「あっ……いやっ……」
壁尻の調教が続いている……。
左右には、自分と同じように道術の壁に埋められた朱姫と
道術により上半身は、白い壁から突き出たように魔王宮となったこの屋敷の地下にあるのだが、下半身はについては道術で転送されて城郭の広場にある壁から生えた女の裸の下半身として晒されているらしい。
そして、李姫の下半身は城郭の広場に集まっている大勢の住民の男たちによってたかって悪戯をされて犯されているのだ。
それは、貞女と朱姫も同じだ。
この魔王宮に監禁されてから毎夕繰り返されている調教の科目のひとつだ。
こうやって男に犯される味を身体に覚えさせて、魔王の好む淫乱な女に変えていくのだそうだ。
「くうっ……あっ、ああっ……あはあっ──」
誰のものかわからぬ指が李姫のお尻の秘めやかな穴に触れてくる。
たとえおかしな道術で下半身だけ城郭の広場に晒され、城郭の住民の好きなようにいたぶられる態勢にあったとしても、断じてそこはそんな悪戯をする場所ではない。
しかし、抵抗するすべはない。
わずかに動く腰をねじって振り払おうするのだが、却って執拗さが増す気がする。
李姫には与えられる快楽にただ耐えることしかできなかった。
だが、李姫の苦悩は、顔も声もわからない男たちに好きなように下半身を悪戯され続けることだけではない。
それによって、自分の身体がどんどんといやらしい劣情に襲われることだ。
道術で城郭の広場に半分転送させられている下半身をなぶる男たちの手つきは決して巧みとはいえないと思った。
こんな手管に比べれば、つらい調教と凌辱の日々の最後に待っている朱姫と貞女との営みの方がずっと素晴らしくて天にも昇るような快感だ。
だが、それでも李姫の心情とは裏腹に、後ろの穴を弄られると確実に李姫の身体はかっと燃えるような妖しい興奮に襲われるのだ。
いや、後ろの穴だけではない……。
下半身のどこに触れられても、ただ愛撫されるというだけで強烈な刺激を与えられる。
李姫はほんの十日ほど前には考えられないくらいに自分の身体がいやらしく変質していることに気がつかないではいられなかった。
「あふうっ、ふうっ、はあっ……」
李姫は懸命に歯を喰いしばった。
見知らぬ城郭の男たちに触られて、そして、犯されて恥ずかしい反応を示すのは嫌なのだ。
そんな惨めなまねはしたくない。
しかし、ここにはいない男たちに犯されるという恐怖は、李姫に激しい興奮も与えていた。
しかも、向こう側の壁で李姫を襲っているのはひとりの男ではないはずだ。
少なくともふたり……。
いや、もっと……。
「あっ、だ、だめえっ──」
李姫はまた大きな反応をして壁から突き出ている上半身を仰け反らせてしまった。
壁の向こうの男か李姫の女陰に怒張を突き挿したのだ。
しかも、肛門に指を入れて、上に強く腰を引っ張りあげるようにしながら怒張を深々と貫かせてきた。
「お、男の方が……は、入りました──」
李姫は叫んだ。
三人の上半身が突き出ている前に、女調教師の張蘭が椅子に座って三人を監督している。
向こう側の壁に突き出ているはずの下半身に男の一物が侵入した場合には、それを大声で知らせなければならないのだ。
怠れば罰だ。
また精を受けたときも同様だ。
「また、李姫に入ったのかい……。これで七人目かねえ……。下半身だけじゃあ、どれが貴族娘の尻かわからないはずなのに、触ればなにか違いがあるのかねえ……。李姫を弄っている男が最終的に股を犯す確率は高い気がするねえ……。李姫の股間には、“ピアス”の宝石をぶら下げているからそれが目印にでもなっているのかねえ……? だけど、貞女も同じものをしているけど李姫ほどじゃないよねえ……。まあ、いいか。いずれにしても、それに比べれば後のふたりはもう少し、城郭の広場に突き出ている下半身に色気を漂わせないかい。お前らはまだ片手分も犯してもらっていないじゃないかい──。朱姫に至っては、まだふたりだろう。がに股にまでしてやったのに情けないねえ──。お前の腐れ尻じゃあ、犯すのも躊躇うのかい──」
李姫は身体を思わず竦ませた。
あの鞭の恐ろしさは、たった十日で身体の芯まで染みついた。
張蘭はなにかと理由をつけては、三人の身体のあちこちにあの鞭で電撃を浴びせかける。
あの痛みには慣れるということはない。
むしろ、李姫の電撃鞭への恐怖は日に日に拡大している。
李姫は張蘭の調教が始まった初日に、局部に十八連発の電撃を受けさせられて悶絶させられた。
挨拶代わりに歳の数だけ電撃を加えてやろうと言われたのだ。
失禁しても、気絶をしても無理矢理に覚醒されて続けられた。
生まれてからあれほどの恐怖は味わったことはなかった。
同じときに貞女も二十四発浴びた。
貞女は二十四歳だからだそうだ。
数日経って、朱姫がやってきたときは二十発だった。
李姫は自分よりも歳下と思った朱姫が、もう二十歳なのだとわかって少しだけ驚いたのを覚えている。
とにかく、あれは骨身に刻まれた恐怖だ。
しかし、そういえば朱姫は、あの電撃にのたうち回ったのは同じだが、いまだに張蘭をそれほど恐れている雰囲気はないようだ。
李姫など張蘭の声を聞くだけでからだが硬直するような感じに教われるのだが、朱姫には普段の調教にもなにか余裕のようなものを感じる。
三人で夜に愛し合うようになったとき、その日に一番調教で痛めつけられた者を「最優秀奴隷」ということにして三人で選び、残りのふたりが「最優秀奴隷」を中心に責めることにしようと言い始めたのは朱姫だ。
こんな調教と凌辱だけの生活にそんなことを持ち出す朱姫の発想には驚いたが、三人で自分が「最優秀奴隷」だ。
いや、自分だと言い合って遊ぶのは、やってみると意外に愉しかった。
死と隣り合わせの被虐の日々にもそんな余裕を持ち込む……。
それが朱姫だ。
李姫はわずか数日で、もう貞女と同じくらい朱姫を好きになっていた。
「ほら、朱姫、なんとか言わないかい──。お前は、せめて五人には犯されないと、懲罰だからね──」
張蘭がまた電撃棒を鳴らした。
李姫の身体が縮こまってしまい、男根を受け入れている膣がぎゅっと締まった。
それが李姫の快感を大きくして、口から嬌声が迸ってしまった。
「あっ、そ、そんなこと言われても……。ああっ、ああっ……」
朱姫がよがりながら言った。
しかし、その李姫は、その朱姫の仕草になんとなく違和感を覚えた。
別に根拠があるわけではないが、朱姫の悶え方がどことなくわざとらしい気がするのだ。
もちろん気のせいかもしれないが、朱姫がやってきてから、毎夜に裸身を擦り合わせて百合の性に耽る関係だ。
だから、本当に感じているときの朱姫の声や表情は知っている。
それとは違う気がするのだ。
「あっ、だ、駄目──」
だが、李姫が思念に耽ることができたのはここまでだった。
李姫を貫いている怒張がさらに激しく律動を始めたのだ。
しかも肛門に食い込んでいる指も同時に抽出を始めた。明らかに新しい手だと思う指も李姫の肉芽に新しい刺激を与え始めた。
肉芽を貫いて極細の鎖でぶら下げられている宝石を引っ張たり、揺らしたりしている。
「うくわっ」
李姫は堪らず悲鳴をあげた。
自制心が溶かされる……。
複数の男たちが股間のあちこちに無遠慮に与える刺激が激しい膣の愉悦となって、大きな疼きのようなものを李姫の股間に送り込んでくる。
李姫は歯を喰いしばって全身を震わせた。
そして、膣に精が放たれたのがわかった。
李姫の快感の頂点はまだまだ先だったが、向こうではすでに射精に達したようだ。
「あっ、せ、精を受けました──」
李姫は慌てて叫んだ。
同時に股間から男の性器がすっと抜け出る感覚が伝わった。
「七人目の精だね、李姫──。女はねえ……。男の精を受ければ受けるほど、淫靡な美しさを増すんだ。そうやって魔王様の性奴隷に相応しい身体になるんだよ。それがお前たちが長生きができる術なんだ。それにしても、貞女と朱姫は、まだ次の男の一物を女陰に入れてもらえないのかい。お前たちは、少し向こう側の壁で少しいやらしく腰でも振ってみな。向こう側に飛ばしている尻も前後左右くらいは動くようにしてやっているだろうが──。男を誘うように腰を振るんだ──」
張蘭が鞭で床を叩く。
「あっ、受けました──」
声をあげたのは貞女だ。
すると張蘭が満足したように鼻を鳴らした。
そのとき、再びつるりと李姫の女陰を次の男の肉棒が貫く。
「は、入りました──」
李姫は声をあげた。
惨めだ……。
裸の下半身を城郭の広場に晒されて、誰ともわからぬ男たちに犯されて、精を放たれ、しかも、それを逐一報告しなければならないのだ……。
こんな恥辱は……。
自分の屋敷の敷地に亜人王以下の大勢の魔王を受け入れ、母の李媛や侍女の貞女とともに、亜人たちから調教されて凌辱される日々を続ける……。
ただの一枚の服さえ与えられず、常に素っ裸になり、しかも乳首と股間に装着されている三個の宝石が常に李姫の身体に肉の疼きを加えてくるので、欲情している身体を亜人たちに曝け出さねばならい。
そして、いまは色の修行とか称して、道術によって下半身だけを城郭の広場に晒されて、姿も見えず声も聞こえない相手に犯されなければならない……。
こんな惨めな境遇になるなど、わずか十日前には考えもしなかった。
いや、父母がいて大勢の家臣にかしずかれて、大貴族の娘として恵まれた生活をしていたあの日々は本当にたった十日前の日々なのか……。
常に素裸ですごして亜人たちの好奇の視線を送られ、見知らぬ人間の男たちに犯されるという惨めな境遇こそ、昔からの李姫の姿なのではなかったか……。
そんな錯覚さえも感じる。
もっとも、毎夜繰り返している貞女と朱姫との肉の触れ合い……。
あれはあれで悪いものではない……。
あの幸せを知ることができたというのは、この地獄のような生活のすべてが不幸ではないという証のようなものだった。
男に犯されながら、李姫は今日の夜中に寝る前に、壁尻で一番犯されたから、李姫こそが今日の「最優秀奴隷」だと主張している自分を想像した。
すると、すっと心の中の痛みのようなものが消える気がした。
李姫を犯している男が李姫の股間の中で激しく動き出した。その感触が李姫を現実に引き戻す。
「くうっ……」
望まぬ快楽に李姫の身体は敏感な反応を示してしまう。
「朱姫、聞いているのかい──?」
突然、部屋に張蘭の怒声が響き渡った。
はっとした。
李姫が顔をあげると、いつの間にか張蘭が朱姫の前に詰め寄っている。
どうやら、朱姫は二度ほどの張蘭の呼びかけを無視したようだ。
なにかに夢中になっていたのか、それとも犯されて呆けていたのかわからないが、無視されたかたちになったらしい張蘭が怒りで真っ赤な顔をしている。
「あたしは無視されるのが一番嫌いなんだよ──。この人間風情が──。奴隷のお前らは調教師には絶対服従──。いつも神経をぴりぴりとさせておきな──。このあたしを無視なんざ、もってのほかさ──」
張蘭が電撃棒を普通の鞭のようにしならせて、朱姫の背中に打ち据えた。
「ひうっ──」
大きな音がして朱姫が苦痛の悲鳴をあげた。
「ご、ごめんなさい──。ゆ、許して──」
朱姫が呻きながら叫んだ。
横目で見ていただけだが、朱姫は少しのあいだなにかに夢中になっていた感じだ。
どうしたのだろう……?
「……男たちに股間を弄くられながら居眠りでもしていたかい──。どれ、ちょっとはこれでしゃっきっとしな……。電撃を加えてやるよ」
張蘭が冷酷な笑みを浮かべて、すっと朱姫の鼻の穴に電撃棒の先端を差し込んだ。
「ひ、ひいっ──。ゆ、許して──」
朱姫が驚いて顔を振り動かそうとした。
李姫もびっくりした。
なにしろ、あの恐ろしい電撃を鼻の中に加えようというのだ。
しかし、その朱姫の髪を張蘭はむんずと掴んだ。
自分たちの肘は壁に埋まって固定されている。
朱姫はもうそれ以上抵抗のしようがない。
「暴れると鼻の穴に傷がつくよ──。すぐに終わるさ──」
次の瞬間、人間のものとは思えないような絶叫が部屋に響き渡った。
「朱姫さん──」
李姫の横の貞女が心配の声をあげた。
張蘭が本当に朱姫の鼻の穴の中で電撃を放ったのだ。
朱姫の顔は大きく仰け反り、一瞬だが白目を剥いた気がした。
しかし、激しく顔を動かしたので、電撃棒を差されていた鼻が棒の先で粘膜を破ったのか、朱姫の鼻から鼻血がどっと垂れ流れた。
「あらあら、動くなといったじゃないかい……。まあ、心配ないよ……。『治療術』ですぐに治してやるからね……。もっとも、もうひとつの鼻の穴に電撃を浴びせてからだけどね……。鼻に穴はふたつだ。片一方じゃあ、お前の鼻に失礼というものさ──」
張蘭はそういって、まだ鼻血を流し続けている朱姫のもうひとつの鼻の穴に電撃棒の先端をすっと持っていった。
涙と鼻血を流して苦痛に喘いでいた朱姫の顔が恐怖に染まったのがわかった。
「ゆ、ゆるじて……」
朱姫はまだ収まらない呼吸を乱したながら言った。
しかし、張蘭は笑いながら朱姫の髪をまた掴んで、朱姫の顔を固定する。
そして、電撃棒を朱姫の顔に近づける……。
「や、やめてあげて──」
李姫も悲鳴をあげた。
そのとき、この調教室の扉に音がして、ひとりの亜人兵が入ってきた。
青獅子の従者兵だ。
魔王の呼び出しには、よくこの亜人兵が派遣されてくる。
この従者がやってきたということは、三人のうちの誰か、あるいは全員に魔王の呼び出しがあったということだ。
張蘭が朱姫の髪を手放して朱姫から離れた。
朱姫がほっとしたように顔をうな垂らせる。
ふと見ると朱姫の鼻から流れる血がとまっている。
まだ顔はすでに流した血と鼻水と涙でぐしょぐしょだが、とりあえず『治療術』とかいう道術で傷は治してもらったようだ。
「あふうっ──」
こちらに気が取られていたが、李姫に挿入されていた男根が精を放った。
熱いものが子宮に迸るのがわかった。
「……せ、精を受けました……」
李姫は言った。
「あたしもです……」
貞女も言った。
しかし、従者と話しこんでいる張蘭はこちらを無視している。
それでも命令に従わないと、さっきの朱姫のような目に遭わせられるのだ。絶対に命令には逆らってはならない……。
従者と話していた張蘭が朱姫に振り返った。
「朱姫、魔王様の呼び出しだよ──。壁尻を解いてやるから顔を拭いて支度しな──」
張蘭が含み笑いをしたような表情で朱姫に近づいて、朱姫の首輪から李姫と繋がっていた鎖を外した。
その直後、壁から抜け落ちるように朱姫の身体が前に倒れた。
朱姫だけが、壁の固定から解放されたのだ。朱姫はがっくりと両手を床につけて床に座り込んだまま肩で息をしている。
その朱姫の前にぽんと布が投げられた。
「それで顔を拭きな。そして、従者兵とともに、すぐに支度室に行くんだ。そこで髪を整え直してから顔を洗い化粧をして、魔王様の前にいく支度をしな──」
張蘭が言った。
魔王の前に行く際には直接には行かない。
きちんと化粧をして髪を整えてから向かうのだ。
その準備をするのが「支度室」だ。
支度室には李姫たちが使ってもよい化粧道具や鏡なども置いてある。
ときには、なにかの趣向のために服が置いてある場合もある。そのときはそれを身に着けて魔王の前に行くことになる。
それ以外は、素っ裸のままだ。
朱姫が眼の前の布を手に取った。
それで顔を押さえながらふらふらと立ちあがる。
「……それにしても、お前は人間じゃなくて、正真正銘の本物の半妖だったのかい、朱姫──。お前たちの事前調査を魔凛がしたときの資料にそれが書いてあったそうだ。それを知った魔王様が半妖というのは珍しいから、改めて連れて来いということになったそうさ」
張蘭が言った。
「半妖──?」
叫んだのは貞女だ。
李姫もびっくりした。
半妖というのは人間と亜人の合いの子ということだ。
亜人も人間も珍しくない土地だが、半妖という存在に遭うのは初めてだ。
もっとも、本当に半妖がいれば、それは隠すに違いない。
だから、「私は半妖です」などという人物に遭うことはないのだ。
「呪われた子……」
李姫はぽつりと呟いた。
むかしから人間と亜人の合いの子というのは、呪われた存在として忌み嫌われることが多い。
その理由は知らない……。
半妖がことさらなにかをするとか、悪意があるとか、劣っているというものではない。
見た目も変わらない。
しかし、半妖自身はもちろん、半妖から産まれた一族は何世代経っても、差別と侮蔑の対象なのだ。
亜人の社会でもそういう傾向があるらしいが、人間族の社会では特にそれが顕著だ。
半妖は亜人以上に忌み嫌われる対象なのだ。
一説には、半妖は意図的に作られた差別種族だという。
この一帯には、長く人間族とそれ以外の亜人族が対立してきた歴史があるが、その中にはお互いに歩み寄って協調をしていた時代もある。
そのような協調の時代であっても、やはり人間族と亜人族はお互いに対立して争い合う存在だった。
それでも歩み寄らなければならない両者の施政者は、人間でもなければ亜人でもない半妖という存在に目をつけた。
共通の被差別階級を創造することで、本来は対立し合う人間族と亜人族の関係をぼかすとともに、相互の憎しみを半妖にぶつけさせて対立心を逸らそうとしたのだという。
それが半妖の一族を蔑み、忌み嫌って差別する習慣を作ったのだとなにかの書物で読んだことがある。
もちろん、いまではあえて半妖の子を作ろうとする者はいないから、李姫が知っている半妖とは、遠い先祖が半妖だったという者たちだけだ。
張蘭の話によれば、朱姫は両親が亜人と人間という本物の合の子のようだ。
そのような存在は李姫も始めてだと思った。
「あっ……」
李姫はそのとき、朱姫の顔が真っ蒼になって自分に向けられていることに気がついた。
それでいま、自分は“呪われた存在”などという忌み言葉をよりにもよって朱姫の前でしてしまったことに気がついた。
「しゅ、朱姫さん……。いまのは……」
慌てて弁解しようとしたが、それを激しく鞭が床を叩く音が遮った。
「ぐずぐずするんじゃないよ、朱姫──。早く、行きな──」
張蘭が怒鳴った。
「は、はいっ」
朱姫が慌てて扉に向かう。
「朱姫さん──」
李姫は扉から出ていく朱姫にもう一度声をかけた。
しかし、朱姫は振り返ることなく、従者とともに部屋の外に出て行った。