「協力せよと?」
接収した人間族の屋敷の大広間に隣接する一室だ。
この部屋の広々とした間取りと豪華な調度品を鑑みると、もともと、この屋敷の当主の
この屋敷を魔王宮として接収した青獅子はこの部屋を当面の居室にしていた。
そこで告げられたのは、やはり、城郭全体に罠を仕掛けて宝玄仙という人間の女道術遣いを捕らえるという話だった。
そして、その宝玄仙を捕獲するために、魔凛と大旋風が協力せよというのが青獅子の命令だった。
「必要ありません。わたしと鳥人族の部下だけで十分です。そもそも、たった四人のしかいない人間の一行じゃないですか。これほどの軍は必要ありませんよ、青獅子様──。わたしがやります。それに、これまでの工作については、すべてわたしたちがやったことですよ。最後の最後の場面でなにも知らない者に作戦に加わって欲しくありませんね」
魔凛はきっぱりと言った。
大旋風はなにも知らない者と言われたことに内心で肚がたった。
しかし、実際のところ、これについては魔凛の言う通りだから反論することができない。
魔凛は今回の工作に随分と前から関わっており、青獅子から直接の指示を受け、まだ魔王軍との戦端が開かれる前のこの
そして、この人間の城郭の情報を集め、考えられるあらゆる事前工作をしたようだ。
そもそも、この城郭の支配者だった李保という李媛の夫が、自殺的な魔王軍との戦いに周囲を駆り立て、しかも、魔王軍との決戦に武官だけではなく、有力な文官までもすべて連れていくという愚行を冒したのは、この魔凛の『支配術』という道術が密かに李保にかかっていたからだというのだ。
それに比べれば、大旋風が青獅子に呼び出されて、この獅駝の城郭の占領の真の目的が、宝玄仙という人間の女道術遣いを捕らえるためだと教えられたのは今朝のことだ。
それまでは、大旋風は、青獅子の支配領域をこの獅駝の城郭を中心とした獅駝地方一帯に伸ばすのが、この遠征の目的だと単純に信じ込んでいたのだ。
「だいたい、どうしてそんな話になるのですか、青獅子様? もしかしたら、功績欲しさに、こいつがなにか訴えましたか?」
「な、なんだと、魔凛──。俺がお前を妬んで、青地獅様にお願いして、功績を横取りしようとしているとでも言いたいのかよ?」
「それ以外の意味に聞こえたのか、大旋風? 遠回しの皮肉じゃあ、お前の頭じゃあ理解できないのかと思ったが、まるっきり低脳というわけではないのだな」
「なんだと──」
「ほら、いつも悪態の言葉が同じだ。それが頭の悪い証拠だ」
「なっ──」
怒鳴りあげようとして大旋風は言葉に詰まった。
悪態の言葉が同じだとか言われたため、とっさにあれこれと言葉を選ぼうとしてしまったのだ。
「やめんか、お前ら──。魔凛、確かにいままでの工作は、お前の『支配術』だけでよかった。この城郭の支配者だった人間の貴族は最初からここにいたし、まったくの無警戒で、しかもなんの力もない人間だったからな。だから、お前だけに任せた。しかし、宝玄仙を捕まえるという段になれば話は違うのだ」
「なぜです──。わたしは──」
「よいか──。この城郭に罠を仕掛けても、そもそも宝玄仙が城郭に入ってこねば意味がない。いかに、お前の『支配術』の道術でも、おそらく宝玄仙には効果はないぞ。事前の情報によれば、宝玄仙は攻撃道術への耐性があるようなのだ」
「そんなことは、やってみないとわかりません、青獅子様」
「やってみて効果がなければ、宝玄仙を警戒させてしまい罠に掛かりにくくなるぞ、魔凛。これほどの準備と労力を費やしたのだ。成功の確率の高いやり方を選ぶ──。お前と大旋風が協力すれば、かなりの確率で宝玄仙を捕らえられると思っている。それに、お前たちが協力するのは、この青獅子の決定だ。これ以上の口答えは許さん、魔凛」
青獅子はきっぱりと言った。魔凛は不満そうに鼻を鳴らした。
まあ、魔凛にしてみれば、これだけの工作を自分と自分の小飼の部下だけでやったのだ。
最後まで自分たちだけでやり遂げたいという気持ちは、わからなくもない。
「だが、策には完全を期さねばならんのだ、魔凛。お前の『支配術』が完全であり、それが宝玄仙を捕らえるための大きな武器になることは確かだ。だが、お前の術は『支配術』のみであろう。連中が城郭に入り込んだなら、罠を発動させて連中を捕らえる絶好の状況になるが、そもそも、連中がこの城郭に入らずに素通りすることもありうる。その場合、手間暇かけて、この城郭の支配を入れ替えたのが無駄になる」
大魔王は言った。
それはそうだと大旋風は思った。
確かに、宝玄仙という道術遣いを捕らえる罠を作るためのこの城郭の乗っ取りは、魔凛の完全な仕事として終わった。
城郭の数万という住人は、すべて魔凛の『支配術』の下にある。
本人たちは普通に暮らしているつもりでも、魔凛の道術による白い光を浴びてしまえば、魔凛はいくらでも彼ら全員を自分の人形のように自在に操ることができるのだ。
それなのに城郭の外見もほとんど変わっていない。
人間族の支配の象徴である城壁の旗もそのままだし、魔凛以下の軍司令部が入った行政府も中の要員が総入れ替えした以外の見た目の変化はない。
亜人が入り込んでいるのは、その行政府とこの李保の屋敷だった場所だけで、ほかの場所にはいっさいの亜人はいない。
二万五千の青獅子軍は、城郭からかなり離れた山中まで後退して隠蔽させている。
さらに、実は、この獅駝が落城しているということも、獅駝の守備軍が青獅子の魔王軍に大敗したという事実も……、そして、そもそも李保が青獅子の魔王軍と戦端を開いたということが、まだ、人間族の国都に報告は入っていないはずなのだ。
事前に入り込んでいた魔凛たちが、国都に送るはずの逐一の報告や使者に細工をして、すべての情報を遮断していたからだ。
もっとも、人の口に蓋をすることはできないという。
報告を受けていない大きな戦いが獅駝地方の南辺で発生したということは、いつかは、噂というかたちで人間の国の国都に伝わるかもしれない。
だが、すぐではないはずだ。
それに、人間族の国都も、竜飛国の南部がすでに魔王軍の支配に入っているなどという噂など簡単には信じはしないと思う。
これだけの工作が成功するというのは、魔凛の仕事が完全だったということだとは思う。
しかし、それは工作の半分だ。
次の段階はこの城郭に宝玄仙を引き込むことだ。それが成功しなければ意味はない。
「じゃあ、この男になにができるというのです? 言っておきますが、こんな男がわたしの隊に加わるのは足手まといです。宝玄仙を捕らえる態勢は、わたしとわたしの部下が完全にとっているのです。今更、こんな男……」
魔凛がまた言った。
「別にお前の隊に大旋風が加わるというのではない。大旋風は、その得意の術でその宝玄仙たち四人を城郭まで確実に連れてくる。城郭に連中が入り込めば、お前たちの出番だ」
青獅子は言った。
「し、しかし……」
魔凛はまだ不満そうだ。
「ぶつくさ言ってんじゃねえよ、魔凛。お前の『支配術』が完璧なのは知っているが、ほかの道術は大したものじゃないじゃねえかよ。まあ、俺に任せな。ちゃんと連中を連れて来てやるよ」
「お前の助けなど必要ないと言っているのだ、大旋風──。宝玄仙を連れてくる役もわたしの部下がやる……。お前が策に加わるなど……。第一、お前がこの策のことを知ったのは、今朝のことだと聞いたぞ。よくわかってもいない者に策戦に参加して欲しくないな」
魔凛が言った。
「宝玄仙もしても供にしても、亜人が近寄れば気配を探知する能力があるというぞ、魔凛。幸いにして大旋風は、完全に自分の亜人や霊気の気配を消滅させることができる。連中に接触してこの城郭に導くこともできるだろう」
青獅子だ。
「それなら、支配している人間に導き役をやらせます、青獅子様」
「なに言ってんだい、魔凛──。『支配術』は、お前が近くにいないと術を発動させることができないだろうが──。お前が近づけば、宝玄仙が気づくと言ってんだよ」
大旋風は言った。
魔凛が明らかにむっとした表情になった。
「とにかく決めたことだ、魔凛、大旋風──。そして、もうひとつ決定しているのは、今回の策で功績が高かった方に、三大王の軍を抽出して編成される三魔王連合軍の総司令官を務めさせることにするということだ」
青獅子が言った。
「三魔王連合軍?」
「はっ?」
魔凛に合わせて、大旋風も当惑の声をあげた。
この話は、大旋風も初めて聞いたような態度をとらなければならないからだ。
金凰、白象、青獅子の三大王はそれぞれに軍を持っている。それを抽出した総軍の司令官というのは、三魔王軍の第四の地位になることに間違いない。
魔凛の出世欲を刺激するのに十分の材料のはずだ。
「遠征先は魔域よ……。いま、北の魔域では群雄割拠が激しく、近年でも雷音大王という勢力と金角という女勢力が長い争いを続けている。それに援軍を出す。とりあえず、雷音大王に味方することになると思うが、状況によっては独立勢力ともなるかもしれん。その司令官の権力は重大だぞ──。お前と大旋風が同じ策戦に協力するのは、いずれが能力のある者であるかを見極めるためでもあったのだ」
青獅子がにやりと笑った。
魔凛の表情が変化したのがわかった。魔凛はとてつもなく権力欲が強い女だ。
そもそも、同性愛の陰のある魔凛が一大王こと金凰魔王の愛人になったのも、金王軍における出世のためだという噂だ。
自分の美貌を武器に魔王軍の一軍の長の座をせしめたということだ。
しかし、魔凛が本当に同性愛者だとすれば、金凰魔王との性の相性は最悪だったと思う。
その辺りが、金凰魔王が魔凛を見限り、青獅子に頼んで処分をしようとした背景なのかもしれない。
青獅子が言及した魔域遠征軍の総司令官ともなれは、その権勢は三人の魔王に匹敵するものになることは間違いないだろう。
魔凛が興味を示さないわけがない。
「わかりました……。そのような話があるならやりましょう、青獅子様……。わたしの能力がこの男よりも遥かに上であることを証明してみせます。もっとも、こんな男と比べられるとは心外ですが……」
魔凛が言った。
食いついた──。
大旋風は密かに思った。
なにをもって魔凛をこの土台に載せるか──。
大旋風は、それは青獅子と事前に話し合った。
大旋風は、あの魔凛は権勢欲の塊のような女だから、それを餌にするのがいいと言ったのだ。
そして、やはり、思った通りだった。
「魔凛は承知だな? 大旋風よ、お前もそれでいいか?」
青獅子が大旋風に視線を向けた。
「やりましょう。宝玄仙の捕縛に功績があった方が勝ち──。お前も、これでいいのだな、魔凛?」
大旋風は魔凛に視線を向ける。
魔凛が鼻を鳴らした。
「不本意だが勝負してやるよ、大旋風──。わざわざそんなことをしてわたしの能力が上だと証明しなければならないというのは不満だが、まあ、我慢してやる──。しかし、どちらが功績があったかというのは誰が決定するのですか、青獅子様?」
「余だ。不満か、魔凛?」
「だって、青獅子様は、大旋風とは個人的にも仲がいいじゃないですか。さっきも人間の女を喜々として苛めていたし……」
「お前、青獅子様の決定に文句があると言いたいのか?」
大旋風は声をあげた。
いつもそうだが、この女は、根本的に魔王のひとりである青獅子を軽視している気配がある。
それが、言葉や態度の端々に現れるので、大旋風には我慢ならないのだ。
「判断には公平を期して欲しいだけだ、大旋風。お前とわたしとでは役割が違うであろう。どうやって、どちらの功績がより高いかを判断するのだ?」
「じゃあ、道術契約でどうだ、魔凛? 言の葉に載せてお互いに誓い合うのだ。道術による道術契約なら文句はあるまい?」
「道術契約か……。確かに、それなら誰にも介入できないから絶対だが、言の葉に載せる言葉が問題だな──。宝玄仙を捕らえた方というのはどうだ、大旋風?」
「捕えた方? 俺がおびき寄せる役割でお前が捕獲する役割だろうが。そんな条件飲めるかよ──」
大旋風は言った。
つくづく卑怯な女だ。
そんな条件で勝負をすれば、道術契約は大旋風の負けは最初から決まったようなものだ。
もっとも、魔凛が道術契約の話に乗ったのはよかった。
これで罠に嵌めることができる。
「……いや、それでよい。誘き出した側か、それとも直接捕らえた側のいずれを道術が勝者と判断するかわからん。誘き出した状態ですでに捕えたと判断すれば、道術は大旋風の勝ちとするであろう。誘き出しが完全でなかったならば、道術は魔凛の勝ちを判断するであろう──。ならば、両者はその道術契約を結べ」
青獅子が言った。
魔凛がにやりと微笑んだ気がした。
これはなにかを企んでいる。
大旋風は直感した。
「承知しました、青獅子様……。だが、魔凛、それだけじゃあ、面白くねえ──。お前には、朝、俺の睾丸を握りつぶしてくれた礼があるからな。さっきの条件に加えて、この勝負に負けた側は、どちらかの命令を必ずひとつ従うというのはどうだ?」
大旋風は言った。
するとわざらしく鼻を鳴らした。
「下衆な男だな……。もしも、勝負に勝ったら、わたしへの命令はなんにするつもりなのだ?」
「決まっているだろう? みんなの前でお前を犯してやる──。お前が俺に犯されてひいひい泣いているのを大勢に見物させる」
「つくづく下衆な男だな、大旋風……。だが、まあよかろう。しかし、わたしが勝てば、お前の道術をわたしが貰い受ける。それなら受けよう」
「道術を?」
大旋風は額に眉を寄せた。
道術を遣う者のそれぞれに備わる道術というのは、本来固有のものであり、道術の受け渡しというのは簡単ではない。道術の受け渡しそのものが大道術であり、それをできる者が滅多にいないからだ。
しかし、道術契約ならそれはできる。道術契約もまた強力な道術だからだ。
だが、その場合は、大旋風は道術を失うことになるだろう。
道術契約による道術の受け渡しは、“譲渡”というかたちでしかできないはずだ。
同時に、大旋風は魔凛がその条件を持ち出した理由がわかった。
あれだけの『支配術』を遣う魔凛だが、ほかの道術はからきしなのだ。
それは魔凛の劣等感でもあるのだろう。
「いいだろう。条件に応じるぜ──。宝玄仙を捕らえて、青獅子様の前に連れてきた者を勝者として、敗者は勝者の命令に必ずひとつ従う──。これを誓う」
大旋風は言った。
「誓う──」
魔凛が言った。
身体の中が急に熱を持ったのがわかった。自分と魔凛に道術契約の道術が刻まれたのだ。
「では、勝った方は三魔王連合軍の司令官ともなる──。しかし、勝負は勝負として、それにこだわった挙げ句、宝玄仙を捕らえ損なうことがないようにな。では、魔凛は行ってよい。大旋風はそのまま残れ──。李媛を待たせているのでな。まだ、耐えておるかのう?」
青獅子がにやりと笑った。
魔凛はこれ見よがしに不機嫌な表情をして、部屋を出ていった。
「よいのか、大旋風? 負ければ、お前の道術を魔凛に乗っ取られるぞ。それにあの顔はなにかを企んでいる」
魔凛が部屋の外に出ていってふたりだけになると青獅子がそう言って微笑んだ。
「企んでいるということでは俺も同じですよ、青獅子様──。それじゃあ、大広間に戻りますか──。ところで、李媛をさらにいたぶるいい考えがあるんですがね……」
「任せよう」
青獅子の顔に好色の表情がありありと浮きあがった。
*
「待たせたな、李媛。どうやら、粗相はしなかったようだな。いま、住民の中から適当に選んだ百人の人間に死の道術を刻み終わったところだが、ちゃんと、青獅子様に挨拶ができたら、小便をさせてやるぜ」
青獅子とともに、李媛、李姫、貞女の三人が手を背中で組んで大きく脚を拡げて立たされている大広間に戻った大旋風は、三人の前に立って言った。
死の道術など出鱈目もいいところだが、三人にはそれはわからないはずだ。案の定、三人のうち、特に正義感が強い李媛の顔に恐怖の色が走った。
それにしても、李媛は余程、尿意が限界なのだろう。
李媛の美貌の顔はすっかりと蒼醒め、顔だけでなく全身から脂汗が浮かびあがり、開いている両脚は小刻みに震えている。
十人ほどの亜人たちが、やっと淫虐な余興が再開しそうな気配にわっと歓声をあげた。
「あ、ああ……さ、先に御不浄に行かせてもらうわかには行かぬであろうか……?」
李媛が苦悶の表情で熱っぽく喘ぐように言った。
「やることをやらずに、小便しようとはおこがましいぜ、李媛。ねえ、青獅子様?」
「一度に百人の住民を殺したくなければ耐えるのだな。漏らせば、道術を発動させる──。では、奴隷の誓いのやり方を教えてやれ、大旋風」
「わかりました、青獅子様」
大旋風は言った。
李媛がつらそうに息を吐く。
両脇の李姫と貞女は、李媛を心配して悲痛な表情だ。
「じゃあ、これから説明するぜ……それと、李媛は途中で垂れ流すんじゃねえぜ」
大旋風はせせら笑った。
しかし、李媛はいよいよ我慢できなくなったらしく、腰から下をしきりにもじもじと動かしている。
もはや、大きく脚を拡げて裸身を晒しているという羞恥など気にならない感じだ。
見栄や体裁などもうどでもいいという李媛の苦しみが李媛の苦しそうな表情に滲み出ている。
それにしても懸命に歯を食いしばり、住民を護るために一生懸命に尿意を耐えている李媛の姿は、疼くような艶やかさが感じられ、そんな李媛を見ているとますます、この人間の貴婦人を追い詰めたくなる。
ふと、青獅子を振り返った。
青獅子もまた、追い詰められている尿意に悲痛な姿の李媛を満足気に眺めている。青獅子にしても、大旋風にしても、こと性癖については同じ嗜虐の癖を持つ。
大魔王とその部下という立場は全く異なるが、性癖については大旋風は青獅子という魔王に同志のような気持ちを抱いている。
大旋風は、青獅子が愉しんでいることを確認してから視線を三人に戻した。
「じゃあ、奴隷の誓いの儀式を教えてやる。まずは、順番に奴隷の誓いだ。これを覚えろ──」
大旋風は三人が立っている空中に人間の言語で彼女たちがこれから誓約すべき言葉を空中に浮かべた。
三人はそこに浮かんでいる言葉を読んで、悲しそうな表情をした。
「お、覚えました。あ、あの……は、母の苦しみを解放してください……」
すぐに三人を代表するような感じで李姫が言った。李媛はもう口を開くのもつらいような感じだ。
「……お、お願いです、大旋風殿……。わ、わらわにはもう耐える力がない。限界なのです。ご、御不浄にそろそろもう行かせてください。一生のお願いです……」
すっかりと言葉を改めて、大旋風に対しても丁寧な言葉遣いで李媛は言った。
「誓いが先だと言ったろう──。さて、性奴隷の誓いというのは簡単だ。さっき覚えた言葉を大きな声で誓ってから、ここで立ったまま自慰をする。その時だけは手を離していいが、脚は閉じてはならん。貞女から初めて、自慰で達したら李姫、李姫が終わったら李媛だ。三人の誓いが終わったら、李媛に便所を与えてやる。それまでは我慢し続けろ」
大旋風の言葉にますます李媛は悲痛な表情になる。
これから貞女、李姫と自慰をして、それから李媛が自慰をして初めて尿をしていいという命令に、李媛は張っていた気持ちが切れるかのようにすすり泣きを始めた。
「あ、あんまりです……。母を堪忍してあげてください。わたしがなんでもやります」
「あ、ああ……。あ、あたしを折檻してください。どんな辱めも我慢します。ですから李媛様の苦しみを解放させてあげてください」
李姫と貞女が訴え出した。
「わかった……、わかった、じゃあ、李媛の自慰だけは勘弁してやる。だが、お前たちふたりの自慰の後というのは変わりないぞ。お前たちふたりの奴隷の誓いが終われば、李媛に小便を許す──。だから、李媛の苦しみを解きたければ、早く自慰をして、その恰好のままいくのだ。少しでも短い時間で終われば、それだけ李媛がすぐに小用が許されるということだ」
大旋風は言った。
貞女と李姫が一瞬だけ屈辱に歪んだ。
しかし、それぞれが李媛に視線を向け、全身に脂汗を滲ませて限界に達した尿意の苦痛に脈打つ李媛を認めると意を決したような表情になった。
「あ、あたし貞女は、これから青獅子様の奴隷として一生を尽くします……。あたし貞女は、青獅子様及びその示すお方のいかなる命令にも従います……。あたし貞女は食事、排泄、睡眠、その他、一切の人間としての行為についても青獅子様とその示すお方の指示に従います……。あたし、貞女はすべての人間的な権利を剥奪された青獅子様の家畜として、残りの人生をすごすことを誓います。上記に違反した場合は、三人の全員がいかなる罰を受けても構いません。以上、誓います。その証しとして、皆様の前で自慰をします。ご覧ください──」
貞女がまくしたてるように一気に暗記した誓いの言葉を叫んだ。
そして、両手に回していた手を前に回して、一方を胸に置き、もう一方を股間に動かして、震える指で性器をまさぐり出した。
「ほらほら、もっと激しくやらないと、李媛が洩らしちまうぞ」
「肉芽の皮を剥いてみな。快感が回るのも早いぜ」
「おっぱいよりも尻の穴がいいんじゃないか? 両方の穴に指を入れて穴を穴を擦り合わせてみなよ」
「声を出せよ。その方が実際に感じてくるはずだ」
亜人たちが揶揄の言葉を飛ばす。
貞女は、まるで死に勝るような羞恥を官能の陶酔で逃れようとするかのように懸命に卑猥な作業に没頭している。
しばらくすると、右の指が動いている股間が淫靡な音を立てだした。
「あ、ああっ……はあっ……あ、はあ……あ、ああっ……」
感じ始めた貞女が悶えだす。
だが、少しでも早く快感を集めたいために、声を意図的に出しているという感じだ。
これだけの亜人の男たちに見られながら自慰をするというのは、緊張を解くことができないのか、なかなか達するまでにはいかないようだ。
「早くしないと、李媛が限界に達するぞ──。人が死ぬんだぜ。早くしな」
なかなか達しない貞女に亜人のひとりがからかう。するとますます貞女が悲痛な表情になる。
それでもしばらく続けていると、いつしか貞女は恍惚とした表情を浮かべだした。
やがて、苦悶にも似た表情を浮かべて、亜人たちの嘲笑の中で貞女が絶頂に達した。
達してしまうと大勢の亜人に見られながら自慰をしたという惨めさを自覚したのか。貞女ががっくりと肩を落とした。
「わ、わたし李姫はこれから青獅子様の奴隷として一生を尽くします……。あたし李姫は、青獅子様及びその示すお方のいかなる命令にも従います……。あたし切りは食事、排泄、睡眠、その他、一切の人間としての行為についても……」
まだ、貞女に対する嘲笑の笑い声の消えない中、今度は李姫が大声で自慰の前の奴隷の言葉を唱しはじめた……。