこで、王奇は洛葉を見張るための場所として、花凛の家を提供してくれないかと持ちかけてきたのだ。
ただ家を貸すだけで、大きな財を分けてもらえるという申し出だ。もちろん花凛は承諾した。
しかし、本当に洛葉は外に出ることがなかった。
数日、見張っていたが、ほんの少しも外出する様子がない。
待っていても埒が明かないことを悟った花凜は、仕方なく、幽霊に化けて洛葉を脅し、家を出て行くように仕向けてみた。
だが、洛葉はその幽霊のことをこの陳女夫婦に相談したようなのだ。
それで、この関係のない夫婦がこれに関わってきたというわけだ。
王奇は、無関係の陳達たちが首を突っ込んできたことに腹を立てて、幽霊の正体を探るために夜中にやってきた陳達を背後から忍び寄って刃物で脅迫した。
すると今度は、陳女がそのことに腹を立てて、次の夜に洛葉の部屋に隠れて、侵入者がやってくるのを待ち受けていたのだ。
そして、剣で王奇を圧倒した。
陳女が大変な武芸の持ち主だったというのは驚きだった。
剣でかなわなかった王奇は、逆上して花凛を人質に陳女を脅迫するというようなわけのわからないことをした挙げ句、結局はなにもせずにその場から逃亡した。
残された花凛は、陳達と陳女夫婦に捕らえられて、一体全体、今回の話がどういうことなのか白状するように迫られた。
それで、洛葉の家からこの夫婦の家まで拘束されて連れ込まれたというわけだ。
しかも、下袍を洛葉の家で脱がされて、抵抗すれば長屋の外で下半身を素裸にすると脅迫されながら、ここまで外を歩かされたのだ。
いまは薄っすらと明るいが、この家に入るときは、まだ暗かったので誰にも見られていないと思う。
そして、ここにやってきてすぐに、ふたりから猿ぐつわで口を塞がれて全裸にされた。
さらに、抵抗むなしく、部屋の真ん中に四肢を大きく拡げて拘束もされた。
手首足首に縄を巻かれて、部屋の四隅から引っ張られたのだ。
すると、あのいつも人畜無害のような表情をしている陳女に淫女のような妖しさが漂い出し、あろうことか剝き出しになっている花凛の女芯を責めだし、しかもその肉芽の根元に糸をぐるぐる巻きに巻きつけると、天井の金具に括りつけてしまった。
あの陳女や陳達に、こんな嗜虐の性癖があるということには驚いた。
花凛は動転し、花凛の裸身の横にでんと胡坐をかいて、陳女のやることを笑って見守っていた陳達に猿ぐつわの下から救いを求めた。
だが、あの真面目そうな陳達も、実は陳女を相手に普段から調教めいた性の嗜虐をやっているらしく、かなりの異常な性癖の持ち主のようだった。
女の急所を吊られて、昂ぶった声を張りあげて、呻いている花凛を満足気に眺めるだけだった。
しかも、こうなったらなんでも喋ると懸命に訴えているのに、このふたりは一向に猿ぐつわを外そうとしない。
花凛は肉芯が吊りあげられるという仕打ちに、恐怖の衝撃を受けて狂乱した。
しかし、少しでも身悶えして身体を動かすと、吊られている肉芽にもの凄い激痛が走る。
花凛は身体を動かさないように四肢をぴんと緊張させて、息をするのも耐えるかのように全身を硬直させ続けた。
こんなの気が狂う……。
許して──。
花凛は一生懸命に訴えた。
しかし、花凜の声は詰め込まれた布に阻まれて、ううっという唸り声になるだけだ
やがて、しばらく陳女と何事かを相談していた陳達は、すぐに家を出て行った。
花凜は四肢を大きく拡げて、肉芽を天井から吊られるという哀れな姿で陳女とふたりきりになった。
陳女は、花凜に対し、陳達は今日は店に行かないように処置をするために出掛けたから、このまま陳達が戻るまで待てと言った。
花凜は、まさか、一日がかりで花凛を責め続けるつもりなのかと激しく動揺した……。
身体に恐怖が駆け回る。
さっきまでは、秘密をばらすことによって王奇に殺されるかもしれないという恐怖が強かった。
いまは、それよりも、この得体の知れない変態夫婦に対する怖さが勝る。
「んんんんっ──」
花凛は何十度目かの哀願をした。
だが、陳女はこういうことにひどく馴れているのか、花凛に対してこんな残酷なことをしても、少しも心を動揺させた感じはない。
むしろ、花凛を嗜虐的にいたぶるのをひどく愉しんでいる気配だ。
「なにを言っているのかわからないけど、きっと、糸が緩いと言っているのね……。ふふ……。ごめんなさい……。陳達が戻るのは時間がかかるだろうから、あまり引っ張りすぎたらつらいだろうと、手加減したのよ。でも、それじゃあ、物足りなかったのね。もっと吊りあげるわ」
陳女が妖艶な笑みを浮かべると立ちあがった。
「んんんっ」
花凛は悲鳴をあげた。
肉芽を吊っている糸は、天井の金具を通して方向を変えて柱の金具に結び付けてある。
そこで自在に吊り具合を調整できるようになっているのだ。
陳女はさらに糸を引っ張り、花凛の肉芽が限界まで伸び切るところで固定し直した。
「んぐううううっ」
花凛の口から咆哮が迸った。
「いい加減に静かにしなさいよ、花凛さん──。わたしも夫も、隣の周達さんには、あのときの声を少しは静かにするように言われているのよ。聞き分けがないと、こうよ──」
陳女はそう言いながらぴんと張りきった糸を指で小刻みに動かした。
花凛は猿ぐつわから部屋をつんざくような悲鳴をあげた。
「静かにしなさいと言っているでしょう。ほらっ、静かにできるまで訓練よ」
陳女が強い口調で言って、また糸を動かす。
しかし、声を出すなと言われても耐えられるものじゃない。
花凛は咆哮を続けた。
なんでも話す──。
どんなことでも白状する──。
花凛は一生懸命に叫び続けた。
しかし、陳女は声を出すなの一点張りで、花凛の言葉は無視だ。
猿ぐつわで阻まれているとはいえ、花凛が喋ろうとしている内容は予測がついているはずだ。
だが、陳女の興味は花凛そのものであり、花凛の自白はどうでもいい気配だ。
こうなっては、花凛も陳女たちの目的が、花凛に対する嗜虐そのものと思うしかない。
肉芽を糸で吊られて、その糸を引っ張って与えられる激痛と汚辱感……。
それに花凛は耐えられずに泣き続けた。
だが、しばらくすると花凜の身体にじわしわと異変が起こってきた……。
身体に苦痛だけではない別のものも襲ってきたのだ。
女芯から拡がる強烈な疼きと官能の昂ぶり……。
それが襲ってきたのだ。
陳女が糸を弾き続ける。
ずきんずきんという猛烈な痛みが全身を駆け抜ける。
同時に眩暈がするほどの不思議な快感が花凛の全身の肉を痺れさせる。
この感覚は何なのか……。
花凛はなにがなんだかわからなくなり、ひたすらに喘ぎと呻きを繰り返すだけだった。
「帰ったぞ」
そのときこの家の入口が開いて、やっと陳達が戻ってくる音と声がした。
やっと許される──。
陳女の心に安堵の灯がともる。
「おかえりなさい、あなた……。どうでした?」
陳女が陳達に駆け寄っていった。そのままふたりは、玄関の土間でひそひそ話を続けている。
それだけじゃなく、陳達はなにかの荷のようなものを抱えていた気配だ。
それを陳女とふたりで片付けてもいる。
そんなことよりも、早く糸を解放して欲しい……。
花凛は声をあげた。
「かなり、陳女に絞られたみたいだな、花凛……」
陳達が陳女とともに戻ってきた。
そして、今度は花凛の羞恥の中心である花凛の股間の前に胡坐をかいた。
「だいぶ、感じていたみたいだな、花凛……。随分と床を汚してくれているじゃないか」
陳達が笑いながらいきなり花凛の女陰を指ですくった。
「んぐううっ」
腰をよじらせれば激痛が走るとわかってはいたが、不意に陳達に股間に触られたことにより、花凛は狼狽えて身体をよじらせてしまった。
その途端、頭の芯まで貫くような激痛が花凛を襲った。
それとともに、花凛は初めて自分がどろどろになるくらいに女陰から淫液を垂れ流しているという事実を知った。
「花凛、よく聞け──。一度しか言わないぞ……。陳女と話し合ったんだが、いまから俺と陳女は、花凛の身体を徹底的に責めることにした。それは、花凛を完全に屈服させるためであり、今回の騒動の始末のため、花凜に絶対的な協力をしてもらうためだ……。いいか? 完全なる協力だ。ただ、知っていることを白状するとかそういうことじゃなくて、絶対的に服従してもらう。いいね……」
「んんんんっ」
花凛は吠えた。
いますぐ屈服する……。
半日も必要ない……。
いま訊ねて欲しい……。
懸命に叫んだ。
「……まあ、いまはなにも考えられないかもしれない。だけど、半日後に一度訊ねるから、そのときに、俺たちに協力するかどうかの返事を聞かせてくれ。そのときに、屈服していなかったら、責めがさらに半日延長される。そのときもまだその気になれなかったら、また、半日だ……。それから、あんたの店の主人には、数日、あんたが通えないという話はしてきた。店じまいした直後だったが、なんとか間に合ってね。話もできたんだ。一応具合が悪いと伝えたから、お大事にという伝言を預かったぞ」
陳達が笑った。
「んんっ、んんっ、んんっ」
花凛は懸命に叫ぶ。
ぼろぼろと涙が出てきた。
「……それに、俺も陳女も、なぜかなあ……。ふたりだけの性も愉しいんだけど、ほかの誰かがいる方がもっと心が休まるんだ……。あくまでも性だけのことだけどね。だから、久しぶりにいい機会だし、ちょっと俺も愉しませてもらうよ」
陳達がそう言って花凛の顔に覆いかぶさるようにわざわざ顔を見せた。
その顔は不敵に微笑んでいた。
陳達の不気味な笑みに花凛は思わず身震いした。
「まずは、最初の半日だ。始めるぞ」
陳達が不気味な笑みを浮かべたまま、なにかをさっと花凛に示した。
それは穂先の乾いた絵筆だった。
なんでもない道具だ──。
しかし、いまの花凛には、なによりも怖ろしい武器だった。
「んんっ」
花凛はびっくりして呻いた。
だが、再び陳達が股間側に顔を戻す。
これからなにをされるのか予想がつく……。
花凛は悲鳴をあげた。
「……ふふ、大丈夫よ……。怖がらないで、花凛さん。さっきも言ったでしょう……。これはやみつきになるわよ。苦しいけど気持ちいいのよ……わたしも嫌いじゃないの……。わたしたちは異常な夫婦……。かわいがってもらいなさい」
陳女がおかしなことを言いながら、花凛の頭側にしゃがんでそっと花凛の髪を擦った。
なんなんだろう、この夫婦──。
このおかしな変態夫婦──。
なにが異常な夫婦だ──。
しかし、花凛がものを考えられたのはそこまでだった。
陳達の持っていた絵筆が、糸巻で吊られた花凛の肉芽を擦った。
花凛は口から鋭い悲鳴を迸らせたが、同時に身体を突っ張らせてしまい、吊られた糸を思い切り引っ張らせてしまった。
花凛は泣き叫んだ。
筆に責められる刺激で身体を悶えさせれば急所が激しく引っ張られる。
しかし、柔らかい絵筆に肉芽を責められてはどうしても身体の筋肉を突っ張らせざるをえない。
「気持ちいいでしょう、花凛さん……」
まるで暗示にでもかけるような優しい口調で陳女がささやいて頭を撫ぜる。
反対側では陳達の残酷な筆責めだ。
「んぐううっ」
陳達の巧妙な筆遣いに、花凛は気が狂うほどの官能の大きな疼きを感じていた。
「心地いいのよ、花凛さん……。痛さに隠れている快感を拾うのよ……」
陳女がささやき続ける。
また、陳達の筆も責め続ける。
花凛は激しく喘ぎ続けた。
でも確かに心地いいかもしれない……。
切ない……。
気持ちいい……。
理不尽にいたぶられる口惜しさも飛んでいく……。
股間がどっぷりと濡れているのはもうはっきりと自分でもわかる。
陳達が花凛の女芯を筆で責め続ける。
そして、花凛は、筆の刺激が与えられるたびに、口に押し込まれた布越しにけたたましい悲鳴をあげ続けた……。