春分が薬剤のたっぷりと滴った筆を沙那の肉芽に近づけた。
「や、やめるのよ、あんたら──。ね、ねえ、いい加減にしてよ──」
沙那は酒場での公開調教の場で痒み剤を塗られるという屈辱と恐怖に全身を前後左右に激しく振った。
しかし、膝をしっかりと鉄棒の両端に挟まれている沙那には大した動きをすることができない。
それでも怖ろしい液剤を局部に塗られる仕打ちを一瞬でもいいから遅らせようと、沙那は懸命に身体を動かし続けた。
これまでにない沙那の激しい抵抗に、却って酔客たちは大喜びで拍手喝采だ。
だが、沙那にしてみれば冗談じゃなかった。
果てしない焦らし責めで沙那は体力も気力も限界まで追い詰められていた。
その沙那をこれから強力な薬剤で更に苦しめようというのだ。
しかも、沙那は薬剤で嗜虐される恐ろしさを肌身で知っている。
痒み剤などを塗られては終わりだ。
すぐに発狂するような痒みに襲われて、沙那は痒みを癒してもらうために、どんな恥辱的なことでも受け入れてしまうだろう。
どんなことでもだ──。
自分が自分でなくなるのだ……。
なによりもそれが怖い──。
「そ、それだけは許して──。も、もうなんでもするわ──。お、お願いだから」
沙那はなおも身体を左右に激しく振って悶えた。
「必死に怖がっちゃって可愛いわねえ……。どうやら、こういう薬剤を使った責めも何度も受けていて、怖ろしさも実感しているようね。でも、これはそれらに比べてもかなりの苦しさをあなたに与えると思うわ。なにせ、道術の刻まれた特別製だもの。ふふふ……。これは解毒剤を使わなければ痒みがとれないのよね。これを使われると発狂する女だっているのよ……」
春分が笑った。
沙那はその言葉に総毛立った。
「だけど、そうやって腰を振るあんたの姿はかなり卑猥な姿よ。まるで秘貝がうごめいているのを見せつけられているみたい……。しかも、潮みたいな淫汁を絞り出しながらね……」
秋分も声をあげてからかう。
ふたりの発言は公開調教の見世物としての演出も含まれているのだ。
酔客たちもどっと笑う。
「お、お願い──。もう、なんでもする──。もう命令に従う──。だから、痒み剤だけはやめて──」
沙那は懸命に叫んだ。
大抵の嗜虐には耐えられるつもりだ。
これまでに宝玄仙をはじめとして幾人もの男女から拷問めいた嗜虐を受けてきたのだ。
だが、痒み責めだけは耐えられない。
痒み責めに比べれば、鞭や棒で打ちたてられる拷問の方がずっとましだ。
女としての尊厳も、人としての誇りもすべて奪い取ってしまう悪魔の責めだ。
しかし、沙那の悲鳴など無視される。
春分の持つ筆が沙那の肉芽に触れ、二度三度と粘性のある液体が筆先でたっぷりと塗り込められる。
「ひううっ……」
沙那は腰を跳ねあげるようにして全身を突っ張らせた。
筆が肉芽を舐めあげる激しい刺激にあっという間に沙那の身体は絶頂しそうになったのだ。
沙那の身体は弾かれるように大きく痙攣した。
「おっと、危ない──。まさか、肉芽を筆で触っただけで達しそうになるとは思わなかったわ」
春分が慌てたように筆を離す。
沙那の身体はがっくりと脱力した。
「もう、なにをどうしてもいきそうになるみたいね……。だけど、ここまで焦らし続けたんだから簡単なことではいかせたりしなわ。うんと、恥をかいてもらわないとね……」
春分が不吉な言葉を笑いながら言った。
「でも、筆は敏感すぎて危ないわね──。じゃあ、指で塗ることにするわ……」
春分は筆を横の台に置くと、今度は指で液剤をすくって沙那の股間の亀裂に添って液剤を伸ばし続ける。
「あっ、あふうっ……」
春分の指がまず液剤を塗りつけたのは沙那の女陰の入口部分付近だ。
指による刺激を沙那に与えすぎないように注意深く力の加減を調整して薬を伸ばしてくる。
そして、沙那の局部の入口にまんべんなく薬剤を塗ると、今度は指を奥に入れて、それこそ塗り残しを怖れるかのように膣の中を痒み剤で浸していく。
強い性感帯が入口周辺に密集していることも事実だが、男性自身や張形に貫かれたときには、膣の奥や入口部分の一部が肉芽以上の充溢した深い喜悦をもたらすことも事実だ。
膣の中には沙那が他人には知られたくない敏感な場所があるのだ。
しかし、そんな場所も確実に春分の指がしっかりと薬剤を塗りこめていく。
沙那はこれからどうなるのを知り過ぎているだけに怖ろしくなった。
自分の身体が、他人よりもずっと敏感であるというのは、もう悟っている。
認めたくはないが宝玄仙による沙那への肉体調教は、怖ろしく快感に弱いいき人形のような沙那の身体を作ってしまった。
そんな身体で受ける痒み責めは本当に苦しいのだ。
しかも、この日の数刻にも及ぶ激しい焦らし責めは、沙那の肉体を行き場のない快楽の渦の沸き立つ袋のような状態にさせている。
感じやすい自分の身体にこれだけ多くの媚薬を二本の指ですみずみまで塗り込まれてしまうことは、さすがの沙那にも恐怖だった。
「ここも塗り足しておくわね……。でも、半日以上も弄り回しているから、あなたのここは随分と膨らんでいるわね……」
春分はさらに液剤を指にすくうと、沙那の陰核をすっかり剥き出しにして、しっかりと塗りこんできた。
「い、いぐううっ──」
沙那は肉芽を弄られる大きな刺激に、腰を浮きあがらせて断末魔のような声をあげた。
しかし、簡単に絶頂させてくれるような春分たちではない。
すかさず、勃起した沙那の肉芽をつねって激痛を与えることで一瞬だけ沙那の快感を逸らせて薬剤を塗り込んでくる。
沙那は嬌声と悲鳴を交互に叫ばされて、最後にはがっくりと力尽きるように宙吊りの鎖に身を任せた。
「ここはどうするの、姉さん?」
秋分が沙那の背後から沙那の双臀の亀裂に指を這わせて沙那の秘めやかな菊門を指で突いた。
「そ、そこは………堪忍して………」
沙那はこれ以上の仕打ちには耐えられそうもなく、口惜しさも忘れて哀願の言葉を口にした。
こんな女たちに弱みを見せるのは嫌だったが、もう股間にはたっぷりと痒み剤を塗られている。
肛門にまで得体の知れない薬剤を塗られることが心の底から怖かった。
「そこってどこのことよ、沙那?」
秋分が意地悪く言った。
その口調から秋分が沙那をからかいたくてそれを訊ねているのだとわかった。
それがわかると沙那は熱く火照っている身体が一瞬にして凍りつくような気持ちになり、固く口をつぐんだ。
秋分が春分から沙那の身体越しに薬剤の瓶を受け取る。
「言わなきゃここにも塗るわよ、沙那。お前の尻の穴がどこより敏感な場所だというのはもうわかっているのよ……。さっきも言ったけど、解毒剤がなければ、薬を塗られた場所の痒みは一日経っても二日経っても消えることはないのよ。そんな薬剤を尻の穴にまで塗られるのは怖くないの?」
「ううっ……。や、やめて……」
沙那はその言葉で薬剤の痒みにのたうち回る自分を想像した。
気の狂いそうな恥辱や屈辱よりも、その恐怖がまさった。
本当に嫌だ……。
誰か助けて……。
このままでは……。
「さあ、どうするの? 尻の穴にも塗るの? それとも嫌なの?」
秋分が後ろ側から手を伸ばして瓶を沙那の顔の前にかざした。
そして、沙那の顔の前でたっぷりと液剤を指に塗った。
やや粘性のあるその小瓶の液剤は刺激臭とともにどろりとした滴り、それが嫌でも視界に入る。
その指が沙那の前から消えて、沙那の無防備なお尻の亀裂に向かってすっと移動した。
「ひいっ──。い、言うわ。ちゃんと言う。お尻は勘弁して──。お尻だけはやめて」
沙那はひきつった声をあげた。
秋分の指が肛門の入口に触れたのだ。
ひんやりとした薬剤の感触が沙那にさらに激しい悲鳴をあげさせる。
「もっと、でかい声で言うんだよ。観客の皆さんに聞こえるようにね──」
春分が大きな声をあげた。
春分の魂胆は丸わかりだ。
ここで沙那に屈辱的な言葉を口にさせて辱めたいのだ。
沙那は再びぐっと口を閉じて、眼の前の春分を睨みつけた。
最後の意地を見せて、沙那は口を再び堅くつぐんだ。
「……ほ、本当にいまいましい頑固者だよ。こういう気の強い女はとことん打ちのめさないと駄目なんだ──。秋分、構うことないよ。残りの薬剤を全部塗ってしまいな」
春分がむっとした顔で言った。
沙那の心に恐怖が走る。
「わ、わかった──。言う。言うから……。お尻はもうやめて──」
沙那は慌てて叫んだ。
薬剤はまだかなりの分量が残っていたと思う。
その量の全部をお尻に塗りこめられたら堪らない。
「きれいな言葉を使うんじゃないよ、沙那──。けつの穴と言いな。店中に響き渡る声でね──。さもないと、全部塗るよ」
今度は秋分が沙那の背後から怒鳴った。
沙那は宙吊りの拳をぐっと握る。
「け、けつの穴よ──。けつの穴には塗らないで──」
沙那は力の限り叫んだ。
店中が爆笑に包まれる。
自分の眼からつっと悔し涙が流れるのがわかった。
「もう一度──」
「け、けつの穴に塗るのは勘忍してください」
「どこって?」
春分も沙那の前側からからかうように言った。
「けつです。けつの穴です」
「誰のどこって? もう一度よ」
秋分だ。
「沙那のけつの穴です──。そこだけは許してくださいい」
とにかく絶叫した。
沙那が春分たちに命じられて汚い言葉を強要されるたびに、亜人たちがどっと笑う。
恥辱で血が沸騰しそうだったが、それでも、一縷の望みにかけて春分たちに強要されるままの言葉を叫び続けた。
「わかったわ……。じゃあ、残り全部塗ってあげな、秋分」
やがて、すっかりと溜飲が下がった表情の春分が言った。
秋分がすぐに指を沙那の後ろの穴に根元まで突っ込み敏感な肉襞に薬剤を擦り込みだす。
「ひ、卑怯者──」
沙那は泣き叫んだ。
秋分が執拗に薬剤を新たに液剤をすくっては、沙那の尻の穴に入れていく。
そのたびに沙那は呻き泣いた。
そして、身体を悶え振ることで、全身にびっしょりの汗を辺りに散らした。
「あんたって、責められると強気の顔が一変して、途端に淫乱な表情に変わるのよね……。それがおもしろいわあ……」
春分が暴れ回る沙那の身体を前側から押さえつけながら言った。
両手を天井から吊られて、膝を金属の棒で拘束されている沙那は、それでもうほとんど動くこともできなくなる。
それに、いまだに手足の霊具の革帯は沙那の四肢から筋力をすっかりと奪っている。
沙那の身体を押さえている春分が、沙那の顔に舌を伸ばして流れていた涙を舐め始めた。
自分の感情の昂ぶりで流れた涙まで彼女たちの嗜虐の対象になることで、自分の感情までも弄ばれる気持ちになった。その屈辱に沙那もだんだんと自分を制御できなくなる。
やがて、怖れていたものがついにやってきた。
「か、痒い──」
沙那は絶叫すると狂ったように身体を振りたてた。
春分と秋分が沙那から離れた。
そして、勝ち誇った表情で沙那の左右の斜め前に立つ。
「痒いのね、沙那──。でも、あんたの手は上に吊られていて、脚は膝の鉄棒に拘束されていて閉じることさえできない……。ふふふ……じゃあ、どうする?」
春分が笑った。
「ね、ねえ、な、生意気言ったことは謝るわ。だ、だから、許して──。あ、ああ……もう、これだけ辱めれば十分じゃないの……あぐうっ……か、痒い……あ、ああ……」
沙那は叫んだ。
「なにが十分よ。あんたみたいな気の強い女はまだまだ責めが足りないわ。耐えきれないとわかると態度を一変して急に下手にでるなんて、魂胆は見え見えよ。だから、口先ではなく心の底から屈服するまで嗜虐を続けるわ。あたしたちに許された時間は十日よ。その十日で、心の底から屈服させてあげるわ、沙那──」
春分が笑いながら言った。
しかし、もう沙那はそれ以上反駁する気持ちになれなかった。
それよりも局部から沸き起こる痒みはもうのっぴきならないものになっている。
「あ、ああ……か、痒い、痒い──」
痛みにも似た痒みが襲いかかってくる。
一気に全身に脂汗が噴きあがる。沙那は身体を激しく左右によじった。
歯を噛みしめようとしてもあまりの痒さに口が開いて、吐息混じりの悲鳴が漏れ出てくる。
数刻の焦らし責めに耐えた身体に加わった新たな痒み責めは、沙那の限界を超えた苛酷な苦痛になっている。
「も、もうなんでもする。なんでも言う──。だ、だから、か、痒みをなんとかして……あはあああっ──」
耐えられない痒みはどんどんと拡大する。
もう、一瞬も耐えられるものではない。
ここは屈服すべきだ──。
もう、意地はどうでもいい──。
いかせてくれと叫べと言うならすぐに言う──。
それよりも、こんなもの我慢できるわけがない……。
得るもののない沙那の意地など、この猛烈な痒みには考慮すべきようなものではない。
「い、いかせて──いかせてください──」
沙那は必死になって身体を振って叫んだ。
もう股間の痒みは猶予のないものになっている。
このまま放置されたら間違いなく狂う──。
「いったい、なにを言ってんのよ、沙那──。それはもう終わったのよ──。いかせてやってもいいけど、今度はいったところで痒みは消えはしないわよ──。まあ、でもちょっとだけ痒みが消えるけどね……。でも、すぐに痒みがぶり返すのよ。それこそ、これを塗られたらどんな淑女でも人前で死ぬまで自慰を続けるわ。でも、あんたは、両手を拘束されていて自慰もできない……。さっきまで、あたしたちをあんなに手こずらせた罰よ。そこで狂うまでそうしてなさい」
春分が笑った。
痒い──。
沙那は狂ったように身体を振った。
こんなことなら意地など張り続けるんじゃなかった。
さっさと屈服したふりをして、こんな馬鹿げた見世物から解放されることを考えればよかった。
「そ、そんな──。謝る……。な、生意気だったのは謝りますから──。こ、これは酷いわ──。解毒剤を──。解毒剤を塗って──。ひううっ──」
沙那は全身を激しく悶え狂わせて絶叫した。
もう恥も外聞もどうでもいいのだ。
それよりも、この痒みの拷問からなんとかして解放されたい──。
この世のものとは思えない痒さだ。
身体の芯まで届くような痒みは、一瞬ごとに沙那の気力をどんどん削り取っていく。
「痒い──許して──か、痒い──ああっ──」
沙那は呻き、そして、喚き散らした。
沙那の慟哭と乱れの激しさが大きくなることで、酔客たちは悦び始めたが、もはや沙那にとっては、観客に嘲笑される屈辱などは些細なことだった。
それよりもこの痒みをどうにかして欲しい。
とにかく沙那は拘束されている身体を力の限り動かし続けた。
そうでもなければ頭がおかしくなってしまいそうなのだ。
「ねえ、沙那、痒みを癒して欲しいの? それとも、まだ頑張り続けるつもり? 癒して欲しかったら、春分姉さんにお願いするのよ……」
秋分が腰を振り立てている沙那の股間の前に屈んだ。
そして、真っ赤に充血しているに違いない沙那の肉芽に思い切り息を吹きかけた。
沙那はそれだけの刺激で悶え泣いた。
「お、お願いします……。な、なんでもしますから……。か、痒みを癒してください──」
沙那は悲痛な思いで叫んだ。
こうなってしまったら、もう相手の気紛れにすがるしかないことを沙那は知っている。
意地を張ったり、頑な態度を示したりしたら、それこそいつまでも放置されるだけだ。
できるだけ哀れに泣き叫び、相手の溜飲が下がるのを願うしかない。
それが痒み責めという嗜虐への対処だ。
「もう、あたしたちは手は貸さないわ。その代わり、自分の手でしなさい……。これだけの客の前でね」
春分と秋分は、これまでずっとつけていた股間の張形を革の下着から外した。
どうやら取り付け自在になっていたようだ。
そして、指を沙那の前で鳴らした。
するといままで天井から伸びた鎖に密着して離れなかった沙那の右手首の革帯が鎖から外れて自由になった。
はっとした。
まだ左手と膝は拘束されているが、とりあえず右手が自由になったのだ。
沙那の右手はほとんど無意識のうちに股間に向かっていた。
「……でも、これだけの客の前で自慰をするような恥ずかしいまねが、お前のような気の強い女にできるかい?」
秋分が言った。
その言葉でいままさに股間を自分で弄くるつもりだった沙那の手がとまった。
沙那の中に残っていた人としての最後の尊厳が、人前で自慰をするという恥知らずの行為を押しとどめたのだ。
沙那はぐっと右手を握った。