484 性奴隷の日常
「それじゃあ、朱姫姉さんの大切な方々がどうなったのか、まったくわからないというわけなのですね?」
この魔王宮に監禁されてから五日目のことだ。
朱姫は、李姫、
三人とも素っ裸だ。
魔王宮というが、もともとは、この李姫や貞女が暮らしていた屋敷なのだそうだ。
ただし、魔王の道術によって内部はすっかりと模様替えされるとともに、間取りも迷路のように複雑なものになったらしい。
存在しなかった数層に及ぶ地下も作られているようだし、このふたりにとっても、いまやまったく別の建物だと言っていた。
三人が普段監禁されているこの窓のない部屋も元々は存在しなかった部屋だという。
この部屋がいまや魔王宮となったこの屋敷の最奥に近い場所だというのはわかる。
玄関に近い場所には魔王の部下が使う各居室があり、さらに進むと謁見の間といわれる広間があり、魔王の執務室もそのそばにある。
その執務室のさらに奥には、魔王の私的な生活空間となる場所があって、朱姫がいるのもそこにある一室のようだ。
玄関に近い部分ほど魔王の部下たちの密度が高くなり、朱姫たちが閉じ込められている空間までくると、魔王の身の周りの世話をする従者たちくらいしか亜人を見ることはなくなる。
いずれにしても、朱姫たちがこの部屋を出れるのは、魔王の性の相手をするときか、魔王が朱姫たちの調教係として付けた
それ以外は、この調度品のなにもない部屋でずっとすごさねばならない。
この屋敷に捕らえられてから、朱姫は身体を隠す布切れ一枚与えられてはいない。
身体に付けているのは、四肢の筋肉を大きく弛緩させるとともに道術を遣えなくする機能があると思う手首と足首に巻かれている灰色の革帯と、宝石の装飾のある首輪だ。
李姫と貞女も同じ首輪をしているが、朱姫がしている手首と足首の革帯はしていない。
その代わり、ふたりは乳首と肉芽に小さな穴を開けられて極小のピンを通されて宝石の飾りを付けられている。
“ピアス”というものらしい。
そんな場所に穴を開けるなど怖ろしい施術にぞっとしたが、ふたりに言わせれば痛みはないらしい。
ただ、重りになっている宝石が揺れて、四六時中軽い疼きを与え続けることには困ると笑って言っていた。
驚いたことに、この魔王宮がもともとは李姫たちの暮らしていた屋敷だというだけではなく、李姫はこの城郭を支配していた州伯の娘なのだという。
貞女は彼女たちに仕えていた侍女だ。
この部屋にはいない李姫の母の
ほかの家人たちは追い出されたようだ。
いまや、この魔王宮にいる人間族は彼女たち三人だけらしい。
李姫の母親の李媛にも何度か接する機会があった。
やはり大変な美貌の人間の女であり、もともとは、侯爵夫人としてこの城郭の行政を夫の州伯とともに宰領していたのだという。
だが、この城郭が魔王軍に包囲されたとき、住民を皆殺しにしない条件として魔王は、李媛に娘の李姫とともに魔王の性奴隷になることを要求した。
李媛はそれを承諾して、彼女たちは魔王の嗜虐的な性の相手をする奴隷になったのだ。
住民を救うためとはいえ、所詮は他人である。
その他人の命を助けるために、魔王の性奴隷になるなどという途方もない条件に応じるなど朱姫には信じられなかった。
しかも、李媛も李姫もこの国では、かなりの大貴族のはずだ。それが亜人王の性奴隷になるなどという残酷な命令に従うなど信じられない。
朱姫は心の底から尊敬できる気高い心に触れた気がした。
さらに貞女については、避けようと思えば避けられるのに、望んで魔王の性奴隷という立場になったのだという。
貞女にとっては、李媛というのは恩人であり、絶対に見捨てることができない女性であるらしい。
魔王の手に落ちようとしている李媛と李姫を助けることはできないが、供に汚れることはできる。
そう思って運命をともにしたのだそうだ。
朱姫は自分のことではなく、他人のことをそこまで大切にするという彼女たちに、嘆息しか出てこない。
いずれにしても、朱姫はこうやって、李姫と貞女とともに同じ部屋に監禁される身の上となったが、李媛は一緒ではない。
李媛は青獅子の大のお気に入りであり、青獅子は侯爵夫人である李媛をとことん虐げるのが愉しくて仕方がないらしく、片時も自分の側から離すことはないらしい。
朱姫が李姫たちとともに、魔王の嗜虐を受けるときも、必ず魔王のそばに鎖で繋げられているし、魔王が政務のときも横に裸でいさせられ、魔王が就寝のときも、身体を洗うときも、食事のときでも常に李媛は横にいる。
従って、李姫や貞女に比べれば、朱姫は李媛と会話ができる機会は圧倒的に少ない。
実際のところ、朱姫が李媛と会話をしたのはまだ数回でしかない。
だが、その数回で本当に李媛が心の綺麗な女性だということはわかった気がした。
そんな境遇だが、李姫と貞女に打ちひしがれた雰囲気はない。
彼女たちの境遇を考えれば、心が潰されたようになって当然だと思うのだが、朱姫の見たところ、ふたりはこの境遇を受け入れかけており、諦めのような境地でいるようだ。
李媛はあまり接することはないのでわからないが、少なくとも、この李姫と貞女のふたりは魔王の性奴隷になったことを達観しているようであるし、すでに死も覚悟している。
また、朱姫にはすぐにわかったが、このふたりは百合の関係にある。
以前からそうだったわけではなく、魔王の性奴隷の立場に落とされてからそうなったらしいが、それが李姫や貞女に心の安定を与えてもいるようだ。
朱姫がそのふたりの百合の関係に加わるまでに、それほど時間がかかることではないかった。
李姫も貞女も突然やってきた朱姫のことなどなにも知らないはずだが、魔王に捕らわれた同じ性奴隷という立場だということで、すぐに心を開いて朱姫を受け入れてくれた。
一日の終わりであることを告げる天井の照明が落ちた時間に、この部屋で百合の情交を三人でするのは、いまや三人の決まった日課でもある。
一日の最後にこの部屋に戻されるときに、調教係の張蘭が三人の身体を拭くための水として桶一杯の水をくれるのだ。
それで身体を洗えという命令なのだが、布は与えられないので手で身体を隅々まで洗う。
それこそ、性器の中まで全部だ。
洗い終われば、拭くものはないので、身体は濡れたままだ。
しかし、身体が濡れてからは部屋の空気は三人の身体を乾かすものに調整されるらしく、朝に目が覚める頃には、完全に髪も身体も乾いている。
朝になれば、すぐに張蘭がやってきて、朝食となる食べ物を運んでくる。
朝食とともに、髪をとかす道具と化粧品が準備してあり、それで顔を整える。
そして、魔王への奉仕と張蘭の調教を受ける一日が開始される。
一日が終われば、再び夜だ。
桶の水で身体を洗って休む態勢になる。
この繰り返し……。
ここに監禁されてから外を見ることはないので、実際のところ、今日が本当に五日目なのかどうかははっきりとはわからない。
ただ、一日の調教の中には毎日同じ時間にやらされることもあるし、いま煌々と天井が光っているこの部屋も、ある時間になると天井の光が薄暗くなる時間帯がある。
それで朱姫は一日の流れを計っている。
天井の光が消えれば寝なければならない時間であり真夜中ということだ。
光がつけば朝であり、調教と魔王への性奉仕の一日の開始ということだ。
いずれにしても、水桶が渡されたときをきっかけとして、それで三人で身体の洗いっこをする。
それが百合の情交の合図のようなものだ。
朱姫がやってきた一日目でも、朱姫の眼の前で李姫と貞女は、百合の情交を始めた。
ふたりは一日がどんなに苦しくてつらいものであっても、必ず、そのふたりの情交を欠かさない。
それがふたりの心の平静に必要だということは朱姫もなんとなく悟った。
朱姫がふたりの百合の関係に加わったのは二日目からだ。
百合の関係においては、まだ少女の李姫はもちろん、貞女に対しても朱姫は主導権を握る。
百合の性技にかけては、朱姫は百戦錬磨だ。
このふたりをたらしこむなど朱姫にとっては造作もないことだった。
まだ五日であるが、朱姫は李姫や貞女とすっかりと仲良くなった。
四六時中裸でいなければならない三人だったが、素裸だが寒さや暑さを感じることはないように、この部屋を含めて屋敷全体が道術で調整されている。
床にも絨毯が敷きつめられていて、夜寝るときも肌が冷たいということはない。
寝台のようなものはまったくなく、休むために毛布一枚あるわけではないので、就寝のときには三人で丸まって横になるだけだが、不快さを感じるほどではない。
糞尿は調教の一貫として人前でやらされる以外には、この部屋の隅にある『落とし草』という名の箱に屈んでする。
衝立のような物は一切存在しないので、ふたりのいる前でしなければならないが、朱姫が最初に糞尿をするときには、約束事であったらしく、ふたりは部屋の反対側に向かってこちらに背を向けてくれた。
しかし、朱姫はその習慣を少し変更した。
『落とし草』という糞尿処理用の霊具は、一段だけの大き目の重箱のようなかたちだが、蓋を開けると背の低い触手がある。
糞尿はその触手が身体に入れて処理をする。
おぞましいことに、箱を開いてその箱に屈むと、触手が餌をもらうために肛門や股間に触手を伸ばして糞尿を舐めとろうとするだ。
そうやって、触手に股間を苛まれながら用を足さなければならない。
用を足せば汚れた局部も触手が完全に舐めとる。
李姫や貞女の場合は、肉芽の宝石まですっかりと触手が汚れを舐めとってくれる。
そんな道具なので、用を足すときにはどんなに耐えようとしても喘ぎ声を洩らしてしまうことになる。
残り二人が背を向けてくれていても、声を殺すことはできない。
それで朱姫は、いっそのこと糞尿をするために『落とし草』の触手に苛まれるときには、残りのふたりが用を足している相手の口や上半身を愛撫して責めることと決めたのだ。
見られながら用を足すだけではなく、それを触手の刺激に加えて残りふたりの愛撫を受けながらというのは激しい羞恥だが、この三人の中だけのことだ。
こうして、百合の時間として、一日の最後の身体を洗いっこのほかに、用を足すときというのが加わった。
用足しを情交の道具にするというのは破廉恥なことだと思うが、それをするようになってから、三人の距離がもっと狭まった気がする。
この日は珍しくも午後になってからの青獅子からの呼び出しがなく、朱姫は李姫、貞女とゆっくりとすごす時間を持つことができていた。
それでこれまで詳しくは語っていなかった朱姫のことについて、このふたりに詳しく説明したのだ。
つまりは、宝玄仙という女道術遣いの供として、西に向かう旅をしていたということ……。
このふたりが朱姫たちが捕えられる以前から魔王の性奴隷にされていたということは、二日目の夜に教えてもらっていたので、それでなにかがわかるということはないだろうと思っていたが、やはり、このふたりからなにかの有用な情報を得ることはできなかった。
ただわかったのは、大勢の住民を操って朱姫たちを捕らえたのは、
その魔凛というのはこの城郭が魔王の手に落ちたときに亜人軍を指揮した総隊長であり、人間であろうと亜人であろうと、霊気の有無に関わらず、集団で操る能力を持っているということだった。
朱姫にはどういう道術なのかわからないが、そんな能力を持つ亜人がいるなら、あのときに住民を操って襲い掛からせたのは、その魔凛に間違いないだろうと思った。
もっとも、それがわかったことで、なにかの解決策に繋がるわけでもない。
朱姫が魔王の飼う四匹目の性奴隷として、ここで監禁されている立場であることに変わりはないし、宝玄仙や沙那や孫空女がどこでどうしているかを知る方法はない。
なんのために捕えられたのかがわかれば、生きているか死んでいるかの見当もつくかと思ったが、それすらもわからない。
期待はしていなかったが、なにもわからなかったことにやはり失望の表情を隠すことはできなかったようだ。
李姫は、朱姫を失望させてしまったことに申し訳なさそうな顔になった。
この心根の優しい娘に気を使わせてしまったことに朱姫は後悔した。
「大丈夫よ、李姫……。こんなことは前にもあった。きっとどこかで生きていると思うわ。殺されても簡単に死ぬような方々じゃないのよ。あたしの仲間はね」
朱姫は無理をして微笑んだ。
「あ、あの……あたしは時々、李媛様のお散歩にご一緒することがあるわ。外に出られたときに、朱姫の仲間に関することが少しでも情報が得られないかどうか気をつけておくわ……。もっとも、ただ首輪に鎖をつけられて四つ足で歩くだけだから、大したことはわからないんだけど……。もしも、魔王の機嫌がよければ、何気なく質問してみる…。李媛様にも宝玄仙というお方の存在については教えておく」
貞女が言った。
「ありがとう……。でも無理しなくてもいいわ、貞女……。時間さえあれば、あたしの力でなんとかできると思う……。おかしな質問などをすれば、貞女も李媛様も魔王に罰を与えられるかもしれないわ。そんな危ない目に遭わすわけにはいかないわ」
朱姫が直接に青獅子に宝玄仙たちはどうしたのかと訊ねたのは、ここに監禁された初日のことだった。
答えの代わりに与えられたのは怖ろしい罰だった。
この屋敷の地下にある拷問室のような場所で、両手首を鎖で拘束されて宙吊りにされて、『治療術』をかけられながら、全身を滅多刺しにされたのだ。
つまり、身体を刃物で斬り刻まれて、はらわたをぐちゃぐちゃにされ、次の瞬間に『治療術』で傷ひとつないように回復されて、また刃物で裸身を抉られる。
それを繰り返されたのだ。
もしかしたら、『治療術』ではなく、あの拷問自体が魔王の道術による幻術だったのかもしれない。
しかし、痛みと苦痛は本物だった。
青獅子は部下たちに朱姫を拷問にかけさせながら、奴隷の分際で質問などするなと繰り返し朱姫に言った。そんな拷問を半日続けられた。
肉体はその場で回復しているものの精神は崩壊寸前まで追い詰められた。
そして、放り込まれたのがこの部屋であり、待っていたのがこの李姫と貞女だ。
ふたりは朱姫に優しくしてくれるとともに、朱姫に心からの同情を示してくれた。
このふたりと打ち解けることで、なんとか朱姫も心の平静を取り戻すことができた。
「そう言えば、李媛様の散歩には、今日は貞女さんは呼ばれなかったわね……。今日は李媛様は、あのお気の毒な仕打ちを今日は受けなくて済んだのかなあ?」
朱姫はなんとなく言った。
散歩というのは、青獅子が毎日の日課のようにしている李媛を連れての城郭の練り歩きのことだ。
一刻(約一時間)ほどのことでしかないが、青獅子は、この城郭の支配者の妻だった李媛を犬のように首輪をさせて、素っ裸で四つん這いにさせて大通りを散歩させるのだ。
殺された方がましだと思うような仕打ちだが、逆らえば住民を殺すと脅されて、李媛は青獅子の要求に応じているようだ。
だが、李媛とともに“散歩”に連れ出されることが多い貞女によれば、城郭の住民は、自分たちの命を助けるためにそのような血の凍るような羞恥の行為を受け入れている李媛に感謝の気持ちを向けるどころか、最近では、破廉恥な女として蔑みや嘲笑の態度を向けるのだという。
そのような状況において、いまだに住民を護るために自分や実の娘を犠牲にすることとに諾々としている李媛は、すでに朱姫の理解を超えている。
「さあ、どうなのか……」
もちろん、貞女の返事も曖昧なものだ。
この部屋に閉じ込められている三人には、意味のある答えをするだけの情報などない。
そのとき、この部屋に唯一存在する扉が開く気配がした。
この部屋どころか、屋敷全体に青獅子の結界がかけられていることは、朱姫にはわかっているが、特にこの部屋には、朱姫たちを監禁するための結界が二重にかけられている。
この部屋から逃げることなどいかなる方法でも不可能だ。
朱姫もすぐにそれを悟るしかなかった。
「いつもの壁尻の調練の時間だよ……。あんたら……」
部屋にやってきたのは
手に躾のための細い棒を持っている。
背丈は朱姫の半分ほどしかない矮人族の亜人の女であり、青獅子魔王に仕える女調教師のひとりだ。
事実上、青獅子以外に接するのは、この張蘭ひとりであり、青獅子に性奉仕をする以外に、毎日の調教を朱姫たちに施すのはこの張蘭だ。
朱姫は一度、『縛心術』をこの張蘭にかけようとしたことがある。
朱姫は道術を封じられていても、時間さえあればある程度の操り術を相手にかけることができる。
最初に青獅子を見たときには、その途方もない道術返しの霊気の防壁に接して、霊気を遣わない朱姫の『操り術』が効かないことはすぐにわかった。
だが翌日に、この張蘭がこの部屋にやってきて朱姫に調教をしようとしたとき、試しに『縛心術』を刻み込もうとしてみた。
その結果は惨憺たるものだった。
この張蘭はそれに気がつき、懲罰として手にしていた躾棒で朱姫をのたうち回らせた。
その棒からはいくらでも強い電撃を浴びせることができて、朱姫は数刻にわたって、李姫や貞女の前で電撃責めにここで遭わされた。
それだけでなく、いまだ朱姫がそのような能力を隠してたことが青獅子にばれて、朱姫の霊気を遣わない『縛心術』の能力も封印された。
朱姫たちは黙って立ちあがった。
日課にされている性の調練が始まるのだ。
「ほらよ」
張蘭が鎖を投げた。
お互いに首輪に鎖を数珠つなぎに繋げるのだ。
逆らえば電撃だ。
従うしかない。
貞女が先頭になり李姫が貞女の首輪の後ろ側に鎖を繋ぎ、自分の首輪の前の首輪の金具に繋ぐ。
朱姫は李姫の首輪の後ろにもう一本の鎖を繋げ、それを自分の首輪の前に繋ぐ。
これがこの部屋を出るときに決められている移動の態勢なのだ。
「おいで──」
張蘭が言った。
貞女が歩きだし、朱姫は李姫とともに裸身を「壁尻の間」に向かって進ませた。