※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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449 危険な遊戯

 その夜、魔凛(まりん)はなかなか寝つくことができなかった……。

 魔王軍の軍司令部として占拠した人間族の行政府の一画だ。

 

 ただしここは、執務のための部屋ではなく、魔凛が私室として使用するための部屋だ。

 魔凛がいま座っている寝台も改めて持ち込んだ物ではなく、人間族の高官がここで休むために持ちこんであったのをそのまま使用していただけだ。

 魔凛はその寝台の枕元に腰をおろしていた。

 

 魔王の青獅子(あおじし)にそそのかされるように、大旋風(だいせんぷう)と奇妙な賭けをしてしまった。

 宝玄仙という人間族の女道術遣いがいて、その女を捕らえるのに大旋風と魔凛のどちらがより功績が大きいかで賭けをしたのだ。

 

 魔凛が負ければ大旋風に身体を許す。

 大旋風が負ければ大旋風の持つ道術はすべて魔凛に譲渡される。

 道術契約で交わした賭けであり、その勝敗の判断は道術がする……。

 

 しかし、宝玄仙を捕らえるという全体の策戦の中で、大旋風の役割は罠の張ってある獅駝の城郭に宝玄仙を導くことであり、魔凛の役割は住民全体にかけている魔凛の『支配術』の道術を駆使して宝玄仙を捕らえることだ。

 冷静になれば、そんな勝負など成り立つのだろうかという思いもあるし、なんという馬鹿げた賭けをしたものだとも反省も蘇る。

 だが、なんとなくあのときの自分は冷静ではなかったような気がする。

 おそらく、自分は興奮状態にあったのだろう……。

 

 眼の前で人間族の女が哀れに泣き叫びながら、恥辱にまみれるのを眺めさせられた。

 李媛(りえん)や李姫(りき)という貴族の女や娘が住民を人質にされて、全裸よりも恥ずかしい姿を人前に晒すことを強要されて亜人たちに裸身を見られ、性具で弄ばれて快感によがる姿を惨めに晒し、排尿までまで恥辱の手段にされた。

 直接は見てはいないが、あのふたりは自分の夫であり父親を殺した重宝人である青獅子に犯され、大旋風に凌辱もされたに違いない。

 

 なんという惨めな……。

 そんなものを目の当たりにさせられて冷静にいろというのが無理なことだ……。

 もしも、自分が同じ目に遭うとすれば魔凛は躊躇なく死を選ぶだろう。

 彼女たちのように、恥辱と屈辱にまみれながらも生きることは魔凛には無理だ──。

 

 男には屈服しない──。

 そのために生きていた。

 

 魔凛は妾の子だった。

 母親は美貌で名高い鳥人族の中でも群を抜く美女だった。

 しかし、自分で運命を切り開くような女ではなく、男におもねって生きるような女だった。

 しかも、男運がなく、何人かの男の身体を渡り歩いた挙句、最後には鳥人族の有力な部族長の妾になった。

 そこで生まれたのが魔凛だ。

 

 だが、魔凛の母親に嫉妬したその部族長の正妻に嫉妬されて陰謀を仕組まれた。

 護ってくれるはずの愛人の部族長は、正妻の後ろ盾である部族に背かれるのを嫌がり、なんの罪もない魔凛の母親を見捨てた。

 魔凛の母親は罪人として処刑された──。

 魔凛が八歳のときだ。

 もしも、魔凛の母親が男におもねることで人生を切り拓くのではなく、自ら権力を求めて人生を拓くような女だったら、あんな惨めな死に方はしなかったはずだ。

 

 私室の戸が鳴った。

 返事をすると麗芳がそこにいた。

 魔凛の腹心の部下だ。

 

「お呼びですか、魔凛様?」

 

 いまは夜半に近いと思う。

 そんな時間の呼び出しなのに、きちんとした麗芳(れいほう)は軍装をしていた。

 部屋に入ってきた麗芳は、下着に薄物の寝着をまとっただけの魔凛に少しだけ驚いた表情をした。

 どうしてそんなに驚いているのだろう。

 なんだかその慌てぶりがおかしかった。

 

「どうしたのだ、麗芳? わたしの下着姿を初めて見たような顔をしているぞ」

 

 魔凛は麗芳をからかった。

 

「い、いえ……。そ、その……そのような寛いだ姿は初めてで……」

 

「初めて──? それは皮肉か、麗芳? まあ、そう言っても過言ではないくらいに久しぶりか……。まあ、そうだな──。昔は肌と肌を寄せ合った仲でもあったのに、お前はなにかと硬くて……。わたしが金凰(きんおう)の愛人になってからは一線を画すようになって、ついついわたしのことはお見限りだしな」

 

 麗芳は苦笑した。

 魔凛と麗芳は、かつては女同士で愛し合う仲でもあったのだ。

 しかし、魔凛が金王軍の総司令官の地位を得るのと引き換えに金凰魔王の愛人になるのを選ぶと、麗芳はそれを機会にきっぱりと魔凛と抱き合うのを拒否するようになってしまった。

 それは麗芳の嫉妬の怒りなのか、それとも、魔王に対する忠誠の表れなのかはわからない。

 とにかく、麗芳とは、もう一年も完全にそういう淫らな関係になったことはない。

 

 だが、今夜はなんとなく魔凛は身体が欲していた。

 こういうことは前にもあったが、身体が異常に火照ってどうしようもなくなるのだ。おそらく、李媛たちが恥辱にまみれる姿に接してしまったからだと思う。

 

 ああいうものは好きじゃない──。

 しかし、男が女を道具のように弄んで辱めるのを見ていると、なぜか、魔凛の身体は熱くなる。

 どうしようもなく、全身がただれるように疼くのだ。

 

 そんなときには、むさぼるような性愛をしたくなる。

 そうしなければ、その疼きと身体の熱さが翌日に残って、冷静な判断ができなくなるのだ。

 だから抱く──。

 

 抱くのは女でなければ駄目だ。

 魔凛が本当に抱くのは女だけなのだ。

 男にも抱かれることはあるが、それは金凰魔王のときのように打算と出世のためだ。

 魔凛が心から安心して溺れることができるのは女を相手にするときだけだ。

 しかし、ここは戦場だ。

 麗芳以外にも、魔凛には「女友達」はたくさんいるが、ここには連れてきてはいない。

 

 だから麗芳を呼んだ──。

 麗芳も魔凛の淫情さと淫靡な性質は知っているはずなので、呼び出されたことで、また魔凛が身体の火照りを持て余しているということはある程度の予測はついているはずだ。

 それなのに、麗芳はきちんとした軍装を着てきた。

 これは、もう、魔凛と肌を合わせるつもりはないという意思の表現なのだろうか。

 魔凛は少しだけ不満に思った……。

 

「まあいい、麗芳──。ところで、ばら撒いていた手の者から報告が入った。宝玄仙が網に引っ掛かったぞ」

 

 魔凛は言った。

 

「はい」

 

 麗芳は部屋の真ん中で魔凛に正対して直立不動の姿勢になる。

 魔凛は嘆息した。

 

「ここは執務室ではないぞ、麗芳──。もう少し、楽に話そう。ここではふたりきりだし、ほかに眼があるわけじゃない。そんなに行儀な態度でわたしに意地悪をしなくてもいいじゃないか──。まあ、座れ」

 

 座れという命令に麗芳は、最初、寝台の横の長椅子の一画に座りかけたが、魔凛が手招きをして自分の横を示すと、素直に魔凛の横に腰掛けた。

 

「寛げよ、麗芳──。わかっていると思うがな……。それとも、そんなにわたしと寝るのはもう嫌か?」

 

 単刀直入に言った。

 あからさまな魔凛の物言いに麗芳は目を丸くして驚いていた。

 本当に今夜の麗芳は愉快だ。

 まるで恋人の部屋に始めてやってきたような男のようにそわそわと落ち着かない仕草だ。

 いまさら、麗芳がそんなに動揺しているのが面白い……。

 

「つ、つまり……魔凛様は、あたしに伽の相手をしろということでお呼びになったのですか……?」

 

 麗芳の質問に魔凛は爆笑で返した。

 

「伽の相手か──。なぜ、そんな物言いをするのだ、麗芳? それは、金凰の愛人になったわたしへの当てつけか──? ああ、じゃあ、そんな言い方がいいならそうしよう。麗芳、わたしの伽の相手をしてくれ」

 

 そこまで行って魔凛は笑ってしまった。

 すると、麗芳が苦笑したような笑みを浮かべた。

 

「ほ、本当の、本気のことなんですね……?」

 

「当然だ。今夜は眠れないのだ。火照った身体を癒してくれると有難い。お前が金凰魔王に遠慮して、わたしとは肌を接しないようにしたのは承知しているが、ここは金凰魔王の宮殿とは遠く離れているし、わたしの女の友人たちはここには連れてきてはいないのだ。お前も知っているとおり、わたしの身体は火照ってしまうとどうしようもなく身体が疼いて仕方がなくなるのだ──」

 

「う、疼く……ですか?」

 

「ああ、まさか、お前は、わたしに自慰でもして寝ろとは言わないだろう? お慈悲だから慰めてくれ。それともひれ伏して頼まなければ、この魔凛は麗芳には抱いてもらえないのか?」

 

 魔凛は笑いながら言った。

 すると麗芳の顔が破顔した。

 そして、その場で軍装を解いて、脱いだ下袴と上着を寝台の足元に無造作に置いた。

 麗芳は黒い胸当てと小さな腰布のなかなかに煽情的な下着だ。

 相変わらず胸は豊かで、麗芳が好んでつけている控えめな香水が魔凛の嗅覚を心地よくくすぐる。

 

「こうやって、肌を寄せると昔を思い出すな、麗芳──。あの頃は、なんのしがらみもなく、ただの魔凛と麗芳だった……。出世や競争や陰謀もなく、ただ欲情のまま、お前とこうやって抱き合ったものだ──。わずか一年前というのに、随分と昔のことのような気がする」

 

「魔凛様が選んだ道ですよ──。金凰魔王の愛人となることで望む地位を得たのでしょう?」

 

 麗芳の手がすっと伸びて魔凛の腰にかかった。

 そのまま麗芳が魔凛を押し倒しそうな気配に、魔凛は戸惑いながらもそれを制した。

 

「金凰に身体を許したが、心は許していない──。あのひひ爺に抱かれるのは出世のためだ。何度も説明したし理解をしてくれたから、お前はわたしの腹心として軍に留まってくれたと思っていたがな、麗芳?」

 

「無論、理解しておりますよ、魔凛様……」

 

 いきなり身体を寄せられて唇を重ねられた。

 かなり強引な口づけだ。

 

 魔凛はびっくりした。

 麗芳とは何度も女と女の情交を結んだことがある。

 だが、ふたりの間では主従ははっきりとしていた。積極的に責めるのが魔凛で受けるのが麗芳だ。

 しかし、魔凛が誘った今夜は、やけに麗芳が積極的だ。

 自分が主導権を取りたいかのように魔凛を導こうとする。

 

 まあ、それも面白いかもしれない──。

 久しぶりの情交だ。

 麗芳も魔凛を愉しませようとしてくれているのかもしれない。

 

 魔凛は自分を抱き寄せる麗芳に抗う力を抜いた。

 麗芳の唇が魔凛の口をしっかりと塞ぎ、舌を挿し込んでくる。

 魔凛に思考の暇を許さぬような濃厚な口づけだった。

 緩んだ魔凛の歯列から挿し込んだ舌を魔凛の口の中に這わせ、唾液を送り込み、戸惑って逃げる魔凛の舌に舌を絡めて吸いあげてくる。

 

「んんっ……」

 

 頭がぼうっとなるような強烈な麗芳の舌遣いで、魔凛は全身の力が抜けていくのがわかった。

 麗芳がこんなに強烈な口づけができるということに魔凛は驚いてしまった。

 一年前までの麗芳はいまのように魔凛を圧倒するような口づけはしたことがなかったはずだ。

 どちらかといえば、圧倒させるのは魔凛であり、麗芳が緩やかに積極的な魔凛を受けとめるという感じだったのだ。

 

「ま、待て──」

 

 口づけをしながら今度は寝着越しに胸をまさぐろうとしてきた麗芳をなんとか魔凛は引き離した。

 麗芳は不満そうな表情をしている。

 

「どうしたのです?」

 

 行為を中断させられたことが麗芳は気に入らないようだ。

 魔凛を抱く両手を引き離されて、麗芳は不機嫌な顔になった。

 

「せ、積極的なお前も悪くないがな……。それよりも、大事な話を最初に済ませておかなければ、お前に飲み込まれそうだ」

 

 魔凛は笑った。

 

「ああ、そういえば、宝玄仙の話でしたね、魔凛様──。手の者から情報があったとおっしゃっていましたね?」

 

 麗芳も頷いた。

 

「そのことでお前と相談もしたかったのだ。なにせ、今回のことでは、あの大旋風との競争で負けるわけにはいかんからな。宝玄仙の捕獲競争で功績のあった方の命令に従うと道術契約を結ばされたのだ──。なんとか出し抜かんと、わたしはあの下衆男に身体を許さねばならん」

 

 魔凛は言った。

 

「大旋風が得意の『変身術』で宝玄仙と接触し、宝玄仙を城郭に導く……。それを魔凛様が市民にかけている『支配術』を遣って身柄を捕獲する──。そういう手筈でしたね」

 

「そうだ……。そういうことになっている。あいつは、その『変身術』で人間に化けて宝玄仙に接触し、油断させてそのまま城郭に連れてくるのだろうと思っていた。その後、城郭に入ったところでわたしの術で宝玄仙を捕らえるという手筈になっているのだからな……。だが、それでは、道術契約が誘導役の大旋風を功績ありとして勝者と選ぶのか、それとも実際に捕らえたわたしを功績ありとして勝者に選ぶかがわからん」

 

「魔凛様が妙な賭けをしたのは耳にしています。でも、どうするのです?」

 

「それで、わたしは、それを出し抜いて、城郭に入る直前であいつの正体を宝玄仙に教えて別れさせ、誘導役のあいつと宝玄仙との関係を絶った状態で城郭に侵入させようと思っていたのだ。そうすれば、誘導役のあいつが接触した時点で、宝玄仙を捕らえていたという判定になることはないから、わたしの勝利は動かないと思ってな──。だが、どうも奇妙なことになっているのだ」

 

「奇妙なこと?」

 

 麗芳は言った。

 

「うむ──。まあ、順序立てて話すとしようか……。お前も知っているように、わたしは、城郭で支配している人間のほかにも、多数の農村の人間もすでに『支配術』を事前にかけていて、その連中を使って情報網をこの地方一帯に作って部下に束ねさせている。それによれば、宝玄仙一行は、昨日の夜に獅駝(しだ)地方におりてくる直前の山道に差し掛かったそうだ。そこで例の六道(ろくどう)の強盗の一味に襲われたようだ」

 

「ああ、あの与太者ですね。魔王軍に入れなかった半端者が人間を相手に奴隷狩りをしているのでしたね。まあ、魔王軍には実害もないから、見逃していたはずですけど」

 

 麗芳はそう言いながらも、苦虫を噛み潰したような不機嫌な顔をした。

 魔凛は、なぜ、麗芳が彼らに対して、そんなに不機嫌な表情になったのか不思議に思った。

 

「そうだ。その報告に接したとき、わたしは、その連中の中に大旋風が隠れているのかと思ったのだ。だが、そうではないようだった──。そいつらは五人組の強盗だったが、全員揃って宝玄仙の一行に蹴散らされている。五人のうちふたりは殺され三人は逃亡した。その逃亡の三人も派遣した鳥人族の部下が抑えた。死んだふたりの死骸も確認した。死んだふたりはもちろん、生きていた三人とも大旋風でもないし、その息もかかっていなかった」

 

「その亜人たちの大将は六道という名でしたね。まあ、大将だけは、そこそこの道術を持っていたと思いましたが?」

 

「六道もあっさりとやられている。少なくとも、宝玄仙には、宝玄仙自身の道術だけではなく、武芸についてもそれなりの秀でる女傑が供として存在しているということだ。六道にしても、もうひとりの死んだ亜人にしても、一発で首の骨を折られてやられていたし、大した腕だった」

 

「なるほど……。それで、宝玄仙たちはどうなったのですか、魔凛様?」

 

「“偶然”にも、その六道たちは、ひとりの少年とその女奴隷のふたりを捕らえていてな……。ふたりを助けて宝玄仙たちはもともとの四人組にそのふたりを合わせて六人で山をおりた。そして、麓にあった最初の農村に滞在している。少なくとも、いまのところは、まだそこにいるようだ──」

 

「なるほど、そうすると、その少年と女奴隷のどちらかが……?」

 

「……どちらかが大旋風の変身した姿だろうな、麗芳。あのすけべ男が女奴隷に化けるとは思えんから、少年が大旋風なのだろうと思う──。その少年は長庚(ちょうこう)という名で、そういう少年が実際に存在し、あの獅駝嶺内で隊商とはぐれて女奴隷と彷徨っていたのは事実だったようだが……。だが、実際に存在しているその少年を殺して密かに入れ替わるくらいのことは、大旋風にとっては大した仕事ではないだろうしな──」

 

「では、大旋風は、その長庚という少年に変身して、宝玄仙と接触することに成功していその農村にいるというわけですね──。それで、奇妙なこととはなんなのです、魔凛様?」

 

「うん……。実は、その村に入らせている手の者からの情報によれば、どうやら連中は獅駝の城郭には入らずに素通りする気配なのだ──。そういうことであれば手筈とは違う。つまり、もしかしたら、まだ、大旋風はまだ宝玄仙とは接触をしておらず、長庚という少年は、ただの偶然に遭っただけの人間なのかもしれんと思ってな……。ならば、大旋風は一体全体、どういう手段で宝玄仙を接触しようとしているのだろうかと……」

 

 魔凛の疑問はそれだった。

 長庚が大旋風だとすれば、城郭に連れてくるように動くはずなのだから、そういう動きではないということは、まだ大旋風は行動には移してはいないということなんだろうか……。

 魔凛としては、大旋風の裏をかきたいのだから、宝玄仙の行方以上に大旋風の打ってくる手は知っておきたいのだ。

 だが、いきなり麗芳が声をあげて笑い出した。

 魔凛は呆気にとられた。

 

「魔凛様は正直ですね──。大旋風と魔凛様が、いま道術契約による競争をしている最中だということをお忘れなのではないですか?」

 

「わ、忘れてはおらん」

 

 魔凛は些かむっとして答えた。

 

「だったら、魔凛様が城郭直前で小細工をして今回の勝負を完全なものにしようと企てたのと同じように、大旋風も似たようなことを考えているとは思わないのですか? わたしが大旋風なら城郭には連れてきません。城郭に連れてきて捕えてしまえば、魔凛様が宝玄仙の身柄を押さえてしまいますからね。むしろ、城郭は危険だと教えて城郭には入らせないようにして、別の手段で捕らえてしまいますね。そうすれば、魔凛様には関係なく宝玄仙を捕らえたことになり、大旋風の勝ちは揺るがないですし──」

 

 麗芳が言った。

 魔凛ははっとした。

 そう言われてみれば、なんで大旋風が正直に宝玄仙の身柄を魔凛に引き渡すと考えてしまったのだろう。

 魔凛の手を借りずに宝玄仙を捕らえることができると判断したら、大旋風としてはそうするのが一番いいし、魔凛が逆の立場でもそうするだろう。

 魔凛には引き渡さずに、自分たちだけで捕らえてしまう──。

 いかにも卑怯者の大旋風がやりそうな出し抜き方だ。

 もしかしたら、青獅子もそれに一枚噛んでいるかもしれない。

 なにせ、青獅子と大旋風は、女を嗜虐するのが大好きだという下衆仲間だ。

 

「そ、そういうことか……」

 

 魔凛は歯噛みした。

 しかし、このままでは大旋風に出し抜かれてしまう。

 どうしたら……?

 

「まあ、ここはこの麗芳にお任せください……」

 

「なにか策があるのか、麗芳?」

 

「あります……。しかし、それは寝物語をしながらでもいいですよね……。魔凛様──」

 

 再び麗芳は魔凛を強く抱き寄せた。

 本当に今夜の麗芳はいつになく積極的だ。

 もしかしたら、魔凛が李媛たちの惨めな姿になぜか性的興奮を覚えたように、麗芳も同じように感じたのかもしれない。

 そんな気がした。

 ならば、たまには相手に委ねるという性愛もいいかもしれない。

 しかし、魔凛は相手が男であれ女であれ、自分が主導権をとるような性愛しか経験がない。

 相手に主導権を渡す性愛というのは新鮮だ。

 

 麗芳が魔凛を完全に寝台に横にした。

 完全に横になった魔凛の身体から寝着の紐を解いて左右にくつろげられる。

 次に魔凛の胸当ての留め具が背中に回された麗芳の指で外された。

 胸当てが魔凛の身体から脱がされる。

 

「今夜はお前が上か? お前は“責め”もできるのか、麗芳……?」

 

 麗芳が主導権を握る性愛というのは魔凛は知らない。どういうことになるのだろうか……。

 なんだが期待してしまう。

 

「魔凛様は、いつも“責め”ですか?」

 

「そうだな。お前以外の女が相手のときもな……」

 

 そんなことは麗芳は知っているものと思っていた。

 改めてそんなことを訊ねる麗芳がなんだか不自然で魔凛は笑ってしまう。

 

「だったら、たまには“受け”をしてみませんか、魔凛様」

 

「いいだろう。じゃあ、好きにしてみな、麗芳」

 

 魔凛は言った。

 すると魔凛を押し倒していた麗芳が、さっと身体を起こして魔凛をうつ伏せにひっくり返した。

 魔凛はびっくりした。

 しかし、麗芳は魔凛の手首をひとまとめにすると、寝台の足元にあった自分の下袴の腰紐をさっと抜いて魔凛の手首を束ねて縛ってしまった。

 

「な、なに──?」

 

 魔凛は声をあげた。

 抵抗のつもりはなかったが、いきなり縛られたことで魔凛は気が動転した。

 しかし、あっという間に縛られたわりには、しっかりと拘束されていて、束ねられた手首はびくともしない。

 もう一度身体を仰向けにされる。

 魔凛の胸の膨らみに麗芳の顔か被さった。

 

「あ、あはあっ……」

 

 身体が激しく跳ねた。麗芳の舌が魔凛の片側の乳首を口に含んだのだ。

 ころころと麗芳の口の中で乳首を転がされて激しい愉悦が全身に湧き起こる。

 くすぐったさに思わず身体を背けそうになる。

 しかし、思ったよりも強い力で魔凛は麗芳に押さえられている。

 それで手で押しのけようと思ったのだが、ぐんと手首を縛っているベルトが手首に食い込んだだけだった。

 それで改めて自分が自由を奪われているということを思い出した。

 

 もがく魔凛の胸を麗芳が無遠慮に舐めまくる。

 乳首を舐められることなど初めてではないのだが、これほどまでに感じたのは初めてだ。身

 体が焼けるようにかっと熱くなり、全身が痺れたようになる。

 

「素敵な身体……。肌もきれいだし……」

 

 麗芳が乳首から口を離して、舌が魔凛のうなじから肩におり、再び乳房の裾に這って、魔凛の乳房全体の弾力を愉しむかのように舌で持ちあげる。

 

「あ、あはあ──」

 

 魔凛は耐えられずに声をあげた。

 

「思った通りに魔凛様の本質は受けですね……。こうやって縛られると、いつもよりも敏感になるんじゃないですか……? もう、乳首が勃っていますよ」

 

 麗芳は両手で魔凛の乳房を両側から中心に寄せるようにして、その膨らみに顔を埋めて交互に乳首を舐め回す。

 音を立てて乳頭を吸いあげては舌を絡ませてくる麗芳の責めに、魔凛はあっという間に息があがってきた。

 なぜ、こんなに感じるのか……。

 魔凛は自分の身体の変化に戸惑いながら激しく喘ぎ声をあげた。

 

「こんなのはどうですか?」

 

 麗芳が魔凛の乳首を甘噛みした。

 

「あ、ああっ……だ、だめっ──」

 

 魔凛は思わず身体を仰け反らせた。

 

「魔凛様のそんな可愛らしい声を聞くと、なんだか意地悪をしてあげたくなりますね」

 

 麗芳は一度魔凛の身体から離れると足元にある自分の上着に手を伸ばした。

 そして、すぐに麗芳の身体の上に身体を重ねてきた。

 すると魔凛の腰にある麗芳の手が魔凛の下着を剥ぐって、なにかをつるりと挿し込んだ。

 

「だ、だめえええっ──」

 

 魔凛は悲鳴をあげた。

 下着に入れられたのは楕円形の細長い球体の淫具だった。

 なぜ、そんなものを麗芳が持っていたのかわからないが、下着に入ったその寝具はぶるぶると淫らに振動をしている。

 その振動が衝撃となって魔凛の股間に伝わってくる。

 

「ふふふ……。やっぱりたっぷりと濡れていますね。こんなのはどうですか……?」

 

 麗芳がその振動する性具を下着越しにぎゅっと股間に押し付けた。

 

「あはあああっ──」

 

 自分でもびっくりするような大きな声が出て、魔凛は麗芳に押しつけられている手に股間を押しあげるように全身を仰け反らせていた。

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