494 雌畜の無限運動
カツ、カツ、カツ、カツ……。
カリッ、カリッ、カリッ、カリッ……。
蹄が床を踏む音と乳首につけられている金具が床を叩くが部屋に響きわたる。
宝玄仙は懸命に脚を前に出して、動く床の上で四つ脚の身体を前に進ませていた。
「はっ、ああっ、いっ……」
しかし、全身に響く快感のうねりにより、油断するとすぐに四肢から力が抜けたようになる。
女陰に挿入されたままの魔法柱が宝玄仙の官能を呼び立てるとともに、異常なまでに感度をあげられている乳首の先につけられた金具が床を叩いて、絶え間のない淫情を加え続けるのだ。
しかも、特殊な施術で四六時中欲情するように整形された肉芽が痛みにも似た疼きを迸らせる。
しかし、宝玄仙は四本脚の歩みをやめるわけにはいかない。
勝手にやめることができない仕掛けが施されているのだ。
宝玄仙がいるのは広い拷問室のような場所である。
壁には、鞭や革手錠や様々な用途の淫具、あるいは拷問具が所狭しとぶらさがっている。
宝玄仙が無限運動を続けさせられているのは、その部屋の中心部だ。
そして、宝玄仙の乗せられている床の中心部の一面が
ただの結界ではない。
電撃の結界だ。その結界に少しでも触れると、とてつもない衝撃の電撃が全身に浴びせられるようになっているのだ。
だから、電撃を浴びたくない宝玄仙は、手足を切断された惨めな四つ脚の姿で歩き続けるしかない。
いまは、それほどの速さではないが、数刻も続けさせられると、汗みどろになるとともに、手脚がふらつく程の運動になる。
だが、ほんの少しでも休もうものなら、床によって身体が後ろの電撃の壁に連れていかれて、宝玄仙は電撃の苦しみにのたうち回ることになる。
そのため、宝玄仙は惨めな姿で馬鹿にされたような無限運動を許されるまで永々と続けている。
しかも、宝玄仙はこれを毎日の日課としてやらされているのだ。
今日で六日目になるが、ここに監禁されて初日に初めてこれをやらされたときなど、四本脚でうまく歩けずに十回以上も電撃を浴びた。
いまでは、四つ脚にも慣れて、やっと満足に歩けるようになったが、それはそれで、ここの連中の卑劣な仕打ちによる家畜化を自分の身体が受け入れたようであり、その屈辱で怒鳴り散らしたくなる。
しかし、いまはその怒鳴る相手もいない。
部屋にいるのは宝玄仙だけであり、ほかに誰もいないこの部屋で宝玄仙は、ただ黙々と動く床を歩かされている。
とにかく倒れないようにしながら、一定の速度を維持するのが大変なのだ。
なにしろ、後肢になる両脚は膝上で、前肢になる両腕は肩口で切断するという非常に不均衡な四つ脚にされたので、身体の平衡を保つのが難しい。
しかも、極端に短い前肢のために、宝玄仙の顔は床の上にすれすれになっていて、前側に重心が異常に偏るかたちだ。
だから、ちょっとでも油断すると、ぐらりと身体が崩れて倒れそうになる。
ここの連中の言い種によれば、毎日必ず運動をして汗を流すのは、よい魔法石を作る「家畜」として必要なことらしい……。
女陰に挿入されている魔法柱は、宝玄仙の身体を苛む張形のかたちをしている。
それを股間に入れっぱなしにして、宝玄仙の持つ異常な霊気吸収力により霊気を集めて、その魔法柱を魔法石と呼ばれる霊気の塊りに加工する。
それが、いまの宝玄仙の役割らしい。
まさに、魔法石を産みだす家畜というわけだ。
この宝玄仙を亜人の家畜にするという連中の企てに宝玄仙の肚は煮えくり返っている。
しかし、いまの宝玄仙にはどうしようもない。
女陰に挿入されたその魔法柱が、物の見事に宝玄仙の霊気を奪い続けている。
どんなに道術力があっても、その力の源である霊気がなければ道術を発揮することはできない。
道術とは、霊気を帯びている生物や自然界に充満する霊気を一度体内に吸収して、それを術者の思い通りに動かすという技なのだ。
だから、霊気を奪われては宝玄仙に抵抗の術はない。
それをいいことに、ここにいる青獅子という魔王や、その部下の蝦蟇婆という調教師の老婆、
まずは、手脚を切断して前後不均等な四本脚にして、その先端に豚の踵をつけた。
この豚の踵というのが、非常にいまいましいことに、地面につける部分が特殊な加工の丸みを帯びていて、二本脚で立とうとすると引っくり返ってしまうようになっているのだ。
そのために、宝玄仙はいまこうしているように、移動しようと思えば否応なく四つ脚で歩かなければならない。
そして、鼻には鼻輪だ。
鼻のあいだの壁に穴を開けられて、そこに大きな鉄の輪を装着されている。
鼻面を引っ張り回されれば、激痛でそれに抵抗することなどできない。
また、以前、千代婆という変態婆に施された乳首の活性化の施術を復活させて異常な感度にさせられた。
しかも、寧坊は、その宝玄仙の乳首に金具をぶら下げるようにして、四つ脚の宝玄仙が歩くときに、必ず、金具が床を引き摺るようにさせるという嫌がらせもしたのだ。
常に欲情し、全身に疼きを貯め続けることは、良質の魔法石を産むために非常に効果があると言って……。
同じような淫乱化の改造として、肉芽の皮の内側に微小の粒を装着して、四六時中、その粒が敏感な肉芽を刺激続けるようにもされた。
さらに、そんな淫靡化の施術をしながら、おかしな
そのため、起きているときには常に、欲情し快感を与え続けられている宝玄仙だが、どんなに欲情しても溜まった快感を発散することはできない。
切断されている四つ脚では自慰もできない。
溜まった淫情を発散させてもらえずに、ひたすら快感を与えられるのは、女の身体にとって性の拷問でしかない。
そして、宝玄仙が溜まりに溜まった淫情を発散させてもらえるのは、時折やってくる青獅子という魔王に尻を犯してもらうしかないのだ。
尻なら欲情を発散できて、疼きに疼く身体を解放されて絶頂できる……。
宝玄仙が青獅子を待ち望むようになるための調教の手段として連中がそうしたのだ。
口惜しいが、宝玄仙も快感が溜まりきった身体を解放できる青獅子の訪問は嬉しく感じてしまうようになってしまった。
だが、青獅子がやってくるのは毎日のことではない。
もともとは、青獅子は、毎日宝玄仙を犯しに降りてくる計画になっていたらしいが、実際には、初日に犯された以外は、青獅子が宝玄仙のところにやってきたのは二回だ。
それについては、魔法柱の管理をしている寧坊が不平をこぼしている。
寧坊は、青獅子が宝玄仙の溜まりきった快感を解放させるときに合わせて、魔法石に成長した魔法柱を交換して、新しい魔法石を宝玄仙の女陰に入れ直すことにしていて、青獅子の訪問が気まぐれで間隔が開くと、宝玄仙の淫気に斑ができて、魔法石の質が落ちるというのだ。
もちろん、そんなことは宝玄仙の知ったことではないが……。
それにしても、こうやって全身を苛む疼きに耐えて、動く床の上を連続歩行をさせられるというのは、本当に自分がなにかの家畜にでもなった気がする。
宝玄仙は歩き続けている。
「はあ、はあっ、はあっ……」
呼吸は荒れ、宝玄仙の口からは絶え間のない嬌声が噴きこぼれる。
粒の施術を受けた肉芽──。
異常感度にされた乳首──。
子宮近くに挿入されて常に膣の中を刺激し続けている魔法石の疼き──。
それが絶え間なく宝玄仙を襲う……。
もしも、この場にあのいまいましい連中の誰かがいれば、宝玄仙が恥ずかしい声を出して、連中に弱みを見せるようなことはしない。
しかし、いまはこの部屋には誰もない。
誰もいなくても宝玄仙には逃げ出すこともできないし、無限運動の責め苦をやめることもできないとわかっていて連中はそうしているのだ。
誰もいなくなり、宝玄仙だけを残して責め苦をさせ続けるという行為自体も、宝玄仙の心を折って家畜化していくための調教の手段であろう。
また、毎日、やらされているこの動く床で行う無限運動の調教は、どのくらい続けるのかの時間が決まっていない。
この五日、運動の時間は毎日異なっていた。
毎日のこの無限運動の責め苦の時間を教えないこともまた、心への責め苦のひとつだろう。
ほんの半刻(約三十分)だったのが一回、数刻単位が一回、半日も続けさせられたのが二回、そして、さらに朝から夜までぶっつづけでやらされたのが一回だ。
朝から夜までやらされたときなど、歩きながら小便もさせられたし、歩きながら飲食をすることを余儀なくされたりした。
最初のときは、蝦蟇婆や寧坊、あるいは、蝦蟇婆の例の白痴兄弟の誰かがつっききりだった。
だが、だんだんと連中がそばにいる時間は短くなり、今日は最初に、蝦蟇婆と寧坊が鼻輪で引っ張って床の真ん中に宝玄仙を置いた以外は、誰も見守ってもいない。
今日はずっとひとりだ。
たったひとりで見張る者もなく、ひたすらにいつ終わるのかわからない責め苦をやり続ける……。
これは、単に肉体の拷問ではなく、心の拷問だ。
やがて、連中は無限運動を終わらせるときにやっと現れて、息も絶え絶えの宝玄仙に声をかけるのだろう。
連中が姿を見せるのは無限運動の責め苦が終わるときだから、少しずつ拷問者を待ち望む気持ちが心を支配していくようになる。
これを続けられると、宝玄仙はいつしか、連中がやってくるのを待ち望むようになる。
それは調教の常套手段だ。
そうやって、家畜として躾けるのだ。
宝玄仙自身もまた、優れた調教師だからわかる。
そして、これが連中の技であることを悟っていても、これをやられ続けると、いつしか頭ではなく心が逆らえなくなることも……。
「はあっ……ああっ……」
宝玄仙は懸命に歩き続けた。
この無限運動のもうひとつの恐ろしさは、身体を苛まれながらあまりもの単調な運動を続けることで、もう身体の疼き以外のことをなにも考えられなくなることだ。
そうやって、思考力を奪っていく……。
その行きつく先には、完全な心の家畜化だ。
そうなる前に、なんとしても逃亡しなければ……。
しかし、どうやって……?
それにしても、今日はどのくらいこれをやらされるのか……?
そろそろ脚に疲労が溜まってきた。
床の速さはそれほどではないので耐えられない運動でもないはずだが、とにかく不均衡な四つ脚は歩きにくいし、いつ終わるのかということがわからない不安が宝玄仙の呼吸を乱れさせる。
なによりも、股間と乳首の疼きが激しい。
宝玄仙はある程度は快感を抑制することはできるのでなんとか耐えているが、歩き続ける自分の身体が官能の熱のために火照り、身体の下にはおびただしい脂汗が滴っていることはわかる。
そのとき、宝玄仙の頭側の扉が開いた。
この調教部屋には前後にふたつの扉がある。
ひとつは、宝玄仙が歩いている後方側であり、外の廊下に通じる扉だ。
もうひとつが、いま開いた扉であり、家畜部屋と呼んでいる宝玄仙がいつも飼われている部屋になる。
そこに、一鉄、二鉄という白痴の亜人もいて、彼らが宝玄仙の直接の世話係だ。
宝玄仙の異常に低い視界には、顔をあげても相手の全身を見ることはできない。
開いた扉から入ってきたのはひとりだ。
サンダル履きの長い下袍──。
どうやら蝦蟇婆のようだ。
「まったく、だらしないほどに股間を濡らしておるのう。ここから見ても、床の上に淫汁がしたしたと落ちているのがわかるわい──。まあ、それが良質の魔法石を育てる秘訣のようじゃからな。せいぜい、そうやって尻を振って歩くといいわ」
蝦蟇婆の嘲笑する声が降ってきた。
「い、いつまで、やらせるんだい……。い、いい加減に解放しておくれよ……。そ、それよりも、少しだけでいいんだ。休憩させておくれ──」
宝玄仙は言った。
しかし、気を抜いたつもりはなかったのだが、次の瞬間に一瞬だけ態勢を崩して、一気に身体を後ろに後退させてしまった。
宝玄仙は慌てて脚を前に出した。
しかし、乳首を苛む刺激がそれによって拡大して、がくんと身体がよろける。
それでもなんとか必死に元の位置に戻って、やっと位置を保つ。
「甘いことを言うんじゃないわ。ちゃんと励んでいるか様子を見に来ただけじゃ」
蝦蟇婆はそう言って、そのまま部屋を横切って、廊下に通じる扉から部屋を出て行った。
無限運動責めが終わるわけではないとわかって、宝玄仙は落胆の気持ちを抑えることができなかった。
再び、ひとりで部屋に取り残された宝玄仙は、仕方なく、また動く床の上を歩き続ける。
肉芯と乳首を疼かせながら……。
そのとき、ふと、宝玄仙はなんとなく、汗で濡れた身体に風が当たるのを感じた。
歩みの体勢が崩れないように注意しながら、前肢の陰から後方を覗ていみる。
すると、視界の隅に、蝦蟇婆が出て行った廊下に通じる扉がわずかに開いているのが入った……。
宝玄仙の全身に緊張の汗が流れる。
もしかしたら、あの扉から逃げられるのではないか……。
扉の向こうがどうなっているのかわからないが、どこかに隠れる場所くらいあるだろう。
そこに隠れて、この建物の亜人たちをやり過ごし、どこかにいるに違いない孫空女や沙那や朱姫と合流する……。
その後はそれからのことだ……。
とにかく、あいつらに合流すればなんとかなるかもしれない……。
やってみるか……。
宝玄仙は四つ脚を忙しく動かしながら、口に溜まった唾を飲んだ。
そして、決心した。
さっき、蝦蟇婆は、様子を見に来たというようなことを口走ったと思う。
つまりは、ここには宝玄仙を隣の部屋から見張っているような監視霊具はないのだ。
だったら……。
蝦蟇婆の結界が決して完全なものではないことは、宝玄仙は最初から気がついていた。
確かに結界はあるが、普通の人間が立ったときの腰の高さほどもない。
霊気が魔法柱に吸収されてるために道術が遣えなくても、一流の道術遣いとして宝玄仙は霊気の感知はできる。
腰の高さよりも上には結界はない……。
つまり、高く跳躍すれば、うまくすれば電撃を浴びることなく結界を越えられるのだ。
しかし、こんな短い肢で結界の壁をうまく跳躍できるか……?
それはやってみるしかない……。
宝玄仙には、常人には見えない結界の壁がまるで色のついた透明の層として感じる。
できる──。
床の反動を逆に利用すれば──。
宝玄仙は駆け足になると動く床のぎりぎり前まで一気に進んだ。
そして、不意に反転する。
床が動く方向に駆けた。
脚の動きに床の動く速度が足される。
身体を起こして跳躍した──。
「でやあっ」
しかし、次の瞬間、自分の試みが完全な失敗であることを悟った。
駄目だ──。
高さがまったく足りない……。
とてもじゃないが、結界の壁を越えるような跳躍など不可能だった。前脚が短すぎて跳躍にならないのだ。
宝玄仙はそのことが跳躍してわかった──。
しかし、もう身体は空中だ。
どうしようもない……。
結界にぶつかるまでの一瞬が異常に長く感じる……。
眼の前に近づく結界の壁を見て、宝玄仙は電撃の衝撃を思い出した。
「うぎゃああ──」
怖ろしい電撃に宝玄仙は部屋にこだまするような絶叫をあげた。
身体を起こそうとしても動く床の上だ。
体勢を崩している宝玄仙の全身を電撃の壁に床が押しつける。
「ひぎいっ──た、助けて──い、痛い──ぎゃああ──」
宝玄仙はもがき続けた。
この電撃は最初はぴりっとするだけだが、だんだんと電撃が大きくなるのを宝玄仙は知っている。
早く、離れなければ──。
しかし、立てない──。
床が動くので、仰向けになった身体を起こせないのだ。
不快な電撃が全身に浴びせ続けられる。
しかも、それはだんだんと大きくなる。
心臓が締めつけられる……。
「なんだっ?」
家畜部屋の扉が開いた。
短い手足で仰向けになってもがいている宝玄仙の視界に少年の寧坊の姿が映った。
続いてやってきた一鉄と二鉄という黒い肌をした巨漢の白痴の双子も……。
「おい、一鉄──。婆さん、呼んで来い──。これは婆さんじゃないととめられないんだ──。触んなよ、二鉄、お前まで感電するぞ──」
寧坊が叫んだ。
「ふんがっ」
一鉄が駆け出した。
それを確認しながら、さらに強くなった電撃の衝撃で宝玄仙の意識は急速に遠のいていった。