「これは試験なのよ……。わたしの猫に相応しいかどうかのね……。猫に相応しくないと判断したら、あんたは殺すわ。魔王軍に逆らった罰としてね」
金凰妃こと
「くっ」
孫空女の全身を震えるような痺れが襲う。
そして、思わず声を洩らしてしまった。
「へえ、なかなかに敏感じゃないの、孫空女。これだったら、わたしの猫として合格にしてやってもいいわよ」
孫空女の胸を後ろから弄んでいる金凰妃が笑った。
「くっ」
孫空女は固く口をつぐんで、それ以上の声を出すのを耐えようと思った。
その孫空女の胸を無遠慮に金凰妃の手が這い回る。
必死に歯を食い縛り、かろうじて恥ずかしい声を出すことだけは耐えた。
「へええ……? 声を出すのを耐えるつもりなの? だったら、こんなのはどう?」
金凰妃の舌が孫空女のうなじを舐め始める。
「ひやっ」
胸を揉まれながらの舌の責めに、孫空女は堪らず、また、甘い声を吐息とともにこぼしてしまった。
金凰妃が勝ち誇ったように高笑いした。
孫空女は口惜しさに、自分の顔が赤らむのがわかった。
「どうやら、気に入ったようだな、金凰妃。ちゃんと管理するなら、持って帰ってもいいぞ。そっちはな。お前の玩具にちょうどいいのではないか?」
空中の金凰魔王が笑った。
「そうね。そうしようかしら……。ねえ、仲良くしましょうよ、お前。さっきの申し出は嘘じゃないのよ……。将校にしてあげるわ。まあ、忠誠の証にちょっとばかり、その宝玄仙の拷問とかを担任してもらうと思うけど、それくらいなんでもないでしょう?」
金凰妃が孫空女の上半身のあちこちをくすぐるように刺激しながら言った。
冗談じゃないと思った。
宝玄仙を裏切るくらいなら、いくらでも死んでみせる。
絶対に裏切らない──。
孫空女は固く心で思った。
それにしても、この金凰妃の愛撫は悔しいくらいに巧みだ。
大したことをされているわけでもないのに、ただ触るだけでどんどん身体が熱くなる。
確実に孫空女の弱点ばかりを刺激してくるのだ。
孫空女は翻弄されていた。
それに、大勢の亜人兵の前で、こんな辱しめを受けるというのも、孫空女の恥辱心をあおる。
脱出成功まで、もうほんの少しだっただけに、その口惜しさが尚更だ。
「なかなか、いいお乳よ、孫空女。なによりも、感度がいいわあ……。そんなに反応してくれるなんて、嬉しいじゃない」
金凰妃が馬鹿にしたように笑った。
「は、反応なんかしてない──はううっ──」
あまりの口惜しさに文句を言おうと思ったら、口を開いた絶好の瞬間を狙うように、金凰妃の指と舌が同時に、孫空女の一番弱い胸とうなじの性感帯を強く刺激した。
孫空女は、あられもない声をあげさせられてしまった。
そのとき、ふと、懸命に口を閉ざそうとしている孫空女の視線が、包囲している一番近い亜人兵たちの視線と合った。
彼らが、孫空女と金凰妃の恥態にごくりと唾を飲んだのを見た。
恥ずかしさに身体が震える。
一方で股間がじゅんと濡れるのがわかった。
くそうっ──。
孫空女は心で悪態をついた。
このところいつもそうなんだが、恥ずかしいと思うと、途端に股間が熱くなって余計に感じる気がするのだ。
「おやっ、お前、もしかして、恥ずかしいと感じてくる変態なの? ますます、気に入ったわねえ……。じゃあ、こうしてあげるわ。変態のお前へのご褒美よ。普通の女にはこれは罰なんだろうけど、変態のお前には、ご褒美でしょう?」
金凰妃が孫空女の乳房から一度手を離し、背後から孫空女がはいていた下袴の腰紐を緩めて、ほんの少しだけおろした。
この衣服は、玉斧が青獅子軍の兵から孫空女を救ってくれたときに、死んだ青獅子軍の兵からとりあげたものであり、上着と下袴はとりあげたが、下着は身に着けていない。
その孫空女のはいている下袴が股間の付け根まで下げられた。
孫空女は少し脚を開いて立たされているので、なんとかそこで止まっているが、金凰妃がもう少し力を入れて下袴をさげれば、孫空女の股間は完全に露わになるだろう。
「い、いい気に……はあっ──」
いい気になるな──。
かっとして、そう言おうとしたのだが、孫空女が口を開くのを待っていたかように、金凰妃が的確に孫空女の感じる場所を強めに刺激する。
それで、また声を出させられる……。
孫空女はしっかりと口をつぐんだ。
すると、金凰妃の手管が、また軽いものに変わる。
神経を逆撫でするような陰湿な責めに、孫空女の肚が煮える。
孫空女と金凰妃の周りには、大勢の亜人軍の兵が取り巻いている。
この女は、その前で孫空女を嬲り者にするつもりなのだと思った。
口惜しさに歯噛みする。
しかし、空中には金凰魔王に人質にとられている宝玄仙が浮かんでいる。
抵抗するわけにはいかないのだ。
孫空女は身体の横の両手の拳をぎゅっと握った。
身体は拘束されているわけではない。
しかし、ほんの少しでも動けば、宝玄仙の肌を裂くと脅されている。
それは、孫空女には十分な拘束だ。
「これはとりあげとくわね。金凰魔王軍の将校になるなら、もっといい服をあげるわ。これは、青獅子軍の兵の服だしね」
金凰妃が孫空女の両腕から上着を引き抜いた。
これ見よがしに、遠くに放り投げて、亜人軍の兵の中に上衣を埋もれさせた。
「ひっ」
そのとき、金凰妃の指が孫空女の裸身の背中の真ん中につっと触れた。
「どうしたの、赤毛の猫ちゃん?」
それが背中の窪みを伝って、すっとおろされる。
そのまま、緩んでいる下袴の中に入り、お尻の亀裂の部分まで指がおりた。
「くううっ」
孫空女は全身を力一杯に仰け反らせた。
「ほらっ、声が出たわね。それにしても、感じているときの声は随分と可愛いじゃない。たったひとりで玄魔隊をあしらうほどの戦士とは思えないわ……。ただし、本当は、いまのは動くなという命令の違反よ。可愛い声に免じて、いまのは大目にみるけどね……。ところで、ここも敏感?」
今度は耳だ。
孫空女の髪がたくし避けられて、金凰妃の舌が孫空女の片耳に滑り込んできた。
「んっ」
孫空女は眉を引締めた。
舌の感触とともに、金凰妃の温かい息が耳に吹きかけられたのだ。
全身にぞくぞくというくすぐったさが拡がり、全身の毛孔が逆立つ。
「耳も感度がいいわね……。というよりは、全身どこを触っても、いやらしく悶えそうじゃない。少しくらい我慢してみてよ。こう、呆気なく次々に、派手に悶えられると、張り合いがないじゃない」
金凰妃が笑いながら、後ろから反対の耳もしゃぶりはじめた。
「あっ、はあっ……はっ……」
唇をしっかりと締めておこうと思うのだが、こうやって耳を交互に舐められると、悪寒のような疼きが止まらなくなってしまう。
その疼きが全身に拡がり、どうしてもそれが孫空女に甘い息を出させてしまう。
こんなところで……。
自分に歯噛みする思いなのだが、どうしても快感が止められない。
なんでもない舌や指の動きなだが、まるで孫空女の性感を知り尽くしているかのように、確実に感じる部分しか責めてこない。
いずれにしても、あまりにも金凰妃の愛撫は巧みすぎる。
たったいま会ったはかりだというのに、確実に孫空女の感じる場所を責めるし、そこに備えようとすると、それを見抜いているかのように場所を変えて、別の備えていない場所を責めてくる。
しかも、背後から責められているので、孫空女には余計に備えられない。
孫空女はいつまでも、大勢の亜人兵が囲む中心で翻弄され続けた。
それが口惜しい……。
「どうしても感じてしまうのが口惜しいの、孫空女──? じゃあ、もっと口惜しがるといいわ……。ほら、今度は舌を出しなさい。逆らえば、お前の大切なご主人様の宝玄仙をぼこぼこにしてしまうわよ」
金凰妃が言った。
「ぼ、ぼこぼこ?」
「ええ、ぼこぼこよ。わたしは、
金凰妃が孫空女の背後から前に出てくる。
「そうだったな、
金凰魔王だ。
相変わらず、すぐ手の届く真横に宝玄仙を浮かべている。
その横の宝玄仙はうな垂れた様子でじっとしていた。
さっき、金凰魔王に引っ掛かれた腹の肌に血がまだ滲んでいる。
また、その両眼はしっかりと閉じられていた。
宝玄仙は、亜人を直接に見ると息の止まる道術をかけられっぱなしなのだ。
だから、こんな風に亜人に囲まれてしまうと、しっかりと自分で眼を閉じているしかない。
孫空女にも理解できるが、自分の意思で眼を閉じたままでいるというのは、なかなかにつらいことなのだ。
だが、それをしなければ、宝玄仙は、呼吸が停止してもがき苦しむ死の恐怖を味わわなければならない。
可哀そうに……。
「ほら、舌だってば──」
金凰妃が言った。
一瞬、この女を人質に取れないだろうかという考えが頭を過ぎる。
この女の動きの素早さは尋常じゃないが、捕まえてしまえば関係ない。
金凰妃は金凰魔王の正妃だ。
さすがに、正妃を人質に取れれば、金凰魔王も宝玄仙との交換に応じるしかないだろう。
だが、問題は孫空女はひとりであり、金凰妃を人質にしたままでは、宝玄仙を抱えて逃げられないということだ。
だったら、馬車を要求して……。
懸命に思考を巡らせながら、金凰妃の要求のまま孫空女は舌を出した。
隙があれば、金凰妃を捕まえてしまうつもりだ。
だが、金凰妃がすっと数歩退がった。
孫空女はびっくりした。
「物騒な女ねえ。このわたしを人質にしようとするなんてね」
金凰妃が呆れた顔で苦笑した。
しかし、孫空女は驚いてしまった。
いま、孫空女は、金凰妃を人質にできないかと、ただ心で思っただけだ。
それなのに、金凰妃はまるで孫空女の心を読んだような反応をした……。
「そういうことよ、孫空女……。わたしは、心が読めるのよ──。だから、わたしの与える快感からは逃げようがないのよ。なんたって、お前の心を読みながら、快感を覚えるように刺激を与えているんだからね。こんな確かなことはないわ……。ほらっ、孫空女、恥ずかしいのが好きなんでしょう? 隠してもわかるのよ。お前のために、もう少し下袴をさげてあげるわ。ほら、嬉しい、変態?」
金凰妃が笑って言った。そして、腰紐が緩んで腰からさがっている下袴に手をかけて、ほんの少しだけ、また下にさげた。
今度は完全に下袴からお尻が露出させられた。
股間は完全に付け根のところでとまっているが、それは奇跡のようなものだ。
ほんの少しでも悶えれば、下袴は落ちる。
むしろ、それが狙いだろう。
そうやって、ねちねちと孫空女をなぶっているのだ。
「そうよ、孫空女。ねちねちとお前をなぶっているのよ。こんなに大勢の亜人兵の前で下袴を剥かれるのが嫌なら、もう悶えるのはやめた方がいいわね……。まあ、さっきまでの様子じゃあ、時間の問題と思うけどね……ふふふ……」
口惜しい──。
孫空女は懸命に身体を硬くして、刺激に耐えようと思った。
全裸にされて、辱しめられるとしても、この女の思惑通りになるのは嫌だ。
いずれにしても、金凰妃が孫空女の心を読んでいると言ったことは、信じられないが本当だ。
いままでのことは、金凰妃が道術で孫空女の心を読んでいると考えれば納得はいく。
逆に、そう考えなければ理解できないことばかりだ。
心が読める女……。
つまり、『読心術』……。
しかも、能力は、瞬間移動……。
これだけの軍隊を同時に跳躍させるだけの道術力と霊気……。
さすがの孫空女も、これでは金凰妃を人質にするなど容易ではない……。
心を読まれるのだとしたら、どうしても先手を取られてしまう……。
「そういうことよ、孫空女。どんな策でも、わたしには通用しないわ……。じゃあ、そのまま舌を出してなさい」
金凰妃がまた近づいてきた。
孫空女の心に、金凰妃を人質にとるのは難しそうだという考えが過ぎったからだろう。
そうやって、ひとつひとつ、こちらの策を潰されてしまうとしたら、とてもじゃないが勝てない。
「そうそう。だから、もう諦めなさい……。それよりも、さっきも言ったけど、わたしの読心術の能力は、別に戦いだけに発揮するわけじゃないのよ……。なによりも、これを性の技としても遣ったときに、その本領を発揮するのよ。なんといっても、心を読んで、感じる部分を集中的に責めれば、簡単に相手を屈服させられるからね」
孫空女が出している舌に、金凰妃の舌が触れてきた。
舌先を擦り合されて、さらに上に下にと舌を舐められて、絡みつかれる。
「あっ……ああっ……」
今度は口を開いているので、乱れた呼吸をどうしても口に出してしまう。さらに、口の中に唾液が溜まり、それが自然に口から漏れ出てくる。
「なかなかにいい感じよ、孫空女。いやらしくてね……」
金凰妃がやっと孫空女の舌を舐めるのをやめた。
孫空女は素早く舌を引っ込めて、口の中の唾液を飲み込んだ。
「なに、勝手に動いているのよ──。動くなと言ったでしょう──。動くなという命令は指先ひとつ──。舌一枚だって同じよ──。命令に逆らえば、こういうことになるのよ。覚えておきなさい──」
すると、突然に金凰妃の表情が激変した。
そして、次の瞬間、金凰妃の姿が消滅した。
孫空女は金凰魔王と宝玄仙が浮かんでいるはずの上空に視線をやった。
すると、その位置に金凰妃がいる。
見ると宙に浮かんでいる宝玄仙の腹めがけて、上から思い切り脚を振りあげている。
目をつぶっている宝玄仙は無防備だ。
「や、やめろおお──」
孫空女は悲鳴をあげた。
殺気を感じたのか、宝玄仙が眼を開けたのがわかった。
「ひうっ──」
宝玄仙が大きな呻き声をあげた。
しかも、眼を開けたことで、突然、顔の正面側にいた金凰妃から眼を逸らすことができなくて、息がとまって苦しみだしたのだ。
その宝玄仙の腹に金凰妃の脚が食い込む。
「んごおおおっ」
宝玄仙の身体が蹴鞠のように地面に向かって蹴り飛ばされた。
「ご主人様──」
孫空女は蹴り落とされた宝玄仙を受けとめようと走った。
しかし、股間で緩められたままの下袴が脚を邪魔して、うまく走れなかった。
「動くんじゃないよ、孫空女」
眼の前に金凰妃が出現した。
その踵が孫空女の腹に食い込む。
もの凄い力だ──。
孫空女は後方に跳ね飛ばされた。
「ふぐむっ──」
宝玄仙の身体が地面に激しく激突する音と、宝玄仙の絶叫が聞こえた。
「ご、ご主人様、大丈夫かい──?」
孫空女は地面に倒されたが、下袴をたくしあげながら、すぐに起きあがって宝玄仙を見た。
宝玄仙は激痛にのたうちまわりながらも、さらに息の吸えない苦しさにもがいている。
また、地面に激突するときに頬を擦ったのか、顔の横から血が滲んでいる。
「動くなという言いつけを守らないからよ……。ほら、こいつは、大事なご主人様なんでしょう? 早く立つのよ。さもないと、この女をわたしが殺してしてしまうわよ」
金凰妃が瞬間移動で宝玄仙のそばに出現して、宝玄仙の髪を片手で掴んで持ちあげた。
「あっ、はっ、あっ……」
いびつで大きな乳房をしている宝玄仙の四肢が苦しそうにもがいている。
まだ息が吸えないのだ。宝玄仙の顔が赤黒くなり、全身が硬直したようになっている。
「ご、ご主人様──」
孫空女はもう一度叫んで、また全速力で金凰妃に飛びかかった。
「お前、余程、頭が馬鹿にできているらしいわね。それとも、この女がどうなってもいいの?」
孫空女が金凰妃に掴みかかる寸前に、宝玄仙の髪を掴んで持ちあげていた金凰妃の姿が消滅した。
「こっちよ、お前」
金凰妃の声がした。
少し離れた樹木の横に金凰妃が立っていた。
孫空女が金凰妃の姿を認めたのを確信して、にやりと微笑んだ。
そして、その金凰妃が髪の毛を掴んだままの宝玄仙の顔を大きく振りあげた。
「ひっ、ひぎいっ、な、なんだい、今度は──?」
宝玄仙はやっと息ができるようになったらしいが、胸が大きく呼吸で動いている。
孫空女は金凰妃がなにをしようとしているのかわかった。
宝玄仙はすぐに眼を閉じてしまったから、わからないと思うが、金凰妃は宝玄仙の顔面を横の樹木の幹に叩きつけようとしているのだ。
「わ、わかった──。な、なんでもするからやめて──」
孫空女は絶叫した。