「
こんな麗芳は初めてだ。
すっかりと主導権をとられた魔凛は、おかしな淫具を挿し込まれた下着を麗芳の手で圧迫されて、悲鳴をあげていた。
「あ、ああっ……れ、麗芳……う、凄い……あ、ああっ……」
なにがなんだかわからない──。
生まれて初めて拘束されて情交をしているということが、思ったよりも魔凛を興奮させている気がする。
そして、そんな魔凛の戸惑いを見抜いているかのように、麗芳は人が変わったように魔凛を嗜虐的に責めたてる。
魔凛はおかしな淫具に刺激をされる肉芽から拡がる淫情に耐えようとして懸命に唇を噛み締めるのだが、どうしてもくぐもった喘ぎ声が漏れ出てしまう。
それどころか痺れるような快感によって、魔凛の身体からは快感を拒む気力がどんどん消失し、両脚からまったく力が抜けてだらりと股が開く。
「あはあっ、いいっ、ああっ──」
せめて声だけでも耐えようと思うのだが、口惜しいが淫具の振動で直接に肉芽を責められる快感に、魔凛はついついはしたない声をあげてしまう。
これが本当に麗芳なのだろうか。
最後に麗芳と肌を合わせたのは一年前だが、そのときとは全く異なる麗芳の手管は完全に魔凛を翻弄している。
そして、その麗芳の手管は、魔凛の口から信じられないくらいに甘い声を絞り出す。
自分がそんな女っぽい喘ぎ声を出させられるという屈辱に耐えられなくなり、魔凛は激しく身体を振って、せめて淫具を下着の上から抑える麗芳の手を除けようと思った。
しかし、麗芳は魔凛の股間に淫具を強く押しつけられながら、その意思を削ぐように再び魔凛の乳房に舌を這わせだす。
それでも懸命に麗芳の身体の下から身体を抜け出させようとすると、さらに、巧みに魔凛の乳房や脇や太腿をくすぐって魔凛の身体から抵抗力を奪い取ってしまう。
麗芳がこれほどまでに性技巧者だとは思わなかった。
手管といい、舌技といい、魔凛の抵抗力を削いで追い詰める性感帯の責め方といい本当に麗芳は上手だ。
麗芳の口に乳首を吸われて、巧みに舌で乳首を転がさせたり吸いあげられたりされると、自分でもおかしいと思うくらいに身体が痺れてしまう。
「あ、ああ……こ、これ……これをほ、解きなよ。あ、ああっ……」
「いいじゃないですか……。それよりも、今夜は魔凛様はただこの麗芳にすべて委ねてください……。魔凛様も満更でもなさそうですし……」
魔凛はなんとかして主導権を取り戻そうとするのだが、背中で拘束された手首はまったく解けないし、魔凛が少しでも逃げようとすると、麗芳はうまい具合に魔凛に身体を密着させて魔凛の動きを封じてしまう。
「これが弱いのですね、魔凛様……」
麗芳が魔凛の乳首の根元を軽く歯で甘噛みして捻った。
「あ、あはああん──」
魔凛の喉の奥から信じられないくらいに甘えた嬌声があがった。
これが本当に自分の声なのかと耳を疑う程に甲高くて悩ましい声だった
「可愛らしい魔凛様……。魔凛様は、本当はこういうのがお好きなんですよ。縛られて苛められるのがね……」
麗芳がくすくすと笑った。
その馬鹿にしたような物言いにはっとして冷静さが少しだけ戻る。
「れ、麗芳──い、いい加減に──」
大声で怒鳴ろうとした。
しかし、それを嘲笑うかのように、麗芳が手のひらで押さえている下着の中の淫具をくるくると回した。
「はうううっ──」
再び、魔凛の身体は仰け反って、唇の奥から切ない声が出た。
もう全身の力は抜けきって、全身がただれたようになっている。
身体が熱い──。
股間が熱い──。
乳首が熱い──。
「こんなのはどう?」
麗芳が振動を続ける下着の中の淫具で肉芽を弾くように刺激し始めた。
「ああっ、い、いやっ、あ。ああっ、れ、麗芳……そ、それはだめっ……あ、ああっ……ゆ、許して……ああっ、あっ、あっ……ああっ……」
麗芳の操る小さな淫具は振動を続けながら魔凛の敏感な突起の上を円を描くように動き回る。
これは堪らなかった……。
淫具が角度を変えて肉芽に当たる度に電撃のような痺れが魔凛の身体を駆け抜けていく。
「もうすぐいきそうね、魔凛様……? このままいかせるのもいいけど、とりあえず、魔凛様の女陰を指で味わおうかしら……ふふふ……」
麗芳はそう言うと、魔凛の股間に当てていた淫具を下着から抜いて、さっと魔凛から腰布を剥ぎ取った。
もう抵抗する気力は魔凛にはない。
あまりにも激しい淫情に麗芳のなすがままになるだけだ。
こんなに熱く燃えるなんて……。
魔凛は自分でもびっくりするくらいに、この麗芳との情交に溺れかけていた。
気持ちいい……。
身体が溶けてしまうそうだ……。
「本当にびしょびしょ……。じゃあ、いよいよ……」
麗芳はそう言うと、魔凛の女陰の入口からあっさりと二本の指を挿し入れてきた。
「や、やめて──あ、ああっ、あうっ──」
信じられないくらいに熱く蕩けきっている魔凛の肉襞は簡単に麗芳の指を許てしまった。
そして、ゆっくりと魔凛の女陰の中で抉るように動き出す。
「あ、あああっ……す、凄い……ああっ──き、気持ちいい──れ、麗芳──気持ちいい……あはあっ──」
「ふふふ、そんなに気持ちがいいですか、魔凛様──? 凄い締めつけですよ。それにそんなに嬉しそうに腰を振っちゃって……」
「い、言うな、麗芳──あ、ああ、あああっ──」
麗芳の手は魔凛の指の中で淫らに動き続ける。
そして、不意に魔凛の膣の中でくいっと麗芳は指を曲げて、魔凛の女陰の入口部の天井部を指で掻くように動かしだした。
「ひひゃあああっ──」
麗芳の指が魔凛のその部分を引っ掻いた瞬間、この世にこれ程の甘美感があるのかと思う程の快感が魔凛の全身を駆け抜けた。
あまりの衝撃に腰骨が砕けたような錯覚がした。
気がつくと大きな声をあげて魔凛は、全身を仰け反らせて吠えるような声をあげていた。
「ここが弱そうね」
麗芳がさらにその部分の隔壁を揉むように押しあげた。
「あはっ──はっ、はあっ、ああっ……はああああっ──」
堪らず魔凛は汗まみれの全身を激しく振った。
魔凛はつぶっていた眼を開き、自分を見下ろしている麗芳の顔を見た。
麗芳が眼を細めて魔凛を見ていた。
その顔を見た瞬間、なぜか魔凛の心に恐怖心が走った。
その恐怖心がなんなのかわからない……。
しかし、これまで溺れきっていた淫情があっという間に冷えてしまうようなそんな恐怖を覚えた。
これはなんなのか……?
「どうしたのかな、仔猫ちゃん? 気持ちよくなくなったの?」
麗芳がこれまでに喋ったことのないような口調で魔凛を揶揄する。
駄目だ──。
このまま屈してはいけない……。
その理由がなんなのかは魔凛にもさっぱりとわからなかった。
だが、このまま麗芳のなすがままに快楽に溺れきってはならないと、魔凛の中のなにかが告げていた。
この快感は怖い……。
魔凛は懸命に冷静さを保とうとした。
しかし、魔凛の身体は魔凛の心を完全に裏切っている。すでに暴走を始めている自分の身体は、とてもじゃないが理性で制御できるものではなかった。
「急に我に返ったような顔になったね。でもそうはいかねえよ……」
麗芳の指がまたさっきの膣の隔壁をぐっと押して円を描くように動き出した。
するとそこから沸き起こった痺れがあっという間に全身を包み込んだ。
「んあっ、ああっ、ひいっ……ああっ……」
なにが起きたかわからない。
大きな快感が魔凛の意識を飲み込んでいく。
この快楽に逆らえない……。
「だめ、だめ、だめえっ──」
もうどうしようもない快感の大波に逆らうことができずに、魔凛は大きな声で吠えながら背中を弓なりにしてがくがくと身体を痙攣させた。
一瞬だが、魔凛の視界は真っ白い光に包まれ、頭の中でなにかが弾けたような気がした。発作のような震えが止まらない。
これはなんなのか……。
凄い──。
凄い──。
凄い──。
魔凛は自分が大きな光の中に飛翔しているような錯覚を感じていた。
*
白い光が収まると魔凛は、肩で息をしながらあまりにも大きかった快感の暴発に呆気にとられていた。
「れ、麗芳……、わ、わたしは……」
麗芳が眼を細めて自分を見下ろしていた。
「どうやら、淫乱な被虐癖というのが魔凛様の本質だったようですね。もしかしたら、こんなに深く達したのは生まれて初めてなんじゃないですか?」
「そ、そんな……そんなことはない……」
魔凛はびっくりして首を横に振った。
しかし、否定しながらも魔凛は自分がなにを否定しているのかよくわからなかった。
何度も性愛には耽ったことはあるが、確かにさっきのように眼の前が真っ白になる程の快感に達したのは初めてかもしれない。
しかし、それが手を縛られて一方的に受け身でやった性愛のためだと言われたらどうしてもそれを拒否したくなる。
「まあいいです、魔凛様……。じゃあ、今夜は、あたしが魔凛様に新しい快感をお教えして差しあげますわ」
「新しい……?」
なにか意味ありげな麗芳の顔に急に不安が過ぎる。
それにしても、これは本当にあの麗芳なのだろうか。
一年前までは本当に受け身の情交しかしなかった麗芳が、こんなにも性愛で圧倒して魔凛をたじろがせるとは……。
それに新しい快感とはなんなのか……?
「なにも考えなくていいですよ。あたしにお任せください……」
そう言うと麗芳は、達したばかりでまだ身体に力の入らない魔凛の身体をくるりと回転させてうつ伏せにした。
「さあ、暴れては駄目ですよ、魔凛様……」
手首を縛っていただけの紐を一度解き、麗芳は魔凛の腕を背中で組むように腕で押さえると、その腕をしっかりとさっきのベルトで締め直した。
本格的な拘束に麗芳の腕は完全に背中で外れなくなってしまう。
まだ絶頂の余韻の残っている魔凛には、その身体の昂ぶりのために麗芳に抵抗する気力が湧いてこない。
麗芳の責めになすがままになることに抵抗感を覚えながらも、心のどこかに麗芳の責めを望むような気持ちが湧き起こってしまう。
いつの間にか、魔凛は麗芳の導くままに寝台に胡坐に座った麗芳の上で膝立ちしてお尻を突き出すような姿勢にされてしまった。
「素敵なお尻ですね」
麗芳が魔凛の尻たぶを撫ぜながらくすくすと笑った。
「そんなに見ると恥ずかしいよ」
魔凛は困ってしまって言った。
部屋の中は寝台の横の灯篭のために随分と明るい。
麗芳の視線の下には、魔凛のお尻だけではなく、股間の恥毛やまだ真っ赤に濡れているはずの女陰、そして、その近くに息づく尻の穴まであからさまになっているはずだ。
麗芳がしっかりとそれを眺めて愉しんでいるのがわかる。
なんだかじっと見られているだけで腰がむずむずしてくる。
「魔凛様は、受けに回ると快感が大きいだけではなく、露出癖もあるようですね。あたしの視線を感じると腰が熱くなるんじゃないですか?」
「きょ、今夜の麗芳はとても意地悪だよ……」
魔凛は首を後ろに向けて、顔をしかめてみせた。
しかし、麗芳が魔凛のお尻にぴたりと手を乗せて、まだ昂ぶっている女陰に沿って指を添わせて、尖りの残っている肉芽を指で左右に軽く動かすようにした。
すると、あっという間にさっきのたまらない情感が戻ってくる。
またも魔凛は腰が砕けたようになり声をあげて身悶えてしまった。
「ふふふ、すっかりと指弄りが気に入ったようですね……。でも、ここはどうかしら……?」
いきなりだった……。
魔凛は飛びあがりかけた。
麗芳がしばらく魔凛の女陰と肉芽を指でほぐしていたぶっていたかと思うと、一転して人差し指を魔凛の肛門の中に挿し込んできたのだ。
魔凛は驚愕した。
慌てて身体を起こそうとしたが、信じられない力で首を押さえつけられてそれを防がれる。
その間も、どんどん肛門深くに指が抉り入ってくる。魔凛は悲鳴をあげた。
「ひゃああっ──やはああっ──」
しかし、これが本当に麗芳の力なのかと思う程、胡坐に座る麗芳の膝の上に強く身体を押さえられる。
抵抗しようにも腕を背中で括られているうえに、尻穴に入れられた指が魔凛の抵抗力を根こそぎ奪ってしまう。
それにしても、そんなところを責めるなんて……。
予想もつかない排泄器官に加えられる責めに、どうしても魔凛は甲高い声をあげてしまう。
「そ、そんなところは──」
魔凛は麗芳の指が肛門の内襞を抉る異様な感覚に耐えられなくて、なんとしても指を抜こうとした。
だが、自分でもびっくりするくらいに力が入らない。
それに強烈な不快感なのに、痺れのようなものが肛門から全身に拡がっていってなぜか子宮が溶けそうになる。
魔凛は自分に起こっている身体の変化が信じられなかった。
「あんっ、んんっ、んあああっ……」
我慢できない声が口から迸る。
魔凛は暴れようとするが、しっかりと首を押さえている麗芳の片手がそれを阻む。
「お尻の穴なんかでこんなに感じていいんですか、魔凛様? 少々、みっともなくないですか?」
麗芳がからかうように笑った。
そして、魔凛の肛門に入れている指を前後に動かすようにしながらさらに奥にと挿し進む。
どうしてこんなに感じるのかと思うくらいに大きな衝撃が全身を包む。
魔凛は女陰や肉芽とは全く違う重たい快感に当惑し、そして、狼狽えた。
「れ、麗芳──。そ、そこは堪忍だ。そこはだめ──」
しかし、今日の麗芳は本当に人が違ったように魔凛を責めたてる。
魔凛の哀願などまったく聞こえないかのように、指で魔凛の肛門を刺激し続ける。
「こ、怖い──。そ、そこは怖い──。やあっ、はあっ、はあっ……あっ……はあっ──」
まるで自分の身体ではないようだった。
苦痛とも快感ともつかないなにかが魔凛の全身に拡がっていく。
この快楽は危険だ……。
魔凛は本能でそれを悟った。
なんとても麗芳の指を抜こうと尻を振って悶えるのだが、麗芳の指が執拗なまでに深くまで魔凛の肛門を抉っている。
麗芳が笑いながら魔凛のお尻の穴ばかりを責め続ける。
魔凛の抵抗を愉しむかのように指で淫らな振動を加えてくるのだ。
そのたびに魔凛は子宮に響くような鈍い快感に襲われて、ますます脱力してしまう。
こんな快感はこれまでに味わったことがない。
魔凛はお尻で欲情しようとしている自分に途方もない羞恥を感じた。
「すっかりと病みつきね」
麗芳はおかしくて堪らないというような口調で言いながら、やっと肛門の指を抜いた。
その言葉が快楽に酔いかけていた魔凛を正気にさせた。
「れ、麗芳、い、いい加減にしなよ──。は、離すんだよ──」
魔凛は最後の気力を振り絞るように怒鳴った。
「あらっ……。指を抜いたら随分と元気になりましたね、魔凛様……。でも、麗芳の責めがこれで終わりと思っていませんよね……」
麗芳が魔凛の身体を腕で押さえたまま意味ありげに笑った。
次の瞬間、また新しい戦慄が走った。
さっきまで指で弄くられて、すっかりとほぐされていた肛門に別のなにかが押し込まれたのだ。
それが最初に下着に入れられて淫らな振動で魔凛を追い詰めた細長い球体の淫具だと気がついたのは、それがすっかりと指で肛門の奥深くに挿入されてからだ。
すぐにその淫具は、さっきと同じように激しくて淫らな振動を始めた。
「おほおおっ──」
肛門を引き裂くような感覚が魔凛の全身に衝撃を与えた。
指で刺激されることとは全く違う淫具に苛まれる感覚は強烈だった。
しかも、入れられた淫具はただ激しい振動をするだけじゃない。
それ自体が前に進んだり後ろに這ったりという蠕動運動をするのだ。
振動しながら回転し、さらに前後に肛門内を移動するという指ではあり得ない動きに魔凛は快感以上の恐怖を覚えた。
「あうううっ──ああ、んんんんっ、いやあっ、いっやあっ──」
この世にこんな激しい快楽があるのかと思う程の強烈な愉悦だった。
「まったく素敵な反応ですね、魔凛様……。魔凛様は、もしかしたら尻奴隷の素質があるのかもしれませんよ」
麗芳が魔凛の身体を押さえつけながら笑っている。
部下に奴隷と侮辱されたことに肚をたてる余裕はもう魔凛には微塵も残っていない。
それよりも、この信じられない快感と戦うのに必死だった。
刺激を与えられているのは肛門だけなのに、ただれるような疼きが全身に及んでいる。身体全体が子宮にでもなったかのようだった。
魔凛は眼を見開いて吠えるような嬌声をあげ続けていた。
両腕を拘束されているというのもはやり魔凛の快感を途方もなく拡大している。
痙攣が止まらない。
魔凛は一回目よりも大きな絶頂を突き抜けさせていた。
「あはあああっ──」
気がつくと魔凛はあまりもの激しい絶頂に完全に身体を弛緩させていた。
「今度は前と後ろを同時にどうですか──」
再び達した魔凛を今度は再び麗芳は仰向けにした。
麗芳が魔凛の裸身に覆いかぶさり口を唇で塞ぐ。
激しく舌をむさぼる麗芳の舌技で息が苦しくなり、魔凛は空気を求めて顔を振った。
しかし、その魔凛の顔を麗芳の口が執拗に追いかけてそれを阻む。
そして、もうどろどろに溶けたようになっている魔凛の女陰に麗芳の指が入ってくる。
肛門の淫具は相変わらず動き続けている。
魔凛は口の中を刺激されながら、女陰に挿入された指を肛門で振動を続けている淫具に押しつけるようにされ、あっという間に三度目の絶頂に達していた。
*
明るい陽射しを感じた──。
魔凛が眼を覚ましたとき、全身が鉛にでもなったかのように身体が重たかった。
だが、同時に身体の中のすべての膿を吐き出したかのような爽快感もあった。
魔凛は寝台に横になって掛布に身体を覆わせてはいたが、掛布の下はまったくの裸身だった。それが昨夜の狂態が夢ではなかったことを物語っていた。
麗芳に激しく嗜虐的に抱かれて、完全に気を失うまで責められた。
魔凛はまどろみの中にありながら、そのことに呆然とした。
あんなに達したのは初めてだ……。
その深さでも、数でも……。
ふと顔を横に向けると、麗芳が寝台から離れた場所にある長椅子に横になって寝入っていた。
麗芳は一応は服を着込んでいる。魔凛が裸のまま寝入らなければならなかったくらいに激しく達したのに、自分はきちんと服を整える程の余裕があったのだ。
なんとなく魔凛はそれが腹立たしくなった。
魔凛は裸身にシーツだけを巻きつけて、枕元にある水晶の埋め込んである杖を手に取った。
この水晶の発する白い光の道術によって、魔凛は『支配術』を操ることができる。
この光を浴びた者は人間であろうと亜人であろうと、魔凛が念じたときに、魔凛が思うままの人形のように身体の自由を奪われるのだ。
魔凛はまだ寝入っている麗芳の顔をその水晶の杖で軽く押した。
寝ていた麗芳が、身じろぎをしながらうっすらと眼を開いた。
「あっ、魔凛……様──」
麗芳が戸惑った顔をしている。
魔凛は杖を麗芳に向けたまましばらく黙っていた。
戸惑った表情だった麗芳の顔に恐怖の色が染まりだす。
「麗芳、昨夜ことは覚えているだろうな──。随分とこの魔凛を相手に調子に乗ったようだったが……」
魔凛は杖を突きつけたまま、麗芳を睨みつけた。
「ま、魔凛様……。ゆ、昨夜のことは──。つ、つまり……」
麗芳が焦ったように狼狽え始めた。
魔凛はその顔がおかしくて、思わず噴き出した。
突きつけていた杖を下におろす。
そして、麗芳の顔にそっと唇を近づけてその頬に口づけをした。
「昨夜はよくもやってくれたな、麗芳──。仕返しはしっかりとさせてもらうからな」
魔凛が軽口を言うと、やっと麗芳の顔が綻んだ。
「さあ、麗芳──。今日は忙しいぞ。なにしろ、宝玄仙狩りをしなければならんからな」
「わかりました、魔凛様」
麗芳はにっこりと微笑んだ。
そのとき、その麗芳の笑顔が意味ありげな笑みに思えて、なんとなく魔凛は違和感を覚えた。
その違和感の正体がなんだろうかと考えたが、すぐにそんなことは気のせいだと思い直した。
麗芳は麗芳だ。
なにもおかしなことなどありはしない……。
「では、あたしは必要な指示を部下にしてまいります」
麗芳は何事もなかったかのように真顔になり、魔凛に敬礼をした。
魔凛は小さく頷いた。
そして、部屋を出ていく麗芳の背中を見送りながら、魔凛は身支度の手伝いをさせるため、寝台の横の卓にある鈴を大きく鳴らして侍女たちを呼び出した。