55 女戦士への色責め
突然に地面が揺れた。
なにが起こったか、沙那にはわからなかった。ただ、とてつもない衝撃を受けて、身体を吹き飛ばされた。
そして、背中を思いっきりなにかに叩きつけられる。
次々になにかが破裂して、白煙とともに衝撃が炸裂する。
「ぐほっ──」
凄まじい土煙──。
地面が爆発したのだ。
道術ではない──。火薬だ──。
匂いでわかる。
沙那もかつては、愛陽の城郭軍の千人隊長だ。
これは、打ち上げ式の筒を使った砲撃だ──。
沙那は細剣を抜いた。
叩きつけられたのは、近くにあった岩だった。爆風で沙那は岩に飛ばされたのだ。
しかし、うまく受け身をとったので、なんとか動ける。
みんなは──?
沙那は土煙ごしに周囲を探した。
しかし、白煙と砂埃が激しくて、視界が確保できない。
とりあえず、激しい爆発はやんだようだ。
そして、はっとした。
人の気配──。
しかも、ひとりやふたりじゃない。
少なくとも、数十人。
もしかしたら、百人近いかもしれない──。
それだけの人数がいつの間にか気配を消して接近していた。
だが、ほとんど足音もないし、しわぶきひとつない。
明らかに異常な集団だ。
その時、上になにかを感じた。
網──。
かろうじて避けた。
たったいま、沙那が転がっていた場所に網が落ちた。
地面に落ちた網はまるで生き物のように丸まっていく。
捕縛用の霊具だ──。
単純な盗賊でも、通常の兵でもない。霊具を操る極めて特殊な戦士の集団が襲ってきているのだ。
また、上から網──。
横に飛んだ。
そこになにか空気の塊りのようなものがぶつかった。
だが、それだけだ。
もしかして、なにかの道術?
そんな感じだが、跳ね返した?
さらに殺気を感じて、沙那は細剣を突き上げた。
人の腕が血しぶきとともに宙に舞う。
悲鳴もあげずに倒れたのは武装した兵だ。
どうやら、沙那は剣で襲ってきた兵の腕を斬り落としたようだ。
しかし、腕を切り落とされても声も出さないなど、ぞっとした。
何者たちだ?
「ちっ──。道術が効かん。撥ね返すぞ──」
誰かが叫んだ。
やはり、道術か。
しかし、跳ね返した?
また、剣──。
襲ってくる。
沙那は剣を外側にして、刃物を突き出した車輪のように横に転がった。
沙那に足の腱を斬られて三人ほどの兵が倒れる。
身体を起こし事態を把握した。
いつの間にか武装した大勢の兵に囲まれている。
沙那の周りには、沙那に斬られた数名の兵の身体が転がっている。
ほかの仲間がどうなっているかわからない。
とにかく、兵の数が多すぎる。
本当にいったい何人いるのか──。
十や二十では済まない。
街道の前後、そして、両側の樹木の中──。
とにかく、大勢だ。
襲ってくる──。
沙那は無意識のうち跳躍していた。
上から降って来ていた三人の兵が屍体となって落ちてくる。
横の森──。
十人ほどが襲い掛かる。
斬れたのは二人──。
残りは避けるのが精一杯だ。
避けながら沙那は、彼らの具足の紋様を認めた。
丸に太陽の印──。
その印は天教のものだ。
なら、襲撃しているのは天教の教団兵なのか──?
教団兵は見たことはなかったが間違いない。
なぜ、天教の教団兵がここに?
混乱した。
なにかが来る。
背を屈める。
斬り上げる──。
斬り落とす。
彼らは、ほとんど気配を感じさせない。
ただ、沙那に斬りかかる瞬間だけ殺気が光る。
沙那はそれに向かって剣を出しているに過ぎない。
「わたしたちは、天教教団の八仙である宝玄仙が一行よ──。お前たちは天教の教団兵であろう。なぜ、襲う──」
沙那は叫んだ。
「抵抗するのは、たったひとりだ──。囲んで捕えよ──」
指揮官らしき男の声がする。
ひとり──?
宝玄仙は?
孫空女は?
朱姫は?
とにかく、宝玄仙の一行と知って、天教の教団兵が襲ってきている。それだけはわかった。
宝玄仙──。
いた──。
道の横の森中で樹木の陰に倒れている。
頭から血を流しているが、大きな怪我ではないようだ。
だが、動いていない。
気を失っているのか?
とにかく、まっしぐらにそこに向かって駆ける。
立ちはだかった教団兵を斬る。
斬る。
斬る──。
最後には数名の教団兵の頭上を跳躍した。
「いたぞ、宝玄仙だ――」
沙那の動きで、教団兵も宝玄仙の居場所を認めた。
倒れている宝玄仙に敵が殺到する。
しかし、沙那が早い。
「ご主人様──」
横たわる宝玄仙に辿りついた。
すかさず、剣を振る。
宝玄仙に剣を向けていた教団兵たちが屍体に変わる。
また、風の塊り──。
「やはり、道術が効かん。仕方がない。ふたりとも殺して構わん──」
その声とともに、沙那を囲んでいた兵の輪がすっと退いた。
矢が来る──。
沙那は悟った。
宝玄仙の襟首を掴み、横の森に飛び込む。
草や樹木が矢の飛来を邪魔するはずだ。
背に大量の矢が襲い掛かる──。
剣で払う。
大部分は避けたが、数本が肩を掠めた。
眩暈のようなものを感じる。
毒か──?
少なくとも、弛緩薬くらいは矢尻に塗ってあるのだろう。
まずい……。
宝玄仙を引き摺って樹木の間に身を伏せた。
その上を矢が通り抜け、音を立てて樹木の幹に突き刺さる。
「……さ、沙那かい?」
宝玄仙の声がした。
苦しそうだ。
「教団兵の襲撃です──」
沙那は叫ぶ。
身体の向きを変えた。
向かってきた矢を払う。
力が抜けてきた。
もう長くはもたないかもしれない。
「『移動術』で跳ぶよ──。少しの間、防いでおくれ」
さっきよりも強い宝玄仙の声がした。
「はいっ」
沙那は叫んだ。
「移動術で逃げるぞ──。行かせるなっ」
その声とともに矢がやみ、兵が跳びかかってくる。
ひとりを斬り、次のひとりに飛びかかられた。
身体を捻って別の兵に向かって投げ飛ばした。
その上から掴みかかってきた兵の首を斬り払う。
辺り一面に血の雨が降る。
沙那は再び眩暈に襲われた。
いよいよ、矢の毒が効いている。
眼の前が一瞬暗くなる。
「繋いだ──。とりあえず跳ぶ、沙那」
宝玄仙の声。
沙那はそっちに向かって走った。
もう、視界が消えかかっている。
「沙那、孫空女と朱姫はどこだいっ?」
宝玄仙の大声──。
わかりません──。
沙那はそう叫ぼうとして、身体が崩れるのがわかった。
さっきの矢毒だ。
「ちっ」
一度舌打ちをした宝玄仙が、沙那の身体を掴んで引き摺りはじめた。
なにかに包まれる。
沙那は次第に薄くなる意識の中で、身体が捻じれるような気持ち悪さを感じた──。
*
「報告しろ」
「宝玄仙と
明月が言った。
「沙宝蔡ひとりにやられました。死んだ者は五名。負傷は二十人を越えます。負傷については『治療術』で対処しております。出発できるのは、二刻(約二時間)後です」
清風がさらに付け加えた。
「奇襲で宝玄仙を殺せなかったのは残念だな。まあ、次の機会もあるか──」
鎮元仙士は足元の網に包まれた“もの”を眺めながら言った。
「……それにしても、お前はなぜ、そんなに汗びっしょりなんだ、
「う、うるさいよ──」
網で包まれている孫玉蔡が呻くように言った。顔が上気している。
股間に染みを作っているのは、どうやら孫玉蔡の淫液のようだ。
淫靡な術でもかけられていたに違いない。
懸命に網から出ようともがいているが、この霊具の網からは絶対に逃げられない。
「そして、お前は誰だ?」
鎮元仙士は、孫玉蔡に覆いかぶさるようにして、一緒に網に包まれたもうひとりの少女に声をかけた。
歳は十五、六というところだろうか。
しかし、孫玉蔡とともに網に包まれているその少女はじっと睨むだけで口を開こうとはしない。
「酷い目に会いたくなくなければ、名を言え──」
鎮元仙士は言った。
「……朱姫」
少女はぽつりと言った。
「朱姫か……。では、朱姫、お前は宝玄仙のなんだ?」
「……あ、あたしは……」
朱姫は震えている。
怖いのだろう。
だが、同じ網の中の孫玉蔡が朱姫の手を掴んだ。
すると、朱姫の震えがとまった。
「どうやら、猫ですな」
清風が、くすくすと笑いながら言った。
「猫?」
「宝玄仙の性の相手と言うことですよ。最初に攻撃をしたとき、このふたりがなにをやらされていたか、見せたかったですよ、鎮元仙士殿。この孫は網の中で、
轟天砲というのは霊具ではない。
帝国兵も使用する武器だ。
兵二人で操作し、爆発する弾を撃ち込む。
清風の言葉に孫玉蔡が、恥ずかしそうに眼を伏せた。
気の強そうな孫玉蔡のその仕草に思わず鎮元仙士は噴き出した。
「まあいい。お前たちは宝玄仙を捕えるための餌だ。餌として働いてもらうぞ」
「ふ、ふざけるな──」
孫玉蔡が睨んだ。
「そんな目で睨んでも無駄だ。お前たちは俺の道具に成り下がる」
孫玉蔡は、いつまでも罵り声を出していたが、それにも関わらず、かなりのつらい状況であるということを見抜いていた。
この女たちは宝玄仙との情交の途中だったらしい。
孫玉蔡の状態は、媚薬でも使われていたのだろう。
これなら心を屈服させるのに、それほどの時間はかからない。
「清風、お前を含めた精鋭を十人揃えよ。ひと足先に拠点の
ふたりの教団兵の隊長が頭を下げた。
*
孫空女は部屋の中央にある太い柱に立った状態で拘束されていた。
服は脱がされていなかったが、手を柱の後ろに回された状態で柱にぐるぐる巻きに縛られている。
身体に巻きついているのは、どうやら拘束用の霊具の縄らしく、びくともしない。
縄脱けもできる孫空女でも、抜け出せない。
なにをされても抵抗は不可能だ。
しかも、両足の間には柱を挟まれて、脚が閉じないように柱の後方を回って拘束されているので、股間を突きだすような格好だ。
その股間は、三日間も吸わされ続けた宝玄仙の『淫霧』のために、自分自身でもみっともないと感じるくらいに熟れきっている。
あの襲撃の直前に、宝玄仙だと思うが、『
だが、それだけだ。
抵抗することもできずに、呆気なく捕えられた。
そして、この砦のような場所に『移動術』で、朱姫とともに運搬された。
すぐに朱姫とは離されて、この部屋に連れて来られて拘束された。
まるで小便を洩らしたように淫液で濡れている股間をさらけ出したくはないが、いまの孫空女にはどうしようもない。
こんな連中に戦うこともできずに捕えられたことには腹も立つ。
すべて宝玄仙のせいだ──。
なにから、なにまで、宝玄仙のせいだ。
恨みのような感情が孫空女の中に拡がる。
なにしろ、霊具らしい網をかけられたときには、宝玄仙の霊具である緊箍具により後手に拘束されていたのだ。やっと、それが外れるのとほぼ同時に網に捕えられた。
「孫──。宝玄仙の『猫』などやめて、俺の『犬』になれ」
「だ、誰が──」
孫空女は、孫空女の正面に向かい合って椅子に座る鎮元仙士に向かって唾を吐いた。
だが、余りにも余裕のない孫空女の身体は、その唾を鎮元仙士の身体のずっと横に向かわせてしまった。
「どうした、孫? 強いと聞いていたが、それはただの噂に過ぎなかったようだな。それとも、強いというのは、“淫乱”という意味か? あの宝玄仙の連れに相応しい熟れぶりだがな」
鎮元仙士は、持っていた白い張形で布越しに、孫空女の股のつけ根をちょんと突いた。
「ひゃあっ」
孫空女は仰け反った。
三日間、媚薬を嗅がされ続けて放置された孫空女のその身体は、孫空女の心とは裏腹に、ほんのわずかな刺激を求めて、もう爆発しそうだ。
せめてもの救いは、鼻の中からとれなかった『淫霧の綿』という名の綿が、戦闘直後に鼻から外れたことだろう。
ただ、これで、それ以上の媚薬効果のある霧を嗅がなくてすむようになったが、三日間、練りに練られて、疼きの塊りのようになった孫空女の身体は変わりがない。もう、息をすることさえ、股間に響くような淫情を覚えてしまう。
「情けないな、孫。やっぱり、俺の『犬』になるか? そうしたら、いかせてやってもいいぞ」
「ふ、ふざけるなあっ」
孫空女は怒鳴った。
その股間をまた、鎮元仙士が突く。
たちまちに、また嬌声をあげてしまう。
この時ほど、宝玄仙のことを恨めしく思ったことはない。
三日間も焦らしに焦らされてなければ、こんなにはしたなく声をあげることもなければ、こんな連中にほとんど無抵抗に捕らえられることなどあり得ないのだ。
「俺たちの道具になるか、孫? そうすれば、いい気持ちになれるぞ?」
「じょ、冗談いうんじゃないよ──」
孫空女は声をあげた。
「だが、いきたくはないのか、本当か? 素直にならないといつまでもこうしておくぞ」
鎮元仙士が張形の先で、続けざまに、孫空女の股間を突く。
「ふ、ふざけ……あいっ──ふぐっ──ひいっ──」
その度に耐えようのない嬌声が口から出てしまう。
「くはっ……。な、なにをやっても……無駄だよ──。あ、あたしは……ご、ご主人様を裏切らないよ──」
孫空女は、吼えるように言った。
だが、鎮元仙士は、その言葉を聞いて、にやりと笑った気がした。
「誰もそんなことは言っていない」
鎮元仙士は言った。
「えっ?」
「お前が裏切るのは、一緒に捕えたあの少女だ」
「ど、どういうことだい? ……あぐっ」
鎮元仙士の持つ張形が、また、孫空女の股を突いた。
たったそれだけで、さっきから翻弄されている自分が情けない。
「清風の報告によれば、あれは生娘のようだな」
立ちあがった鎮元仙士が、孫空女の耳元でささやいた。
この男はなにを言っているのだ?
孫空女は鎮元仙士の喋ったことが一瞬理解できなかった。
「ここには、帝都から連れてきた教団兵が百名ほどいる。さっきの戦いでは、沙宝ひとりに五人が殺され、二十人以上が負傷した。挙句の果てに、その沙宝には逃げられた。宝玄仙にも一緒にだ」
「……だ、だから、なんだよ──?
」
沙宝というのは、沙那のことだろう。
そういえば、そんな戒名だった。孫空女は孫玉蔡だ。
「だからな……。兵の連中の殺伐とした気持ちを癒してやらねばならん」
鎮元仙士は孫空女の股間に張形をぐいと押し付けた。
「あいっ……くうっ。な、なにこれ? ええっ?」
張形が孫空女のびしょびしょの下袴の布に消えていく。
そして、孫空女の股間に入り込んでいく。
布の中に消えて、孫空女の熟れきった膣の中に出現している。
「い、いやだあ──。うっ──くうっ──」
まるで生き物のように勝手に孫空女の淫孔に張形が潜り込む。
おそらく霊具なのだろう。
それが、三日間、焦らし責めにされ続けて、だらだらと淫液の洪水を起こしている源に突き挿さる。
もういい。
孫空女は、とりあえず、震えるような欲情に身を任せようとした。
「……絶対に気をやったらいかんぞ。いってしまったら、百人の兵の相手をあの朱姫にやらせる」
鎮元仙士がまた耳にささやく。
孫空女は、知らずに振っていた自分の腰の動きをとめた。
「な、なに……?」
「だから、お前が絶頂に達したら、あの娘を素裸で、百人の飢えた兵のいる兵舎に放り込む。宝玄仙の性の相手として飼われていたようだが、まだまだ、育ち切っていない女の身体だ。百人の相手などしたら、身体も心も壊れてしまうだろうな」
鎮元仙士は、喉の奥で笑った。
「あ、あたしにやらせればいいだろう──。百人でも二百人でも相手をしてやるよ」
孫空女は怒鳴った。
しかし、さすがに孫空女も百人もの性の相手をするのは怖い。
啖呵を切ったものの自分の顔が引きつるのがわかる。
「それでは、なんにもならんのだ、孫。俺はお前の心を折りたいのだ」
鎮元仙士は孫空女の顎を掴んで、ぐいと自分の顔に向けた。
孫空女はその顔に向かって唾を吐いた。今度は真っ直ぐに鎮元仙士の顔に唾が当たる。
鎮元仙士は別に感情を動かした様子はなかった。
その代わり、なにかの道術で自分の手の中に、細い紐のついた小さな鈴を出現させた。その鈴を揺らして、ちりん、ちりんと音を鳴らした。
「あっ」
孫空女は、ぎちぎちに拘束されている身体を左右に捩じった。
股間に挿入された張形が淫らに動き始めたのだ。それとともに耐えていた腰が自然に動いてしまう。
「ほら、いくんじゃないぞ……。霊具に負けて、いってしまえば、朱姫は兵の群れに放り込むぞ。いいのか? それとも、仲間を売っていい気持ちになるか?」
鎮元仙士が囁く。そして、手の鈴が鳴り続ける。
どうやら、鈴の音に共鳴して張形が動くようだ。
「こ、この……く、糞……く、糞野郎──」
腰の動きをとめられない。
孫空女は耐えようとするが、それにも関わらず、孫空女の身体は快楽の極みを欲して、張形から与えられ刺激を搾り取ろうとしている。
腰の動きがとめられない。
孫空女が身体を動かす度に、子宮の底にずどん、ずどんという快楽の塊りが突き刺さる。
もっと──。
もう少し──。
「ああっ、あっ──あっ──」
口から嬌声がこぼれる。
「いくと、朱姫を百人に凌辱させるぞ。いくなっ。三日も、四日もだ。朝昼晩、交替で犯し続けさせる──。あの娘の精神が完全に崩壊するまでな。いかに、宝玄仙が偉大な法師でも、ぶっ壊れた頭を元には戻せんぞ」
「だ、だって──、い、いくうっ──、い、いやだ……あああっ」
鈴の音は続いている。
昇ってくる……。
なにかが孫空女の全身を貫く。
腰に咥えさせられている張形の動きは激しくなる。
閃光のようなものが孫空女の視界に拡がる……。
「喋る言葉は汚いが色っぽい声を出すものだ──。鈴をとめて欲しいか? それとも、このまま鳴らし続けるか? どっちでもいいぞ。だが、いったら、朱姫は百人の相手だ」
「やめろ──ああっ──す、鈴をとめろ──」
叫んだ。鈴の音がとまる。そして、張形もとまる。
孫空女はがっくりと首を垂れた。
「本当に、とめてよかったのか? あのままいきたかったのではないのか、孫?」
鎮元仙士が鈴を一瞬だけちりんと鳴らした。張形が振動する。
「くわあっ──」
鎮まりかけていた身体の火照りが暴発する。
しかし、すぐに音の消滅により張形がとまる。
「孫、お前が、朱姫を売れば、お前が欲しがっている快楽を与えてやろう。しかし、売らずに勝手にいったら朱姫を壊す──。孫、返事をしろ。どうしたい。いきたいか? そのために朱姫を売るか? お前の口から朱姫を百人の相手をさせろという言葉が出れば、その火照りきった身体をいかせてやろう」
「ふ、ふざけるなっ」
叫んだ。
また、鈴を振られる。
張形が動く。
孫空女の口から嬌声がこぼれる。
しかし、音がやみ張形がとまる。
どうしようもないもどかしさにくすぶる身体。
激しくなる息切れ。
「どうせ、いつか、お前は朱姫を売ることになる。その次は宝玄仙を裏切る約束をさせる。いずれそうなる」
鈴が降られた。
孫空女は仰け反った。
今度こそ、いってしまう 。
また、張形がとまる。疼きで身体が焼けてしまいそうだ。全身が快楽を求めて荒れ狂っている。
「孫、とりあえず、朱姫を売れ?」
鎮元仙士が言った。
「しゅ、朱姫には、手を出すな……。あ、あたしを使えよ……」
孫空女は息も絶え絶えに言った。
「お前は使わん。お前の役目は、その心を折ることだ。心が折れれば、お前の身体に流れている宝玄仙の『道術返し』の力も弱まる。心が屈服すれば、俺の道術を受け入れるようになるのだ。そうしたら、さらに道術をかけて、宝玄仙を殺すための道具にお前を仕立てる」
「ふざけるな──。うああっ」
鈴が鳴らされた。
張形が動く──。
鈴が鳴り続けるので、だんだんと張形の振動が激しくなる。
いく──。
いってしまう──。
快感がつきあげる。
「と、とめろ──。くうっ──鈴をとめてえ──」
孫空女は叫ぶ。だが、本当にとめていいのか。もう、いきたい。絶頂に身を委ねたい。
「い、いくううっ」
孫空女は叫んだ。
だが、その瞬間、ぴたりと張形がとまった。
「よかったな、孫。股間の淫具がとまってくれて。それとも、いきたかったか?」
まだ、鎮元仙士は孫空女の顎を掴んでいる。だが、もう睨み返す気力もない。
「ふ、ふざけるな──」
「頭の悪い女だな。同じ言葉しか言えんのか? ならば、そうだな……。“気持ちいい。このまま、いかせてください”と言うのだ。そうすれば、張形はとまるようにしてやろう。だから、いかなくてすむぞ。いってしまえば、朱姫を壊すからな」
鎮元仙士の手から鈴が消えた。ふと気がつくと、孫空女の首の赤い首輪に鈴がぶら下がっている。
その鈴が揺れ始めた。張形も動く。
「き、気持ちいい──。このまま、いかせてください」
孫空女は慌てて叫ぶ。だが、張形はとまらない。どんどん激しくなる。
「言った──。言ったのに──。気持ちいい。このまま、いかせてください……。気持ちいい。このまま、いかせてください……。い、言った。言ったよ。とめて──。とめてえ──。ねえ、ほら──気持ちいい。このまま、いかせてください……。言った。言ったってばあ。ああああああっ──」
突きあがる。
なにかが爆発する。
鈴がとまった。
「心配するな。その言葉を一度唱えれば、必ず張形はとまる。だが、お前が絶頂を迎えるぎりぎりでな──。本当にいきたかったら、朱姫を売るしかない。だが、いくということが、朱姫を売ることなのだ。だから、これには終わりがない。どうやっても、朱姫は壊されるのだ。壊されないためには、この中途半端な状態をずっと継続することだ」
「糞が……」
「これを終わらせたければ、朱姫を凌辱してくれと口にしろ。口にすれば、お前は、好きなように快楽に溺れればいい」
「兵どもには、お前の尻の孔でもやれよ」
孫空女は吠えた。
鎮元仙士が指を鳴らした。
顔も見たことのない兵三人が部屋に入ってきた。
その兵たちが、孫空女の姿を見て驚いた表情をする。そして、にやついた。
「この孫を屈服させろ。この女の口から、朱姫を裏切るという言葉を吐かせるのだ。吐かせることができたら報告しろ。こいつを操るための操心術をかける。宝玄仙を捕えるための罠に使う」
鎮元仙士がわざわざ孫空女に聞こえるように、それを言っている理由がわかった。朱姫を裏切ることは宝玄仙を裏切ること。そう説明しておいて、朱姫を裏切らせるつもりなのだ。そうすることで、孫空女の心を折ろうとしている。心を折って、『道術返し』を弱らせようとしている。
「俺は行く。なにをしても構わん。ただし、犯すな。犯していいのは、屈服の言葉を言わせてからだ」
「わかりました」
三人の兵が、孫空女の周りに集まった。
卑猥な表情を浮かべて……。