「なかなかに若くていい女だな……。い、いや、これは、別嬪じゃねえか。幾らで抱かしてもらえるんだ、あんた?」
見知らぬ男が言った。
「へえ……。確かに、若くていい女だ……。しかも、まだ娘じゃねえか」
もうひとりの男も李姫のすぐそばまで近寄ってきて、身体に巻いている李姫の衣服の裾に手を伸ばす。
「や、やめてください──。わ、わたしは、そんなんじゃありません」
李姫はとっさにその手をかわして数歩後ずさったが、逃げられるのはそこまでだ。
それ以上は、首輪の鎖がそれを邪魔する。
それどころか、鎖が邪魔して、しゃがみ込むこともできない。
「あっ、んんんっ」
そして、暴れたために、肉芽に当たっている縄瘤がぐんと股間を抉ったのだ。
思わず李姫は妖しい声をあげてしまった。
「おや? こいつ、その樹に鎖で繋がれているぜ?」
「本当だ。しかも、いま、変な声を出したな。なんかおかしいな……。ちょっと、剥いてみるか」
「さ、触らないで──。こ、声をあげます。ひ、人を呼びますよ──」
李姫は、服の端を掴んでいまにも李姫から服を剥がしそうな二人組に毅然として言った。
だが、身に着けている服は長い布を服のように巻きつけて、要所を止めただけの一枚布だ。
服というのもおこがましい。
腰の帯を外して、服のどこかを引っ張れば、たちまちに李姫は素裸になってしまう。
ふたりの男は、突然の李姫の強い口調に、一瞬だけ唖然としたが、すぐにげらげらと笑いだした。
「こんな街娼の立つ場所で、立ちん坊をしておいて、人を呼びますよ、もねえもんだ」
「まったくだ、じゃあ、呼んでもらおうじゃねえか。面倒なことになるのは、お前の方だぜ。ここは、このあいだまで街娼が客集めをする有名な場所だったんだが、新しい司政官の李媛様が禁止命令を出して、昨日街娼が一掃された場所だ。ここで、ほかの女が見当たらないのはそのためなんだが、お前さんは、そんな場所で、堂々と立ちん坊をしているんだぜ。声をあげることで、役人が来れば、捕まるのはお前の方だ」
ふたりの言っていることの半分も理解できない。
しかし、なんとなく、ここは、李姫がこんな風に立っていてはよくない場所だということはわかった。
そんな場所に朱姫は、李姫を繋いで置き去りにしたのだ。
李姫は朱姫に対する恨めしい気持ちが湧き起こった。
しかし、だんだんと、そんなことを考えている余裕がなくなる事態が訪れた。
股間に締めつけられた縄瘤からむず痒い刺激が湧き起こってきたのだ。
痒い……。
朱姫が李姫に施した縄はただの縄ではないような気がする。
その証拠に強い痒みが李姫に襲いかかってきた。
しかも、こんな状況で……。
いや、これは異常だ……。
どんどん痒みが強くなる。
「うっ、くっ」
だんだんとせりあがる痒みに耐えられずに、李姫は思わず腰を動かした。
すると、縄瘤が李姫の股間を抉って、悩ましい刺激を加えた。
「あんっ」
思わず声が出た。李姫ははっとして口をつぐむとともに、こんな男たちの前で嬌声をあげてしまったことに、全身が赤くなるのを感じる程に羞恥を覚えた。
「な、なんだ?」
「なんか、いま急に色っぽい声を出したな」
男たちが酔った息が当たるくらいに李姫に近づいてきた。
「ひっ、い、いやっ」
李姫は身体をすくめて声をあげた。
股間の痒みはだんだんと強くなる。
でも、腰を振って縄瘤で痒みを癒そうとすれば、また、さっきのように声を出してしまいそうだ。
李姫は泣きそうになった。
そして、李姫を襲った責め苦はそれだけではないのだ。
急に強い尿意も込みあがってきたのだ。
どうして……?
じわじわとせりあがる尿意ではない。
この男たちと話していている途中で、一気にもよおしてしまったのだ。
それで、はっとした。
さっき、寝室で朱姫に起こされた直後に水を飲んだ。
もしかしたら、それに尿意を引き起こす薬剤が混ぜられていたのではないか……?
朱姫は道術遣いだ。
道術遣いならば、霊具も魔薬もお手の物のはずだ。
尿意を起こす薬剤など、簡単に扱えるに違いない。
そう考えると、この急激な尿意はそれが理由としか思えない。
「なんか、急にもじもじし始めたな……」
「様子がおかしいのは確かだな。妙に動きが艶めかしいしな……。ちょっと、本当に服を剥がしてみようぜ」
ひとりが李姫の背後に回り込んだ。
今度は前後から男たちがせまる態勢になった。
李姫には逃げようがない。
男たちがそれぞれに布を掴んだ。
「ま、待って──。そ、その“がいしょう”とはなんですか? わ、わたしはそんなんじゃありません」
まさか、新しい司政官の李媛の娘の李姫だと名乗るわけにはいかないが、男たちが言う“がいしょう”ではないということを納得させれば、酷い扱いは受けないのではないだろうか。
李姫は思った。
「街娼とはお前のことだろう……。街の辻に立って、男の客に身体を売る娼婦のことだ。さっきも言った通り、ここで娼婦をやるのは禁止だ。昨日出たばかりの司政官布令だ。嘘だと思うなら、少し先の辻に行ってみろ。立て札が立ってるぜ……。わかったら、ただでやらせな。さもないと、役人に突き出すぜ」
「しょ、娼婦──? ち、違います。わたしは、そんなんじゃありません。断じて違います──」
李姫は声をあげた。
娼婦なら知っている。
李姫は動揺した。
つまりは、“がいしょう”とは、街で立つ娼婦“街娼”なのだ。
“立ちん坊”とは、彼女たちの客引きの様子を表現した言葉だろう。
男たちの口ぶりによれば、昨日までここは、その街娼の客引きで有名な場所であり、たまたま、今夜は強制的に彼女たちが追い払われたところだったようだ。
よりにもよって、朱姫はそんな場所に李姫を置き去りにしたのだ。
「いいから、騒ぐな……。おっ、こいつの衣装……、面白いぜ。こりゃあ、身体に巻きつけているだけだ。簡単に脱がせられるぜ」
男のひとりが言った。
腰に結んでいる帯が解かれて抜き取られる。
もうひとりが、李姫が巻いている布をぐいぐいと引っ張った。
「だ、だめです……。脱がせないで──。引っ張っては駄目──」
李姫は身体を左右にくねらせて抵抗しようとした。
しかし、後手に拘束されている李姫には、それ以上の抵抗もできずに、あっという間に裸身に巻いていた布が剥ぎ取られた。
「いやあっ──」
李姫は思わず座り込みそうになり、それを首輪の鎖が邪魔をする。
しかも、その動きでまた股間を縄瘤に抉られて、声をあげそうになる。
ふたりの男からいっせいに感嘆の声がした。
「こりゃあ、縄の下着かい? 変わった趣味だな、お前。しかも、どうも抵抗しねえと思ったら、両手を後手に拘束されてやがるぜ」
「よく見ろ──。縄の下着には瘤のようなものが食い込んでいるぜ。しかも、結び目の付近がしっぽりと濡れてやがる。こりゃあ、街娼じゃねえ──。とんだ変態女だぜ」
男のひとりは手に手提げ式の明かりを持っていた。
その光源を李姫の股間に接近させて大笑いする。
「や、やめて──。返して、布を……布を返して──」
李姫は片脚を曲げて、必死に股間を隠そうとした。しかし、その大きな動きで、激しい痒みを湧き起こらせている股間に食い込んでいる瘤縄が動き、強い疼きが李姫を襲った。
李姫は、大きな動きをして、男たちの視線から裸身を隠すこともできなくなった。
素っ裸にされた身体を明かりで照らされながら観察され、李姫は身も世もない羞恥に悶えた。
「街娼のくせに、いまさら恥ずかしがるなよ。もっと、身体を見せな」
男たちに背を向けて、裸身を隠そうとするのをひとりが腕を取って、自分たちの方向に李姫の裸身の正面を向かせる。
「ほ、本当です──。わ、わたし、街娼じゃないんです──。し、信じて──。さ、触らないでください──」
李姫は声をあげた。
「だが、街娼でないというのは、本当かも知れないぜ。街娼にしては、首輪で樹に繋げられたり、腕を拘束されているというのは変だ……。この娘の言うとおり、街娼ではないのかもな……。変態かもしれねえがな……」
するとひとりが言った。
李姫はとにかく、娼婦などではないということだけでも納得させようと思った。
さもなければ、ここで犯されかねない。
「ち、違うんです。わ、わたしは無理矢理にこんな格好にされて、置き去りにされたんです。だ、だから……」
李姫は言った。
「じゃあ、誰か悪い奴に、こうやって拘束されて置き去りにされたと言いたいのか、変態娘?」
男のひとりが半信半疑の表情ながらも、そう言った。
「そ、そうです。そうなんです──」
李姫は激しく首を上下に動かして頷く。
「わかった──。じゃあ、やっぱり役人を呼んできてやる。そこで説明しな。俺たちも証言してやるよ」
すると、その男がそう言ったので、李姫はびっくりした。
役人なんかに知らされたら困る。
司政官として活動している李媛にとって、娘の李姫がこんな破廉恥なことをしたのが知られては、非常に困ったことになることが予想される。
それに、役人に説明を求められたら、ここに置き去りにした朱姫を訴えることになってしまう。
それはできない……。
「こ、困ります……。や、役人には知らせないで……」
李姫はそう言うしかなかった。
「なんでだ、娘? 誰かに無理矢理にそんな格好で置き去りにされたんだろう? なんで困るんだ」
「そ、それは……。や、やっぱり、間違いでした……。無理矢理じゃありません……。わ、わたしが……わたしが変態娘で……自分でやりました……。本当です」
李姫はそう言った。
李媛にも迷惑をかけず、朱姫も訴えないですむには、そう説明することしか思いつかなかった。
「ほう……。じゃあ、自分が変態娘だと認めるんだな」
男たちのひとりが愉快そうに言った。
「そ、そうです……」
李姫は呟くように言った。
「じゃあ、変態娘さんよ……。じゃあ、改めて取引きといこうか。ここで、俺たちふたりの相手をしな。そうしたら、役人は呼ばないでおいてやる──。さもなきゃ、大声で役人を呼ぶぞ」
「あ、ああ……」
李姫は返事をせずにうな垂れた。
「承知ということでいいな……」
男たちがほくそ笑んだ。
ふたりが李姫の腰の前後から手を伸ばして、股縄の結び目に触れた。
李姫の股間に食い込む縄を解こうとしているようだ。
もう、李姫は諦めて、なすがままにされることにした。
どうあっても、役人は呼ばれるわけにはいかないのだ。
それに、李姫を追い詰めているふたつの悩みは、いよいよ本領を発揮していて、李姫の思考力を削ぎ取ってしまいそうだった。
股間を苛む痒みはどんどん強くなる。
尿意も一層激しくなる。
李姫は男たちに股間の縄を解かれようとしながら、自分の股間が小刻みに震えるのをとめられないでいた。
「おい、そんなに腰を動かすんじゃねえよ。結び目が解けねえじゃねえか」
正面の男が結び目を緩める手を少しだけ休めて、顔を李姫に向けて、揶揄するように笑った。
「あっ、か、痒い……、ああ……」
しかし、李姫の理性をだんだんと失わせるような股間の痒みは次第に強くなる。
もう、じっとしていろと言われても、とてもじっとなどできない。
李姫も、それがどんなにはしたなくて、恥ずかしい行為であるかわかってはいるのだが、ついに、男たちに前後に挟まれながら、大きく前後に突き出したり、左右に振りたてるように腰を動かしだしてしまうようになった。
「あんっ」
一度、痒みに耐えかねて、腰を動かすと、もう、あとはまったくそれを止めることができない。
気も狂うような痒みのことしか李姫は考えられなくなった。
しかも、李姫には激しい尿意まで襲い掛かっているのだ。
もう、これからどうなるかなど考えられない。
「おいおい、急に腰を振り出しやがったぜ」
「やっぱり、立ちん棒の娼婦に違いないぜ」
男たちがげらげらと笑う。
「あ、ああっ……」
しかし、もう李姫には腰を振るのをやめることができない。
余りの股間の痒さに、気が狂いそうだ。
李姫は思わず甘い声をあげた。
「こいつはとんでもない淫乱娘だなあ。待ちきれなくて、腰を振りだして自慰を始めやがったぜ」
「待ってな──。いま、縄を解いて、お前の女陰に俺たちの肉棒を思う存分挿してやるからな」
ふたりの男たちが笑いながら、本格的に李姫の股縄を取り外し始める態勢になった。