445 新しい首輪と山賊たち
「孫空女は、これまで通りに赤い首輪にしたよ。沙那と朱姫には、黒い首輪と緑の首輪を用意したけど、沙那には黒が髪の色に合うんじゃないかねえ……。お前たちがわたしの奴隷であることの証でもあるけど、装飾具風にしてやったよ。これなら、三人がお揃いでいい感じだろう?」
宝玄仙が言った。
沙那は嫌な予感がした。
外縁地域と呼ばれている無法地帯を通り抜けて、竜飛国という王国の勢力圏内に差し掛かろうとしている山中だ。
事前に調べた限りにおいては、あと一日も歩けば、竜飛国の最南辺の城郭である
連日の野宿が続いていた。
いよいよ山越えも終わりだと思っていたこの日、眼を覚ますと珍しく宝玄仙がすでに起きていて、調整の終わったという新しい首輪の霊具を三人に差し出したのだ。
宝玄仙に命じられるまま、野宿用の寝具に胡坐で座る宝玄仙の前に三人が正座で並んだ。
そして、いま、眼の前に宝玄仙の新しい霊具だという首輪が置かれている。
細い円柱の棒を円形の丸めたものであり、四個ほどの小さな宝石もついている。
宝玄仙のいう通りに、首輪の部分は黒、赤、緑の色違いであり、奴隷用の首輪というよりは、お洒落な装身具にしか見えない。
ただ、輪っかのどこにも継の部分が見当たらない。
つまり、これは宝玄仙の道術でなければ嵌められず、宝玄仙の道術でなければ外せないようになっているのだと思う。
沙那たちに着脱の権利はないのだ。
そもそも宝玄仙の霊具といえば、これまでの経験で碌なものじゃないことは知っている。
沙那は凍りついた。
ふと、両脇を見ると、孫空女と朱姫も引きつった顔をしている。
「そんな顔するんじゃないよ、お前たち──。わたしの霊具がいつもいつも性具というわけじゃないさ。これはちゃんとした意味のあるものだよ。孫空女と朱姫のためのものだしね」
宝玄仙が笑って、まずは孫空女の首に手を伸ばして、いまの赤い首輪に触れる。
孫空女の首に一体になっていたかのような首輪が外れた。
次にその新しい首輪が、すっと孫空女の首に溶けるように吸い込まれる。
「ひっ」
孫空女が顔色を変えた。
「孫空女、なんともない? どこかおかしいところは? 身体が熱くなるとか、痒いとか、痛いとかない? ほら、わたしがわかる? 沙那よ──」
「そ、とりあえず、なんにも変わりない……と思う……」
孫空女は自分の身体を擦りながら当惑気味に言った。
「いい加減にしな、沙那──。そんなんじゃないと言ったじゃないか。これは、わたしという存在がいなくても孫空女と朱姫の身体を維持するために必要な霊気を集め続けるための霊具だよ」
宝玄仙が苦笑しながら言った。
「あたしたちの身体を維持する霊具ですか、ご主人様?」
朱姫が声をあげた。
「そうだよ、朱姫。例えば、お前は臙脂虫を身体に植え付けられていて、わたしという霊気放出体の媒体がなければ、その人間の身体を維持できないだろう? つまり、お前は、その身体に刻まれたわたしの道術陣によって、わたしから放出され続けている大量の霊気を吸収し続けていて、その力で臙脂虫を殺し続けている。だけど、もしも、わたしから離れてしまって霊気の供給を受けられなくなれば、臙脂虫の産卵があっという間に拡大して、お前は獣の姿になってしまう……」
「は、はい……」
朱姫が頷いた。
随分と前だったと思う。朱姫は白骨という女の妖魔狩りに遭い、半妖であることを見破られて捕らえられ、肉体を妖魔化する臙脂虫という寄生虫を体内に植え付けられたのだ。
臙脂虫は増殖が激しく、また、しっかりと寄生体に一体化してしまうので、さすがの宝玄仙の道術でもすべてを殺すことができないらしい。
そのため、朱姫は、宝玄仙が大量に吸収しては放出している霊気を宝玄仙が刻んだ道術陣を通じて体内に吸収し続けなければならない。
つまり、朱姫は宝玄仙のそばでなければ生きていけないのだ。
「これはその問題を解決するための首輪だよ。これがあれば、わたしから離れても、身体に埋まっている妖魔化の寄生虫の恐怖に苛まれなくてすむ……。究極の霊気吸収具だよ。これは」
宝玄仙がにっこりと笑った。
「ええっ?」
朱姫が声をあげた。
「だ、だったら、これもそうかい、ご主人様?」
孫空女が自分に嵌められた新しい首輪に触れながら身体を浮きあがらせた。
沙那は驚いた。
宝玄仙の霊具作りの能力にびっくりしたのではない。
沙那が驚いたのは、宝玄仙が孫空女や朱姫を解放することに通じる霊具を作ったことだ。
朱姫もそうだが、孫空女も同じように宝玄仙からの恩恵を受けている。
大の男が数名がかりでも抱えることさえ難しい如意棒を自在に振り回せるほどの怪力だ。
それは、宝玄仙を通じての霊力の供与なしではできないことなのである。
「このわたしが、研究に研究を重ねて道術を刻んだんだ。わたしという存在に依存することなく、お前の能力を維持できるはずさ……」
宝玄仙が微笑んだ。
沙那は当惑していた。
「ご主人様、朱姫や孫女のために、ありがとうございます」
沙那はなんとなく、三人を代表するかたちで宝玄仙に頭を下げた。
「あ、ありがとう、ご主人様」
「ありがとうございます」
孫空女と朱姫が慌てるように、お礼の言葉を口にする。
「いいってことさ。じゃあ、朱姫の分だ……。そして、こっちは、お前の分だよ、沙那」
宝玄仙は笑って、朱姫に緑の首輪、沙那には黒い首輪を装着した。
その首輪が自分の首に密着するのを感じながら、ふと、孫空女と朱姫はともかくとして、自分がこの首輪をつけさせられる意味はなんなのだろうかと思った。
孫空女と朱姫は、それぞれ自分たちの身体や能力を維持するために必要な大量の霊気を吸収するこの首輪の霊具が必要かもしれないが、沙那はにそんなものは必要ない。
必要のないものを宝玄仙がわざわざ装着させるのも不自然な気がした。
「ね、ねえ、ご主人様……。この首輪の機能は、孫女や朱姫の身体や能力の維持のために必要な霊気を自動的に吸収するという機能だけですか?」
沙那は訊ねた。
「ん……? もちろん、それだけじゃないさ」
宝玄仙はあっけらかんと言った。
「えっ?」
「な、なんですか?」
素直に悦んでいる表情だった孫空女と朱姫がそれぞれ声をあげた。
「お、おかしな機能じゃないですよねえ──? 訳のわからない異常を身体に及ぼすような……」
沙那はいつの間にか緊張で溜まっていた唾を飲み込んだ。この宝玄仙のやることだ。絶対におかしなことをしているに違いない……。
絶対にだ──。
「なにをもっておかしな機能とお前がいうのかはわからないけど……、ほら、いつか、沙那の行方がわからなくなって、一箇月ほど離れ離れになってしまうというようなことがあったろう? その霊具はそんなことが起きないようにする機能もあるのさ。まあ、道術封じをするような場所に閉じ込められれば、さすがに無理だけど、通常の状況なら、それはどんなにわたしと離れていても、わたしがお前たちのいる場所へ『移動術』で跳躍できるように、『移動術』の結界を作ることができるのさ──」
「移動術の結界……ですか?」
沙那は用心深く訊ねた。
その程度なら問題ない。
いや、むしろ、宝玄仙の霊具にしてはまともな機能すぎる。
「わたしが、無条件にお前たちが逃げることができるような処置をすると思ったのかい? これまでと同じように、これからも、お前たちはわたしから逃げられないんだよ。もしも、逃げたとしても、わたしがその首輪の刻む結界に跳躍してきて、お前たちを捕らえられるということさ」
宝玄仙は大笑いした。
つまるところ、自分たちを縛る手段が変化したということか……。
宝玄仙としては、まだまだ、沙那たちを奴隷としてしっかりと道術で拘束するつもりのようだ。
だが、おかしな淫具のたぐいでなかったことにはほっとした。
「まあ、そんなことはいいさ。とにかく、もう一度、礼を言うよ、ご主人様」
孫空女だ。
「そうですね……。あたしも、これで、もしかしたら、いつか獣の身体に変化するんじゃないかと怯えなくてすみます」
朱姫もそう言い、孫空女とともに頭を下げる。
「まあ、わたしはお前たちを逃がすつもりはないけど、これからはもっと危険な旅になるような気もするし、万が一、わたしが命を失うこともあるかもしれないからね……。だけど、わたしは死んだときまで、お前たちを道連れにするつもりはないよ」
宝玄仙は静かに言った。
「ご主人様……」
沙那は呟いた。
やっぱり、宝玄仙は少しずつ変わってはきているようだ。宝玄仙はあえて沙那や孫空女や朱姫を逃がすつもりはないようだが、それでも自分が死んだときに道連れにはしないというように考えたのは、宝玄仙としては成長なのかもしれない。
旅の目的地の「西域」にいよいよ近づいている。
「西域」というのは東方帝国の呼び方であり、この辺りでは「魔域」と呼ぶ方が通りはいいようだ。
これから東方諸国と呼ばれる西方帝国の属国である諸王国群を抜けて、さらに西方帝国を縦断する。
その北側が「魔域」であり、西方帝国にかなり近い領域が金角の勢力地のはずだ。
その魔域の一端にある金角の勢力地が、宝玄仙が安住の地として選んだ場所だ。
まだまだ旅は続くが、いよいよ旅の最終地点も見えてきたような気がする。
だが、それは宝玄仙が感じているように、危険に近づいている行程でもある。
それを思って、宝玄仙は自分が死んでも、孫空女や朱姫が問題のないようしようと考え続けていたのだろう。
「大丈夫だよ、あたしがご主人様のことは守るさ」
孫空女が笑った。
「あたしも微力を尽くします。」
朱姫も言った。
「でも、実際の話、万が一、ご主人様になにかがあった場合は、どうしたらいいのですか? わたしの中には、ご主人様の『魂の欠片』が埋まっているんですよね。でも、それをどうしたらご主人様を復活できるんですか?」
沙那は訊ねた。
旅の始まりの頃、まだ、朱姫と出遭う前に、宝玄仙の実の妹であるお蘭という道術遣いに遭いに行った。
もともとは、道術遣いではない沙那が、霊気が必要とする霊具を扱えるような存在にしてもらうための訪問だった。
その手段が、宝玄仙の『魂の欠片』を沙那の体内に宿すという方法だったのだ。
お蘭の里は小さな隠れ里だが、その村の全住民が嗜虐者というとんでもない場所だった。
いりおろとあったが、とにかく、その里を離れるときに、お蘭は魂の儀式を施して、宝玄仙の魂の欠片を作って沙那の身体に入れた。
それで沙那もまた、道術遣いと同じように、霊具を扱える身体にはなった。
しかし、『魂の欠片』には、もうひとつの役割もあった。
万が一、宝玄仙が死んでも、沙那の中に残っているその『魂の欠片』で宝玄仙を復活できるという役割だ。
だが、その『魂の欠片』で宝玄仙を復活させるときがくるとしても、宝玄仙がいなくなれば、その魂の儀式を行える存在がいなくなる。どうしたらいいのだろう……?
「そのときはお蘭の里に戻るんだよ。三人でね……。そして、また、わたしを復活しておくれ」
宝玄仙が笑った。
「これまでの旅をまた逆戻りしてお蘭の里まで戻って、ご主人様を復活させるのか……。そりゃあ、大仕事だね」
孫空女が真顔で言った。
「でも、復活したご主人様とまた、旅をするんですよね。あたし、ちっとも嫌じゃないですよ。二度目なら、今度はいろいろと警戒できるし、もっと楽に旅ができますよ」
朱姫だ。
「なら、旅の愉しみはまだまだ続くということさ。次のときには、やっぱり、お蘭を同行させてもいいよね。魂の儀式で復活すると、どうしても道術遣いとしては霊気が減るのさ。その減った部分をお蘭に肩代わりさせるよ……。なに、ちょっとばかり、無理矢理に調教をするば、あいつはどこでもついてくるよ」
宝玄仙も微笑んだ。
「ところで、ご主人様……。さっき言及していた離れ離れになったときに『移動術』の結界をつくるという効果がこの首輪から生まれるとき、わたしたちの身体には、おかしな副作用はないですよね?」
沙那は何気なく訊ねた。
沙那としては念のためという思いでしかなかった……。
「副作用……? まあ、大したもんじゃないさ──。わたしは、どうしても性具しか作ったことがないんでね。まるっきり性感に作用しないような霊具は、作るのに逆に手間暇がかかるのさ。だから、ある程度は我慢しな。大した副作用じゃないから……」
宝玄仙は言った。
「ええ?」
「ふ、副作用があるんですか?」
「な、なんですか、それは──?」
三人で同時に声をあげた。
さっと頭から血の気が引くのがわかった。
宝玄仙の霊具だ。
大した副作用じゃないわけがないのだ……。
「だから、大したものじゃないよ。お前たちがそれぞれに持っている性感が極端に活性化するのさ──。論は証拠でやってみようかね……。沙那からいくよ……。まあ、確実に『移動術』の結界で出現するかどうか試験をしてみないといけないしね」
宝玄仙が言った。
そして、なにかの道術を刻むような仕草をした。
「ちょ、ちょっと待ってください──。そんな、いきなり……。そ、それに、性感を活性化とはなんですか? じょ、冗談じゃありませんよ。そんな道術を不用意にかけないでください──」
沙那は叫んだ。
「つべこべ言わないんだよ、沙那……。ほらっ」
「おほほおっ──」
突然だった。
なにかが身体で起こった。
全身の毛孔という毛孔から一度に汗が噴き出した。
血が沸騰する。
熱い……。
なにが起きたのかまったくわからない……。
自分の身体で快感が暴発しているとわかったのは、視界がぐるぐると回りながら自分の身体が前に倒れていくのをかろうじて知覚したときだ。
沙那は身体で爆発した快感のうねりに耐えられなくて、正座から腰をあげた態勢を前に崩していた。
とっさに、両手を前に出した。
沙那は四つん這いの姿勢でなんとか身体を支える。
脳髄まで痺れるような嵐のような快美感が全身を駆け巡っている。
体内を流れる血の流れが、快感を引き起こす……。
気の狂いそうな官能の暴風だ。
沙那は突然にそれに襲われた。
「は、はが……や、やめ……」
快感などというような生易しいものではなかった。
怒涛のような欲情が全身を走り回る。
だらしなく開いた口から涎がたらりたらりと流れるのがわかった。
しかし、口を閉じられないのだ。
異常なまでに敏感になった身体が、全身の神経のひとつひとつに快美感を与える。
「成功のようだね……。ちゃんと『移動術』の結界は出現したよ。これでいつぞやのように、お前と離れ離れになっても、わたしがすぐに追いかけてこられるさ、沙那……。それにして大変な状態になったね、沙那。副作用なんて、ちょっとのつもりだったんだけど、これはちょっととは言えないねえ……。こんなになっちゃうものなんだねえ……。いやいや、凄まじいことになったものさ」
宝玄仙の笑い声が、随分と遠くで喋っていうような声に聞こえる。
もう、沙那はなにかを知覚する能力をほとんど失いつつあった。
わかるのは、沙那が呼吸をするたびに沙那の肌を擦る衣服の刺激だ。それが堪らない……。
布が微かに肌に当たるだけでも、これだけの愉悦なのだ。
沙那には自分の性感が、一体どれくらいあがっているのか想像できなかった。
「さ、沙那姉さんは、どうしちゃたんですか、ご主人様?」
朱姫の声だと思う。
なにか強烈な毒が身体を駆けまわっているような感じだ。
だが、毒ではない証拠に、どこまでも気持ちよく峻烈な快感だ。
眼が回る……。
舌が動かない……。
全身から汗が噴き出し続ける……。
「だ、大丈夫かい、沙那……?」
孫空女だと思う。
その孫空女が沙那の身体を抱きかかえるような仕草をした。
「うほおおおっ──」
沙那は駆け巡った喜悦にただ獣のように吠えた。
孫空女が沙那を抱きかかえることで、おそろしいほど敏感になった身体を服の裏地が擦ったのだ。
なんでもない刺激のはずだ。
だが、いまの沙那には堪らない刺激だった。
身体のどこかから快感が迸るというものじゃない。全身のあらゆる部分から喜悦が襲う。
沙那の身体が崩壊した。
いや、それは錯覚だった。
しかし、全身が砕けたかと思うような快感だった。
沙那は脳髄から足の爪先まで極限までの絶頂感に襲われて、孫空女の腕の中で果てていた。
「さ、沙那姉さん──?」
朱姫の叫び声だと思う。
自分の中でなにが起きているのかわからない……。
眼の前が回る。
「さ、沙那、ご免よ──」
沙那を抱いている孫空女が狼狽えた声をあげた。
なにを謝っているのだろう……。
こんなに気持ちいいのだ。
謝ることなどなにもない……。
孫空女が身体を揺すられることで、さらに全身に快感が襲い、沙那は二度目の絶頂に襲われた。
「どうやら、沙那の場合は、全身が性感帯のようになって、わずかな刺激で達するような身体に変わったらしいね。まあ、半刻(約三十分)くらいのもののはずさ」
宝玄仙の声がした。
「へえ、面白いですね……。でも、全身が性感帯ってどういうことですか、ご主人様?」
「文字通りの意味だよ、朱姫。いまの沙那は、ただ髪を触られるだけでも、簡単に達するいき人形さ。とてもじゃないが服なんて着ていられないと思うね。孫空女が抱き起こして絶頂したのは、その動きで服が肌をくすぐったからさ。沙那はそれくらいに肌の感度があがっているようだよ……」
「髪の毛でも達するって本当ですか、ご主人様?」
朱姫が沙那の髪の毛に触れて、数回指ですいた。
「ふああああっ──」
怖ろしいほどの速さで絶頂感がやってきた。
しかも、髪の毛からだ。
髪の毛を刺激されて、その快感で激しく達するという異常な感覚に沙那は全身を仰け反らせて吠えながら達した。
そして、その自分の大きな動きでまた快感が襲い続ける。
「も、もう、やめなよ、朱姫──」
孫空女が沙那が触られている髪の毛から朱姫の手を振り払ったようだ。
だが、沙那を抱いている孫空女が動くと、肌が擦れて凄まじい愉悦が沙那を襲うのだ。
沙那は感情が制御できなくなって、込みあがった涙のまま号泣した。
なぜ、泣くのだということはわからない。
あまりにも気持ちがよくて泣く……。
わからない……。
想像もできないような連続した快感に、沙那は奔放な悲鳴をあげて耐えられなくなり、腰を揺すって頂上を極めた。
そして、愕然とした。
達したばかりの沙那の身体が、また、新しい愉悦に向かって全速力で昂ぶりはじめたのだ。
自制しようとしても自制できない。
「うあっ……ほおおお……はああ……」
沙那は際限のなく拡がる欲情と愉悦の繰り返しに大声で吠えた。
「この副作用は人によって若干異なるのさ──。さしずめ、お前の場合は、尻で欲情するんじゃないかい、朱姫?」
「や、やめてください、ご主人様──」
朱姫の悲鳴──。
宝玄仙の馬鹿笑い──。
もう、なにもかもわからなくなった。
誰かが沙那の身体に重なり落ちる。
沙那は暴発した愉悦に咆哮した。
自分の隣で朱姫がお尻を押さえてもがいている気がする。
「ご、ご主人様、いい加減にしなよ──。これ、どうするんだよ──」
「別にどうということもないさ、孫空女……。半刻(約三十分)もすれば収まるさ」
宝玄仙が大笑いしている。
「なんか面白いことやってんなあ……?」
突然、誰かの声がした。
それが誰なのかわからない……。
宝玄仙でも孫空女でも……、朱姫でもない──。
聞いたことのない男の声だ。
「ああ、なんだ、お前ら──?」
怒りの混じった孫空女の声──。
同時に自分の身体が地面に投げ捨てられる。
その刺激にまた沙那は悶え苦しみながら達した。
「金目のものをもらおうと思ってな……」
また別の男の声──。
「だが、ついでに、あんたらとやらせてもらおうかな。その姉ちゃんと娘さんは、欲情しきっているみたいじゃないかい……」
複数の男たちがげらげらと周りで笑った気がした。