※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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493 同族殺し

 まさに阿鼻叫喚だった。

 

 魔凛(まりん)は房のひとつひとつに歩いていくと、鉄格子越しに矢を浴びせていき、悲鳴と哀願を繰り返す同朋たちを次々に矢で殺し回っている。

 

 房に入っている貂蝉(ちょうせん)からは魔凛が回り終わった房の中の同胞が確実に死んだのかどうかまでは判断できないが、ここから見える限りでは矢は囚人の身体に突き刺さっているし、まったく身動きはしていない。

 それに魔凛の腕ならば、狭い檻に入っている虜囚を格子の位置から狙って急所を外すわけがない。

 

 魔凛は同じ鳥人族の仲間の悲鳴にまったく耳を傾ける様子もなく、淡々と作業のように殺戮を続けていく。

 ひとつの房を皆殺しにするのに大した時間はかかっていない。

 すでに半分近くが終わっていて、そろそろ女戦士のいる房に差し掛かりそうだ。

 貂蝉のいる房は最奥だからあのまま魔凛が殺戮をしていけば、最後の房になるはずだ。

 

「ま、魔凛様が狂ってしまわれた──」

 

「ああ、神様──」

 

「お母さん、助けて──」

 

 同じ房の歳上の女戦士たちが絶望の声をあげた。

 同じような叫びは隣の女の房からもしているし、その向こうからも聞こえる。

 そのとき、貂蝉ははっとした。

 さっき魔凛が矢で射殺した牢番の屍体の腰から檻の鍵束が外れて地面に落ちているのだ。

 貂蝉は鉄格子越しに手を伸ばした。しかし、とても届きそうにない。

 

「貂蝉、あたしがやってみるわ……」

 

 同じ房の桔梗(ききょう)という女が貂蝉のしていることに気がついた。

 桔梗はこの中でもっとも年長であり背も高い。貂蝉に代わって手を伸ばす。

 しかし、貂蝉よりも長身の彼女でも少し距離が遠い……。

 

 貂蝉は顔をあげて魔凛の様子を見た。

 魔凛はこっちの様子をまったく顧みる様子もなく、同朋を射殺す作業を続けている。

 残りはもう半分の房もない。

 

 なにか引っ掛ける物があれば……。

 だが、そんなものは房の中にあるわけがない──。

 

 しかし、貂蝉は思いついて自分の着ていた囚人服の上衣を脱いだ。

 上衣の下はなにも着ていないので、貂蝉の乳房が露わになる。構わず貂蝉は袖の部分を二、三回結んで、大きな結び目を作った。

 

「どいてください、桔梗さん──」

 

 必死になって鍵束に手を伸ばそうとしている桔梗を押しのけて、鍵束に向かって結び目を投げた。

 一度目は外れたが、二度目はうまい具合に鍵を束ねる輪の中に結び目が落ちた。

 慎重に引っ張る。

 

「しっかり、貂蝉……」

 

 そばで見守っている女たちが低い声で言った。

 

「やった──」

 

 鍵束が手の届く位置までにずれた。

 すぐさま鍵束を手に取ると、桔梗に手渡した。

 檻の鍵が開けられる。

 その間に貂蝉は脱いだ上衣を着直した。

 同じ房の四人が檻の外に出た。

 

「こっちも──」

 

 隣の房の女たちが鉄格子越しに手を伸ばす。

 鍵束を持っていた桔梗が隣の扉を開ける。

 

「なにやってんだい、お前ら──」

 

 魔凛だ。

 冷たい形相でこっち見ている。

 構えていた弓がこっちを向いた。

 

「魔凛様──、おやめください──」

 

 桔梗が貂蝉たちの前に出て大きく手を拡げた。

 そのまま魔凛に向かって走っていく。

 

「き、桔梗さん──」

 

 貂蝉は悲鳴をあげた。

 魔凛の放った矢が魔凛に駆けていく桔梗の胸に当たった。

 それでも桔梗はとまらない。

 

 魔凛が二矢目を番えた。

 足元をふらつかせながら桔梗が魔凛に向かって走る。

 二矢目が至近距離から放たれた。

 

 桔梗が魔凛に飛びかかるのとほとんど同時だった。

 矢は桔梗の胸に突き刺さって、矢尻が背中に貫通したのがわかった。

 桔梗は魔凛を押し潰すように倒れる。

 魔凛は桔梗の身体の下敷きになり倒された。

 

「い、いまのうちに……」

 

 それが桔梗の最期の言葉だった。

 

「ま、待つんだよ、お前ら──。わたしのあの映像を見た者はどいつもこいつも生かして帰さないよ──」

 

 魔凛が桔梗の身体の下から叫んだ。

 桔梗を押し避けて起きあがろうとしている。

 

「貂蝉──」

 

 呆然と立っていた貂蝉の腕を誰かがぐっと掴んだ。

 そのまま走らされる。

 

 地上に通じる階段に向かって走る。

 貂蝉はなにが起きたか考えるのをやめた。

 

 この地下牢から逃げ出せるのか──。

 逃げ出せたとしても、城郭から逃亡できるのか……。

 とにかく、行くだけだ──。

 

「待て──」

 

 魔凛の声が追いかけてきた。

 矢音──。

 

「あがあっ──」

 

 すぐ隣を駆けていた女がその矢に当たって倒れた。

 貂蝉は房から脱出できたのが、貂蝉のいた房と隣の房にいた者の六人だとわかった。

 六人で固まって地上に通じる階段に辿りついた。

 

「ひうっ──」

 

 もう一度、矢音がして最後尾のひとりが倒れた。

 五人になった……。

 

 貂蝉はそのまま階段の上の光の方向に駆けていった。

 

 

 *

 

 

 “命令”の通りに「五人」の女囚が「逃亡」に成功するのを見届けると、魔凛は残りの作業に戻った。

 まだ囚人の残っている房が残っている。

 女囚の房が三個ほど手つかずだ。

 

 弓を構えなおすと、鉄格子の向こうで必死の哀願をする同朋に弓を向けた。

 彼女たちに余計なことを話しかけることは、“命令”で禁止されている。

 表情でなにかを伝えることもだ。

 

 『服従の首輪』の力により魔凛に与えられている命令は、まずは五人の女囚を自然なかたちで脱走させること……。

 きっちり正確に五人だ。

 

 そして、残りを魔凛の手で皆殺しにすることだ。

 さらに、適当な理由を作って冷酷な殺人鬼の演技をすること──。

 

 『服従の首輪』で命令されれば、それは魔凛の意思に関係ない。

 一切逆らうことはできないのだ。

 それはいままでの大旋風から受けた様々な仕打ちで知っている。

 残りの全員を射殺すのにそれほどの時間はかからなかった。

 

「うあああああ」

 

 魔凛はその場に泣き崩れた。

 『服従の首輪』による身体の縛りが終わったからだ。

 

 この手で大勢の同朋を殺してしまった。

 魔凛の名を呼び、死ぬ寸前まで魔凛を信じていた彼ら……彼女らを殺した。

 彼らのことはよく知っている。

 供に訓練し、戦場で戦った仲間だ。

 その仲間を無惨にもこの手で殺した。

 

 いや殺させられた。

 魔凛は地面に膝をついて号泣した。

 

 彼らの父を知っている……。

 彼らの母を知っている。

 妻も……子も……その家族も……。

 

 みんな、魔凛は知っている。

 それをこの手で殺した……。

 

 魔凛は、ただひとり残った軍営の地下牢の最下層でしばらく泣き続けた。

 しばらくしてから、魔凛の泣き声を拍手の音が遮った。

 

「いやあ、大したものだぜ、魔凛──。『服従の首輪』の命令とはいえ、ちゃんと五人の女囚だけを逃亡させて、ほかの者は見事に皆殺しだ……。『遠目』で見ていたが、牢番を女囚の房に追い詰めて、鍵束を腰から矢で外させてから、女囚の房の眼の前でとどめを刺すなんて大したものだ。とてもじゃないが、あの逃げた女囚たちは、お前が逃亡を誘導したとは思えないだろうな……。いやあ、素晴らしいぜ──」

 

 大旋風だ。

 三人ほどの取り巻きの部下もいる。

 

 彼らは魔凛にこの残酷な命令を与えてから、その仕事を見届けるために、『遠目』という霊具で上層にある部屋からここで行われたことを見ていたのだ。

 

 『遠目』というのは、ここで見える映像を離れた場所に道術で転送して投映できる霊具であり、この地下層のあちこちに仕掛けてある。

 大旋風たちは、その『遠目』で確認しながら、鳥人族に対する拷問の指示を牢番たちに送っていたのだ。

 

「き、貴様──。の、呪ってやる──。いつか……。いつか、息の根を……。い、いや……。それが叶わなくて……たとえ、殺されても……。きっと生まれ変わってでも貴様と貴様の一族を殺し続ける──」

 

 魔凛は跪いた姿勢のまま大旋風に向かって叫んだ。

 

「おうおう、愉しみにしてるぞ、魔凛。だけど、簡単には死なせはしねえ──。“命令”で自殺を禁止しているから、お前は自分で命を捨てることさえできないんだぜ。それに、俺の命が危うくなれば、身体を張ってでも俺を護るように命令もしている。それなのに、一体全体どうやって俺を殺すんだ?」

 

 大旋風は大笑いした。

 魔凛はぐっと両方の拳を握った。

 なにもできない……。

 それどころか、こいつらの道具になって、仲間だった者を殺戮させられた……。

 

「くっ……。ど、どうして、こんな残酷なことをさせた──。お前が恨みがあるのは、わたしだろう──。こいつらには恨みなどなかったはずなのに──」

 

 魔凛は大旋風を睨んだ。

 また涙がぼろぼろとこぼれ出したのがわかった。

 できることなら飛びかかって、この歯で大旋風の喉を噛み千切ってでも殺したい……。

 

 しかし、できないのだ。

 それどころか、跪いた状態で大旋風を出迎えてしまった魔凛は、大旋風の指示なしではその姿勢を変えることもできない。

 そういう命令を与えられているからだ。

 自意識を保ったまま、支配者の命令のすべてに従ってしまう『服従の首輪』……。

 

 それを嵌められてから魔凛は、大旋風の奴隷どころか道具だ──。

 性の処理をし、退屈凌ぎのために辱められ、大旋風の護衛をし、あるいは、大旋風が気紛れで指名した相手に身体を捧げさせられる……。

 殺せと言われれば、いまのように仲間や同朋でも殺す。

 そんなことをしながら、禁止されれば泣くこともできないし、冷酷な表情で殺戮を淡々と続けなければならない……。

 

 これ程に邪悪で非道な道具は、ほかにないだろう──。

 逆らいたくても逆らえない。

 自殺さえもできない。

 自分を傷つける行為も禁止されている。

 魔凛は両手で地面を掻いた。

 

「別に退屈凌ぎでやったわけじゃねえぞ。意味があったのさ──」

 

 大旋風が笑って答えた。

 

「ど、どんな意味だ──?」

 

「うまくここを脱走した五人は、追われながらもなんとか、この城郭を脱出できる手筈になっている。本当は逃げ出せるように、わざと警備の緩みを作ってやってんだが、そんなことはわからないさ。そして、山の中に逃げ込んだ後、救いの手が差し伸べられるようにもなっている。そして、時間はかかるが自分たちの脚で歩いて鳥人族の里に帰りつくはずだ──」

 

「なに?」

 

「そして、魔凛という女指揮官が部下の鳥人族を皆殺しにするという蛮行を行ったという証言をするはずだ。ひとりだと信じないかもしれねえが、五人もいれば疑う者はないさ」

 

「ど、どういうことだ?」

 

「お前の鳥人族の指導者としての地位はこれで終わりだ。万が一にでも、お前を助けようとする者が現われれば面倒くさいしな……。そのために、わざわざ、お前の手で同胞を殺してもらったのよ──。もちろん、鳥人族隊の連中の厄介払いもあるがな──」

 

「そ、そんなことのために──。お前の支配する人形に成り下がったわたしに、もはや鳥人族の指導者などできるわけがないだろう──。そ、そんなことのために、これだけ多くの仲間を殺させたのか──」

 

「念には念を入れてだ、魔凛──。まあ、これで、お前には、俺から逃亡しても帰る里はねえ。すっぱりと望みを捨てて、心から俺の人形になることだ……。それよりも、今度は逆に、鳥人族の連中がお前の暗殺命令を出すかもしれんな」

 

 大旋風が大笑いした。

 魔凛は歯噛みした。

 

「よし、じゃあ、命じておくか。命令だ、魔凛──。お前は、俺の命を護るという目的でない場合は、自分の命や身体を護らなければならない。わかったな──」

 

 魔凛は返事をしなかった。

 返事は命令されていないからだ。

 だが、これでいまの命令は、『服従の首輪』によって、魔凛の身体に刻まれたのだろう。

 どこか変わったという感じはしないが、その場になれば身体が勝手に動くに違いない。

 それがこの首輪の霊具の力なのだ。

 

「それよりも、これでひと仕事終わったと思ったら欲情してきたぜ。武器はここに捨てろ……。ほらっ、お前の大好物だ。舐めろ──」

 

 大旋風がいきなり下袴の前から硬直した性器を出して、魔凛の眼の前に突き出した。

 魔凛は口をつぐんで顔を横に向けた。

 口で奉仕するなど耐えられない汚辱だ。

 何度やらされても心が拒否してしまう。

 大旋風も魔凛が口で奉仕するのを心の底から嫌がっているのを知っているので、なにかにつけて魔凛にそれをやらせようとする。

 

「め、い、れ、い、だ……」

 

 大旋風が愉しそうにゆっくりと言った。

 魔凛は歯噛みした。

 

 逆らえないのはわかっているが口惜しいものは口惜しい……。

 怒りの渦が全身を荒れ狂っている。

 魔凛に卑怯な霊具で同朋を皆殺しにさせるという残酷な仕打ちをさせた男だ。

 そんな男の性器を口で奉仕するなど……。

 

 しかし、魔凛の身体は魔凛の意思とはまったく関係なく動く。

 魔凛は渡されていた武器を地面に置くと、口を開いて眼の前の大旋風の怒張を頬張った。

 

「いつ見ても、この魔凛の口惜しそうな眼が堪らないですよねえ……」

 

「ねえ、隊長、終わったら俺たちにも貸してくださいよ」

 

「おい、狡いぜ。だったら俺もお願いします──」

 

 三人の部下が横から魔凛の奉仕を眺めながら口々に言った。

 

「おう、いいぜ。ただし、条件がある──。場所は、ここじゃない──。城郭の広場の真ん中だ。あの人通りの多い場所でなら、この魔凛を貸してやるよ。大勢の人間族や亜人の兵に見物させながら、この魔凛に奉仕させてやる」

 

 大旋風が言った。

 魔凛は、これまでの「調教」の中で教えられた技を駆使して口で奉仕するように事前に命令されている。

 魔凛の口は大旋風の男根を根元まで吸いあげ、丁寧に舌で全体を舐めあげていく。

 男の性器の舐め方など、これまでまったく知らないし、知りたくもなかった。

 しかし、『服従の首輪』を使って、ひとつひとつ舌技を覚えさせられたのだ。

 魔凛の口はそれを一生懸命に再現している。

 吐気さえ感じる恥辱を覚えながら……。

 

 そうやって奉仕しながら魔凛は、大旋風が言ったことを聞いていた。どこまで魔凛を辱めれば気が済むのか……。

 今度は魔凛が先頭に立って占領したことになっているこの城郭で、その人間たちに見られながら、この口の奉仕をしろというのだ。

 血も凍るような思いで魔凛はそれを聞いていた。

 

「それでもいいです、隊長。やらせてください──」

 

「俺も大丈夫ですよ」

 

 部下たちが言った。

 これでこの後、そんな仕打ちが待っているということが決まった。

 魔凛は自分の眼からすっと悔し涙が流れるのがわかった。

 

「その口惜しそうな表情で奉仕されるのは、いつまでたってもそそるなあ──。その調子で頼むぜ、魔凛──。そうだ。お前の口の中の性感帯があるだろう──。そこに俺の肉棒を擦りつけながら奉仕しな。そして欲情しろ。命令だ──。そのうち、身体だけじゃなく、心も拒否できないようにしてやるぜ。口でやる奉仕が気持ちよくて堪らないように調教してやるよ」

 

 大旋風が哄笑した。

 口の中には確かにたくさんの性感帯がある。

 これまで魔凛は女友達との情交の中で、そういった場所でも愉しんできた。

 知っているということは、逆らえないということだ。

 

 魔凛は舌の両側と口の上の部分に擦りつけるように舌を動かした。

 そこが魔凛の口の中の性感帯なのだ。

 すると口の中だけではなく、全身にさざ波のような疼きが流れていくのがわかった。

 死ぬほど口惜しいが、性感帯を刺激して欲情せよという命令だ。

 そのように行動してしまう。

 

 身体の芯がだんだんと熱を帯びてくる。

 魔凛は愕然とする思いだった。

 同朋の血の臭いの立ち込める地下牢で、この手で仲間の命を奪う命令をした男の性器を舐めながら、しっかりと自分は欲情することができるのだ……。

 そのことに自分自身を呪いたくなる。

 

 だが、快感でだんだんと身体が熱くなってくるのは事実だ。

 自分はなんという恥知らずなのか……。

 自分が自分で情けない……。

 

「咥えたまま、四つん這いになれ。そして、奉仕を続けろ──。命令だ」

 

 大旋風が言った。

 魔凛は大旋風の怒張を舐め続けたまま膝立ちの姿勢から四つん這いに変わる。

 すると大旋風がゆっくりと後ずさり始めた。

 

 魔凛は驚いたが、自分の口は大旋風から離れない。

 大旋風の男根を頬張ったまま四つん這いでついていく。

 大旋風はそのまま同胞たちの血の匂いのする地下牢を後ずさりで回っていく。

 

「おい、お前ら、これをその『映録球』で記録しておけ──。俺の珍棒が愛おしくて愛おしくて仕方がなく、男根を追いかけて口を離さない淫乱女の姿だ」

 

 大旋風がげらげらと笑いながら地下牢を回っていく。

 部下たちが笑いながら『映録球』の設置を開始するのが横目で見えた。

 なにが面白いのか大旋風は魔凛に奉仕させながら、魔凛を四つん這いで歩かせ続けた。

 

 一周歩かされ、さらに二周目になる。

 大旋風はまだ魔凛を許す気配もない。

 もしかしたら、この状態で大旋風をいかせるまでやらされるのだろうか……。

 手足よりも顎の疲労がつらい。

 しかし、同時に口の中を擦る大旋風の肉棒の感触が気持ちよくもある。

 さらに、こんな惨めな姿を晒すという汚辱感が、なぜか魔凛の股間に痺れるような疼きを与え始めているのがわかった。

 そして、そのことに激しい狼狽を覚えた。

 

「よし、今度は両手で自慰をしながら舐めろ。そして、いかせろ」

 

 やっと大旋風がとまった。

 魔凛は舌で大旋風の一物の先を擽るように刺激したり、あるいは一度口を離して口づけをするように吸ったりする。

 無理矢理に覚えさせられた要領だ。

 怖気さえ走る行為だが、首輪の力には抵抗できない。

 魔凛は知っているすべての技を駆使して奉仕をしてしまう。

 それとともに魔凛の片手で乳房を揉み、片手で股間を刺激している。

 これも首輪の力だ。

 

「お前ら、ちゃんと記録してるか? 魔凛の自慰をしながらの口奉仕だ」

 

 大旋風が部下たちに言った。

 

「しっかり記録してますよ、隊長」

 

 部下のひとりが笑って応じた。

 魔凛は服の下には一切の下着を身につけていない。

 強制されるままに自慰を続けていれば、どうしても痺れるような快感が襲ってくる。

 

「すっかりと上達したな、魔凛──。さあ、出してやるぜ」

 

 大旋風がはしゃいだように言った。

 すぐに魔凛の口の中に大旋風の精が迸ったのがわかった。

 

「よし、終わっていいぞ、魔凛。口の中のものを舌に載せせたまま口を開いて、『映録球』に顔を向けろ」

 

 もうどうにでもすればいい。

 魔凛は、“命令”という声を待つことなく、指示に従った。

 

「じゃあ、精を飲め。終わったら、その下袍を脱いで、それで俺の性器を拭け。丁寧にな──。命令だ」

 

 奇妙な命令だった。

 口の中の精を飲ませられることはいつものことだが、服で拭けというのはおかしなことだ。

 いつもはやはり、舌で掃除をさせられるのだ。

 とにかく、魔凛の身体は命令されたことを淡々と実行していく。

 下袍を脱ぎ、下半身が裸身のまま大旋風の性器を拭き終わった。

 

「さて、じゃあ、お前らとの約束だから、城郭の広場に行くぞ──。魔凛は五間(約五十メートル)離れてついてこい。命令だ。手ぶらで来い」

 

 大旋風は歩き出す。

 魔凛は立ちあがった。

 そして、はっとした。

 

 五間(約五十メートル)離れろという命令なので、まだ魔凛の脚は進み始めないが、”手ぶら“という命令をされてしまったので、その状態で脱いでいた下袍を持つことができないのだ。

 

「ま、待ってくれ、大旋風──。ま、まだ、下袍が……」

 

 魔凛の身体は、大旋風たちが五間(約五十メートル)離れるのを待って立ったままでいるが、下半身が素っ裸だ。

 とりあえず、上衣を引っ張って股間を両手で隠したが、前側を引っ張っている分、お尻は丸出しだ。

 

「なんだよ、魔凛? 別にそれでいいじゃねえか。大事な場所は隠れているしな……。まあ、尻は出てるが、人間どもに、その綺麗な尻くらい見せつけてやれよ──」

 

 大旋風は振り返って言った。そして、すぐに進み出す。

 

「なっ──」

 

 魔凛は絶句して、羞恥に震えた。

 なにをさせられるのかわかったからだ。

 下袍で性器を拭けと命じたり、五間(約五十メートル)離れてついてこいという奇妙な指示は、この嫌がらせのためだったのだ。

 

 つまり、魔凛に上衣だけを着て、下半身が裸身のままという羞恥の格好で、人混みを歩かせるつもりなのだ……。

 しかも、そばに大旋風がいるならともかく、魔凛はその格好でたったひとりで歩かねばならないのだ。

 大旋風たちは容赦なく歩いていく。

 

「そ、そんな──」

 

 魔凛は悲鳴をあげたが、それを聞くものはいない。

 大旋風たちは魔凛に構わずに、階段に向かう。

 そして、姿が見えなくなる。

 

 大旋風たちが地上に昇る階段に消えると、魔凛の脚は勝手に前に歩き出した。

 魔凛は必死になって、上衣の裾を両手で引っ張って、どんどん歩みを進める脚の股間を隠した。

 

 

 

 

(第76話『鳥人地獄』終わり)

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