交合の疲れか
陳達もまた疲れていた。
なにせ一度にふたりの女を相手にしたのだ。
しかも、欲望のままに抱き尽くした。
妻の陳女と、そして、捕えるかたちになった花凛の裸身を縛り、性具でいたぶり、思いつくままの嗜虐的な性戯に興じ、前も後ろも犯したのだ。
妻の陳女だけではなく、その眼の前で花凛の女陰を犯して精を放った。
何度も……。
昼に始まった性交は、いつしか夜に及んでいた。
行為がやっと終わった時、最後には三人とも倒れるように一枚の寝具に裸のまま横たわった。
足元をふらつかせながら陳女が水桶と手拭いを運んできて、それで陳達の身体を拭き、次いで花凛の汗を拭き、最後に自分の身体を拭いた。
花凛の身体を拭くときに、陳女は花凛になにかを話しかけながら、花凛の口の中になにかを服用させた。
おそらく、あれは陳達の精を子種として受け入れないようにするための仙薬だと思う。
宝玄仙たちがこの家に滞在した後に出立するとき、こういうものも必要だといって大量に置いていったのだ。
一粒で二月ほどの避妊効果があるらしい。そんなことをぼんやりとした頭で観察していた。
それからすぐに陳達は寝入った。
そして、いま眼が覚めた。
まだ、真夜中だと思うが、激しい性欲から解放され、陳達の頭は冴えていた。
それで思うことがあった。
「陳女……」
陳達は妻の名を呼んだ。
長女金という名を隠すために陳達が名付けた名だ。
陳達の妻であり、女だから陳女──。
安易だが、長女金はこの陳女という名が気に入った。
そして、元は国軍の女将校にして武芸に秀いで、心根の優しいという国都でも評判の美女だったあの長女金が、しがない古服売りの男の貞淑な妻となった。
そして、数箇月──。
陳女となった長女金は、あらゆる意味でよい妻だった。
国軍の元将校だったとは思えない程に家庭的で、料理をして家事をこなし、同じ長屋の女たちとも仲良くつきあっている。
また、性技については、よく知っていて陳達を愉しませてくれるとともに、どんな陳達の要求にも悦んで応じてくれる。
嗜虐的な性をするときには羞恥に染まってくれるし、破廉恥で解放的な性も一緒にやってくれる。
そして、今日のように自分が責める側になっても、熟練した女調教師のように陳達もたじろぐほどの嗜虐の役をしてみせる。
最高の女だ……。
その女が陳達の妻なのだ。
半年前には考えられなかった事実だ。女に縁のなかった陳達に最高の女が妻になってくれたのだ。
それが不思議だ……。
我に返ると、そのことに違和感しか覚えない。
「は、はい……」
陳女がだるそうに顔を向けた。
陳女と陳達は花凛を挟むように横になっていた。
一枚の寝具なので、大人が三人も横になればぴったりとくっついてしまう。
「あ、あのう、まだ、するんですか……?」
陳女がはにかみながらも少しだけ不安そうな表情を闇に浮かべた。
陳達は苦笑してしまった。
「……違うよ。話がしたいだけなんだ。こんな夜中に申し訳ないんだが、一緒にこっちに来てくれないか?」
陳達は立ちあがって、寝具を敷いている部屋の隣の居間に向かう。
陳達は全裸だ。
陳女が起きあがって、枕元にあった薄物を自分の裸身に引っ掛けた。
そして、陳達の上掛けも運んできて居間に座った陳達の肩に乗せる。
陳女が部屋の隅にある燭台に火をつけてから陳女の横に座った。
ほとんど真っ暗だった部屋に灯がともる。
「眠れなくなったんですか……。わたしは眠いですけど……。あなたったらあんなに激しくって……。でも、普通ですか……。いや……、でも、今日は花凛さんがいたから、いつもよりも激しかったかも……」
陳女が隣の部屋に寝ている花凛に視線を送りながら、くすくすと笑った。
屈託のない心からの幸せそうな笑顔だ。
その顔を眺めているだけで、陳達は自分の頬が緩んでくる。
「話というのは、そのことでな……」
しかし、今夜に限って妙に陳達は妙に不安な気持ちになっていた。
いつもなら、陳女だけなので、陳女の身体を慮りながら抱かなければならないが、今夜はふたりの女に世話をさせたために陳達も充分に堪能した。
だから、いつもよりも冷静でいられるのかもしれない。
「そのこととは?」
陳女が首を傾げた。
「俺はなんで花凛を抱いたのだろう?」
「はっ?」
陳女がぽかんとした表情をした。
「いや、もちろん、抱いたのは俺だ。なぜか、花凛を見ていると無性に欲情して抱きたくなった。それだけじゃなくて、酷く乱暴に嗜虐的に躾けてやりたくなった……」
つまり、むらむらと調教してやりたい感情が頭にもたげてきたのた。
そして、花凛を手酷く調教まがいの嗜虐をして乱暴に抱いた。
結果的に花凛は満足したようだったが、陳達が強姦のようなことをして無理矢理に襲ったという事実に変わりはない。
「わたしがそうするように誘ったらですわ……。それに女のわたしが言うから間違いありませんが、花凛さんは十分に満足してます。明日、眼が覚めても、あなたのことを悪く思っているということはありませんよ……。それどころか、また、あなたに躾けて欲しくてやってくるかも……。そうしたらどうします、あなた? また、ふたりで調教します? それとも、途中からみたいに、あなたがわたしたちふたりを並べて調教されますか? わたしは、どっちでもいいですよ、ふふふ……」
陳女がくすくすと笑った。
しかし、陳達はそれを苦笑して聞き流す。
「いや……。だが、なんとなく違和感があるのだ。花凛については、もちろん、俺がそうしたくて、そうしたのだが、こうやって冷静になってみると、どうしてどんなことをしたのか不思議になってな……。こんなことをすべきではなかったのじゃないだろうかという自分がいる……。いや、そうじゃないな……。こんなことをすべきではなかったと思うべきじゃないかと考える自分がいるんだ。それなのに、これっぽちも後悔していないんだ……。以前の俺の立場だったら考えられないことだ」
陳達は正直なところを言った。
すると陳女がにっこりと笑った。
「まあ、後悔なんてする必要はないですよ。さっきも言いましたが、花凛さんはもの凄く満足なさっています──。それに今夜のことは必要だったことですから。それに……」
陳女がなにか諭すようなことを口にしかけたが、陳達はそれを手で制した。陳女が口をつぐむ。
「なあ、陳女……。お前、俺のことをどう思う?」
「どう思うって……」
陳女は困惑したような表情になった。
「お前は本当に俺のことを好いているのか? いや、最初は宝玄仙殿に諭されたかたちで俺の妻になったということは知っている。しかし、ある時期から、俺はお前の真摯な愛情を感じるようになってきた。だが、それはなぜだ──?」
「まあ、そんなことを不安に思っておられるのですか、あなた? そうですねえ……。まあ、お顔は……人並み……よりも少しだけ見劣りするかも……。でも、そのほかのことは素晴らしい旦那様です……。働き者だし、真面目だし、頼りになるし……。ふふ……。でも、わたしたちって、なによりも、性の相性が抜群にいいと思いますけど……」
陳女が冗談めかしく言った。
しかし、今夜の陳達はなぜか、陳女の軽口に付き合う気持ちにはなれなかった。
「嘘をつくな、陳女──。お前が俺を心から好きになるはずなどないのだ──。俺は俺という男をよく知っているのだ。俺はこの鼻だ。お前と結婚するまでは、女と付き合うどころか、商売女にも相手をしてもらえなかったんだぞ──。それなのに、ある日、突然、お前という素晴らしい女が嫁にくるし、花凛のような若い女だって、なんだかんだで途中からは積極的だった。一体全体、どうしてこんなことが起こったのだ──?」
「さっぱりなにをおっしゃりたいのかわかりませんわ。それがあなたのお悩みなんですか……? わたしがあなたをお慕いしているのが──?」
陳女は笑った。
しかし、その屈託のない笑いが、また、陳達の不安を誘った。どう考えても絶対におかしいのだ。
あり得るはずのないことが起きている。
そして、そのことに合理的な結論を与えようとすれば、陳達にはたひとつの答えしか出てこない……。
おそらく、間違いない……。
多分、朱姫だろう……。
もしかしたら、宝玄仙かもしれないが、陳達は朱姫だろうと思っている。
陳達は、国都で宿元女という年配の女将校に『縛心術』という操り術を朱姫がかけるのを眼の前で見ていた。
その朱姫が、『縛心術』をかけたのだ……。
陳達が得た結論はそれだ──。
「俺の話を聞け、陳女……。お前、『縛心術』という操り術を知っているか?」
すると陳女の顔の色が急変した。
それは陳達も驚くほどの変わりようだった。
それで陳達は確信した。
陳女はなにかを知っている……。
そして、なにかを隠している……。
しかし、このことで少し陳達は混乱した。
陳達の予想では、陳女がこれほどまでに色をなす理由はないはずなのだ。
だが、それならば、陳女は承知して、『縛心術』を受け入れたのだろうか……。
「縛心術がどうしたのですか?」
陳女は訊ねた。
しかし、やはりどことなく陳女の態度は変だ。
陳女がなにかを隠しているということは間違いない……。
動揺しているような陳女の態度でそれがわかる。
まだ、二箇月余りだが、毎夜のように肌を合わせている夫婦なのだ。
陳女がなにかの隠し事のようなことをしているのならそれは感じる。
まあいい……。
とにかく陳女に直接ぶつけてみるだけだ。
「冷静になって聞けよ、陳女……。おそらく、間違いないと思うが、お前は『縛心術』にかけられている。俺のような醜男に惚れるように、朱姫に操り術をかけられたのだ」
陳達は言った。
しかし、不安な表情をしていた陳女の眼が大きく開いた。
そして、次の瞬間、真剣だった陳女が爆笑した。
「な、なにがおかしいのだ、陳女──。お前は、操られているんだぞ。それで好きでもないのに、俺のような醜男の妻にさせられているのだ。笑い事ではないぞ」
陳達は叫んだ。しかし、
陳女はいつまでもころころと笑い続けるだけだ。
だんだんと陳達は腹がたってきた。
「笑わずに聞くんだ、陳女──。お前がどのくらい知っているかはわからないが、あの朱姫は、『縛心術』という操り術の達人なのだぞ。俺は、あの娘が、俺の眼の前で宿元女という老獪な女将校に見事な偽の記憶の擦り込みをするのをこの眼で見たのだ──。あの技を使って、彼女はお前の心を操ったに違いないのだ──」
陳達は懸命に説明した。
だが、陳女の笑い声はますます大きくなるばかりだ。
そして、やがて発作のような笑いが鎮まると、ようやく陳女は陳達に向かって口を開いた。
「わ、わたしは、『縛心術』などにかけられていません。それは間違いありません……。でも、そうであってもかまいません。術に操られている状態でもなんの問題もありませんから……。わたしは、ひとりの男の方をこんなにも好きでいられるなら、それはそれで素晴らしい操り術だと思います……。でも、わたしのこの気持ちは、操りとは関係のない正真正銘のわたしの正直な気持ちです──」
「し、しかし、朱姫の『縛心術』は、術がかかっていることを忘れさせてしまうのだ。どう考えても、お前のような女が俺に惚れるとは思えない──」
「あなたは、あなたという殿方が魅力的だから、わたしがあなたを好きになり、花凛さんもそう思ったから、途中からあなたを受け入れたとは思わないのですか?」
陳女はおかしくて堪らないというような表情で言った。
「いいや──。俺にはよくわかっているのだ。残念だが、俺は女にもてるような男ではない」
四十年間……。
陳達は女に縁のない人生を送ってきた。
人並み外れて醜い鼻のせいで、商売女にも疎まれてきた。
それが突然に女が向こうから次々にやってくるような人生に変化した。
それは悪くないのだが、やはり、これは不自然なことであり、あり得ないことなのだ。
すると陳女が笑顔を陳達に向けた。
「……だけど、もし、そうであればどうなのですか? わたしが、操り術であなたが好きになるように心を操られているのだとして、あなたはわたしの術が解けて、どこかに行ってしまってもいいのですか?」
陳女が言った。
陳女は微笑んでいたが、その表情の裏には真剣な感情がある気がした。陳達はその真剣さにほんの少したじろぎを感じた。
そして、考えてみた。
陳女が『操り術』にかけられていて、そのために陳達に惚れるように強要されているとすれば、確かに術が解ければ、陳女は自分から去ってしまうかもしれない……。
それに自分は耐えられるのだろうか……。
考えた時間はそんなに長いものではなかった。
それを想像したらすぐに結論に達した。
「……いや、俺にはそれは耐えられない。お前が心を操られているとしても、それでもいい。それが偽物の愛情でも俺はお前にそばにいて欲しい──。俺はお前を手放さない」
陳達は言った。いくら考えてもその結論しかない。
自明のことだ──。
すると陳女が陳達の身体に自分の身体を寄せて、嬉しそうにしがみついてきた。
陳達も陳達も裸身に薄物一枚をかけているだけだ。
陳女の乳房が陳達の胸板にぎゅっと当たる。
あれだけやり尽くしたのに、股間のものが再び力を漲らせてくるような気がした。
「ありがとうございます。そんな風に思ってくれて嬉しいです……。わたしみたいな経験をした女をなんの屈託もなく受け入れてくれるあなたのような男の方は、この世にふたりといないと思います。わたしこそ、あなたに捨てられたくないです──。どんなことでも受け入れますので、捨てないでくださいね」
陳女が言った。
陳達を抱きしめる陳女の力は結構と強い。自分もそっと陳女の身体に腕を回して抱き寄せた。
「しかしなあ……」
だが、心に不安が過ぎる。
なぜ、自分が女に縁があるようになったかという疑問はまだ解消されていない。
やはり、陳女は『縛心術』に操られていているから、陳女は自分を好きだなどと言っているのではないだろうか……。
陳達の落ち着かない気持ちが肌を接している陳女に伝わったのだろうか。
陳女が陳達の胸の前で嘆息した。
「仕方ありませんね……。ならば、白状します──。こんなことをあなたに黙っていたなんて知られたら、わたしこそ嫌われるかも……。でも、あなたのことが本当に好きになるにつれて、黙っておくこともつらくなったというのが本当ですし……」
陳女がそう言って、陳達の胸にもたれさせていた自分の顔をすっと顔をあげた。
なんだが不安そうな顔をしている。
「操られてるとすればあなたです……。実は朱姫さんは、あなたに『縛心術』をかけたのです……。わたしは、それをあなたには伏せておくように言われていたのですが……」
陳女は申し訳なさそうに言った。
陳達は驚いた。
「お、俺に?」
陳達は思わず声をあげたがすぐに首を傾げた。
だが、そんなことはありえないだろう。
その馬鹿馬鹿しさに陳達は笑いそうになった。
『縛心術』で陳女──、つまり、長女金に惚れるように心を操られなくても、長女金のことは好きになるに決まっている。
陳達はそう言った。
すると陳女の顔に少しだけほっとしたように笑みが戻った。
しかし、すぐに真顔に戻る。
「黙っていて申し訳ありませんでした……。あなたがかけられたのは、ご自分に自信が生まれるようにする操り術だそうです。朱姫殿は、性癖を解放する術だと言っていましたが……」
「性癖を解放する?」
今度こそびっくりした。
性癖を解放するとはどういう意味だろう……?
「そのう……。あなたが女に対して、自信が持てるように……、というよりは、もともと持っている性癖の欲求を我慢することなく解放するという心の施術のようです──。暗示されている言葉を耳にすると、あなたの中にある心の抑制が解除されるとか言っていました……。黙っていて、申し訳ありません。わたしは、あなたがそれで楽になって人生を愉しむことができるならそれでいいと思っていたのです……」
陳女が申し訳なさそうに言った。
「えっ?」
思わず声をあげたが、そう言われると思い当たることもある。
陳達は、こと性に関することでは、陳女を相手に羽目を外すことが本当に頻繁だが、そんなとき、陳女はいつもあるひとつの言葉を頻繁に口にしているような気がする。
なんとなく不自然に会話に含ませてくるので、陳達は印象に残っていたのだ。
考えてみれば、花凛のときもそうだった。
陳達は花凛に欲情しかけたが、さすがに手を出すのが躊躇った。
だが、陳女がある言葉を口にした。
それで、不思議に心が高揚して花凛に性的な調教をしたくなったような気がする。
「お、怒らないでください……。あなたを操るとか、心を弄ぶとかそんなつもりはなかったのです。ただ、あなたが悩んだりせずに、自信が抱けるならそれでいいと……」
急に考え込んだ陳達に対して、陳女がもの凄く不安な表情をした。
いずれにしても、朱姫の『縛心術』がなんらかのかたちで自分の心に影響を及ぼしているというのは本当のことだと思った。
言われてみれば、それは確実だ。
そうでなければ、女房の陳女はともかく、花凛のようなほかの女にまで、自分が躊躇いなく手を出すとは考えられない。
どう考えても、およそ以前の自分では考えられない行為だ。
それでいて、いまでも後悔のようなものはまったくないのだ。
抱きたくなったから抱いた。花凛は陳達が手を出してもいい状況にあったのだし、陳女自身もかなりその気だった。
だから、当然のことだと思っている。
ある程度、暗示がそれを後押ししたのだとしても、そのこと自体が『縛心術』の影響なのか、なにも罪悪感のようなものを抱くことができない。
「つまり、俺が女に接触的になるための暗示の言葉というのが、……“異常な夫婦”という言葉か……。おうっ」
陳達が、その言葉を口にした瞬間、陳達は自分の身体の中の血がかっと熱くなるのがわかった。
そして、これまで鎮まっていた性的欲求が急に湧き起こった。
なるほど、これが暗示の力か……。
陳達は妙に納得した。
だが、まだ腑に落ちないこともある。
操られていたのが陳女や花凛などではなく、自分の方だとすれば、なぜ、陳女が陳達に慕うようなことをいい、花凛までもなんとなく自分になびいたような感じになったのだろう……。
しかし、冷静になれたのもそれまでだ。
だんだんと熱くなる身体は、陳達をこれ以上大人しくさせることはできないようだ。
陳達はもうすっかりと興奮していた。
そして、眼の前には裸身に薄物一枚を身に着けただけの陳女……。
そうであるならば、いまからどうするべきかもまったくの自明のことだ。
「よくわかったよ、陳女……。わかったが、許すわけにはいかんな……」
陳達は言った。
「ええっ──」
陳女は陳達のその言葉に身体をびくりと震わせて身体を起こして、陳達の裸身から離れた。
だが、陳達はその陳女の身体から薄物を剥ぐと、強引に背を向かせて、陳女の腕をその薄物でぐるぐる巻きにした。
「ひいっ」
急に乱暴に扱われた陳女が反射的に声をあげた。
しかし、陳女はそれ以上は抗わなかった。
たちまちに、陳女は素裸で両手を布で後手縛りにされた姿になった。
「夫に隠し事をするような女房は、また、一から調教をやり直さないとならんな。そう思うだろう、陳女……?」
陳達は陳女を睨んだ。そして、ほんの少しだけ笑みを作ってみせた。
すると陳女がほっとしたように身体の力を抜いた。
「……その通りです、あなた……。わたしを一から調教してください」
陳女がさっと正座になって、後手縛りのまま陳達に向かって床に頭を下げた。
陳達は自分の身体から、さっき陳女が被せた薄物を脱いで、胡坐にかいた股間にそそり勃っている怒張を陳女に示した。
「舐めろ」
陳達はそれだけを言った。
すると陳女が小さな口を精一杯開いて、陳達の怒張を頬張った。
実のところ、陳女は口が小さい。
性技には類まれなものを持っていて、さまざまなことで陳達を愉しませる陳女だったが、どちらかといえば口でやる奉仕は苦手そうだった。
だから、いままでは、陳達はそれほど陳女に口では求めてこなかった……。
陳女は苦しげな息をしながら、唇の付け根が裂けるかと思うくらいに口を開いて、陳達の怒張を口に収めている。
「喉の奥まで入れろ。もっと、奥だ──」
なかなか陳達の一物の全部を収められずにつらそうな様子の陳女に陳達は容赦なく言った。
陳女がさらに顔をぐいと陳達の股間に寄る。
一度だけ、えずくような仕草をしたが、すぐに陳女は呼吸を整えて、舌を陳達の怒張の側面に這わせながら、唇を前後に動かしだす。
陳達はいっぱいに咥えこんだ口を自分の股間で動かし続ける陳女の揺れる乳房にそれぞれに左右の手を伸ばすと、床を向いている乳首を弾くように刺激した。
「んんんっ」
陳女が懸命に口を動かしながら、吠えるように口の中で声をあげて、身体を悶えさせた。
「罰だからな。一度や二度の精を口に放ったくらいでは許さんぞ、陳女。それこそ、顎に力が入らなくなっても続けさせるからな……」
陳達は言った。
陳女が一度だけ吠えるような……、悲鳴のような……、同意のような……、そんな複雑な声をあげてそのまま口を懸命に動かし続けた。