47 奪われた絶頂
「お前には、
焚火の反対側にいる
夜だった……。
そんな気がした──。
旅を初めて最初の日──。
眼の前の宝玄仙の命令で『縛心術』という術を遣い、調子の乗って沙那と孫空女に快楽責めをした。だから、あのふたりは朱姫の苦悩を助けてくれるわけがない。
そもそも、朱姫は半妖だ。
人間族と妖魔族の合いの子……。
呪われた子……。
誰からも受け入れられることはない……。
「……はあ……。も……もう……一匹……」
朱姫は吐息とともに答えた。自分の口からいやらしい声が混じるのがわかる。
朱姫は立膝の脚を抱く自分の腕に力を入れた。
このところ、毎夜のように受けている「調教」という性的拷問だ。
情欲の暴流に支配されている朱姫を宝玄仙は愉悦いっぱいの表情で眺めている。
「どんな使徒だい?」
「も、もう勘忍してください……。はああ……」
朱姫は言った。
「なにを勘弁するんだい、朱姫? なんにもしていないのに……」
宝玄仙は愉しそうに言った。
そう……。
宝玄仙はなにもしない。そのなにもしないというのが、いま朱姫が受け続けている「調教」だ。
この天教の法師の旅の供になって十日──。
朱姫は、毎食毎食ずっと食事とともに媚薬を飲まされていた。
最初はそれほど強烈な薬ではないのでわからなかった。
夜ごとに身体に戸惑いと苦痛を感じていただけだ。
わけもわからず疼く身体──。
そして、宝玄仙が、朱姫だけを除け者にして、沙那や孫空女を苛む光景を毎夜見させられる淫靡な光景……。
ほかの三人が寝静まった後で密かに自慰に耽ることが朱姫の習慣になるのにそれほど長い時間はかからなかった。
朱姫自身が「焦らし責め」にかけられているということには、さすがに気がつく。
だが、耐えられると思っていた。
しかし、そんな生やさしいものではないことはすぐにわかった。
全身がとろ火のような淫情の熱で犯されように疼き、四六時中淫靡なことした思考できないようになっていくと、朱姫はなんとかその火照りを夜中にこっそりと行う自慰で紛らわせるようになった。
そして、五日前──。
今夜のように野宿をしていたその日──。
朱姫が布を口に咥えながら自慰に耽っていたとき、朱姫はじっと自分に視線を向けている宝玄仙に気がついたのだ。
赤面して硬直してしまった朱姫は、宝玄仙の強い視線に動けなくなってしまった。
もしかしたら、そのときも、なにかの道術をかけられたのかもしれない。
そのとき、宝玄仙は、朱姫の首に手を伸ばすとなにかを首に巻いた。
その場ではなにが巻かれたのかわからなかったが、後で茶色の細い革紐を巻かれたのだとわかった。そして、首輪の後ろの部分には小さな宝石が嵌められているようだ。
それが朱姫の調教用の霊具であり、その効果がわかったのはすぐだった。
朱姫は、少しのあいだ、躊躇っていたが、やっぱり自分の股間に手をやってしまうのを止めることができなかった。
しかし、なにも感じないのだ。
触ってもまるでなにも感じない。どんなに刺激しても朱姫の指は、朱姫の身体になんの反応も与えてはくれなくなっていたのだ。
すぐにそれが首に巻かれた霊具のせいだとわかった。外そうとしたが、宝玄仙の装着した霊具はどうしても外せなかった。
宝玄仙によれば、その首輪は自慰を禁止する首輪らしい。
他人に触れられれば、普通に感じることはできるが、自慰に限ってはなにも感じることができなくなる首輪なのだそうだ。
それから朱姫の性の地獄が始まった。
翌朝から食事とともに必ず与えられる媚薬が強いものに替えられたようなのだ。
そして、はっきりと食事にも水にも媚薬が含まれていると教えられた。
どういう仕掛けになっているのかわからないが朱姫が口にするものを、霊力により媚薬の性能が含まれるものに替えているのだ。
それにより身体はどうしようもなくどんどん熱くなっていく。
しかし、自慰という手段でそれを癒すことはできない。
宝玄仙は沙那と孫空女に朱姫を慰めることも禁止した。天教教団のこの巫女に絶対服従しているふたりが命令に逆らうことはない。
朱姫は媚薬により発情させられた身体のまま、宝玄仙にしか股間を触れられてない。
そして、宝玄仙はそう簡単に朱姫の溜まった快感を解放してくれないのだ。
「その首の紐を外して欲しいかい、朱姫……?」
焚火の向こうの宝玄仙が微笑んだ。
「は、はい……」
「もしも、外したらなにをするつもりなんだい?」
宝玄仙はにやりと微笑む。
朱姫は思わず自分の股間に伸ばしそうになる手を懸命に自制する。
「やってごらんよ……自慰を……」
まるで操られているように朱姫の手が動く。
この巫女の供になる前は朱姫はいつも男のような姿をしていたが、いまは逆に女の格好しかしていない。
朱姫は
そして、股間を愛撫する。
一番、敏感な部分を触っているはずなのに、なにも感じることができない。
「もう……ゆ、許してください、ご主人様……」
朱姫は自分の言葉に泣き声が混ざっているのがわかった。
もう、朱姫の心も身体も暴れ回る欲情でおかしくなっている。この首輪をしている限り、朱姫の淫情を解放できるのは宝玄仙の指だけなのだ。
「触って欲しいのかい、朱姫?」
「触って……。触って欲しいです──」
「そんなにつらいのかい、朱姫?」
「は、はい……」
「いいよ……。おいで……」
朱姫は焚火を回って、椅子代わりの小さな石に座っている宝玄仙の前に立った。
「足を開いて、下袍をまくりな」
言われた通りにする。
下着を着けさせてもらっていない朱姫の股間が露わになる。
これからなにが始まるのか朱姫はよくわかっている。
この五日間、ずっとこれをやらされていたのだ。
最初は性器を露出させるという行為に抵抗があったが、首に霊具を巻かれてから五日間、夜になるたびに、あるいは、出発前、そして、道中の休憩のたびにやっているこの行為について、いまは焦燥感が解放されることへの渇望しかない。
「ふ、ふ、ふ……。凄いわね……。こんなになっているんだ……」
自分でもむっとするような淫靡な匂いが股間から湧いてくる。視線をそこに落とさなくても愛液にまみれる自分の股間がわかる。
朱姫は羞恥に唇を噛む。
「わかっているね……」
宝玄仙の指が朱姫の肉芽の寸前で止まる。
「わ、わかっています、ご主人様……」
「じゃあ、いつものように言ってごらん、朱姫」
「あ、あたしは、決して声を出しません……。腰も動かしません……。ああ……。お願いです、ご主人様──。もう、我慢できないんです──」
「まだだよ……。それだけじゃないだろう?」
宝玄仙の指は朱姫の肉芽の寸前で止まったままぴくりとも動かない。
朱姫は、もう腰を屈めて、その指に股間を擦りつけてしまいたい衝動を耐える。
そんな勝手なことをすれば、この焦燥感を発散できる機会は二度と来ないかもしれない……。
「も、もしも、あたしがいやらしく声を出したり、はしたなく腰を動かしたら……ば、罰として、あたしに対するお情けは中止してください……」
朱姫は涙声で言った。五日間、その条件で何度も挑戦させられた。一度も耐えられたことはない。
必ずどこかで中断される。つまり、耐えて耐えてどうしようもなくなるまで耐え、そして、それが限界を越えて、声を出すか腰を動かしてしまうのだ。それで止められる。発散することのできなかった淫情だけが朱姫の身体に取り残される。
そして、次の機会は数刻待たなければやってこないのだ。
「わかったよ、朱姫」
宝玄仙の指が朱姫の淫豆を撫ぜた。
強烈な刺激が全身を貫く。
口からほとばしりそうになる嬌声をかろうじて抑えた。
「やって欲しいことを言いな、朱姫……」
宝玄仙の指は止まる。
意地の悪い宝玄仙は、いつもどうやって愛撫してもらいたいかを朱姫に言わせる。
言わないと愛撫はしてもらえない。
朱姫は口を開く。
だが、そうすると歯を食い縛れないので声を我慢できないのだ……。
半妖の朱姫はたった十日の宝玄仙との旅で淫乱な肉体と精神に替えられようとしている。
「そこを……」
「そことはどこだい?」
「さ、さっき触ったところです……」
「教えた言葉でいいな、朱姫」
「あ、あたしの……肉芽をくりくりと動かして……」
朱姫が言い終わる前に肉芽が宝玄仙によって回された。
「あひいっ」
言葉を最後まで言ってから動かされると思っていた。
前回まではそうだったのだ。油断をしていた朱姫は思わず声を出してしまった。
そして、はっとなる。
「も、もう一度――。もう一度、機会を――」
「駄目だよ。次の機会は明日の朝だね……。それよりも、なぜできないか考えたかい?」
「そんなこと……」
朱姫は泣きそうな顔を横に振った。
「お前が淫乱だからだよ……。言ってみな……。自分が淫乱だね」
「あ、あたしは淫乱です……。だ、だから、ご主人様のいいつけに従えない……。お、お願いです。も、もう一度、お情けを……」
この身体をどうにかして欲しい。
「明日の朝だよ」
「お、お情けを……」
朱姫はその場にうずくまった。股間に手をやる。やっぱりなにも感じない。身体中が熱い。疼いて疼いて仕方がないのだ。
「仕方ないねえ……。じゃあ、そうやって自分の股間を擦りながら『朱姫は淫乱だ』と百回言ってごらん──。百回言えば、その魔具はお前の手の刺激を股間に伝えることを許してくれるよ──」
宝玄仙が大笑いした。
朱姫に選択の余地はない。
この気紛れの宝玄仙がやっと与えてくれた慈悲だ。
朱姫はすぐに股間に手をやった。
「朱姫は淫乱だ……。朱姫は淫乱だ……。朱姫は淫乱だ……」
自分は淫乱だと言いながら、下袍の上から股間を指で愛撫する。
「誰が服の上から擦れと言ったんだい──? 淫乱なら淫乱らしく、下袍をまくりあげて直接触るんだよ」
朱姫は跪いたまま、片手で下袍をまくり、もう一方の手で股間の陰核を擦った。
なにも感じない……。
これだけ淫情の炎に焼けるように熱い身体なのに、全身のどこに触れてもそれを解放させてはくれない。
それに、なんという浅ましい姿なのだろう──。
恥ずかしい──。
だが、この身体の苦しみから解放されるなら……。
「朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……」
同じ言葉を繰り返しながら、ひたすらなにも感じない股間を刺激する。
「はっはっはっ、浅ましいねえ……。とにかく続けな。お前には苛められて悦ぶ性癖は小さいようだけど、この宝玄仙にかかれば、ちゃんとそんな体質にかえてやるよ。とにかく、その調子で続けな。そのうちに、いいこともあるさ」
宝玄仙が訳のわからないことを言って大笑いした。
とにかく、やめられない。
「……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……朱姫は淫乱だ……」
もう何十回目か、わからない。
だが、ある瞬間、凄まじい快感が沸き起こった。
「……ひいいいっ──」
待ちに待った快感だ。朱姫は狂ったように肉芽を動かす自分の手を早めた。だが、たったの一回だけで終わってしまった。
もう、なにも感じることができない。
「こ、こんなひどい……。たったの一回だなんて……。ご、ご主人様」
「お前の頭がおかしくならないように、『朱姫は淫乱だ』と呟きながら擦れば、百回に一回はちゃんと感じられるようにしてやったよ……。身体が火照って眠れないなら一晩中擦ってな。そのうち、いけるかもしれないよ」
「そ、そんな──。やっぱり、お情けを……」
百回ごとにたったの一回など、絶対にいくことなどできない。却って苦しくなるだけだということくらいわかる。
「駄目だよ。明日の朝のお情けは沙那と孫空女の前でだよ。さっきと同じ条件でね。今度こそ、最後までいけるといいね。一晩中、擦り続けて少しは溜まりきった快楽を発散させておけば、次は感じすぎないですむかもしれないよ……。それにしても、いい顔になってきたじゃないかい。さすがの半妖も、この宝玄仙の責めにかかれば、こんなものさ。とにかく、行きな──。もう終わりだ」
宝玄仙が高笑いした。
「ああ……」
朱姫は絶望に視界が暗くなるのを感じた。
身体はどろどろに溶けてしまうのかと思うくらい熱かった……。
宝玄仙の前にひれ伏して哀願したが突き飛ばされた。
さっさと寝ろと促されて仕方なく横になる。
百回に一回など……。
それが朱姫をもっと追い詰めるための仕打ちだということはわかっている。
自慰をしてはいけない。
自慰をすれば百回に一回の刺激を求めて、自分は一晩中股間を擦り続けるだろう。
それこそ本当の淫乱になってしまう。
朱姫は淫乱だ……。朱姫は淫乱だ……。
しかし、知らず朱姫は、そう口の中で呟きながら股間に手をやっていた。
*
最初は、朱姫は発狂したのだと思った。
なにしろ食器や鍋を洗って戻ってきたら、朱姫が地面の上に寝ていて、自分は淫乱だとすすり泣きをしながら言い続け、ひたすら自慰をしているのだ。
宝玄仙の霊具のためにどんなに自慰をしても決して感じなくされているのは知っていた。
朱姫をその霊具をはめさせながら、さらに宝玄仙は朱姫の口にするものすべてに、宝玄仙は道術で媚薬を混ぜていると言っていた。
なんという追い詰め方なのだと、沙那も鼻白んだ。
朱姫に関わっているあいだは、宝玄仙の嗜虐趣味が沙那や孫空女に回ってこないのはいいのだが、宝玄仙の朱姫に対する責めは少々、常軌を逸しているようにも思う。
半妖である朱姫には内丹印もなしで宝玄仙は道術が通じる。
だから、媚薬については宝玄仙が朱姫の口に道術をかけているのだと沙那は思っていた。
媚薬が急に効果的に作用し始めたのは、首の霊具が関係しているのかもしれない。
それにしても、眼の前の朱姫の姿はなんだろう?
ついに、おかしくなってしまったのだろうか……。
あまりの朱姫の異常さに声をかけられないでいた。
だが、やがて朱姫の身体がびくりと跳ねた。甘い呻き声を朱姫があげたのだ。
そして、再び狂ったような自慰と自分が淫乱だという呟き……。
やっと沙那は、宝玄仙が朱姫になにをしたのかわかった。
おそらく何十回か自慰により股間をこすり続ければ、一回くらいは感じることができるように細工を変えたのだろう。
だが、あまりにも残酷な仕打ちに、沙那はぞっとした。
朱姫が、この数日ほとんど一睡もしていないのは知っている。眠れないのだ。
媚薬を与え続けられて火照りきった身体が眠ることを拒否している。
そして、この新しい淫靡な仕掛け。
数十回に一回の刺激を求めて、朱姫は自分の股間を擦り続けいている。そっと覗くが、眼が常軌を逸している。
孫空女と眼で合図をし、朱姫をそのままにしておいた。
自分は淫乱だと呟き続けている朱姫は、もう、沙那のことも孫空女のことも気にならないようだ。
孫空女とふたりで寝支度をした。
野宿をするときは宝玄仙用に厚めの敷布を二枚置く。
そして、特別なマントを掛布代わりに置き、さらに上に毛布を置く。
宝玄仙はその中に横になるのだが、大抵は寝る前に、沙那と孫空女に宝玄仙の相手をさせる。
宝玄仙の狂った欲望を満足させるためだ──。
嗜虐の性癖を持つ宝玄仙は、自分の「奴隷」たちが羞恥と屈辱にまみれる姿を見ることで性的欲望を満足させる。
稀に自分の股間に肉棒を生やして、沙那や孫空女を犯すこともあるし、宝玄仙の女自身をふたりに舐めさせたりすることもある。
しかし、それは、あくまでも沙那や孫空女を辱める手段であり、宝玄仙が愉悦に浸って恍惚の境地になるには、宝玄仙自身の肉体的な絶頂は必要ではないのだ。
宝玄仙が求めるのは精神的な絶頂であり、それは、彼女の「玩具」たちが求めぬ肉欲に溺れる姿に興じるのを観ることなのだ。
この夜は、宝玄仙は沙那にも孫空女にはなにも求めず、そのまま寝入ってしまった。
つまり、朱姫に与えた仕打ちで彼女の嗜虐心は満足されたのだ。
しかし、そのため朱姫は淫靡な拷問により、精神がおかしくなりかけている。
朱姫は、一日に三回か四回──。
宝玄仙の陰湿なやり方でいたぶられている。
=朱姫が媚薬により高まった性感を解放できる機会はそれだけなのだ。
しかし、それは、朱姫が嬌声もあげず、身体を身動きせずに絶頂に達するという条件があるのだ。それができなければ、容赦なく宝玄仙は朱姫への愛撫を中断する。
もう、限界だろう……。
宝玄仙は、どちらかというと嗜虐癖のある朱姫を被虐に染め変えるのだと大張り切りなのだが、もうやり過ぎだ。
あれだけ焦らしに焦らせた身体で、愛撫に耐えて声も身体も動かさないことなど、朱姫にできるとは思わない。
そして、達することのできない渇望はどんどん朱姫を追いつめて、彼女の身体を極限まで敏感にしている。
あれでは朱姫は永遠に達することなどできない。
そしていま──。
何十回も股間を擦る続け、やっと与えられるたった一度ののわずかな快感を求めて、朱姫は狂ったように股間を擦っている。
自分が苦しくなるだけなのがわかっていても、朱姫は朝まであのまま股間を愛撫し続けるだろう。
沙那は、自分の身体を「朱姫は淫乱です」と啜り泣きながら自慰の仕草を続ける朱姫の背中に寄せた。
びくりと跳ね上がる小さな半妖の身体──。沙那はそれを抱きしめる。
「静かにして、朱姫……。ご主人様は寝ているわ」
朱姫の耳元でささやいた。沙那の腕の中で朱姫が大人しくなる。
焚火の反対側では三枚の野外用毛布とマントに挟まれた宝玄仙が寝ている。
それに対して、沙那と孫空女と朱姫の三人は一枚の毛布を横にして並んで寝ていた。
宝玄仙の作った結界の中にいるので、四人が同時に休んでも問題はない。盗賊や獣に襲われる心配はまずないのだ。
「布を噛んで、朱姫……」
沙那は小さな布を朱姫の口に咥えさせた。
反対側を向いて横になっていた孫空女が身体を反転させて真ん中に寝ている朱姫に身体を向ける。朱姫は、背中から沙那前から孫空女の両方から抱かれるような格好になった。
「大丈夫、沙那……。あたしも気配を探っているよ……。ご主人様は確かに寝ている……」
孫空女も同じ気持ちのようだ。
宝玄仙から朱姫が受けている仕打ちはあまりにも可哀そうだ。
朱姫が沙那の腕の中で微かに身体を震わせる。
それでも朱姫の手は自分の股間に触れ、いやらしく指を動かし続けたままだ。
感じることのない刺激を求めて狂ったように自慰に耽っている。
もう、自制が効かないのだろう。
沙那は朱姫の手を彼女の股間から離して、沙那の手を朱姫の股間に滑らせる。
「んんんっ」
朱姫の身体が跳ねた。
「静かにして……。ご主人様が起きてしまうわ」
朱姫が沙那の腕の中で動きを止める。
沙那は朱姫の股間から肉芽を探り当てて、それをを優しく撫ぜた。
勃起した少女の陰核は彼女自身の愛液によりどっぷりと濡れている。煮えたぎったように朱姫の陰部は熱かった。
朱姫の身体が小刻みに痙攣を始める。
彼女の身体に彼女が何日も渇望していた絶頂が訪れようとしているのがわかる。
沙那は朱姫の股間を愛撫しながら、彼女の首に巻かれている革紐にある宝石に視線を向けた。
それが気になった。
あの変態巫女の霊具が一筋縄でいかないことは、沙那が身体で知っている。
首の後ろ側になる革紐の宝石は、朱姫の髪によってあまり見えないのだが、ちらりちらちと見えるたびに青色に光っていた。
朱姫の首の霊具は朱姫自身の自慰による刺激を無効にするだけではなく、この宝石の色がなんらかの意味を持っているには違いない。
だが、いまは朱姫のことだ。
彼女を苦しめているものから、なんとかして解放してあげたい。
朱姫の身体が弓なりになって大きく震えた。
これで朱姫は達することができたはずだ。
だが、様子がおかしい。
布を噛んだ口は、まだなにかを求めて愛らしい呻き声をあげているし、おこりのような震えは止まず、むしろひどくなっている。
「……沙那、朱姫──。ご主人様が……」
孫空女の警告──。
沙那は、さっと朱姫の股間から手を放した。
朱姫はまだ苦しそうだ。
鼻息が荒い。
そして、激しい震え。
「だ、駄目よ、朱姫──。静かにして」
沙那は焦った。
「言いつけに背いて朱姫に触ったね、沙那……」
背中から冷たい宝玄仙の声がかけられた。
沙那の全身に冷たい汗が流れる。
「ご、ご主人様……」
沙那は振り返ることができないでいた。
宝玄仙の声には、面白がるような響きがある。だが、逆らえない。
「こっちにおいで、沙那……」
「は、はい」
沙那は、仕方なく宝玄仙の前に立った。
「罰を受けるための格好になりな、沙那」
「はい……」
宝玄仙は毛布の上に胡坐で座り直している。
そして、小さくなっている焚火に向かって指を伸ばす。消えかけていた焚火の炎が大きくなる。
沙那はその炎に照らされながら服を次々に脱いで足元に置いた。
一糸まとわぬ姿になりその裸身を宝玄仙に晒す。
それが、宝玄仙に罰を与えられるときの格好なのだ。
「両手を首の後ろに回して、その恰好のまま膝を下げな」
手を頭の後ろで組み、腰をいいと言われるまで下げる。両腿が水平になったところで停止を命じられた。がに股に開いた沙那の膝の上に、宝玄仙は杖を載せた。
「この杖を落とすんじゃないよ。手も放すんじゃない。もしも、その姿勢を崩したり、杖を落としたりしたら、明日は三人とも欲情させたまま素っ裸で歩かせるよ」
やると言ったら絶対にこの変態巫女は実行する。沙那は苦しい姿勢を保つためにぐっと力を入れる。
以前だって、本当に宝玄仙に、素っ裸で歩かされた。
「さて、沙那……。お前が愛撫して絶頂を与えてやったはずの朱姫が、なんでまだ苦悩に呻いているのかわかるかい……?」
「い、いいえ……」
首を横に振る。
背中からまだ悶え続ける朱姫の声が聞こえる。
「あの霊具の機能は自慰による快楽を感じなくさせてしまうだけじゃないんだ……。朱姫の首の紐についている宝石の色によって、外から与えられる刺激や道術に対する効果が変化する。いまは何色だった?」
「た、確か、青です……」
無理な姿勢を強要されて、だんだんとつらくなる。膝の上の杖を落としたらいけない。
それだけを集中する。
「青の光とときには、自慰を感じないばかりでなく、他人に股間を擦られても朱姫は絶対に絶頂に達することはできない。そして、外からの刺激や道力をひたすら繰り返す。つまり、いまは、お前が与えた刺激をひたすら繰り返しているということさ。朱姫は、お前によって、絶頂するはずの快楽を与えられた。しかし、霊具の力でそれを寸前で止められ、元に戻されている。だから、朱姫はお前に刺激を与えられたときから絶頂寸前に至るまでの過程をひたすら繰り返している状態なんだよ」
「な、なんてことを……」
沙那は呻いた。
沙那が朱姫の苦痛を癒してあげたいと思った行為は、どうやら、もっとひどい状態に朱姫を追い込んでしまったようだ。
「なんとかしてあげるわけにはいきませんか、ご主人様……。もう可哀想ですよ」
「他人のことよりも自分のことを心配しな、沙那」
宝玄仙が立ちあがって沙那の下腹部の臍の下付近を指で軽くついた。
次の瞬間、猛烈な尿意が沙那を襲った。
「あんっ」
不自由な姿勢でいる沙那は、思わず腰を揺らしそうになり、懸命に耐える。
「許可なく小便を洩らしたりしたら、やっぱり欲情したまま全裸行進だよ」
「ああ、許して……、ご、ご主人様……」
沙那は宝玄仙の魔力により、猛烈に高まった尿意の猛威に歯を食い縛る。
苦しい──。苦しい、苦しい。
魔力による尿意があっという間に限界に迫る。
股間を締め付ける筋肉に力を込める。
「さて、罰を与える必要のある者がもうひとりいるね……。孫空女、こっちに来な──」
後ろで毛布から人が外に出る気配がする。
「孫空女は、沙那の股の下に寝そべりな。ちょうど、沙那の股間の真下に顔がいくようにね」
「そ、そんな、ご主人様──」
命令された孫空女よりも、沙那が悲鳴に近い抗議をあげてしまった。
「動くんじゃないよ、沙那──。お仕置きを追加されたいかい?」
宝玄仙が怒鳴った。
「言われたとおりにするよ、ご主人様……。ご免よ、沙那、恥ずかしいだろうけど……」
孫空女がそう言いながら、沙那の股の間に上を向いて寝そべる。さすがに、羞恥に沙那は震える。
宝玄仙は、那の膝の上に載せていた杖を取り上げた。だが、姿勢を崩していいという許可はないので、沙那はまだ同じ姿勢でいた。
「孫空女、沙那がいまどんな気分かはわかるだろう……?」
「ああ……。だけど、これなに?」
沙那の股の下の孫空女が言う。確かに、宝玄仙は沙那と孫空女になにをさせようというのだろう?
「沙那──」
「は、はい、ご主人様」
「おしっこがしたいだろう……?」
「い、いえ……」
本当はしたい。
道術により高められた尿意は普通の尿意ではない。
もう崩壊寸前だ。鍛えられている筋肉でかろうじて耐えているというところだ。身体は、不自然な姿勢で痙攣を始めた筋肉の震えとは違う理由により小刻みな痙攣を繰り返す。
全身は尿意に耐える脂汗にまみれている。
「していいよ……。ただし、孫空女の口の中にね」
「なっ?」
「ええっ」
沙那と孫空女は同時に叫んだ。沙那は俄かには信じられない宝玄仙の言葉に恐怖した。
「孫空女、一滴残らず飲み干せたら、ふたりへの罰はそれで許してやる。それから、朱姫の身体を癒してもやろう」
宝玄仙の冷たい宣告がなされた。その口調から、沙那は宝玄仙が絶対に言葉を翻す気がないことを知った。
「わかったよ、ご主人様……」
沙那の股の下に顔を置いている孫空女が言った。
「そ、孫女?」
沙那は孫空女を見下ろす。
孫空女は、蒼い顔だがやや引きつる微笑みを浮かべている。
「い、嫌かもしれないけど……あたしの口にして、沙那……」
「孫女……」
それしか言うことができなかった。
「き、汚いことも恥ずかしいことも……沙那と一緒なら……」
「ごめんね、孫女……」
沙那は腰を落として股間を孫空女の顔に近づけていく。
「も、もうちょっと下に……」
「う、うん」
沙那はさらに腰を落とした。孫空女の息が股間に感じるくらいになった。
「い、いいよ……」
股のすぐ下で孫空女の口が大きく開かれたのがわかった。
沙那は股間を絞めつけていた力を少しずつ緩めていった。