「ああ……も、もう駄目──いいっ──」
距離はあるが、うつ伏せで浮いている白象の裸身は、下からでも十分に眺めることができる。
その空中の白象が自分の乳房を掴み、股間の奥に手をやって指を奥に入れたのがはっきりと見えている。
謁見の間に集まった家臣団や武官たちが騒然となった。
「で、殿下、おやめください──」
さっきから小うるさい女だ……。
有能であることは確かであり、白象が信頼して宰相にしている女なのだが、小白香からすれば、ただの中年女だ。
白象宮の宰相になったのは、もう十数年前のことらしく、小白香が物心ついたときにはいまの地位にいた。
いまでも美貌は保っているが、当時は絶世の美女と言われたらしい。
しかし、白象は、百眼女の美貌ではなく政治力を買っていまの地位に就けた。
それから、百眼女は結婚もすることなく、宰相として白象宮を支え続けているようだ。
もちろん、実権もある。
白象宮の政事が、白象でもなく、ましてや、小白香でもなく、この百眼女を中心に動いていることは小白香も承知している。
しかし、それは、政事に興味のない白象が、この女に権力を集中させることで宮廷の仕事をすべて任せてきたからだ。
それをいいことに、この女は、自分に大きな力があると過信しているのだろう。
だから、いま、白象に取って代わろうとしている小白香を軽んじるような行為を続けているに違いない。
もっとも、どんなにがなり立てようとも、小白香が玉座の周りに作っている結界には、誰も立ち入ることはできない。
百眼女をはじめとして、小白香の行為を諌めようとしている連中は、その結界の外から怒鳴るだけだ。
また、同じような結界を高い天井近くの空中に浮かべている白象の周りにも作っている。
だから、一日前からずっと同じ場所に浮かべている白象に、誰も手出しができないのだ。
「あうっ、はあっ、はあっ──ひっ、ひっ、ひいっ、はうっ──」
悲鳴のような白象の嬌声が大きな部屋に響き渡る。
白象の身体は、かなり高い天井近くまであげているので、本来は白象の嬌声は床のここまでは聞こえにくいのだが、白象を包んでいる結界の中の音を部屋に響き渡るように流しているのだ。
そのため、白象の女としての声や、白象がいやらしく淫汁をまさぐる音までもここまではっきりと聞こえてくる。
「皆の者、見よ──。魔王の……元魔王の自慰の姿を──。しかし、ここからではよく見えぬか……。では、下におろしてやろう。じっくりと見物するがよいぞ。白象魔王の人生最後の自慰をな──」
小白香は、天井高くにあげていた白象を包んでいる結界を床すれすれまでおりるように道術をかけた。
それとともに、白象が受けている痒みの感覚をさらに敏感にしてやった。
「ひあああああ」
おりてくる途中の白象から奇声が聞こえた。
もう白象からは、正常な意識は消滅し、半ば正気を失った状態に戻っただろう。
白象を包んだ結界が、床近くの視線の下に到達した。
床近くまでおりた白象の身体の周りにわっと家臣たちが殺到する。
もちろん、誰も白象を包む結界に手は出せないが、白象を包んだ結界がおりてきたことで、ここに集まっている家臣たちは、白象の醜態を見上げる態勢から、取り囲んで見物する体勢になった。
「陛下──」
「陛下、しっかりしてください──」
「陛下、お気を確かに──、陛下──」
十人ほどの武官と家臣が床に降りてきた白象を助けようとした。
しかし、小白香が白象の周りに刻んでいる結界が、余人が近づくことを阻止する。
結局、彼らは浮かんでいる白象の周りでおろおろするだけだ。
同時に、小白香は、いま、白象を助けようとした家臣たちの顔をはっきりと記憶した。
ほかの多くの者は、白象への仕打ちが王太女である小白香がやっていることを承知しているので、日和見をして事態を見守っているという感じだ。
それに比べて、あの十人ははっきりと白象を助けようとした。
つまりは、小白香のやっていることを阻止しようとしたということだ。
もっとも、どんなに家臣たちが集まろうとも、いま、この宮殿内で道術を扱えるのは小白香だけだ。
その他の者が遣う道術は、宮殿全体を包む巨大な結界が邪魔をしている。
小白香は、白象の体勢をうつ伏せから仰向けにした。
これで白象が自慰を貪る光景が周りの亜人たちに見やすくなっただろう。
「はああああっ──」
その白象が大きく背中を仰け反らせた。
するとさらに官能が昂ぶったのか、開いていた脚を自らさらに大きく開いて、股間をくねらすように指を抽送しはじめた。
掻痒剤で狂っているとはいえ、これほどにみっともない姿もないであろう。
「ひいっ、い、いいっ──はうっ──」
あまりの白象の狂態に次第に、謁見の間がしんとなり始める。
天井から床近くまでおりた白象は、果たして目が常軌を逸していた。
ただ、両手を激しく動かし、乳房と股間を掻きむしるように自慰をしているだけで、もう自分が部下たちの眼前で羞恥を晒しているという自覚もないに違いない。
白象の周囲の家臣たちは、知性の欠片も感じることができない白象の自慰の姿に呆然としている。
この謁見の間には、おそらく百人は家臣たちが集まっているだろうか……。
小白香が、素裸の白象をこの本殿である白象宮の謁見の前に浮かびあげてやったのは昨日のことだ。
それで、その異変にほとんどの宮殿の者が集まっているのだ。
「はうっ──はあっ──」
白象は、もう周りを見ることができないのか、家臣たちがいる床までおろされたというのに、それを気にすることなく、仰向けで大きく脚を開いた体勢で宙吊りにされている身体を淫らにくねらせて自慰を続けている。
胸を喘がせ、全身の毛孔のすべてから汗を噴き立たせながら花芯に指を突っ込んで乱れ捲る白象の姿は我が母親ながら淫らで煽情的だった。
「も、もう、これだけやれば、十分でしょう──。いい加減にしなさい、殿下──」
百眼女の金切り声がした。
その叱るような口調に、小白香はむっとした。
白象に仕えているあいだは、宮廷側の複雑な政事を捌いてくれるので人畜無害の便利な女と思っていたが、いざ、小白香が使うとなれば、生意気すぎる気もする。
それに、いまの最後の言葉は、明らかに小白香を軽んじている感じだった。
小白香が、まだ十二歳の小娘だということで甘く見ているに違いない。
まあ、白象が、この女をこれまで甘やかしてきたつけが、この態度に繋がっているのは間違いないだろう……。
この女には、自分の立場を理解させる必要があるだろう。
「しつこいのう、百眼女。いい加減黙らんと、わらわも怒るぞ」
小白香はじろりと百眼女を睨んだ。
同時に、これまでわからないように遮蔽していた小白香の霊気を百眼女だけにわかるように開放した。
小白香は、本当はこの宮廷の誰よりも巨大な霊気を持っているが、普段は霊気を隠す力によって、十二歳相当の霊気しか出さないようにしている。
その本来の霊気を百眼女だけに垣間見せてやったのだ。
すると、百眼女がたじろいだような表情になって、顔色を蒼くして退がっていった。
百眼女は、いまの一瞬で、小白香から凄まじい霊気を感じたはずだ。
それで恐怖で身体がすくんでしまったのだろう。
強いものに逆らうことに、魔族の本能が拒むのだ。
「殿下、これで済ませて頂ければ、わたしたちも、単なる親子喧嘩の範疇と見過ごします。しかし、これ以上の蛮行は、宮廷府全体に対する反抗とみなさざるを得ませんが──」
今度は、近衛軍団長の
百眼女が少し退がるかたちになったので、入れ替わるように小白香に迫る結界の先頭に出てきた。
二葉も、この騒動の最初から、百眼女とともに、小白香に抗議をする者たちの中心になっている。
二葉は、長身で凛々しい感じのする美しい女将軍だ。
別に白象宮には、女しかいないということはないが、白象が女が好きなためか、要職を占めるのは女ばかりだ。
しかも、どれも女としてそれなりの外見であるというのは、白象の選り好みもあるのだろう……。
なんとなくそう思った。
要職につく女の家臣を白象が抱くわけではないだろうが、白象は男が嫌いで美女が好きだ。
だから、白象宮で出世するには、美女でなければならないという世間の噂もあるらしい。
小白香は、それが満更嘘でもないことはよく知っている。
いずれにしても、この二葉も、昨日から小白香がここに現われるたびに、宰相の百眼女とともに、小白香をしつこく諌めようとする。
「はああっ──」
白象が大きな声をあげた。白象に絶頂のうねりがやってきているのは明らかだ。
やがて、吠えるような声をあげて、白象が全身を硬直させた。
達したのだろう。
しかし、それでも白象は自慰をやめない。
当然であろう。
白象の全身に塗布した掻痒剤は一度や二度の自慰で収まるようなものではない。
それをたっぷりと股間に塗ってやったのだ。
放っておけば、白象は女陰が擦り切れるまで、指で擦りまくるはずだ。
小白香は、小白香が刻んでいる結界の壁の外で叱るような声をあげ続けている二葉を無視して、とりあえず、白象の周りにいるあの十人に道術をかけた。
最初に白象を助けるような素振りをした十人だ。
「ひっ?」
「な、なに?」
「うわっ、なんだ?」
その十人が騒ぎ出した。
小白香の道術によって、十人の身体が宙に浮かんだのだ。
そして、ゆっくりと浮きあがっていく。
「……お前たちは、わらわが死刑と判決を下した白象を助けようと、その淫婦に駆け寄ったであろう。わらわはしっかりと見ておったぞ──。これは見せしめでもある。新たな支配者であるわらわの行為に逆らう者がどのように扱われるか、皆も見るがよい──」
小白香は、右手をくるりと回転させるような仕草をした。
すると、宙に浮いている十人の身体が反転して、頭が下になる。
十人のうちの半分は女であり、下袍を履いていたので、それが下にさがって下着が露わになる。
女たちが悲鳴をあげて、下袍を抑えようとするのを両手を背中に回させて阻止した。
ほかの男たちも同じように両手を背中に回して、頭を下にしてどんどんと天井に浮きあげていく。
「こ、これも殿下の仕業ですね──。おやめください。お願いします──」
百眼女が驚いた口調で再び前に出てきた。
しかし、先程までに比べれば、口調に遠慮がある。
「殿下──」
二葉も真っ赤な顔で怒鳴っている。
こっちはかなりの怒りの表情だ。
「なんじゃ、お前ら、うるさいのう──。これは、わらわに反抗心を持つ者への罰を与えておるのだ。少しばかり懲らしめたら、おろしてやるわ──。そこで見ておれ」
小白香は言った。
すでに、十人は頭を下にしたまま、完全に両脚を天井にまでつけるまで引きあがっている。
十人が泣き声をあげ続けている。
この謁見の間の天井は高い。
高い宮殿の屋根の部分近くまで吹き抜けになっており、そこから頭を下にしてぶらさげられるのは、途方もない恐怖に違いない。
「陛下、すぐに悪戯はおやめください──」
二葉が怒りも露わにして怒鳴った。
「そ、そうです──。彼らになんの落ち度があるというのです──」
百眼女も悲鳴のような声をあげる。
「わかった。おろせばよいのだな──」
小白香はにやりと微笑んだ。
そして、彼らを浮かべている道術を解いた。
両手を背中に回させている道術はそのままに……。
十名の絶叫が広間に響き渡った。
頭を下にした十人が一斉に床に落ちてくる。
「きゃあああ──」
「ひゃああ──」
「うわああっ──」
「ひいいい──」
十人の悲鳴と謁見の間に集まっている大勢の亜人の悲鳴が交錯する。
続けざまに、頭から落下した身体の塊が床に激突する音が鳴り響く。
床に頭を叩きつけられた十人が、脳味噌と血をぶちまけて床で死骸となった。
謁見の間が大騒ぎになった。
これまで野次馬気分で集まっていた者たちが、大挙して謁見の間から逃亡しようとして出ていく。
小白香は、謁見の出入り口を封鎖した。
扉に殺到しようとしていた者たちが、それによって行く手を阻まれる。
「な、なんてことを……」
百眼女が真っ蒼になっていて、床一面に広がった血の海を見つめている。
「お前たちがしつこいので、言う通りにしてやっただけだ。わらわは、しばらく宙吊りにしてから、ゆっくりと床までおろしてやるつもりだったが、すぐおろせとしつこいのでそうしただけだ──。可哀そうなことをしたのう、お前たち」
小白香はうそぶいた。
「こ、こんなことは許されません、殿下……」
二葉も真っ蒼な顔で震えている。
「許せなければ、どうするのだ、二葉──」
小白香は、二葉を睨んだ。
「ひっ──。な、なにを──?」
二葉が悲鳴をあげた。
彼女は、突然玉座の前で四つん這いになったのだ。
無論、小白香の道術だ。
その姿勢を崩せなくなった二葉は、懸命に身体をもがかせているが、小白香の道術に逆らえるわけがない。
小白香は立ちあがって、二葉の前に歩いていった。
一時的に玉座の周りに刻んだ結界の外に出て行くかたちになったが、今度は誰も小白香に近寄ろうとはしない。
むしろ小白香が動くことで周りの家臣たちが後ずさりしていく。
百眼女でさえも、もうなにも喋らずに口を閉じている。
百眼女にしても、二葉にしても、白象宮の中では重鎮中の重鎮だ。
たとえ、どんなことがあろうとも、自分たちだけはなにもされることはないと思い込んでいたのだろう。
だから、さっきから小白香のことを侮って、偉そうな言葉を喚き散らしていたに違いない。
小白香は二葉の四つん這いの身体の下に手を伸ばして、近衛軍団長の階級章をむしり取った。
そして、『取り寄せ術』で、手元に『奴隷の首輪』を取り寄せる。
これを嵌められると、どんなに高い道術を持とうが、それは遣えなくなる。
また、手足も弛緩するので、武芸のたしなみがあっても主人に逆らうことはできなくなるのだ。
それを二葉の首に嵌めた。
「な、なにをなさいます、殿下──」
二葉が狼狽えた声をあげた。
「お前は、わらわに逆らった罪によって、近衛軍団長の地位を剥奪して奴隷身分とする──」
「そ、そんな──」
小白香は、叫び声をあげた二葉を無視して、顔をあげた。
「誰か、この奴隷をここで犯せ──。男なら自分の性器で、女なら道具でいい。それができたら、誰であっても近衛軍団長にしてやるぞ」
「な、なんですって──?」
絶叫したのは、四つん這いの姿勢を強いられている二葉だ。
謁見の間が当惑と驚愕の入り雑じった声で騒然となった。
しかし、すぐに前に出てくる者はいない。
だが、小白香は、ひと際大きな身体の軍装の武官の男と視線が合った。
じっと挑戦的な視線を小白香に注いでいる。
小白香は、この男がやる気であることがわかった。
「お前の名は?」
小白香はその巨漢に訊ねた。軍装からすれば将校のようだ。この男が二葉の部下であることは間違いない。
「小官は、
「副官か──。ちょうどよい。こっちに来い──」
小白香はそう言うと、花炎に近衛軍団長の階級章を渡した。
「この奴隷の膣にお前の精を注ぎ込め。それで、お前は近衛軍団長だ」
「わかりました。お任せください──、陛下」
花炎はにやりと微笑んだ。
「期待しているぞ」
小白香は、花炎が“陛下”と呼んだことを否定しなかった。反転して玉座に戻っていく。
「で、殿下──。しょ、小白香様──。こ、これはあんまりです──。だ、誰か助けて──お、お願いだ──助けて──百眼女様、あなたからも言ってください。こ、こんなことは許されません──」
二葉が大きな声をあげているが、騒然としているだけで、二葉を助けようとする者はいない。
名指しで助けを求められた百眼女も苦しそうに目を背けているだけだ。
二葉の悲鳴だけが、大きな部屋の中でこだましている。
小白香は再び玉座に腰掛けた。
見ると、花炎が動けない二葉の下袴の紐に手をかけているところだった。
あっという間に、二葉の下袴を足首まで脱がしてしまう。
「な、なにを考えているのだ、花炎──。や、やめんか──。やめるのだ──ひいっ──」
「申し訳ありませんが主命ですので、ご容赦を……、軍団長……」
花炎は笑いながら、今度は二葉の腰の下着に手をかけた。
「や、やめろおおお」
二葉は必死になって腰を振って、脱がされまいとするが、両手も両脚も床にぴたりと密着しているのでどうにもならない。
下着も簡単に足首までおろされてしまう。
「ば、馬鹿、や、やめるのだ──。お前までなにをしようとするのだ──」
二葉はさらに叫んだ。
「遠慮することはないぞ、花炎──。そいつは、もう軍団長ではない。ただの奴隷だ──」
小白香は玉座から花炎が二葉を犯そうとする光景を眺めながら言った。
「では、奴隷の二葉……。いまだから言いますが、俺はむかしから、あんたに惚れていたんですよ。あんたの軍服の下の肢体はどんなものだろうと夢想したものでしたよ……。こうして、あんたを抱けるなんて夢みたいだ──。もう、死んでもいいかもな」
花炎は、二葉の背後から下腹部に手を伸ばすと、二葉の股間を愛撫し始めた。
まるで電撃でも浴びたように二葉の身体が びくりと強張った。
「い、いやっ──。さ、触るな──。お、お願い、触らないで──。だ、誰か──。ほ、本当に助けて──。助けて──」
二葉の悲鳴が怒鳴り声から女の悲鳴に変わった。
「誰か助けてやってもよいぞ──。我と思わん者は助けてやれ。無論、邪魔をした者は、わらわに逆らった者として、床で死んでおる者たちと同様の目に遭うことになると思うがな」
小白香は謁見の間に響き渡るような大声を発した。
誰も動く者はない。
もう声もなくなり、ほとんどの者が悄然として、花炎が二葉を犯す光景を凝視している。
小白香は、ふと横に突っ立っている百眼女を見た。
百眼女はもう、小白香を諌める気はないようだ。
真っ蒼になってぶるぶると震えている。
一方で、花炎の愛撫を受けている二葉の声がだんだんと艶めかしいものに変わっていく。
下半身を丸出しにされた四つん這いにされた身体がだんだんと悶えはじめる。
「や、やめて……か、花炎、お願いよ──も、もうやめて……あ、ああっ……」
「やめるわけにはいきませんね、二葉殿──。俺がここでやめれば、俺が新しい魔王様に殺されます。それくらいわかるでしょう──」
「あ、ああ……や、やめて……やめて……やめてよ……」
二葉が、泣き出した。
十人の亜人が頭を潰して死んでいる血の海の部屋の中で、女軍団長が部下のいたぶりを受けて淫靡に悶える光景というのは、そう簡単には味わえない退廃図だ。
ふと見ると、白象は宙に浮かんだ結界の中でいまだに自慰を続けている。
しかし、それに注目する者はもう少ない。
いまや、この広間の関心は、眼の前の二葉と花炎に集まっているようだ。
「おや、殿下……ではない、陛下──。この元近衛軍団長の奴隷殿は、処女のようですよ」
花炎が喜びのような声をあげた。
「ほう、お前、処女か、二葉? 歳はいくつなのだ? もう三十は超えているであろう。なかなかの美貌であるのに、お前を抱いてくれる者はいままでいなかったのか?」
小白香はからかった。
二葉の泣き声が大きくなった。
「……この花炎に言って下さればいつでも夜のお相手は務めましたのに、二葉殿」
花炎が二葉の股間をまさぐりながら笑った。
どうやら、花炎は二葉の肉芽を中心にずっと責めたてているようだ。
二葉も花炎の手管にかなり淫情に染まってきているように見える。
二葉の四つん這いになった太腿が羞恥と官能でびくびくと震えているのがここからでもわかる。
「……さて、ところで──」
小白香は、いまだに自慰を続けている白象に眼をやると、今度はさっき白象から外した貞操帯を手の中に出現させた。
触手の生えている内側を晒して、小さな触手が粘性の痒み汁を噴き出しながら、うごめいているのを周囲に示した。
広間が騒然となる。
「はああっ──き、気持ちいい──はああっ──」
一方で。宙に浮かんでいる白象が狂喜のような叫び声をあげた。
もはや、完全に正気を失っているのは間違いない。
「これは、母者に嵌めていた貞操帯じゃ。わらわの道術でなければ、この母者……いや、白象でさせも外れんものだ。しかも、触手が出しているのは、この世のものとは思えぬ痒みを湧き起こす汁じゃ。まあ、身体に害はないが、痒みの苦しみは格別じゃぞ。これを騙して外せんようにしてからは、ずっと白象はわらわの奴隷だったのだ」
小白香に近い者から順に、だんだんと騒然としはじめた。
貞操帯のことを初めて知ったとともに、目の前にかざされているおぞましい触手貞操帯に怖気を覚えているのだ。
「さて、百眼女」
小白香は、呆然としている百眼女の名を呼んだ。
「は、はい」
百眼女がはっとした表情で小白香に視線を向けた。
「わらわからの贈り物だ、百眼女。これは、死刑になる白象には、もう必要のないものだしな。わらわの腹心として飼ってやる。その代わり、これを嵌めよ。いますぐに、ここでな──」
「こ、ここでって……」
「さもなければ、お前も白象の謀反に加担した者として死刑とする。やはり、この貞操帯を装着して、白象城の門の前に縛って、死ぬまで晒してやろう。どっちがいい?」
小白香はけらけらと笑った。
百眼女の顔が真っ蒼になるのがわかった。