「ふ、服を……服を脱ぐのよ、雪蘭──。下着もなにもかもすべて──」
沙那はそう叫ぶとともに、自分の服を脱ぎ捨て始めた。
確かに、布地の当たっている部分を猛烈な痒みが襲っている。
服を脱がなければ、さらに痒みが大きくなることは間違いない。
慌ただしく短い下袍の腰紐を解いて下袍を足元に落とす。
続いて、急いで上着を脱ぎ捨てた。
全身が焼けつくようだ。
ただの水だと思っていたのは、媚薬成分というだけでなく、怖ろしい痒み効果のある薬剤だったのだ。
小白香の声が言及したとおり、確かに服を着ていた部分から痛みのような痒みが湧き起こっている。
しかも乳首の先と股間全体は、まるで骨まで染み込むような鋭い痒みだ。
沙那は腰布の下着に手をかけた。
下着を着たままでいることが痒みを引き起こしているのであれば、すぐに脱がなければ……。
「ひうっ」
しかし、濡れた下着を脱ぐために腰から引きおろしたとき、指が股間に当たって、痒みに襲われている股間全体に刺激が加わった。
腰の奥深くに沁み込むような疼きと快美感が込みあがる。
「うわあっ」
その瞬間、右腕が二の腕の真ん中から消滅した。
「気をつけるのだぞ、ふたりとも──。あらゆる刺激は、自分で痒みを弄ったとわらわのかけた道術が判断してしまう。手で擦るどころか、脚で擦っても、腿を擦り合わせてもいかん。言っておくが、相手の痒い部分に触っても、自分の身体を掻いたとみなされてしまうぞ。床や壁に擦りつけるのもだめじゃ。とにかく、股間と乳首だけにはなにも触れるな」
笑い声とともに部屋に愉しそうな小白香の声が響いた。
沙那は肚が煮えくり返るような思いに襲われながらも、残った片手で腿に下がっていた下着を足元から抜く。
「かゆい……かゆい……、かゆいです、おねえさん──。ぎゃああ──。ま、また指が──」
雪蘭のすすり泣くような声に続いて、絶叫が響いた。
沙那は、雪蘭に視線を向けてびっくりした。
雪蘭はまだ服を着たままだったのだ。
そして、布の上から自分の胸と股間に手をやり、頭を激しく揺さぶって泣きじゃくっている。
よく見ると、もう手の指が三本ずつに減っていた。
「ば、馬鹿──。服を脱げって言ったでしょう、雪蘭──。そ、それと両手を身体から離しなさい──」
沙那は怒鳴りつけた。
雪蘭は全身をびくりとさせて、怯えたような泣き顔を沙那に向ける。
「痒い部分を擦ったら指が消えるのよ──。わからないの──? それに、さっさと服を脱ぐのよ──。お前がまだ着たままの服が痒み剤を身体にさらに染み込ましているのよ──。腿を擦っても駄目──。脚を開きなさい──」
沙那は雪蘭に駆け寄った。
片手になった腕で、雪蘭の服を脱がせにかかる。
沙那の怒鳴り声で、雪蘭が慌てて閉じていた脚を開き、股間と胸に置いていた手を離した。そして、服を脱ぎ出す。
「し、下着で股間を擦っちゃだめよ……。わ、わたしの腕もそれでなくなったんだから……」
上衣に続いて下袍を脱ぎ去った雪蘭に沙那は言った。
雪蘭の上衣の下には、中衣のような薄物があり、その下にさらに下着を身に着けている。
しかも、やたらに留め具や紐があり、本当に脱がせにくい。
なんでこんなに面倒なのだと舌打ちしながら、沙那は片手で一生懸命にそれらを解いていく。
雪蘭もまた、痒い痒いとうめきながら、下着の紐を解いている。
やっと、雪蘭を腰の布一枚だけにさせると、沙那は雪蘭に脚を少し開かせたまま、ゆっくりと腰布をおろさせた。
沙那の場合は、このときに下着に手が当たって股間を布越しに擦ってしまったために、腕が一本消滅したのだ。
雪蘭の裸身は、ほんの少し胸が膨らんでいる程度の完全な童女体型だ。
乳首は小さく、それが少しだけ突き出ている。
雪蘭の足先から下着を取り去った。
亀裂が入っているだけの綺麗な雪蘭の股間が現われる。
沙那は、雪蘭の裸身をちらりと見て、染みひとつない真っ白い肌というのは、雪蘭のような身体を称するのだろうと思った。
大貴族の子供だというが、傷ひとつつかないように、大切に育てられたというのは、それだけでもわかる。
雪蘭が下着を床に置くと、それを待っていたかのように、床に散らしていた沙那と雪蘭の服が消滅した。
「あっ、服が──」
沙那は思わず声をあげてしまった。
「ならば、明日の朝に様子を見に来るぞ、ふたりとも……。それと、さっきも言った通りに、濡れた絨毯にはたっぷりと痒み液を充満させておるからな。特別に床に擦りつけて痒みを癒すのは許してやろう。まあ、その代わりに、たっぷりと皮膚に痒み液が染み込むのは間違いないからのう……」
「こ、この変態──」
部屋に響く声に向かって、沙那は悪態を突く。
肌をつけるなと言われても、ここは調度品などなにもない、ただのがらんどうの部屋だ。
足の裏を絨毯から離す手段などない。
唯一の方法かもしれなかった衣類を足の裏の下に敷くことは、たったいま、その衣類を部屋の外に転送させられることで消滅した。
足癬病から逃れるためには、空中に浮かぶことくらいしか逃げ道はない。
「……せいぜい痒みを我慢することだ。床に足を擦りつけて完全に痒み液が肌に仕込み込めば素敵な贈り物をしてやろう。じゃあ、わらわはいく。仕事の失敗をした右京を母者と調教せねばならんしな……」
「ま、待ちなさい──。い、いえ、待って……待ってください、小白香様──。お願いです──。な、なんで、こんな酷いことをするのですか──? せ、せめて、雪蘭くらい、この部屋から出してください」
沙那は必死で叫んだ。
「……さっきの薬水は、一刻(約一時間)に一度、すべての壁と天井と床から噴出される。逃げようとしても無駄だ。一回ごと、お前たちの全身が完全に濡れるまで薬水の噴出は続くからな。とにかく、その痒み液が肌から乾くことはないから安心せよ──」
「かゆい……かゆいわ……かゆい……もうだめえっ──」
切羽詰った雪蘭の声がした。
雪蘭が自分の胸と股間に手をやっている。
とめようとしたが遅かった。
股間と胸にやった手から雪蘭の指が一本ずつ消えて、親指と人差し指だけになっている。
さすがに、雪蘭がぎょっとして自分の身体から手を離す。
「ほほほ……。残り一ずつだね、雪蘭──。だけど、お前の場合は、指が一本ずつ残るから、それで痒い場所を掻きむしっちゃうのう……。それだと面白くないから、指が一本ずつになったら、腕が後手に拘束されるようにあらかじめ道術をかけておくとするか……。じゃあ、つらいだろうけど、明日の朝まで頑張るのだぞ──。明日の朝になったら、雪蘭はまだ未通女であろうから、先ずはその股に痒み棒を咥えさせる練習じゃ──。沙那はいい痒み奴隷になるために、できるだけ痒みに耐性を作る特訓の開始だな」
それで最後だった。
それから沙那がいくら叫んでも、小白香の声は戻ってこなかった。
沙那と雪蘭は、全身に痒み液をかけられ、足癬病の種の充満した絨毯を敷き詰めた部屋に放置されてしまった。
「せ、雪蘭、わ、わたしの足の上に足を乗せなさい──。わたしに抱きつくのよ」
おろおろと泣くばかりの雪蘭に沙那は叫んだ。
せめて、この雪蘭を怖ろしい足癬病から守ってやらなければと思ったのだ。
いずれにしても、どう考えても、沙那がそれから逃れる手段はなさそうだ。
沙那は、もう自分の足が病気に侵されるのは諦めた。
雪蘭が部屋の真ん中にやや脚を開いて立つ沙那に駆け寄った。
沙那の足の甲に雪蘭の両足が乗る。
その雪蘭がぴったりと沙那の肌に自分の肌を押しつけた。
雪蘭の肌は火のように熱かった。
そして、少しも耐えられないのか、沙那の胸に頭を押しつけるようにして、激しく顔を揺さぶった。
「そ、そんなに動かさないで、ふうううっ──」
沙那は片手で雪蘭の身体を支えながら悲鳴をあげた。
雪蘭の頭は、ちょうど沙那の胸の辺りだ。
彼女が頭を動かすと、痒みに侵されている沙那の胸が揺すられて刺激が走るのだ。
「ちょ、ちょっと、雪蘭……、あはああっ──」
雪蘭の頭が沙那の乳首を擦ったのだ。激しい快感に沙那は悲鳴のような嬌声をあげて身体を震わせた。
「ひいいっ──ま、また指が──」
雪蘭が沙那に抱きついていた片手を離して、自分の手を見た。
その片手の指が人差し指だけになっている。
沙那の乳首を刺激したために、道術が作動したようだ。
「と、とにかく、じっとして──。じっとできないかもしれないけど、じっとするのよ──」
沙那にはもうそれしか言えない。
雪蘭は頷いて、再び腕を沙那の背に回した。
沙那と雪蘭は、ぴったりと裸身を寄せ合いながら部屋の真ん中に立った。
両脚をつけている湿った絨毯には、たっぷりと痒み液が充満していると思うと、身の毛もよだつ思いだが、せめて雪蘭の足を守るためには、沙那が犠牲になるしかない。
そうやって、沙那は雪蘭ととともに、腰骨を揺さぶるような痒みに襲われる裸身を小刻みに震わせながら抱き合った。
「お、おねえさん……か、かゆい──。も、もう、雪蘭はいっそ死にます。舌を噛んで、この苦しみからにげたい──。お父さんとお母さんのところに行きたいの──」
雪蘭は泣きじゃくった。
「残酷なことを言うようだけど、舌を噛んで人間は死ねないわ──。すぐにここの亜人たちに治療されるだろうしね」
舌を噛んで死ぬという話をよく耳にするが、舌を噛んで死ぬのはかなりの時間がかかることを沙那は知っていた。
歯で切断した舌がうまく呼吸をする喉に詰まってくれれば、比較的短い時間で窒息死できるが、さもなければ、舌から流れる血で身体が弱まってゆっくりと死ぬのを待つしかない。
おそらく、そんなことをしても、たちまちに、ここの亜人に助け出されてしまい死なせてももらえないだろう。
それにしても痒い──。
眼の前で痒い痒いとすすり泣く雪蘭にも腹が立ってくる。
泣こうが喚こうが、痒みに変わりはないのだ。
痒いとうめき続けられると、全身を蝕む痒みの沙那の苦悩がさらに増大するような感じになる。
「かゆい──かゆいです──」
雪蘭は苦しそうに顔を動かして、腰をがくがくと揺すり続けている。
やがて、自分の股間を沙那の腿に擦りつけるように動かしだした。
もちろん、ほとんど無意識の動きだろう。
沙那もさっきから下腹部を中心に疼くような痒みを覚えているから、少しも腰をじっとさせることができないのは同じなのだ。
「そ、それも駄目よ、雪蘭──。痒みを解したと道術に判断されてしまうわ──」
沙那は声をあげた。
しかし、もう遅かった。
雪蘭の手が急に背中に回った。
そして、ぴたりと雪蘭の背中側で手首と手首が密着したようだ。
ついに、最後の一本の指も消滅したのだろう。
慌てて沙那は自分の残っている片腕で雪蘭の身体を支える。
「かゆい……かゆいです……、おねえさん……」
それでも、雪蘭はまだ泣きじゃくって身体を揺すり続ける。
沙那ももう耐えられそうになかった。
この身体の芯まで届くような痒みには、沙那もなすすべなどない。
自分も襲われているから、まだ幼い、ましてや、貴族の娘だった雪蘭に、こんな苦悩が耐えられないというのは理解できる。
しかし、沙那にはしっかりしなさいと励ますことのほかにできることなどなかった。
雪蘭は、ますます苦しそうにして、全身から脂汗のようなものを流し続ける。
しばらくのあいだ、ただ、肌を寄せ合ってふたりでもがき続けた。
どのくらい経った頃だろうか……。
あまりの酷い痒さに、沙那の視界も真っ白になりかけていた。
「きゃあ──」
「ひゃっ──」
そのとき、一斉に四方八方から水が噴き出してきたのだ。
一刻(約一時間)に一度、薬水が噴出すると言った小白香の言葉を思い出した。
やっと一刻(一時間)経ったのだと思った。
明日の朝まで、どのくらいの時間があるのだろう……。
この屋敷に入れられるときは、まだ、陽は中天を越えたくらいだった。
だから、まだ夕方までにもかなりの時間があるだろう。
明日の朝まで──。
それを考えると沙那は気が遠くなるほどだ。
「ひうっ、ひっ、ひうう──」
雪蘭が悶えるような声をあげた。
沙那の腰も砕けそうだ。
下側から強烈な流水が当たっている。
雪蘭もそうだが、沙那の股間にも床から噴き出す強烈な薬水が痒みに襲われている股間に噴き当たっているのだ。
股間の痒みを癒してくれる水流の快感に、沙那の全身の力が抜ける。
それどころか、そのまま達してしまいそうだ……。
「だ、駄目──ち、力が……。さ、支えられない……。ひっ、いくっ──いくっ……」
沙那の身体はとにかく刺激に弱い。
こんな流水程度でも、一度火がつくと、自分でもどうしようもなく狂ったように絶頂を繰り返す。
ましてや、痒み水をかけられて全身がただれるように敏感になっている場所に、こんな直接的な刺激を加えられるのは致命的だ。
沙那は雪蘭を抱いたまま懸命に脚に力を入れようとした。
しかし、沸き起こった官能の波によって、全身が痙攣するように震えるのを抑えられなかった。
「ぐううっ──」
沙那の腰ががくりと砕けた。
「お、おねえさん──?」
雪蘭がびっくりしたように声をあげた。
だが、その途端にぴたりと水流が止まった。
沙那は大きく息を吐いた。
そして、痒み水でびしょびしょになった身体の姿勢を戻した。
「ご、ごめんなさい、雪蘭……」
沙那はそれだけを言った。
こんな童女の前ではしたなくも、流水で達しそうになった……。
それを考えると沙那の全身が羞恥で熱くなる。
「お、おねえさん……かゆいです……もう、もうだめ……がまんできません……」
すぐに雪蘭が再び泣きじゃくり出す。
沙那も新たにびっしょりと痒み水で股間を濡らされることで、怖ろしい痒みに襲われていた。
「そ、そうだ──。わ、わたしの腕を噛みなさい──。そ、それで少しは違うかも……」
咄嗟に言った。
沙那も襲われている股間を突きあげるような雪蘭の痒みが、それで少しは癒せるかもしれないと思ったのだ。
雪蘭は自分の痒みを沙那に訴えるかのように、二の腕の中心から失われている沙那の腕に歯を食いこませた。
腕に激痛が走る。
しかし、沙那は耐えた。
雪蘭は沙那の腕を噛み続ける。余程に痒いのか、雪蘭が沙那を噛む力はどんどんと強くなる。
一方、沙那は、肌に食い込む雪蘭の歯の痛みに顔をしかめながら、その痛みの苦痛によって、股間や胸を襲う鋭い痒みを少しでも忘れようとした。
「が、頑張るのよ、雪蘭──」
沙那は、片腕で雪蘭の裸身を支えながら、沙那の腕に力一杯噛みつく雪蘭に懸命に声をかけ続けた。
*
「お、お許しを……。小白香殿下──。あ、あのう……。白象陛下に……白象陛下にお取次ぎください──。お、お願いです」
右京は目の前に立つ小白香に叫んだ。
ここは白象の離宮だった。
政務の場所である白象宮に隣接して建てられており、奴隷宮とも呼ばれて、白象とそのひとり娘の小白香の私的な生活の場でもある。
しかし、そこは、完全に白象宮とは隔離と分離がなされており、正殿である宮廷側の衛兵や官吏は、離宮の内部に立ち入ることは許されていないのだ。
基本的に、この離宮にいるのはほとんどが奴隷であり、離宮の管理も、主に彼女たち奴隷が行う。奴隷以外で離宮で働く者は非常に少なく、また、なぜか、その離宮付きの衛兵や官吏は、滅多なことでは離宮から出てこない。
右京が離宮に連れてこられたのは、たったいまのことだ。
衛兵の軍営に待機していると、突然に小白香の呼び出しを受けて、離宮の中に道術で転送されたのだ。
もちろん、右京が離宮に入るのは初めてだ。
転送されたのは、拷問具が壁に並ぶやや広いこの部屋だった。
しかも、転送と同時に、右京は首に革の首輪をかけられて、その首輪を天井から繋がれた鎖を繋げられて部屋の中心に立たされてしまっていた。
手足の拘束はないが、首輪は道術のかかったしっかりしたもので、右京の力では外しようがなかった。
そして、この部屋で待っていたのが、いま目の前にいる王女の小白香だ。
まだ、十二歳だが、白象以上の気紛れ屋だという噂だった。
しかも、その年齢にしては、早熟であり、母親の白象と同様に奴隷女を嗜虐をするのが好きだと耳にしたことがある。
その小白香から告げられたのは、衛兵の将校として粗相をした罪により、奴隷身分に落とすという言葉だった。
右京は恐怖に包まれた。
「黙れ──。母者は忙しいのじゃ。それに申し開きは無駄だ──。お前の怠慢で、青獅子魔王から移送された沙那の手錠をかけ損なっていたために、わらわはその沙那に襲われたのだ──。死ぬかと思うような恐怖だったぞ──。お前の処分は、母者が決めたことだ。お前は、今日から将校でもなんでもない。この離宮で飼う小白香と母者の奴隷だ」
鎖で首を引き揚げられて立っている右京の前に立つ小白香が、両手を腰に置いて言った。
その顔には薄笑いが浮かんでいる。
右京を怯えさせるのが愉しくて仕方がないという感じだ。右京は、まだ十二歳にすぎないその少女の表情にぞっとしていた。
「で、でも、白象陛下に申し開きを……。こ、これは、あまりに理不尽です……。い、いきなり、奴隷身分になど──」
右京は言った。
なんの弁明も許されないまま奴隷身分に格下げなど酷過ぎる。
そんな無法は、この小娘の気紛れとしか思えなかった。
そこに白象がやってきた。
「さっそくやっているのね、小白香──。手回しが早いこと……」
白象が小白香の横に立った。
「……へ、陛下──。申し開きをさせてください……。い、いえ、もう一度、機会を──。わたしの失態は殿下から伺いました。言い訳はしません。で、でも、奴隷など……。せ、せめて、兵に格下げして、もう一度、白象軍で失態を償う機会を与えてください──」
右京は一気にまくしたてた。
「……ところで、沙那と雪蘭はどうしたの?」
白象は、右京の叫びなど耳にしていないような態度で小白香に言った。
「例の部屋で、この離宮の洗礼を与えておる。痒み水で全身をびっしょりに濡らしてやってな……。明日の朝には、指と腕がなくなって、痒み奴隷と奉仕奴隷としての準備ができあがろう……。調教は明日からだ」
「そ、そう……。そうなのね」
白象は頷いた。
しかし、なんとなく、右京の言葉はもちろん、小白香の言葉にも、心あらずという感じだ。
また、いつものようにせわしなく腿を擦り合わせるように動かしながら、身体全体を小刻みに動かしている。
女魔王の癖である貧乏揺すりだ。
そういえば、貧乏揺すりといえば、小白香もまた、サンダルはきの足元を苛ついたように動かすことが多い。
親娘揃っての癖なのだろうか……?。
「は、白象陛下──。どうか、お願いです──」
右京は叫んだ。
しかし、なんとかく白象と小白香の関係に違和感を覚えた。
どことなく、白象に、小白香に対する遠慮のようなものを感じるのだ。
それは、ただの勘にすぎないかもしれないが、白象から娘の小白香に対する気後れのようなものを感じる。
直感だったが、あの気儘で性格の強い白象が、娘の小白香に媚を売るような表情をしきりに向けているのだ。
「……それよりも、母者──。ここになにをしに来たのだ? 右京は母者の性奴隷にしてやるとは言ったが、少しわらわが遊んでからだぞ。母者に下げ渡すのは、その後だ」
「わ、わかっているわ……。で、でも、い、いつものあれを忘れているんじゃないかと思って……。今日の政務は終わったわ──。や、約束じゃないの……。股を……奉仕奴隷を貸してよ。股間が痒いのよ──」
白象が悲鳴のような声をあげた。
「股が痒いのであれば、遠慮なく掻けばよいであろう。なぜ、わざわざ、娘のわらわに頼むのだ?」
小白香が笑った。
すると、白象が泣きそうな顔になった。
右京はびっくりした。
「だ、だったら、道術を解いてよ──。わたしが痒い場所を自由に掻けるようにして──。この忌々しい貞操帯を脱がせて──。お願いよ──。一日でいいのよ。なにもない一日をすごさせて──」
「なにを言うのじゃ、母者。母者には、この痒みの向こう側の快感のことを、もうすっかりと理解してもらったと思っておったがなあ……。まだ、痒みが嫌だというのであれば、もう一度調教をやり直さねばならんのかのう……?」
「そ、そんな──。そ、それは、堪忍して」
白象が悲鳴をあげた。すると小白香が声をあげて笑った。
右京は驚愕してしまった。
しかも、貞操帯?
「まあ、とにかく、その寝椅子に横になるがいいぞ、母者。いつものように身体を拘束したら、奉仕奴隷を連れて来てやろう」
小白香が言った。
「あ、ありがとう──。す、すぐ、横になるわ。だ、だから呼んで──」
白象の顔が破顔した。
そして、白象は嬉しそうに、部屋の隅にある寝椅子に横になって、両腕を頭の上に伸ばした。
すると、寝椅子に装着されていた革紐が勝手に動いて、白象の手首や胴体や脚を拘束し始めた。
しかも、両膝を左右の手摺りに載せた大股開きの恰好だ。
右京は声も出せないくらいに驚いていた。
さっきから眼の前で起きていることはなんだろう?
あの白象魔王が、娘の小白香の前で、無防備に身体を拘束されるのを許容している。
それどころか、いまの態度は、どう見ても小白香の指示に白象が従っているとしか思えない。
そして、母親であり、魔王の白象が娘の小白香に媚びへつらうような態度と言葉……。
しかも、さっき小白香は、白象のことを調教するというようなことを言わなかったか……?
「ね、ねえ、縛られたわ……。は、早くしてよ──」
白象が拘束された身体を忙しく動かしながら言った。
女魔王の全身を長椅子に拘束する革紐は全身のあちこちに及んでいる。しかも、上半身については服越しに革紐が食い込んでいるが、下半身については紐が下袍に入り込んで、下袍の下で脚を拘束しているみたいだ。
いずれにしても、白象は寝椅子に脚を開いて座った状態で身動きできなくなったようである。
また、下袍に包まれているが、白象の股間はさっきから淫靡に激しく動いている。
右京は、やっと白象の様子が尋常じゃないことに気がついた。
「……ところで、母者──。この右京を呼び出す直前に知ったのだが、この右京には妹がいるらしいではないか。右京のふたつ下の十八だそうだ……。それを耳にして、ちょっとした余興を思い付いたのだ──。だから、母者の力で、その右京の妹も奴隷にしてはくれんか?
「えっ、妹?」
白象がきょとんとした声を出した。
だが、右京は突然に妹の名が出たことにぎょっとした。
「適当に罪をでっち上げて、その夢華も罪人にして、この離宮に連れて来てはくれぬか──。わらわは、この美人姉妹を一緒にいたぶってみたい──。例の足癬の研究の実験台にしたくてな。それで、ちょっとした思い付きじゃ。姉妹愛と足癬病の恐怖を天秤にかけたら、どちらが勝つのだろうかと思ってな。ちょっとした実験だ」
小白香が笑った。
右京は仰天した。
「ゆ、夢華になにかしようというのですか──? そ、そんなことはおやめください──」
右京は叫んだ。
「あ、あなた、わたしに無実の娘を捕らえてこいと命令するのかい?」
寝椅子に拘束されている白象も眼を見開いている。
「嫌とは言わせんぞ、母者」
小白香がにやりと微笑んで、指をぱちりと鳴らした。
白象が身に着けていた下袍から一斉に十数本の紐が解けた。どういう仕掛けになっていたか知らないが、白象のはいていた下袍がばらばらの布片になって落ちる。
白象は下着を身に着けていなかった……。
いや……。
そう思ったのは一瞬だけで、すぐに股間に喰い込んでいる細い革製の貞操帯が出現した。
右京は目を丸くした。
すると、小白香が、ふところから一本の筆を取りだした。
白象がそれを見て、顔を恐怖の色に染まらせた。
「わらわの願い事を聞いてくれるな、母者?」
小白香が笑いながら、白象の無防備な貞操帯に手を伸ばす。
金属音がして、貞操帯が外れた。
真っ赤に充血している白象の女陰が露わになる。
ものすごい量の愛液が貞操帯が外れるとともに、座椅子部分に流れ落ちる。
「な、なんで筆を……ひいいいいいい」
小白香が筆をすっと白象の剝き出しの股間に這わせた。
すると白象がけたたましい悲鳴をあげる。
右京には、目の前で起きていることが理解できずに狼狽えた。
あの白象の身体を拘束して、王女の小白香が股間をくすぐっていたぶっているのだ。
そんな行為を平然と白象魔王にやっていることの恐ろしさに、右京は度肝を抜かれてしまった。
「わ、わかった──。わかったわ、小白香──。お前の言う通りにするから、それは許して──」
白象が悲鳴をあげた。
右京は愕然とした。
「そ、そんな、夢華には手を出さないで──。わたしは、ど、奴隷としてお仕えします。でも、どうか夢華だけはお許しください。妹には、許嫁もいるのです。ふたりは本当に愛し合っているのです」
右京は懸命に叫び続けた。すると、小白香が嬉しそうに微笑んだ。
「母者、右京の妹の夢華には、婚約者もいるそうだ。ついでだ──。その許嫁の男も奴隷にしてくれまいか……。沙那がいるから、面白いことを思い付いたぞ。その男を痒み責めにして、許嫁の前で痒みから解放したければ、沙那と乳繰れと言うのだ──。それで、愛をとるか、痒みを癒すのをとるか選ばせる。わらわの痒み責めに屈せずに、許嫁を裏切らなかったら、ふたりを放免するという条件を出してもいいのう」
小白香が狂ったような声で笑いながら、母親の白象の足の裏をまたくすぐりだした。
すぐに白象は、夢華もその許嫁も奴隷にして連れてくると、悲鳴とともに約束してしまった。
「ゆ、許してください、小白香様──。ふ、ふたりには手を出さないでください。なんでもします。なんでもやりますから──」
右京は必死に叫んだ。
すると、やっと小白香が右京の方に視線を向けた。
しかし、その顔には、無邪気な笑みが浮かんでいる。
だが、右京には、その十二歳の王女の微笑みがどんなものよりも、恐ろしいものに思えた。
「ほう? なんでもすると言ったか、右京? ならば、試してやるか。いますぐ、その場で素っ裸になれ──。その後、わらわの責めに耐え抜けば、妹のことは考えてやってもよいぞ」
小白香の眼が妖しく光った気がした。