亜人の腕が孫空女の腰に伸びる。
孫空女はとっさに避けた。
しかし、脚をとられてよろけてしまった。
すると、いきなり太い腕が顔面に向かってきた。
意識するよりも速く、身体が反応していた。
孫空女は膝を割って身体を沈めた。
孫空女の頭のすれすれの位置を亜人の腕が通過していくのがわかった。
それにしてもなんという腕だ……。
腕の太さだけで孫空女の太腿の二倍もありそうだ。
亜人の背丈は孫空女よりもかなり大きい。
しかし、背丈よりも驚くべきはびっくりするほどに隆々の手足の筋肉だ。
かなり力も強そうだ。
普段の孫空女ならともかく、筋肉を弛緩させる霊具を装着されている状態では、一度捕まったら逃げられないだろう。
しかし、全力のこもった腕が空を切ったことでその亜人の体勢が崩れた。
そのまま腕を取って投げ飛ばすこともできそうだったが、孫空女の両手首は、さっき火箭の道術で後手に拘束されたままだ。
仕方なく、孫空女は、とりあえず身体をかわして距離をとるために数歩横に跳んだ。
だが、その瞬間、下半身から力が消えて腰が砕けてしまった。
数瞬前に激しく達したばかりの孫空女の身体は、自分でも信じられないくらいに脱力感に覆われていたようだ。
身体の踏ん張りがきかずに孫空女はそのまま膝から落ちるように横倒しになってしまった。
しかも、倒れることで乳房が揺れて、まるでくすぐられるような疼きがそこから沸き起こった。
なんという途方もない効き目の媚薬だろうか。
全身が熱く火照っている……。
汗はどんどんと噴き出してくるし、身体が痺れて力が抜けていく。
なにも刺激されていないのに乳首も肉芽も完全な勃起状態のようだ。
動くだけでその振動が孫空女に泣きたくなるような愉悦を迸らせる。
さらに股間からは汗とは違う孫空女の分泌液がどんどんと滲み出てもくる。
孫空女はたったいまの動きだけで、すでに荒い息遣いをするほどに淫情に追い詰められてしまっていた。
試合場の外から大歓声があがった。
顔をあげると、勢い余って体勢を崩した亜人が、身体を反転させて孫空女に向き直っているところだった。
そのまま、孫空女の裸身に覆いかぶさろうと降りかかって来る。
亜人は横になったままの孫空女に飛びかかってきた。
孫空女の眼には、上半身が裸の亜人が孫空女の裸身の真上に落ちてくるのをはっきりと見えていた。
動きは見えるのだ。
本当であれば、こんな亜人を倒すのに一発もあればいい。
相手の亜人は筋肉ばかりが発達して動きは鈍い。
孫空女の眼には、ゆっくりと動いているようにしか見えず、まるで人形のようなものだ。
だが、身体が動かないのだ。
ぎりぎりのところまで溶かされている性感が全身を蝕んでいる。
また、たったいままで孫空女は縄瘤の責めを受けていて、激しく連続絶頂をしたばかりだ。全身を犯している媚薬と激しい絶頂の余韻が孫空女から完全に抵抗の力を奪っていた。
しかも、手首と足首に巻かれた革帯で手足の筋肉を弛緩させられているのだ。
「ち、畜生──」
孫空女は必死になって身体を捻って仰向けになると、降りてくる亜人の顔の位置に合わせて両膝を立てた。
「ごぼおっ──」
ものの見事に両膝が亜人の顔面にぶち当たった。
顔面をぶつけた巨漢の亜人は全身を跳ねさせて、悲鳴をあげながら孫空女の横に転がっていった。
「手を……手を外してよ、火箭──。は、早く──」
孫空女は亜人の反対側に向かって横に転がった。
急いで起きあがりながら、試合場のすぐ外の玄魔の隣で孫空女と亜人の試合を見守っている火箭に叫んだ。
「こらっ、
だが、火箭は孫空女を無視して亜人に向かって怒鳴り声をあげた。
試合場の周囲から見物の亜人たちの野次が飛びかかる。
孫空女は舌打ちした。
こいつらは、このまま孫空女の両手を封じたまま、戦わせるつもりに違いない。
孫空女は改めて、これが試し稽古でもなければ、格闘訓練でもないことを悟った。
これは、そのかたちを借りた公開凌辱にすぎないのだ。
「ちょ、ちょろちょろと逃げ回りやがって──」
石虎という名らしい巨漢の亜人が顔を真っ赤にして襲ってきた。
さっきの孫空女の膝打ちで鼻から血を流している。
こうなったら両手を封じられたまま戦ってやる──。
孫空女は思った。
いずれにしても細かく動き回ることはやめた。
全身が痺れるように力が入らず、なにをしても腰に力が入らない。
曲線的な動きは無理だ。
孫空女は一気に距離を詰めてくる石虎に身体を真っ直ぐに向けた。
「く、来るならこい──」
孫空女は後手に拘束された身体を石虎に曝け出してやった。
「うおおおっ」
石虎が雄叫びをあげた。
そして、孫空女の胴体に両手を伸ばして体当たりをしてくる。
石虎の両手が孫空女の腰の括れた部分の両側に触る。
その顔が狂喜に歪むのが見えた。
「捕まえたぜ──」
石虎がそのまま孫空女に身体を預けてきて、石虎の全体重が孫空女に覆いかぶさる。
しかも、好色な表情を浮かべたままの顔を孫空女の乳房のあいだに埋めてきた。
押されながらも後方に向かって跳ぶ。
反り返りながら倒れる孫空女の身体が石虎の身体とともに宙に浮いた。
地響きを立てて、ふたりの身体が訓練場の地面に叩きつけられる。
「やれ──」
「犯せ──」
「石虎、いいぞ──」
一斉に大歓声があがった。
観客たちがこれから始まる孫空女の凌辱劇に期待して一気に興奮状態になる。
しかし、地面に倒れた石虎は孫空女の裸身に覆いかぶさったままぴくりとも動かない。
孫空女は、自分の乳房の上に乗っかっている石虎が完全に白目を剥いて気を失っているのを確認していた。
孫空女の裸身の上で動かない石虎を見て、周囲の見物人たちは、なにが起こったのかわからずにざわついている。
孫空女は身体を揺すって、気絶している石虎の身体を振り落とした。
そして、その場に立ちあがる。
「な、なにが起こったんだ……?」
試合場のすぐ外の火箭が目を丸くしている。
横の玄魔をはじめとして周囲の亜人の男たちが騒然としているのを見ると、どうやら、なにが起きたのかわからなかったようだ。
しかし、孫空女は特別なことをやったわけじゃない。
石虎は一度目の顔面への打突で、頭が朦朧となりかけていて完全に注意が散漫になっていた。
孫空女はその状態の石虎をあえて誘って、わざと飛びかからせたのだ。
そして、石虎が孫空女に飛びかかるとき、明らかに全裸の孫空女の身体に気を取られて完全に下半身が無防備になった。
孫空女は押し倒されるふりをしながら、思い切り石虎の睾丸に膝蹴りをしたのだ。
石虎は孫空女を押し倒すために全体重がかかったまま、地面に倒れ込んだが、それにより自分の体重とふたりの身体が地面に倒れるときの衝撃のすべての力が睾丸に叩き込まれることになったのだ。
それで石虎はひとたまりもなく気絶したというわけだ。
観客の視線が孫空女の睾丸蹴りに止まらなかったのは、すべての観客の意識がこれから始まるであろう凌辱に移ってしまったからだ。
「ご、後手を外しなよ、卑怯者──。それとも、お前ら亜人の軍は女を拘束しなければ、押し倒して犯すこともできない臆病者揃いかよ──。こうなったら、あたしは観念しているよ。だけど、お前らに少しでも戦士の誇りがあるなら、あたしを素手で倒してみな。あたしは、霊具で力さえ封じられているんだよ──」
孫空女は火箭に視線を向けたまま、全員に向かって罵った。
すると孫空女にあおられたことで、周りの亜人たちの一部から怒りの表情が覗き始めた。
「火箭殿、この生意気な人間族の女戦士の拘束を解いてやってくれ──。こうまで言われちゃあ、武辺で誇る玄魔隊の名折れだぜ」
火箭の横から声がした。
すぐに、やはり上半身が裸身の亜人の戦士が縄を潜って試合場に入ってきた。
顔はなんとなく蜥蜴を思わせる顔つきで、背の高さはさっきの石虎と同じくらいだが、異常な筋肉が手足についていて動きの遅かった石虎に比べれば、均整のとれた体格をしている。
縄を潜って試合場に入る何気ない動作から、孫空女はこの亜人がさっきの石虎に比べればずっと強いということがわかった。
「
火箭がそう言ってから指を鳴らした。
孫空女の両手がやっと背中から離れて自由になる。孫空女は片手で胸の前を覆い、もう片方を身体の前に垂らして防護する構えになった。
「これで、文句はないんだな、人間の女──?」
竜膳が孫空女を睨んだ。
「ああ、あんたは卑怯者じゃないよ……。それだけは言ってやる」
孫空女は言った。
再び歓声があがりはじめた。
「第二試合、始め──」
火箭が声をあげた。
竜膳が孫空女との距離を詰めて、片手をゆっくりと孫空女に伸ばしてきた。
孫空女は自由になった両手をいきなり自ら背中にさっと回した。
竜膳としては、両手を封じられて第一試合を戦った孫空女が、今度は自由になった両手を使ってどう戦ってくるかということを警戒していたに違いない。
それなのに、孫空女がいきなり自ら手を後ろに回したことで、竜膳は明らかに意表をつかれたようだ。
孫空女は自分に接近する竜膳の意識が、後ろに回った孫空女の両手の動きに捉われたことを確認した。
その隙は一瞬のことにすぎない。
だが、孫空女にとっては十分な一瞬だった。
すぐそばまできていた竜膳の懐で身体を屈めた。
そして、その態勢のまま力の限り跳躍した。孫空女の頭頂部が竜膳の顎を捉えて竜膳が吹っ飛ぶ。
孫空女が着地したのは、顎への直撃を受けた竜膳の身体が床に崩れ落ちるのと同時だった。
竜膳は孫空女の頭突きによる顎への打撃で脳を揺さぶられて、完全に失神状態に陥っている。
「ふう……」
孫空女はそれを確かめると、両手で再び身体を隠すように抱えた。
ほっとすると同時に、自分の身体の異常さに羞恥と狼狽を覚えたのだ。
身体が疼いて仕方がない。
激しく動いたことでさらに余計に媚薬が全身に回ったような気がする。
戦闘の勝利の高揚感は、そのまま身体の高揚となって全身の疼きがせりあがってきている。股
間に激しい火照りが押し寄せて、いまにも淫汁が腿に垂れ落ちそうな気までする。
孫空女は片手でじわじわと汁が垂れ流れる股間を隠すとともに、完全に勃起状態にある乳房を腕で覆った。
「石虎はともかく、竜膳殿まで一発かよ……」
誰ともなく見物の兵たちのひとりから嘆息混じりの声が洩れた。
試合場はさっきまでの歓声は消えて、ほとんど鎮まりかえっている状態だ。
孫空女は、その中でひたすらに息を整えることに専念していた。
戦ったことにより息が切れたのではない。
いよいよ、媚薬の影響が本格的に身体を苛み始めてどうしようもなくなったのだ。
戦っている最中は血が昂ぶるので気にならなくなるのだが、こうやって戦いと戦いのあいだの時間は、自分の全身から力が抜けて、いまにも床にしゃがみ込みたいような脱力感に襲われる。
それでも、孫空女は必死になって両脚を踏ん張って立っていた。
しかし、少しでも気を抜くと、頭まで朦朧として視界までぼんやりとしてくる。
孫空女は、慌てて自ら首を横に振った。
「つ、次はどいつだよ、火箭──。それとも、ま、満足したかい──」
孫空女は大きな声で火箭に怒鳴った。
自分を鼓舞するような声でもあげなければ、身体の疼きで本当にうずくまりそうになるのだ。
「ちっ──。じゃあ、次は……」
我に返ったように口惜しい表情になった火箭が、周囲を見回しながら呟いた。
火箭の周囲には孫空女との格闘試合の準備を整えた亜人たちが十数人集まっている。いずれも上半身が裸身で逞しい戦士の身体をしている。
孫空女は身を引き締めた。
「待て、火箭……。
いままで黙って見守っていた玄魔が床几椅子に座ったまま言った。
「寓天に……?」
火箭が驚いたように玄魔に振り返った。
「孫空女は類まれな女戦士だ……。それは認めようじゃないか、火箭……。あの拘束具を装着されて筋肉を低下させられたうえに、媚薬で苛まれている身体であの戦いぶりだ……。玄魔隊の四天王でも出さねば、孫空女の強さには釣り合わんだろう」
玄魔がそういうと火箭が頷いた。
「寓天、準備しろ──」
火箭は叫んだ。どうやら試合場に集まっている兵たちではなく、離れて鍛練をしていた亜人に声をかけたようだ。
周囲もざわめいている。
ざわめきに耳を澄ませていると、どうやら、寓天という亜人の戦士は余程に強いらしく、彼らの物言いによれば、こんな女奴隷との破廉恥な戦いをするような格ではないらしい。
副将格の火箭を含めて玄魔隊の四天王と称される人物のひとりのようだ。
寓天というのはそれほどの戦士なのだろうか……。
いずれにしても、孫空女は少しほっとしていた。
雑魚が相手でも、このまま戦い続けるのはまずい。も
うしばらくすれば、孫空女の身体は限界になるだろう。
しかし、次が最強の戦士ということであれば、それを倒せば、このくだらない試合からは解放されるかもしれない。
孫空女が強い戦士であることを認めれば、この連中は宝玄仙のところに孫空女を連れていくと約束したのだ。
「げ、玄魔──。や、約束しろ──。その寓天とかいう男に勝てば、あたしをご主人様のところに連れていけ──」
孫空女は玄魔に向かって叫んだ。
「いいだろう……。寓天に勝てばな……」
玄魔がそう言った。
孫空女はほっとした。
ならば、あとひとり……。
その寓天に勝てば……。
孫空女は身を引き締めた。
「……だが、お前は少し間違っているぞ。孫空女──」
玄魔が言った。
「間違い?」
孫空女は両手で身体を隠して試合場の中心で突っ立ったまま眉をひそめた。
そのとき、試合場がわっという歓声に覆われた。孫空女は気配を感じて身体を背中側に向けた。
孫空女が向いている方向の反対側から、ひとりの亜人が縄を潜って試合場に入ろうとしるところだった。
「あたしが寓天さ──。よろしくね、お嬢ちゃん」
試合場に入って、孫空女に向き直ったその相手がにっこりと微笑んだ。
髪が肩まであるその亜人には、両腕のほかに体側から二本の節のある別の腕が生えていた。
顔をはじめとした肌の色は黒で眼は大きくて鼻がない。
額には短い触角がある。どうやら虫型の亜人のようだ。
だが、肌着のように身体にぴったりと張りついている薄い布の服の下の寓天の胸のかたちを見て、孫空女は玄魔がさっき言いかけた“間違い”というのがなんのことなのかを悟った。
そこには孫空女と同じくらいに豊かな乳房があったのだ。
女の亜人か……。
すぐに火箭の試合開始の号令が飛んだ。
「じゃあ、愉しもうじゃないかい、孫空女とやら……」
寓天の全身に闘気が漲るのがわかった。
これは強い……。
孫空女の本能がそう告げていた。肌をぴりぴりと刺すような威圧感が相手から伝わってくる。
孫空女は自分の身体を張り詰めさせた。
これは確かに簡単には勝てそうにない相手のようだ。
身体を隠すために前に置いていた腕を離して身構えた。
「見ろよ、股から蜜が垂れ流しじゃねえか──」
「全身も真っ赤だぜ。乳首もおっ勃ってるじゃねえかよ──」
「汗びっしょりで大丈夫かい、孫空女──?」
周りの兵たちが一斉に孫空女を野次りはじめた。
だが、孫空女はそれを無視する。
「へっ、悪いけど、愉しむ暇はないのさ……。あんたの仲間があたしに下衆なものを大量に飲ませてくれたからね……。手っ取り早く勝負をつけさせてもらうよ、寓天──」
孫空女は両脚を少し開いて、相手の動きを警戒する
すると寓天の体側にある節のある腕に霊気が集まるのを感じた。
道術──?
孫空女は緊張した。
しかし、道術は孫空女に向かうものではなく、寓天自身に対するものだった。
体側の腕のかたちが変わって、十尺(約三メートル)ほどの長い鞭のようなかたちに変わったのだ。
「あたしの鞭を三十発耐えることができたら、褒めてやるよ──」
寓天が言葉を言い終わる前に、鞭状になった寓天の腕が腰に弾き飛んできた。
「ぐっ──」
腰に衝撃が走る。裸身に直接浴びさせられた鞭の洗礼は、まるで肌を通して骨そのものに痛覚を刷り込むような衝撃だった。
かわすどころか、鞭先が飛んでくるのも見えなかった。
こんなに速い鞭捌きは生まれて初めてだ。
しかも、鞭はすぐには孫空女の身体から離れずに、鞭先を孫空女の胴体に巻きつけてくる。
腰から脇腹、さらに臍を舐めるように抉りながらやっと離れていく。
まるで愛撫とも思わせるようないやらしい鞭の擦り方だった。
孫空女はたった一発で自分の腰ががっくりと落ちかけるのがわかった。