物語は、やや時間を戻して、舞台を白象宮に移します。
まだ、獅駝の城郭では、青獅子魔王が健在であり、沙那以外の全員は、獅駝の城郭で青獅子軍に捕らえられたままでいます。
その一方で、沙那については、ひと足早く、雪蘭という十歳の貴族の娘とともに、この白象宮に送られようとしていました。
沙那が移送される直前の白象宮では、二大王こと白象という女魔王がいつものように謁見の間で、部族長のひとりと面談をしています。
その白象の玉座の横には、
白象篇ならず、その娘の『小白香篇』となります。
*
525 奴隷になった女魔王
「塩の谷の長の
玉座の母者に向かって、片膝をついて頭をさげている老人が頭を垂れたまま挨拶をした。
老人は、母者の治める領域に属する部族長のひとりで、部落の産物である岩塩を携えて、はるばる母者に面談をするためにやってきたのだ。
「うむ、久しぶりじゃな、蔡福人……。そちも健やかそうでなにより……」
玉座に座る母者の
その玉座に隣接する副座に腰掛けている十二歳の
小白香が座っている副座は、白象の座る玉座とまったく同じ構造のものであり、白象のひとり娘の小白香が、王太女として魔王の白象の謁見に同席するようになった二年前に設置されたものだ。
同席はするが小白香が会話に参加することは滅多にない。
小白香は、ただ隣にいるだけだ。
魔王である白象は、小白香の母者だ。
絶世の美女というわけではないが、娘の自分から見てもそれなりに美しいと思う。
なによりも、肌がとても白くて美しい。
ただ、母者の美しさを大きく損なっているのは、その亜人族の中でも抜きんでた巨躯だ。
もっとも、身体は大きいが肥っているというわけではなく、抜群の均整のとれた体型のまま、背丈だけが大きくなった感じだ。
だから、母者である白象魔王に面すると、多くの亜人たちは、まるで幼児に戻って母親と会っているような印象を抱くらしい。
それで、誰ということもなく、いつしか、母者のことを“
母者は、魔王宮への貢献度の高い者に対しては、“御前”あるいは“母御前”と呼びかけることを許している。
母者を“御前”と呼びかけることができるのは、百数十ある領域内の部族のうち、限られた部族の長にのみに与えられる特権なのだ。
蔡福人が、御前と呼びかけたということは、この部族長は、宮廷府としても重要な部族の代表なのだろう。
とりとめのない時候の話が続いている。
無論、蔡福人が白象の宮廷府にやってきたのは、ただの時候の挨拶をするためではないだろう。
なんらかの陳情があるに違いない。
しかし、なかなか本題に入らないのは、そういう現実の生々しい話は、一応の挨拶を交わしてからということになっているようだ。
儀礼というのはそういうものらしい。
いずれにしても、領内に属する多くの部族長たちのそういった陳情を最終的に宮廷として受け入れるという意思の表明──。
その儀式が、眼の前で行われている部族長と魔王である白象の面談だ。
それにしても退屈だ。
小白香は我慢できなくなり、そろそろ始めることにした。
いつ始まるのかわからない焦らしで、じわじわと白象の心を追い詰めるのも悪くはないが、部族長の陳情をただ横で聞いているだけというのも飽いたのだ。
小白香は、懐にしまってあった小さな球をそっと取りだした。
大きさは親指の先ほどなので、握ってしまえば、小白香がなにかを手のひらに隠しているということは誰にもわからない。
小白香は、その球を白象がいる玉座の反対側の右手に持ち、わずかに霊気を込めた。
「くっ……」
横で白象が小さく息を吐き、びくりと身体を動かしたのがわかった。
くるぶしまである長い下袍に包まれた母者の股間には、特殊な仕掛けがしてある。
つまりは、白象の股間に装着させている貞操帯の内側には、びっしりと短い触手の繊毛が生えているのだ。
しかも、小白香の持つ球を通じて、その触手を自在に操作して、白象を責めたてることができる。
小白香がたったいま球に込めたのは、その繊毛の先をゆっくりと動かしながら、先端から痒み成分のある分泌液を一斉に噴き出させる道術だ。
娘の小白香から、二年近くも痒み調教を受け続けている白象にとっては、まだ発狂するほどの痒さではないはずだが、即効性のある痒み油を股間の全面に吹き付けられた白象は、たちまちに耐えられない痒みのもどかしさに襲われただろう。
しかも、白象の股間は、毎日の習慣として、もどかしい痒みが続くように貞操帯の内側には、しっかりと痒み汁をまぶしている。
そこを新たな痒み剤とともに刺激されるのはたまらないと思う。
だが、白象は平静を装って蔡福人との会話を続けている。
さすがは、魔王というところだろう。
しかし、小白香は、母者である白象の顔に浮かんだ激しい焦りと微かな被虐酔いの色に忍び笑いをしてしまった。
一度、触手の分泌液を股間全体に吹き付けられてしまえば、後は、刺激を与えられない限り、その痒みが癒されることはない。
何事もないように、白象は蔡福人との会話を続けているが、それがどこまで続けられるのか見物というものだ。
小白香は、声を殺して喉の奥で笑った。
母者の魔王としての仕事の大半は、こうやって白象宮にやってくる多くの部族長などと面談をすることだ。
それは単なる挨拶を受けるという場合もあるが、今日の場合のように、彼らの抱えている問題への介入や宮廷府に対する陳情の場合も多い。
しかしながら、魔王である白象が、それを判断する必要はない。
眼の前の蔡福人のように、宮廷府に対する用向きがあったときは、宰相である
優秀な百眼女は、前もってほかの大臣や部下と協議し、宮廷府としてなんらかの対処をすると判断した事項についてしか魔王との面談を取り取りつがないのだ。
従って、白象がなにかの判断を求められることなど滅多にない。
だから、魔王である母者は、ただ、こういった陳情者の話に頷くだけだ。
まともに話など聞く必要もない。
もっとも、いま母者は、蔡福人の会話の半分も耳には入っていないだろう。
腰をしきりにもじもじと動かすのは、激しい掻痒感を耐えるのがもう難しくなっているからに違いない。
しかし、広い謁見の間の中央付近にいる蔡福人には、その白象の変化はわかりようがないはずだ。
だが、すぐそばにいる小白香だけにわかる動きだが、白象の脚の震えが大きくなった。
ほんの少しずつだが、白象の貞操帯の繊毛は少量ずつの分泌液を吐き出し続けている。
じわじわとうごめきながら……。
分泌液が肌に触れることによって引き起こる掻痒感は、その分泌液の量に比例して拡大する。
つまり、白象を苦しめている股間の痒みは、だんだんと激しくなっているということだ。
そして、それは小白香が道術を解放するまで、癒されることはない……。
しかも、あるかないか程度の刺激を加えられる……。
被虐体質に染まっている白象には堪らないはずだ。
ちらりと白象が恨めしそうな視線を小白香に向けた。
そのあいだも、白象は握っている玉座の肘掛けを握ったり離したりしている。
少しもじっとしていられないだろう。
もちろん、少しもじっとしていないという点では、丈の長い下袍に包まれている白象の太腿も同じだ。
女魔王の白象は、こういった宮廷外の部族長などとの謁見のときでも、あるいは、臣下との会合などのときでも、貧乏揺すりをするようにしきりに内腿を擦り合わせるのを常としている。
白象の部下たちは、その仕草を単純な癖だと思っているかもしれない。
だが、その癖が実は二年前から始まったことなど、当の昔に忘れ去ってしまっているだろう。
白象の貧乏揺すりの真の理由は、ひそかに装着させている小白香特性の貞操帯のためなのだが、これは白象と小白香だけの秘密である。
しかし、いくら擦り合わせたところで、あらゆる外部からの刺激を遮断してしまう貞操帯は、どんな刺激も白象には与えない。
狂いそうな痒みが襲われている股間の痒みを癒してくれるのは、小白香の道術だけなのだ。
白象の腰の動きがだんだんと大きくなるのを確認しつつ、小白香は、右手に隠している弾力性のある黒色の球体を二度三度と強く握った。
「あっ」
隣の玉座に腰掛けている白象が悲鳴をあげかけて、あわてて唇を噛みしめた。
その顔がみるみる真っ赤になる。
玉座の肘掛けに置かれた両手がぐっと強く握りしめられたのがわかった。
同時にわずかに白象の背が弓なりに反りかえった。
「母者、どうかしたのか?」
小白香はわざとらしく声をかけた。
「な、なんでもない……。は、話を続けよう、蔡福人……」
白象は必死に声を噛み殺しているような仕草で、そっとすがるような視線を小白香に向けた。
しかし、小白香は、素知らぬ顔をして、さらに球に道術を込める。
白象の貞操帯の内側に生えている無数の短い触手が、小白香が握っている球体に与える刺激に応じて、白象の股間全体を触手の先で舐めるように動きだしたはずだ。
痒みで追い詰められていた股間を触手の先で刺激される快感は、息も停止するほどの甘美感だろう。
白象の大きな乳房がぶるぶると揺れ、閉じ合せている下袍の中の膝も震えだした。
白象の脚が力を失うように開き、慌てたように閉じ合される。
そして、それがまた、開くというようなことが繰り返しだした。
すでに眼は虚ろだ。
それでも、蔡福人との会話に淀みを感じさせないのはさすがだと思った。
そして、やっぱり、この白象魔王こそ、筋金入りの被虐好きの変態女なのだと小白香は思った。
白象に履かせている貞操帯の触手は、ほかにも球体に与える刺激の与え方や小白香の道術によって、肉芽、女陰、肛門の一部だけを責めたり、触手の一部を太くして二穴責めにもできる。
その刺激の強さも小白香の自儘だ。与える痒みもいくらでも調整できる。
いまは、ぎりぎりのところを見極めて、白象を責めたてている。
もちろん、小白香は、母者である白象が、どこまで耐えられるのかを知り尽くしている。
小白香にとっては、痒みにしろ、焦らしにしろ、白象が我慢できる寸前のところまで追いたて、そこから上がることも下がることもさせずに、留まらせることなど簡単だ。
そうやって、限界まで長時間、白象をその状態にさせた挙句、最後の最後に発狂するほどの快感を与えるのだ。
しかも、すでに母親の白象を上回る道術力を有している小白香は、白象が小白香の許可なく道術を使うことを封じている。
この小白香の責めで、あの気儘で気性の荒かった白象は、実の娘の小白香の性奴隷になり果てた……。
かつて白象のものだった奴隷宮やその奴隷たちは、その支配者だった白象自身を含めて、いまや、小白香の所有物だ。
「い、いかが、なされましたかな、御前?」
小白香の言葉で、頭をさげていた蔡福人がやっと白象に視線を向けた。
だが、そのときには、白象の態度はさっきと変わらぬ平静を装ったものに戻っている。
しかし、その顔の赤みとじわじわと噴き出ている額の汗は、白象の状態が普通ではないことを示していた。
だが、小白香ほど白象の近くにはいないその老人には、白象の変化にはまだ気がつかないようだ。
白象の玉座と小白香の腰掛ける副座の横に侍る女衛士は、さすがに、なにが起きているのかは察しているのだろうが、彼女たちは平然としている。
このふたりに限らず、白象と小白香のそばに侍る者については、小白香の道術が支配しており、小白香が白象に対してなにをするのを眼の前で見ても、それを自覚することは絶対にできない。
だが、実の母親である白象魔王は、ひとり娘の小白香の性奴隷──。
それは事実だ──。
しかし、実の母親であり、三魔王のひとりでもある白象が、すでに娘の小白香から道術を支配されており、性奴隷のように調教されているという事実は、宰相の百眼女でさえも知らないことなのだ……。
そして、小白香は、それを公表するつもりもない。
しばらくは、白象には、これまで通りに三魔王の片割れとして、気儘で強い女魔王の演技を続けてもらうつもりだ。
「……な、なるほど……しかしながら、西の塩田の開発には、予想以上の資金が必要かもしれんということか……はあっ……」
白象が蔡福人に語っている。
しかし、その白象の股間では、小白香の作った触手の繊毛が意地悪く白象の股間の性感帯を苛んでいるだろう。
白象の肉芽を包む貞操帯の内側の触手がくすぐるようにうごめき、淫らに振動を与えながら女陰や肛門に入り込んで振動して、白象の肉の感覚を狂わせているはずだ。
じわじわと神経を焼き尽くすような痒みを与える分泌液を撒き散らしながら……。
だが、さすがに時間をかけて責め続けると、白象も声を出すのを我慢できなくなる。
小白香はそれを見極めて、母者の白象が声を耐えられなくなるぎりぎりのところで刺激を停止してやった。
白象ががくりと脱力したような仕草をした。
だが、すぐに歯を喰いしばるようにして、姿勢を戻す。
刺激を復活させたからだ。
小白香は、その必死さが面白くて懸命に横で笑いを我慢した。
その健気な姿には、二年前までの我が儘で冷酷な女魔王の面影はない。
かつては、白象魔王の気儘と冷酷さは、三魔王軍の中でも有名だった。
いまは、以前に比べれば、やや影を潜めてきたとも言われていたが、三魔王の中で、白象がもっとも扱いにくく、冷酷だという評判に変化はない。
二年前に母娘の立場が密かに逆転してからも、白象には対外的には以前と変わらぬ我が儘魔王の態度をとらせていたからだ。
表向きには、冷酷だった奴隷への扱いも変化させてはいない。
白象の奴隷宮は、三魔王の中の奴隷宮で、もっとも非道な扱いを与えるということで有名であり、その評価にも変化はない。
変わったのは、白象の奴隷宮が、いつの間にか“
一年ほど前頃からのことであり、それは、白象の奴隷宮の事実上の支配を小白香がするようになったことに関係がある。
いずれにしても、表向きには、まだ白象は、男には興味を抱かず、性の関心は女だけであり、しかも、女を嗜虐により責め苛んで愉悦に耽る変態だということになっている。
だが、実際にはは、この白象はすでに娘の小白香の調教によりすっかりと被虐の虜になってしまっている小白香の奴隷女だ。
冷酷だと悪名高い白象を、その娘の自分が、こうやって好きなようにいたぶって嗜虐し、それに逆らうこともできずに母者の白象が小白香の与える責めに酔う……。
世の中にこれ程に愉しいことがあるだろうか……。
小白香は、再び刺激を中断した。
かすかだが、汗にまみれている白象ががくりと身体を脱力させる。
「ほう……。塩の畠を西に拡げたとな。それは重畳──」
「実際に生産を軌道に乗せるには半年は必要かと思いますが、来年頃からは、納められる岩塩の量も倍になるとも見積もられますし、その質も……」
蔡福人の報告に、白象はにこにこと必死に微笑んで頷いている。
小白香は、触手をしばらく静止したまま放置しておいてから、球体を刺激して、もたもや触手貞操帯の責めを復活させた。
あっという間に白象の顔に悲痛な表情が浮かびあがった。
そうやって、会談のあいだずっと、触手を動かしたり静止したりを繰り返して白象を翻弄してやった。
白象の顔が女魔王としての顔から、すっかりと淫情に耽る雌の表情に変わっていくのかはっきりとわかった。
面談が半刻(約三十分)というところで、小白香は白象側の肘掛けを指で軽く鳴らした。
それが合図だ。
小白香がこれをするまで、部族長との面談を終わってはならないと白象に命令してあった。
さもなければ、白象は、痒みと触手の責めに耐えられずに、あっという間に蔡福人を追い出して、小白香に痒みを解放してくれと哀願をするに違いないのだ。
「……きゅ、宮廷からの資金援助については、宰相に申し伝えておく……。く、詳しいことを話すとよい……」
すぐに、白象が早口で言った。
「待て、蔡福人殿──」
初めて小白香は口を出した。
「なにか、小白香王女殿下?」
蔡福人が顔をあげた。
こいつからすれば、白象の娘の小白香がこの会談に口を挟むということを考えていなかったはずだ。
声をかけられたことに、少しだけ意外な表情をしている。
「塩の谷の部族長には、わらわと年端の同じ孫娘がおったな……。
小白香は言った。
蔡福人は思わぬ小白香の申し出に破顔した。
塩の谷の部落といえば、部族の中では大きなものに入るのであろうが、三魔王軍を支配する魔王族と一族のひとりに個人的な繋がりができるなど望外の悦びであろう。
小白香は、白象魔王のひとり娘だ。
白象宮の間違いのない後継者というだけではなく、金凰魔王、青獅子魔王にもまだ後継者となる子がないので、この小白香が魔王族の次の世代の唯一の存在なのだ。
その小白香と個人的な繋がりができるというのは、彼らの一族にとって、得にこそなれ、損となることはない。
「もったいないお言葉──。必ず、近いうちに連れて参ります」
蔡福人が言った。
「それは嬉しい──。是非とも、半月でも一箇月でも、白象宮に滞在してくれると嬉しい。わらわの友達になってくれと伝えておくれ」
小白香は言った。
もちろん、小白香の狙いは、その万姫を友にすることではない。
小白香と同じ歳の万姫の美しさは、遠いこの宮廷府でも伝え聞いていた。それを飼い馴らしてみたい。
そして、お気に入りの貞操帯を装着させて、小白香の玩具に……。
これで、蔡福人との会見は終わりだ。
蔡福人が退出の挨拶をして退がっていく。
「ふう……」
謁見場から蔡福人がいなくなると白象が大きく吐息をして、玉座に体重を預けるようにした。
触手はいまは静止している状態だ。
「あ、相変わらずの容赦のない責めね……、小白香……」
白象が恨めしそうに小白香に視線を向けて微笑んだ。完全に被虐酔いしている淫らな女の顔がそこにあった。
「まだまだ、こんなものじゃ、終わらんぞ、母者──。今日は、一日、わらわも、この下らぬ母者の仕事に付き合うのじゃ。そのあいだ、母者もわらわの悪戯に付き合ってもらう……。せいぜい耐えて女魔王としての威厳を保ち続けて、わらわに見本を示しておくれ。頼むぞ、母者」
「そ、そんな……」
白象の顔が被虐に歪んだ。
しかし、小白香は、それを無視して手に持っている球体に道術を込めた。
「ひうっ」
白象が声をあげた。
再び、白象に履かせている貞操帯の触手が活発に動き出したのだ。白象が淫らに震えはじめる。
しかし、少し動かしただけでとめてしまう。
痒みに苛まれているときに、ほんの少しだけ刺激してから、すぐにそれを取りあげてしまう……。
これが効くのだ。
下手に刺激されたことで、白象には狂うような掻痒感しか残らないはずだ。
「ねえ、小白香、もっと、奥をいじってよ──」
ついに、白象が我を忘れたように叫んだ。
この謁見の間にいるすべての衛兵が、小白香の道術に支配されていて、完全に小白香の言いなりであることを白象は知っている。
それでも、普段の白象であれば、衛兵の前ではしたない言葉は使わない。
いまでこそ、白象は、小白香に完全屈伏した女魔王だが、二年前まで、この白象宮の完全な支配者だったのだ。
その自負が、小白香の人形になったかつての部下たちの前で、娘の小白香に恥ずかしい哀願をすることを躊躇わせていたはずだ。
しかし、その衛兵の前で哀願の言葉を叫んでしまうほど、今日の責めはかなりつらいのだろう。
いまの白象は、これ以上の責めには、寸時も耐えられないという感じだ。
その理由も明白だ。
白象を悩ましている貞操帯は、小白香の気まぐれによって、すでに五日間外していない。
だから、この五日間、一度も癒されることがない痒み責めで、白象は完全に追い詰められているのだ。
それが白象の普段の耐性を奪ってしまっているに違いない。
本来であれば、一日に一回程度は、貞操帯を外して自慰をしていい時間を与える。
だが、今回は五日間も嵌めっぱなしだ。
この状態で耐えられないような痒みを与えれば、さすがに白象であろうと、すでに発狂しているとは思うが、小白香はそんなに優しくはない。
耐えられるぎりぎりの痒み責めをしている。
だから、狂うこともできない。
もっとも、とても眠れはしないのだろう。
よく見れば化粧で隠してはいるが、目の下にくまができている。
かなり、ぎりぎりなのかもしれない。
「仮にもわらわは、実の娘ぞ──。その娘に奥をいじれなど、恥ずかしくはないのか、母者?」
小白香は笑った、
「そんなことを言われても……」
白象は痒みの苦痛に顔を歪めた。その表情に、残酷な列女とも称されて怖れられたかつての女魔王の面影はない。
「そんなにつらいか、母者? さっきから、こつこつと靴で床を鳴らす音がずっと続くようじゃが、足はどうかしたのか?」
小白香は意地悪く言った。
「ああ……。わかっているでしょう……。ま、股が痒いのよ。もう五日も奉仕奴隷を貸してもらっていないのよ。もう狂いそうよ──。痒くて、痒くて……痒くて、もう仕方がないのよ──。お、お願いよ。いい加減に許してよ──。わ、悪かったから──」
「なにが悪かったのじゃ、母者?」
小白香は惚けた。
「い、意地悪はやめて、小白香──。あなたに無断で、宝玄仙を金凰大王単独のものにするという兄さまの申し出に同意して申し訳なかったわよ──。で、でも、それがなんだというのよ──。その代わりに急遽、沙那という宝玄仙の供の女を呼んだわ。あ、あと、あなたが気に入りそうな人間族の童女も……。あ、ああ……。ま、股が痒い──。もう、助けて──」
白象が泣くような声をあげた。
*
この白象宮のエピソードについては、単なる痒み責めではなく、
以前、別サイトで投稿していたときは、そちらを掲載していました。
読者を選ぶため、再投稿にあたって、直していくつもりですが、初期稿も投稿してます。
勇気のある方は、そちらにもどうぞ……。