「んんんん、んんああっ──」
我慢していたものが弾け飛ぶように口から声が迸った。
そして、無意識のうちに全身が反り返ってしまう。
前後から沙那を責めていた春分と秋分の亜人姉妹がすっと沙那の前後の穴から張形を抜いて離れていく。
すぐそばまでやってきていた絶頂感が消えていく……。
強い焦燥感が沙那を襲う……。
沙那は汗びっしょりの身体を手首を吊っている鎖に預けるようにもたれさせた。
立ってなんかいられない……。
春分と秋分があおりたてて、観客たちが嘲笑する。
もう、十数度繰り返されている同じ光景のはずだ。
達する寸前で張形による責めが中断された沙那は、もうどういう状況なのかすらわからないくらいに全身に渦巻く痺れに頭を朦朧とさせていた。
その沙那の耳に狂乱する沙那の姿にすっかりとのぼせたような観客の歓声が飛び込んでくる。
しかし、そうやって亜人の酔客たちに嘲笑されるのはもうどうでもいい。
沙那を追い詰めているのは、ふたりの亜人姉妹による執拗な焦らし責めそのものだ。
女の尊厳をとことん踏みつぶすような仕打ちに沙那は打ちひしがれそうになっていた。
「口を閉ざして声をあげなければ、あたしたちがあんたがいく予兆がわからなくて、うっかりと責めすぎて絶頂させてもらえると思ったのね。そんな策をしようとするなんて、かわいらしいわあ──」
「もっとも、声を我慢しているのが丸わかりで、ちっとも隠していなかったけどねえ……」
春分と秋分がからかったような声をあげた。
沙那は天井から吊られた両手に体重を預けるような態勢で、肩で息をしてこのふたりの姉妹を恨めしく見ていた。
まさに性の責めだ。
天井からぶらさげられた裸身の女陰を春分に貫かれ、後の穴を秋分から張形で責められて、全身をふたりの手管にあおられる。
ふたりは完全に同調して沙那を翻弄しながら、沙那の身体を前後に突くようにふたりの身体を反復させ合い、沙那の全身に両手を絡ませてくる。
「ほら、また前後を交替よ。すっかりと頭がいかれてしまうまで続けるからね、沙那」
ふたりがまた身体の位置を交換しながら笑った。
もう、どのくらいこうやって責められているのだろう。
おそらく、この酒場に連れ込まれておかしな淫具に責めたてられだしたのは、午後を少し過ぎた頃だったと思う。
しかし、いまはそろそろ外が薄暗くなっている感じだ。
店にいた亜人の兵は、そのままなのか、それとも入れ替わったのかのかは、もはや沙那にはよくわからないが、人数はかなり増えている。薄暗くなった店に明かりも支度された。
「それとも、大きな声で、“お願いだからいかせてください”と叫ぶ気になった?」
春分がからかうように、今度は沙那の身体を後ろから抱えて張形で沙那の女陰に挿入させてくる。
「うう、うああっ」
秋分の腰の張形がしっかりと自分の身体を貫いた瞬間、沙那は歯を喰いしばったまま呻いた。
もうそれだけでどろどろになっている沙那の身体は、すでに絶頂に向かって助走を開始している。
今度は前後責めではなく、後ろから女陰を突いてくる責めに変えたようだ。
春分が沙那を後ろから抱えるように張形で沙那の股間を貫いている。
手空きになった秋分が、横から沙那の脚を大きく開かせるようにして観客たちに結合部を曝け出させる。
「ひいっ、い、いやあっ──」
沙那は嫌でも観客たちの視線を感じさせられて悲鳴をあげた。
「ほら、また、お預けを喰らいたくなかったら、絶頂させてくださいと言うのよ」
春分が沙那の身体を左右に振って揺り動かす。
沙那は汗びっしょりになって、股間を貫かれた身体を揺さぶられながら、この快感を耐えればいいのか、それともひたすらに昇天に向かって突き進めばいいのかわからず引きつった声をあげながら双臀をうねらせた。
「言いなさい……。いかせてくださいってね……」
秋分が涙と鼻水でぐしょぐしょになっている沙那の顔に舌を這わせ始める。
このふたりは、もう何刻もこうやってぎりぎりのところまで沙那の快感を追いたてては、絶頂寸前で責めを中止しては沙那の愉悦の熱が冷えるのを待ち、責めを交替して再び寸止めまでの快楽責めを繰り返すということを続けている。
そして、しばらく前からこうやって、寸止め責めをやめていかせて欲しければ、そう観客たちに大声で媚びろと強要されているのだ。
どんな責めを受けようとも、それだけは受け入れることができない沙那は、心が打ちのめされるようにされようとも、懸命にそれを拒否し続けていた。
哀願の言葉をまだ口にしないということがわかると、春分の動きが激しくなった。
沙那は栗色の髪を振り乱して激しく悶えた。
沙那の耳を舐めている秋分がなにかをささやき、観客もまた大声で沙那を野次っているが、もう沙那にはなにも理解できない。
それよりも身体の芯まで酔いしれるような快感に、熱っぽい喘ぎの声を昂ぶらせるだけだった。
「う、ううああ、んんあああっ──」
堪えられない声が沙那の口から出る。
そこまで絶頂感がきている。
そこまで……。
「また、いきそうなのね……。丸わかりなのよ、あんた……」
春分が背後から、すっかりと取り乱している沙那を貫きながら言った。
それでも、まだ沙那への責めはやめない。
それどころか、さらに沙那を揺さぶりをかけて、沙那を追い込んでくる。
沙那は火照った顔を狂おしく揺さぶって、秋分の舌を払い除けるようにして全身を震わせた。
「じゃあ、おあずけ──」
いきなり張形が引き抜かれて身体を離される。
沙那は切羽詰った声で泣き声をあげた。
*
「あっ、はあっ……」
沙那はもうわけもわからず、歯を喰いしばりながらも胸を喘がせて、秋分の動きに合わせて腰を動かしている。
絶対に屈しない……。
その思いだけが沙那を支えている──。
いま、後ろから沙那の大股を開かせるように膝を抱いて女陰を貫かせているのは秋分だ。
その態勢が観客たちに沙那の股間に食い込んでいる張形の様子がわかるのでそうしているようだ。
「随分、しぶといわねえ……。ここまで粘るとは思わなかったわ。最初に身体を刺激したときには、あっという間に堕ちると思っていたんだけど……」
秋分が沙那を責めながら荒い息をしている。
「もう、いいじゃないのよ。なんのためにこんなに頑張っているのかわからないけど、絶頂が欲しいんでしょう? もう参ったしてよ。こんなにぐしょぐしょで全身も疲れちゃっているのに、なんで、“いかせてくれ”のひと言が言えないのよ?」
秋分が沙那を責めながら呆れたように言った。
「だ、誰が……んんんんっ……ああっ……んあああっ──」
「ほらほら、いきたいんでしょう? いかせてあげるわよ──。もう夜だしね──。それにしても、あんたってどれだけ体力があるの? こうやって責められ続けて、いまだに気力を保ち続けるなんてびっくりよ」
春分が腕組みしながら沙那の横に立って沙那に小さな声で言った。
いまはふたりがかりで責めるというようなことはしていない。
秋分の責めも控えめだ。
沙那があまりにもしぶとく、ふたりに屈服するのを拒否しているので、お互いに休憩することが必要だと思ったらしいのと、ふたりで責めれば、あっという間に沙那が達してしまうからのようだ。
昼すぎから始まった沙那への責めは、完全に夜になったいまでも続いているが、かなりの激しい責めだというのにかかわらず、沙那はまだ一度もいかせてもらっていない。
この姉妹はかなりのしつこさで、沙那の快感を絶頂寸前の状態で維持するということをやめていないのだ。
いま張形で責めている秋分にしてもそうだ。
最初の頃のように深々と子宮を抉るほどに責めるということはない。
浅く侵入させた張形を数回律動させては停止し、しばらくそのままにして、また律動するということを続けるだけだ。
それ以上の動きはたちまちのうちに沙那を絶頂に導いてしまうらしかった。
とにかく、沙那はもうなにも思考ができないくらいに追い込まれていた。
沙那は震えるような露わな声を洩らしていることに気がついた。
秋分の律動が速度を増すとともに深々と張形を突き入れてくる。
「あはああっ」
勢いのある張形の侵入に、やっと沙那の身体に大きな快美感が流れ渡る。
待ちに待った瞬間がやってくる……。
しかし、秋分の責めはそれ以上はやってこない。ぴたりと律動は停止してしまう。
沙那は泣き叫んだ。
「さあ、休憩よ……。どうする、沙那? まだまだ、これを続ける? それとも、この観客の前でいかせて欲しい? これだけこの舞台に出演してくれればもう十分よ……。だから、ここは頷いてよ。それで許してあげるから……」
春分がかなり疲労の滲む表情で沙那の耳元でささやいた。
沙那は歯を噛みしめたまま激しく首を横に振った。
こうなったらどこまでも意地を貫いてやる──。
そう思った。
とにかく、沙那は夢中になって頭を振っていた。口を開く余裕も、いまの沙那には残っていないのだ。
「本当にしつこいわねえ」
秋分は呆れた大声を出した。
そして、張形が引き抜かれる。
沙那はがっくりと脱力した。
「まさか、夜まで堕ちないとは思わなかったけど、このままでは夜中になりそうね……」
沙那の背後で春分が言った。客席には聞こえないくらいのささやき声だ。
しかし、沙那にはしっかりと聞こえていた。
「ああいうものを使うというのは、あたしたちの負けのような気がするんだけど……、もういいわ。この女の体力にはついていけないし……」
秋分の嘆息も聞こえる。
すると春分が一度舞台を下りて袖の奥に引っ込んでいく。
沙那を責め続けている時間、休憩のためにそうやって、ひとりずつなんどか交替で舞台をおりることがあった。
しかし、今回はそんな雰囲気ではない。
沙那は嫌な予感がした。
するといつの間にか秋分が舞台の奥に置き捨てていた鉄の棒を取り出してきた。
沙那がここに連れ込まれてから、最初に淫具責めに遭っていた間、膝を拘束して開脚にさせていた拘束用の棒だ。
秋分が沙那の足元にうずくまって、その棒の両端に沙那の膝を拘束しようとした。
肩幅ほどの鉄の棒の両端にある革紐で沙那の膝を縛っているのだ。
「な、なに?」
沙那はこの後に及んで再び脚を拘束されようとしていることに恐怖を抱いた。
「次の趣向よ──」
春分が再び現れた。
酔客たちが拍手で迎える。
脚に車のついた台を押している。その上に箱が置いてある。
「申し訳ないけど、手っ取り早く堕ちてもらうわ、沙那」
その春分が台を沙那の横に置き、そこから小さな瓶を取り出した。
「な、なによ──? なにをしようとしているの?」
沙那は叫んだ。
春分は小瓶の蓋を開けて、それを持って沙那の股間に近づけてきた。
見ると右手には一本の筆を持っている。
「今夜については、あたしたちの負けということは認めるわ、沙那……。でも、このまま終わらせるわけには演出上いかないのよ。この痒み剤を使わせてもらうわ。この痒み剤を塗っても、それでも自分を保っていられれば、正真正銘、あたしらの負けということを認めるわよ」
春分が筆を小瓶の中の液剤に漬した。
そして、その筆を沙那の股間に近づけてくる。
「や、やめてよ──。そ、そんなの卑怯よ──」
沙那は狼狽した。
「卑怯ってなによ。別にあたしたちはなにかの勝負事をしているつもりはないのよ」
秋分が横で笑った。
「じゃあ、いくわよ、沙那」
その沙那の股間に春分の持つ筆が近づく。
沙那は拘束された身体を振って抵抗しようとした。
だが、そんな行為は却って観客の歓声を煽るだけだった。
春分が演技めいた態度でゆっくりと薬剤の滴る筆を沙那の肉芽に迫らせる。
沙那は思わず悲鳴をあげた。
「ねえ、姉さん、その薬剤を水で薄めずに使うの?」
秋分がびっくりしたように春分に言った。
「そうよ、秋分。なにか問題がある?」
春分がそう答えると秋分もにやりと笑った。
「そうね。問題ないか」
秋分も言った。
そして、春分の持つ筆が沙那の肉芽に触れて、粘性のある液体がたっぷりと塗り込められた。
「ああ、いやああ──。それはいやああ」
沙那は本気で拘束された身体を打ち震わせて哀訴の声を出してしまった。