「お前って本当に面白いわねえ。さっきまですぐにでも心が潰れそうな感じで泣いてばかりだったのに、一転して気合の入った悪態をつくようになったし……。わたしの覚醒の施術を受けても簡単に気を失ってしまう身体の不思議さもあるし、お前の身体にはなにか秘密がありそうね。それがわかれば、お前の精神をもっと自在にわたしが操れるようになると思うわ……。身体だけじゃなく、心まですっかりと家畜化してあげるわね。ああ、愉しみ──」
宝玄仙の苛々感が頂点に達しそうになる。
しかも、身体の疼きはどんどん大きくなる。
それが宝玄仙の精神力を蝕んでいく気がした。
そして、自分が追い詰められているということを悟らざるを得ず、宝玄仙は気力を懸命に奮い起こした。
「じゃ、じゃあ、ひとつだけ教えておくよ。そ、それをしたのは千代婆という死に損ないだよ。その
「愉しみにしているわよ、宝──。お前とは愉しくやれそうね。まあ、しばらくすれば
輪廻が笑った。
まだ、この身体をいじるつもりか──?
それに、いつかどこかに移動するとか言ったか……?
金凰?
「ふふ、ねえ、見てよ。宝の股……。これって、施術のせいだけじゃないよね。どうやら、お前って苛められて悦ぶ手合い? これは調教しやすいかな。隠したって僕にはわかるのさ。その強気の言葉は、自分が苛められて嬉しいことを隠すためだよね? こりゃあ、面白い」
そのとき、宝玄仙の後ろ側にいた
「く、くだらないことを言うんじゃないよ、小僧──」
宝玄仙はかっとなった。
だが、ばかにされた言葉を掛けられたとき、じんと股間が熱くなってきたのは確かだ。
それが口惜しい。
「被虐癖? 本物かい?」
「へえ……」
だが、それを隠す方法がない。
宝玄仙は口惜しさに歯ぎしりした。
「まあいいわ。じゃあ、いくよ、被虐癖の宝──。蝦蟇婆の家畜の飼育部屋は同じ廊下並びの突き当りさ」
蝦蟇婆が言った。
宝玄仙の低い視界に蝦蟇婆の杖の先が入った。
思わず全身が竦みあがる。
さっき鼻輪で引っ張り回された恐怖心がどうしても心に甦ってしまうのだ。
そのことが宝玄仙自身を苛立たせる。
顔の前でその蝦蟇婆の持つ杖がすっと動き、鼻輪がぴんと引っ張られた。
宝玄仙は再び激痛に悲鳴をあげさせられる。
「ぐっ」
宝玄仙は思わず声をあげた。
「来な」
蝦蟇婆の杖が動いて、また鼻輪が前に引かれた。
仕方なく四つ肢を交互に前に出す。
「はっ、ふうっ」
すぐに甘い声が口から漏れ出てくる。
後肢を動かして身体を前に出すと陰核に生やされたという極小の小粒が本領を発揮して、宝玄仙に厳しい責めを加えだしたのだ。
小さな虫が肉芽の表面を無秩序にうごめく淫靡な感覚に、宝玄仙は声を呻かせて眉をしかめた。
「ま、待っておくれ……。す、少し、ゆっくり……」
堪らず宝玄仙は音をあげた。
陰核を責める刺激が股間全体に拡がり、それが身体全体を蕩けさせるような痺れになる。
しかも、床を引き摺っている乳首にぶら下げられた金属の板の振動が宝玄仙の鋭敏にされた乳首を苛むのだ。
それで肉芽以上の痺れが乳房全体に駆け抜ける。
四つん這いで歩くことで、肉芽と乳首から怖ろしいほどの刺激があることは予測していたが宝玄仙の想像を遥かに超える激しい快感の大波だ。
これは堪らない──。
宝玄仙は全身を襲う刺激に泣きそうになった。
「このわしに悪態をついた元気な家畜じゃろうが。このくらいの刺激はなんでもなかろう」
「宝、あんまり考えちゃ駄目だよ……。なんにも考えずに、ああ、気持ちいなあって思っていればいいのさ。それが家畜だからね」
蝦蟇婆と寧坊が嘲笑するように言った。
宝玄仙は歯を喰い縛って、ふらつく四つん這いの身体を前に進ませる。
それにしても、肉芽と乳首から響く刺激が強すぎる。
股間は肉芽だけじゃなく全体が大きな疼きに包まれ、一歩進むごとに官能の芯を抉られて快感が込みあがる。
それを乳首が引き摺る金属の板の振動が助長するのだ。
せめて乳首だけはと思うのだが、前肢が低すぎて乳房が床すれすれを垂れ下がるのをそれ以上はあげられない。
乳首には金属の板がぶら下げられているので、振動の刺激を防ぐことができないのだ。
耐えきれず股間から淫液が溢れ出すのが情けない。
それなのに休むことなど許されず、道術によって蝦蟇婆の杖に引き寄せられている鼻輪が容赦なく宝玄仙の鼻を引っ張る。
このことが家畜のように扱われている自分を自覚させて恥辱感でいっぱいになる。
宝玄仙は股間と乳首から沸き起こる情感と鼻から引き起こる激痛に耐えられずに悲痛な声をあげ続けた。
身体の込みあがる妖しい快感にも……。
診療室といわれた部屋の外はかなり広い廊下だった。
窓のようなものがあるようには感じない。
なんとなくまだ地下という雰囲気だ。
宝玄仙はその石畳の廊下に、ぴたぴたと豚の蹄を鳴らしながら懸命に肢を勧めた。
そのとき、ふと前から複数の足音が聞こえた。
裸身で四つん這いになり尻を高くあげて歩くという屈辱の格好をさせられている宝玄仙ははっとして身体を竦めた。
「おっ、蝦蟇婆殿、それが例の家畜ですか?」
顔が見えないのでわからないが、話しかけてきたのは亜人の兵のような感じだ。
辛うじて見える腰から下は軍装のようだ。
すると蝦蟇婆が歩みを止めた。
宝玄仙の鼻輪を引っ張る道術の力もなくなった。
蝦蟇婆の杖が宝玄仙の顔の前を阻むようにかつりと床に立てて固定された。
「そうじゃ──。触るんじゃないぞ。大事な生産雌畜じゃからな。それに青獅子陛下のお気に入りじゃ」
「へへ、わかっていますよ。それにしても、人間族だと聞きましたけど、これは四本脚の畜生ですか?」
最初に話しかけた男とは別の声だ。そのふたりの男は宝玄仙の尻側に回って、宝玄仙の股間を眺めるような態勢になった。
それを防ぐことのできない口惜しさと恥ずかしさに宝玄仙は心が砕けるような気持ちになる。
「輪廻の施術じゃ。家畜に相応しい姿にせよという青獅子陛下の命令じゃ」
「へえ……。それにしても、この家畜女の穴はびしょびしょじゃないですか」
ひとりが嘲笑するような声をあげた。
「そうでしょう。なかなか、淫乱な資質のようです。それに被虐癖もあるんです。いい生産雌畜になると思いますよ」
寧坊の自慢げな声もした。
かっとしてこの連中に悪態で返したくなったが、全身を駆け回っている快感の疼きの倦怠感でその気力が湧いてこない。
宝玄仙は怒りを自重してただ耐えた。
男たちは宝玄仙の性器のかたちがどうの、蜜の量がどうの、あるいは、尻穴がなかなか卑猥だとか次々に言いたいことを喋ってから立ち去っていった。
さっきの兵の足音が背後に遠ざかっていく……。
「どうやら宝はああやって身体を見られていても、身体が疼いてくる体質のようだね。やっぱり被虐癖だ」
不意に寧坊が言った。
「本当かい、寧坊?」
蝦蟇婆が笑った。
「そ、そんなわけないだろう、寧坊──。ば、馬鹿にすんじゃないよ。おかしな施術で、こ、こんなに身体を苛まれりゃあ、少しは欲情するに決まっているだろう──」
宝玄仙は声をあげた。
しかし、それを完全には否定できない自分自身がいることも確かだ。
寧坊の指摘のとおり、宝玄仙は性器をしげしげと視姦されて辱められたとき、なんともいえない疼きが全身に走ったのを知覚した。
認めたくはないが、寧坊が馬鹿にしたような性質が宝玄仙の資質にあることも確かもしれない。
「僕の前で嘘をついても無駄だよ、宝──。これでも、一流の魔法石の雌畜の飼育人なんだよ」
寧坊が笑った。
「どうやら、辱しめられて感じるとんだ変態だったわけじゃな、宝? ならば、この境遇も満更ではないじゃろう? ほれ、認めい、変態──」
蝦蟇婆が哄笑した。宝玄仙は俯いたまま、この口惜しさを我慢した。
そして、再び鼻輪で引き摺られるように歩かされて、やっと突き当りの部屋に到着した。
かなり広い部屋のようだが、視界に見えるのが限られているので、どんな調度品があるのかはわからない。
部屋の壁には様々な器具や用具のようなものがあり、宝玄仙にはここはある種の拷問部屋のように感じた。
「宝、ここは調教部屋じゃ……。家畜部屋は隣じゃ──。しばらく、お前はここで暮らすことになる。とりあえず時間がないからのう。わしに預けられた時間はとりあえず十日じゃ。それである程度仕上げなければならん……。ちょっときつい調教になるぞ、宝」
蝦蟇婆が言った。
「ねえ、白痴二匹はどうしたのさ、婆さん?」
寧坊の声だ。
「まだ寝ているのじゃろうなあ……。まあ、そのうち起きて来るだろうさ。宝を見れば、あいつらも新しい人形に悦ぶじゃろう」
蝦蟇婆が言った。
そして、鼻輪で部屋の中心に導かれた。
鼻輪で引っ張られる痛みが消えたのは、宝玄仙がこの広い部屋の真ん中まで進まされたときだった。
ふと見ると、蝦蟇婆が宝玄仙の周囲を歩きながら、金属の杖で床をこつりこつりと叩いている。
「さて、じゃあ、とりあえず、最初の調教じゃ──。その四つん這いでちゃんと歩く練習をするぞ、宝。息の続く限り、床を歩き続けるのじゃ。お前の周りには結界が走っておるからのう──。その結界に触れると、電撃を浴びることになるぞ」
蝦蟇婆が言った。
「な、なにい?」
「しっかりと運動せい。電撃で追いたてられて歩き続ければ、嫌でも家畜になったということが自覚できるじゃろう」
すると、なにかの結界のようなものが宝玄仙のいる場所を中心に囲んだのがわかった。
いま、説明された電撃の結界というもので、周りを囲まれたに違いない。
「頑張って歩くんだよ、宝──。しっかりと快感を貯めたら、夜には一気に発散させてあげるからね。それから蝦蟇婆の結界の壁は本当に凄い電撃だから、いまいる場所からずっと離れないようにした方がいいよ──。それに、どんなに頑張っても結界を越えてどこにも逃げられないからね。無駄なことはしようとせずに一生懸命に歩くんだよ」
寧坊も愉しそうに言った。
すると突然、宝玄仙の立っている床がゆっくりと後ろに動き出した。
すぐにこの調教の仕組みがわかった。
結界に囲まれた床が後ろに動いて、じっとしていると宝玄仙はそのまま後ろに移動させられるという仕掛けなのだ。
そして、結界に身体が当たれば怖ろしい電撃が加わるということだろう。
電撃に触れるのが嫌なら、この四つん這いの肢で前に進み続けて、いまの場所に留まり続けるしかない。
宝玄仙は慌てて四本の肢を進ませだした。
床の動きはゆっくりだが、常に動き続けていないと宝玄仙の身体は背後にあるはずの電撃の結界に接触させられる。
宝玄仙はまるで調教動物のように強制運動を始めさせられたというわけだ。
屈辱感に肚が煮え繰り返る。
しかし、とりあえず、得たいの知れない電撃の怖さが口惜しさを上回る。
動くとからからと乳首にぶらさがっている金属の板が音を立てだす。
大きな快感が乳首から全身に拡がっていき、すぐに股間の疼きも耐えられないものになった。
「ほらほら、お前は家畜なんだから、なにも考えちゃ駄目だよ、宝。歩いて、歩いて」
寧坊が笑いながら叫んだ。
寧坊と蝦蟇婆は電撃の結界の外の壁際に並んで椅子に腰掛けている。
子供から嗜虐の言葉をかけられる屈辱に、宝玄仙を憤怒の炎が包む。同時に激しい口惜しさで心が締め付けられる気がした。
宝玄仙は自分の肢になった豚の蹄を懸命に前に出し続けた。
いつの間にか荒い呼吸とともに、淫情のこもった甲高い声が口から漏れ出てくる。
「ちょっと速度をあげるぞ、家畜──。少し汗をかけ」
蝦蟇婆が椅子に座ったまま、笑いながら床を杖で叩いた。
床の速度が一気に二倍ほどになり、宝玄仙は慌てて駆けるように肢を前に出した。
からからと乳首の金具が音を立ててそこから伝わる衝撃が全身に官能の矢を暴発させた。
「ひっ、ひいい」
ぐらりと四肢がよろめく。
そして、肢がぐらついたことで、一気に宝玄仙の身体が後方に退がった。
「ほらっ、しっかりと走らんか。尻に電撃が当たるぞ、宝──」
蝦蟇婆のからかうような叱咤の声が部屋に響き渡った。
宝玄仙は全身を苛む快感の疼きを振り払うように懸命に前方に身体を跳躍させた。
(第72話『雌畜加工』終わり)
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物語は、沙那、孫空女、朱姫の受難の順に語り、宝玄仙と宝玉の受難の続きは、第77話に予定している『雌畜調教』の予定です。