465 酒場の見世物
うう、まただ……。
沙那は再び始まった股間の振動に両手吊りの両こぶしをぐっと握りしめた。
股間に革の貞操帯を装着させられていて、その股間部分が淫らに振動しはじめたのだ。
集まっているのは非番らしい亜人の兵であり数十人はいる。
沙那はその客席に向き合う舞台で股間に淫具を装着されてただひとり晒されていた。
つまりは、この酒場で酒を飲む亜人たちのための余興ということだ。
“人間女の破廉恥な見世物”ということで、ここに連れて来られてからずっと、沙那はここで晒し者になり続けている。
いま、沙那は両手を天井から伸びた二本の鎖で吊るされ、膝立ちの脚を肩幅に開いて拘束されていた。
身に付けている服は、真っ赤な開襟の薄地一枚であり、すでに汗だくで沙那の裸身を完全に透けさせていた。
股間は隠されているが、はかされているのは素肌に革の貞操帯だけだ。
沙那はそんな晒し者の格好にされ、さらに、貞操帯の内側に淫靡な仕掛けをされて舞台上に放置されている。
人間族の女である沙那が淫具でよがる姿を見世物として客に晒されているのだ。
しかも、それが数刻続いていた。
「んっ、んんっ、くっ、あ、ああ……」
懸命に口を閉じようとしているが、どうしても淫らな声が出てしまう。
刺激が再開したことで、圧倒的な快感が全身を席巻する。
再び淫らに悶えだした沙那の恥態に亜人の兵たちは大喜びだ。
快感を振り払おうとしても沙那には無理だった。
貞操帯の内側に仕込まれている淫具による淫らな刺激にあっという間に矯態を表してしまう。
肩幅ほどに開いて膝立ちにされている沙那の両腿が痙攣したように震えてくる。
沙那の股間に喰い込むように締めつけられている革帯の内側には大小無数の半球の丸いでっぱりがあり、それが小刻みに振動するのだ。
それらが一斉に沙那の肉芽、女陰、肛門を中心に股間のあらゆる性感帯を同時に刺激するのだ。
快感責めに弱い沙那には抗しようがない。
沙那は淫乱に悶える自分の姿を酔客に晒すしかなかった。
「はあああっ」
耐えられずに喘ぎ声が口から溢れ出る。
情けないが、どうしても快感を我慢できないのだ。
すると酒場に集まっている亜人の酔客たちがわっと歓声をあげる。
しかも、口惜しいのは、さらに陰湿な股間の仕掛けだ。
客に身体を見せつけるように拘束されている沙那を淫具でいたぶる貞操帯は、沙那を絶頂寸前まで追い込むと、沙那の快楽の度合いを道術で探知して振動がとまるような仕組みになっているらしいのだ。
とまるとしばらくそのままで沙那の身体の火照りが少し鎮まるのを待ち、やがてまた股間部分が動いて沙那をぎりぎりまで追い詰める。
さっきから数刻に渡って意地悪くいたぶっては苛んでいる責めがこれであり、沙那は淫らによがっては、絶頂寸前で快感を取りあげられて脱力するという焦らし責めに狂う恥態を晒し続けていた。
幾度も寸止めにされ、すっかりと火照りきっている沙那の身体は貞操帯の振動にすぐに淫らな反応をしてしまい、股間の革帯の脇から漏れ出た沙那の淫液がつっと内腿を伝い流れ始めるのがわかった。
「おう、また始まったぞ──。今度はいくんじゃないか」
「無理無理、『いけずの帯』という調教用の貞操帯だぜ。
「だけど、だんだんと女の反応が激しくなっているじゃねえかよ。間違って達してしまうということもあるかもしれねえぞ」
「それにしても、凄い愛汁だな。気持ちよくて堪らないんだろうなあ」
「気持ちよくても絶頂寸前で止まってしまうなら、女にとっては性の地獄さ」
沙那の周りを囲む卓に座っている亜人の兵たちが酒を飲みながら笑った。
沙那は亜人の兵たちが集まるこの酒場で、もう数刻もこの『いけずの帯』という貞操帯型の調教下着で性感の刺激を受ける姿をこうやって亜人たちに晒され続けているのだ。
どうしてこんなことになったのかということについて、沙那の記憶は混乱している。
記憶が途切れ途切れで繋がっていないのだ。
発端が宝玄仙たちとともに宿泊を続けていた
とにかく突然に白い光に襲われて、それでなにもわからなくなったのだ。
いまにして思えば、あのときに浴びた白い光がなにかの道術なのではないかと思うのだが、何度か浴びたその白い光を浴びた直後の記憶がうまく繋がらない。
呆気なく村の中の厠で捕えられてしまい、気がつくとこの獅駝の城郭の中心にある広場に連れて来られていて、そこに集まっていた人間の男たちによって二本の柱に拘束されて凌辱され始めた。
もしかしたら沙那同様に、あの人間の男たちもおかしな術に操られていたのではないかと思うのだが、その時はなにが起きているのか理解することもできなかった。
そして、宝玄仙と孫空女が『移動術』で突然現れた。
助けに来てくれたのだ。
宝玄仙と孫空女は、捕らえられている沙那の目前に『移動術』で出現して、強引に沙那を救出し、再び『移動術』で沙那を連れて逃亡するという策を実行するつもりだったと思う。
沙那は孫空女によって拘束から助けられ、『移動術』で逃亡するために、宝玄仙に抱えられた。
だが、そのとき奇妙なことが起きた。
拘束されていた沙那を助けて身体を抱えてくれた宝玄仙に、沙那はなにかの液剤を口移しで送り込んだらしいのだ。
まったく意識のない状態で行われた自分の行為であり、いまになってもどうしてあんなことをしたのかわからない。
しかし、あのとき、宝玄仙は沙那の腕の中に崩れるように倒れていった。そのときの絶望的な沙那の感情と孫空女の悲鳴は忘れることはできない。
それからなすすべなく、囲まれていた群衆に捕らえられた。
『移動術』で追いかけてきた朱姫がまずは捕まり、沙那も大勢の人間に取り押さえられた。
孫空女も『如意棒』を奪われ、身体を倒されて、服をびりびりに引き破られるのを見た。
その後の記憶もまた残っていない。
意識を失ったのか、それとも、また、白い光による記憶操作をされたのかもわからない。
とにかく気がついたら、どこかの軍営の牢を思わせる場所にひとりで閉じ込められていた。
そこが軍営の牢と思ったのは、沙那は一度故郷の愛陽で軍営の牢に閉じ込められたことがあり、そのときの牢の感じに似ていたからだ。
あのときは、宝玄仙の罠にかかり、盗んでもいない法具を盗んだという疑いをかけられて牢に入れられたのだ。
そこに面会に来た宝玄仙の言葉を信じて、うっかりと『服従の首輪』を装着することに同意してしまった。
あれが運命の変転だ。
いまにしては懐かしい思い出でもある。
この城郭の軍営らしき牢の中で、沙那は手足を背中側でひとつに束ねられて石の床に転がされていた。
縄や枷で拘束されているのではなく、手首と足首に巻かれている革帯が密着することにより手足の自由が失われているようだった。
宝玄仙も孫空女も朱姫も、沙那のいる牢にはいなかった。
仲間たちがどうなったかはわからないが、あのまま捕えられたのは間違いないだろう。
そのすべての原因を自分が作ってしまったことを、沙那は激しく悔悟した。
やがてその牢にやってきたのが、ふたりの若い亜人の女たちだった。
房毛に包まれた丸い耳を持った美貌の女たちは、くすくすと笑いながら、全裸で背中に手足を束ねられていた拘束を解くと、沙那を両側から抱えるように起こした。
これこそ逃亡の機会だと思った──。
その亜人のふたりの娘が何者かはわからなかったが、不用意に沙那の拘束を解くなど、油断もいいところだと思った。
牢舎の外には数名の兵がいることはわかっていたが、武器を奪えばなんとなる──。
この亜人の娘のひとりを人質にとってもいい……。
そう考えた。
しかし、逃亡はできなかった。
おそろしく手足が重くて、まったく自由に動けなかったのだ。
なにもできないまま、背中合わせの拘束を外されて、前手に呆気なく拘束され直した。
脚は拘束されていなかったが、ゆっくりと動かすのがやっとであり、とても戦うことはできそうにない。
すぐに手首と足首に巻かれている灰色の革帯が原因だと思い至った。
おそらく、手足の筋肉を弛緩させる効果がこの革帯にあるのだ。
手首と足首に巻かれた灰色の革帯が逃走防止の霊具だというのはそのときわかった。
ふたりの亜人の娘は、その霊具の拘束具を自在に外したり密着させたりできるようだった。
それににこにこと笑っているが、その若い亜人の娘たちがそれなりの武芸を身に着けているということはやがてわかった。
ちょっとした身体の仕草で備わっている武術の腕は沙那にはわかるのだ。
沙那はその場での逃亡を諦めざるを得なかった。
亜人の娘たちは春分と秋分と名乗った。
ふたりの顔はよく似ていた。おそらく姉妹だと思う。
沙那は春分と秋分に、仲間はどこだと訊ねたが、意味のある答えを聞くことはできなかった。
沙那をこれからどうするつもりかという質問には、彼女たちは、青獅子魔王の命令により、沙那の調教係になったのだと答えた。
青獅子というのは、数日前にこの城郭を占領した魔王であり、この獅駝の城郭は人間の住民ごと魔王軍の支配下に落ちており、沙那たちはこの魔王軍に捕らわれたのだということもわかった。
春分と秋分は、沙那に前で開襟させる上衣だけを身につけさせ、腰にはいま装着されている革の貞操帯を嵌めさせられた。
股間に喰い込まされたのは、内側にたくさんの丸い膨らみのある革帯であり、まずは腰の括れた部分に革帯が巻かれ、その中心部から縦に繋がった革帯を前側から股間に喰い込まされて、股間と臀部の亀裂に添って当てられると腰の後ろで横帯に繋がれたのだ。
股間に添った革帯が腰に巻いた帯に繋がると、道術によって股間と臀部に縦帯が一気に強く食い込んだ。
股間の敏感な部分に革帯の内側のでっぱりが苛む感触に沙那は、思わず甘い呻き声をあげてしまった。
そんな革帯を装着されることに対して抵抗しようにも、手足の革帯が重くてどうにもならなかった。
沙那は上半身に服を着て、下半身には股間に食い込む革帯だけという姿にされると、春分と秋分が声をかけることで入ってきた亜人の兵たちにそのまま牢の外に連れ出された。
沙那たちを捕らえて牢に入れたのは、背や首に翼か羽毛のある鳥人族の兵だったが、沙那を牢の外に運び出したのは、鳥人族ではない亜人の兵だった。
そして、牢舎のある建物から外に出たところで、『移動術』で沙那の両脇を抱える亜人の兵と春分と秋分とともに、この酒場にやってきたのだ。
酒場はかなり広い店であり、四人掛けの卓が二十はあった。
酒や料理を運んで給仕をするのは人間の男女だったが、客はすべて亜人の兵だった。
沙那はわっという歓声に包まれながら店の奥側にある舞台に載せられて、天井から伸びてきた二本の鎖に手首の革帯を接続された。
沙那の腕は天井から二本の鎖で吊りあげられたかたちになり、脚は膝立ちにされて、両膝に約三分尺(約一メートル)の細い鉄の棒を挟まれて固定された。
沙那をこうやって放置すると、春分も秋分もどこかに消えてしまった。
こうやって、沙那はただひとりこの舞台に残されたのだ。
最初はどういう目的でここに連れ込まれたのかわからなかったが、しばらくしてどうやらここに集まっている兵たちを慰める余興の見世物にされているということがわかった。
沙那の股間に装着されている革帯が淫らな動きをすぐに始め、それに沙那が反応すると酔客たちがわっと歓声をあげたからだ。
ただ、直接に手を出すことだけは禁止されているのか、痴態を晒している沙那に大勢の亜人の兵が性的な欲情をしている気配を示すが、直接に沙那に手を振れようとする亜人はひとりもいない。
そして、いままでこのおかしな貞操帯の淫具に翻弄させられ続けている。
「あ、ああっ、あはあっ──」
再び、耐えていたものが崩壊するように派手な声が迸ってしまった。
沙那の身体の反応をすっかりと覚え込んだのかと思うような絶好の間隔と強さで股間の淫具の振動が激しさを増したのだ。
快感が一気に膨張した。
堪らない愉悦が激しい肉の疼きに変わる。
「おう、また尻躍りが始まったぞ」
「よかったら、乳を揉んでやろうか? その革帯じゃいけねえが、俺の乳揉みならいけるかもしれねえぞ」
「おいおい、抜け駆けなしだぜ。こうやって、戦利品の捕虜女を目の保養にするだけでも陛下の粋な計らいなんだ」
「だけど、悩ましげに身体を振るじゃねえか……」
舞台に近い席に座る亜人たちの遠慮のない揶揄を聞きながら、沙那は頂上近くに追いあげられている自分を意識しないわけにはいかなかった。
そして、股間を締めつけている革帯の異物が複雑に収縮を繰り返しながらある部分は小刻み、ある部分は激しくという感じで振動を続ける。
この複雑な運動が沙那に耐える余裕を与えてくれない。
観客たちは沙那の姿に笑い続ける。
そして、沙那は快感に逃げられない自分自身に怒りが沸騰した。
「あ、あんたら……あ、あうっ……わ、笑ってんじゃ……な、ないわよ……はあっ……」
沙那は淫具に苛まれることによって溶けていきそうな気力を総動員して叫んだ。
しかし、悶え声混じりの怒声などなんの迫力もない。
沙那の力一杯の悪態は観客たちの爆笑で返された。
そして、その爆笑の中で沙那の股間の淫具がいよいよ本領を発揮して、沙那の股間を責めたてる。
これが沙那の限界だった。
それ以上はまともなことを喋ることはできずに悶え狂うだけだった。
沙那は大勢の亜人の酔客の目前で淫具に苛まれて悶える姿を晒されるとい恥辱の中で、名状できない甘美な感覚にまたも身と心を溶け込ませようとしていた。
もうなにも考えられない……。
股間を刺激している革帯の責めにより、沙那の腿はうねうねと揺れ動いている。全身が自然と左右にくねりだし、ひらっきぱなしだった口からつっと涎が流れ落ちるのを感じた。
頭に霞がかかったように快感でぼうっとなる。
どうして自分はこんなにも快楽に弱いんだろうか……。
せめて口を閉じようとするのだが、それさえも沙那の痺れ切った身体は許さないのだ。
緩やかな動きと激しい動きを組み合わせた複雑な運動を続けていた股間に喰い込んでいる革帯の内側の大小の球体が一斉に激しい運動を始める。
沙那は全身を仰け反らせて吠えるような声をあげた。
「おい、人間の女、いくときはいくと言いな──」
どこからか大きな声がした。
いくときはそう言う……。
沙那の身体をここまで躾けた女主人の言葉がそれと重なる……。
全身が溶ける……。
頭が朦朧となる……。
いく……。
そう言わないと……。
「い、いく──」
沙那は大きく叫んだ。周囲がどっと笑った気がした。
そのとき、激しかった股間の異物の振動がぴたりと静止した。
はっとした。
やっと沙那は我に返った。
いま、自分はとんでもない醜態を晒した……。
こんな亜人の男たちの前ではしたなくも、“いく”などと叫んだのだ。
沙那の全身を大きな羞恥が包む。
たくさんの嘲笑の声がそれを沙那の恥辱をさらに大きくした。
しかし、一度燃えあがった身体の熱は急には冷めない。
ゆっくりゆっくりと火が消えるように頭を覆っていた恍惚感が小さくなる。
それとともに、沙那は少しずつ冷静さを取り戻す。
だが完全に冷め切る前にまた股間の淫具が動きを再開する。
「ほううっ」
今度はお尻だった。
ほかの部分がまだ静止を続けているのに肛門に喰い込んでいる異物だけが回転するような動きを開始したのだ。
また、酔客たちが揶揄をはじめる。
だが、そんな野次に羞恥を覚えるのは最初だけだ。だんだんと淫具の動きが大きくなると、もう沙那はなにも考えられなくなる。
人間に刺激されているときには考えられない複雑な組み合わせの股間の振動が沙那を追い込む。
やがていつの間にか革帯は股間全体への責めに変化している。
沙那は何度も味わった官能の痺れの中に心身を引き摺り込まれた。
「あ、ああっ、あふうっ……」
口から嬌声が迸る。
しかし、やはり、股間の異物による責めは残酷だ。
沙那が狂態を示し、酔客の前で絶頂を晒そうとすると、またもや刺激を取りあげてしまうのだ。
もう、沙那はなにも考えられないくらいに追い詰められた。
あと一歩というところで火のような身体の昂ぶりを下降させられ、しばらくしてまた淫具の振動によって絶頂に向かって昇らされる。
どろどろに溶けたような身体に加わる責めに、晒されているということも忘れて沙那は激しく反応するが、九合目からもう一歩で絶頂というところで刺激がなくなる。
「ああ、またああ──。い、いやよおおっ──」
ついに沙那は困惑してに左右に顔を振って泣き出してしまった。
これは性の拷問だ。
意思のない霊具でなければ考えられないようなしつこさによる淫靡な嫌がらせだ。
何十度目かの寸止め責めに沙那は、ここが大勢の亜人の兵が集まっている酒場の舞台であるということも忘れて、口惜しさに泣き続けた。