※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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555 わたしの娘

 白象が暴れ出した。

 その表情はどこか常軌を逸しているようであり、その開いた眼は、正面に立つ小白香のことをまるで認識していないように思える。

 小白香はさらに『治療術』を白象に送り込み、全身を襲っているはずのとろろ芋の痒みを癒していった。

 さらに、肌の表面に残っている乾いた芋汁も消していく。

 

「はううう――」

 

 白象が突然がくがくと痙攣をしはじめた。

 なにが起きているかわからなかったが、白象の開いた股間からどろりと女の蜜が溢れたのを見て、小白香は少し驚いた。

 発狂するような痒みが一気に消滅するのは快感には違いないのだが、まさか、この状態で気をやるとは思わなかった。

 

「これは、愉快だのう。母者は気をやりおったぞ。さすがは、わらわが二年も痒み調教をしてやっただけの身体じゃ。痒み責めには、意識などなくとも身体が反応するようじゃ――。見たか、沙那?」

 

 小白香は、がっくりと身体を脱力させた白象を見て笑った。

 

「見ました」

 

 沙那は感情を殺したような表情で、ただそれだけを言っただけだった。

 なんとなく面白くなかったが、小白香は我慢した。

 沙那が白象の晒し刑に大反対しているのは承知している。

 なにかと言えば、ずっと反対されていた。

 いま、黙っているだけで、ましというところだろう。

 小白香は、白象に意識を戻した。

 

「さて、じゃあ、訊問をするかのう……。答えはほぼわかっておるから必要はないのだが、まあ、わらわと母者のけじめのようなものかのう……」

 

 白象を磔にしている直柱には、上下二段の二本の横材が組んである。

 上の横材に白象の両手が横に伸び、下の横材には白象の両足首が左右に開いて拘束されている。

 拘束の手段は縄や革紐ではなく道術だ。

 見物人に白象が処刑をされているのが、わかりやすくするために、通常の重罪人と同じに磔台に拘束しているように見せかけているのだが、実際には白象の肌は、かすかに直柱とも横材とも離れていて接触はしていない。

 接触させてしまうと、痒みの苦しさで接触している部分の肌を破いてしまい出血をすることが予想されるからだ。

 

 白象には、少なくとも七日間は、こうやって、毎日、趣向を凝らした痒み責めを体験させながら殺していく予定だ。

 だから、七日間がすぎる前に弱りすぎたら困るのだ。

 七日すぎれば、あとは完全放置で全く息をしなくなるまで、ここに放置させるつもりだ。

 もっとも、白象の苦しみ方が一興のものであれば、さらに責めを追加するかもしれない。

 その辺りは、小白香の気紛れだ。

 

 しかし、いずれにしても、訊問ができるのは、今日が最後かもしれない。

 明日くらいからは、さすがに精神が破壊されてしまって、『治療術』を施しても、まともには会話をすることができないことが予想される。

 

 小白香の『治療術』では、まだ、完全に狂ってしまった頭を正気にさせることはできないと思う。

 『治療術』というのは、身体を回復させるのは容易だが、発狂した頭を元に戻すのは、非常に難しいのだ。

 だから、白象に対する最後の訊問は今日でなければならない。

 

「母者、考えてみれば、わらわと母者の絆というのは、これだけしかなかったのかもしれんのう……。わらわが母者を支配してやった二年――。この二年は、その前の十年の数倍に匹敵する時間を母者と一緒にすごしたし、話もした……」

 

 白象の反応はない。

 ただ、苦しそうに呻いている。

 しかし、痒み剤を塗りたくってやった股間はぶるぶると動いている。

 だが、すでに体力がつきかけているのか、その動きは鈍い。

 

「母者がどんな性癖を持っているかもわかったし、母者の性感の強い部分というのも知ることができた……。性奴隷を嗜虐的に扱っていた母者が実は、被虐癖というのが知れたのも愉しかったな……」

 

 やはり、反応はない。

 

「いや……。いまにして考えてみると、確かに、この二年は本当に愉しかった……。母者と毎日のように遊ぶことができたからな……。母と娘が心の底から心を開き合った初めての遊びが、足癬の痒み責めというのは、実にわらわたちらしくて、滑稽ではあるがな……」

 

 小白香は、意識なく脱力している白象に語りかけた。

 そして、白象の股間をすっと指で触れた。

 

「はわああああっ」

 

 白象の身体が跳ねた。

 小白香は笑ってしまった。

 

「あっ……はあっ……あれっ? しょ、小白香? な、なんで……? あ、あはあっ、き、気持ちいい……ああっ、す、素晴らしいわあ……き、気持ちいい……あ、ありがとう……しょ、小白香……ああ、素敵……ああっ、あはああっ――痒い……痒いけど、気持ちいい……あふううっ――」

 

 やっと意識を戻したらしい白象が、今度は股間の痒みを癒される快感に震えはじめた。

 

「母者、昨日はとろろ芋責めだったな。また、明日の昼に来る。そのときは、ほかの痒み責めが待っておるからな――。これは、わらわの母者への贈り物じゃ。ありとあらゆる痒み責めを味わわせてから、地の国に送ってやろうぞ」

 

「そ、そんな……小白香……で、でも、気持ちいい……も、もっと、擦って……お、お願い……こ、これ、気持ちいいの……そ、そこそこ……もっと、指を擦って……あはあっ……気持ちいい……す、凄い……あはああっ――」

 

「そんなに気持ちいか、母者? しかし、面白いものじゃのう……。わらわと母者は母娘であるのに、お互いの絆と言えば、これしかないのだぞ。ほれ、股は終わりじゃ」

 

 小白香は、白象の股間からすっと手を離した。

 

「いやあああっ、ご、ご主人様、ご堪忍を……。な、なんでもしますから……。それだけは……」

 

 小白香は思わず笑ってしまった。

 

「なんじゃ、母者。わらわをそんなにまで素直にご主人様と認めるのか?」

 

「そ、そんな、ま、まだしてよ……。ああっ、痒いわあ……。ああっ、も、もっとして……痒い……くうっ……」

 

 股間を擦る快感を取りあげられた白香は、名残惜しそうに悶えだした。

 

「預けじゃ、母者――。それに、母者、いまは、話をしようぞ……。多分、明日の昼にやってきたときには、母者はもう、わらわの『治療術』程度では、完全に正気には戻らんと思う……。母者もわらわに話があるのではないか? 考えてみれば、あの白象宮でわらわが母者を糾弾してから、まともに話はしておらんかったからのう……」

 

 小白香がそう言うと、やっと白象がやっと正気を取り戻したような表情になった。

 

「あっ……」

 

 白象がなにかを告げたいかのように声をあげた。

 しかし、なかなか喋り始めない。やがて、諦めたように小さく首を振ってから口を閉じた。

 それから、また口を開いた。

 

「……お、お前を最初に抱いたとき、お前の頬にわたしの頬をすり寄せた。とても気持ちのいい肌だった……。お前が産まれた直後のことよ……」

 

 突然、白象がそう喋った。

 

「はっ? なにを言っておるのだ、母者?」

 

「……さ、三歳になる頃には、お前はとても利発であることがわかった。わたしは、お前が書物に触れやすいように、手に入るあらゆる書物を離宮の図書庫に集めさせたわ。宮殿側にあるものも移動させた。か、かなり貴重な書物だって、わずか三歳の幼女が好きなように触っていいように手配させた……。ま、まさか、足癬病とかいうとんでもないものを研究するとは思わなかったけどね……」

 

 さらに白象が言った。

 小白香は呆気にとられた。

 

「どうしたのじゃ、母者? わらわの幼い頃がどうしたと言うのじゃ?」

 

「こ、この前、“わたしがお前に母親らしいことをしたかと訊ねたでしょう”――。そ、それが答えよ」

 

 白象がまだ荒い息をしながら言った。

 小白香は噴き出してしまった。

 そう言えば、白象宮の謁見の間で、家臣たちの前で白象を訊問したとき、そんなことを訊ねた気がする。

 そのときに、ひとつでも白象が小白香に母親らしいことをしたことがあれば、白象の処断を考え直すと言ったかもしれない。

 

「なにを喋っているのかと思えば、それはもういいわ……。それよりも、母者、わらわには訊ねたいことがあるのじゃ」

 

 小白香は懐から準備していた『真実の石』を取り出した。

 それを白象の乳房と乳房のあいだに密着させて、道術で張り付ける。

 白象はそれに気がついて、はっとしたように表情を変えた。

 

「まあよい……。聞いてやろう。だが、今更、母者の処分が変わることはないぞ。もう、すでに、処刑は執行が開始しておるのだ。母者は、まだ、死んでいないだけで、もう処刑されたのだからな――。母者が、母として、わらわにしてくれたことは、まだあるのか?」

 

 小白香は言った。

 

「そ、それは……」

 

 白象がまた、なにかを喋りたいかのように口を開けた。

 しかし、また言葉が止まる。

 

「どうしたのじゃ、母者――。母者が、わらわにしてくれた母親らしいことはそれだけか?」

 

 小白香はからかうように言った。

 白象は、一度、すっと胸元の『真実の石』に眼をやった。

 そして、納得したように頷いた。

 

「そうよ……。それだけよ……。ほかにはない……」

 

 白象が言った。

 すると、『真実の石』が赤く光った。

 

「赤……?」

 

 小白香は傾げた。

 『真実の石』は、石に触れた者の喋る言葉が、真実な否かを告げる霊具だ。

 青く光れば、真実を語っているという意味であり、赤く光れば、偽りを述べているという印だ。

 いま、白象の胸元の石は赤く光った。

 つまりは、白象は偽りを喋ったということだ。

 

「どういうことじゃ、母者? ほかにも、わらわにしてくれたことがあるということか? だったら、もったいぶらずに喋るがよいぞ」

 

 小白香は言った。

 しかし、再び白象は口を開くが、やはり言葉が出てこない。

 そして、白象は悲しそうな顔になった。

 

「ご主人様、差し出がましいようですが、白象殿は、もしかしたら、ご主人様になにか語りたいことがあるのではないですか?」

 

 沙那が横から言った。

 

「ご主人様?」

 

 沙那のその言葉に、白象が興味を抱いたように沙那に視線を向けた。

 

「わたしは、小白香様と道術契約を交わしました。『主従の誓い』です」

 

 沙那が言った。

 すると、白象が笑い出した。

 

「ふ、ふふふ……ははは……。どおりで……。なんで横にいるんだろうかと思っていたけど、そういうことね……。で、でも、小白香……、『主従の誓い』は、従者側だけではなく、主人側の心も拘束するのよ。軽はずみに結ぶものではないわよ」

 

 白象が小白香に視線を向けた。

 ふと見ると、『真実の石』が青く光っている。真実……。

 小白香もなんだかおかしくなった。

 

「そのようじゃな……。なんだかんだといっても、母者はわらわよりも道術に精通しておる。もっと、色々なことを母者から学ぶ余地があったかもしれんのう……。結局のところ、わらわと母者は、おかしな母娘だったのう……。こうなってしまうまで、まともには話もできんかったのだから……」

 

 小白香は笑った。

 

「そ、そうね……。わ、わたしたちは、おかしな実の母と……わたしが腹を痛めた娘……わたしの子ね……」

 

 白象が呟くように言った。白象の胸の石が青く光っている。

 

「確かに、おかしな母娘じゃな……」

 

 小白香は笑った。

 すると、白象は悲しそうな顔で、また、なにかを言いたげに口を開いた。

 しかし、やはり、言葉が出ないかのように、白象は小さく首を振った。

 随分と不自然な仕草だ。

 

「母者、いい加減にせぬか――。もったいぶった言い回しは好かん――。言いたことがあるなら喋るがいい――」

 

 小白香は苛ついて声をあげた。

 

「お、お前とわたしは、お、母娘よ――。お前は、わたしが腹を痛めて産んだ子なんだから――」

 

 白象が吐き出すように言った。

 なぜか、白象の眼からすっと一流の涙がこぼれた。

 小白香はびっくりした。

 慌てて、『真実の石』を見た。

 石の色は青だった。真実……。

 小白香はほっとした。

 

「な、なんだ、母者――。脅かすではないか。まるで、わらわと母者が母娘ではないような口ぶりであったからな……。わらわの母者は、そなたで間違いないのであろう?」

 

「お、お前は、わたしが、腹を痛めて産んだ子で間違いないわ」

 

 白象が言った。

 やはり、石の色は青だ。

 小白香は今度こそ安心した。

 

「まあよいわ。ところで、ついでに訊ねようぞ、母者――。元はと言えば、それを訊ねるために、今日はここに来たのじゃからな……。わらわの父親は誰なのじゃ? いままで、一度も訊ねたことはなかった気がする。わらわも、誰がわらわの父親なのか興味がなかったしな……。しかし、故あって、それが重要なことかもしれんのじゃ――。なにせ、わらわは、いま、金凰魔王と険悪な状態になっておってな」

 

 すると、白象が眼を大きく見開いた。

 

「な、なにを言っているのよ、小白香――? まさか、お前、金凰魔王となにか事を荒立てようとしているんじゃないでしょうね? そうだったら、やめなさい――。お前も、家臣たちも、金凰魔王の恐ろしさを知らない――。あいつの悪どさをわかっていないのよ――。あいつは絶対に信用しては駄目――。あいつほど、酷い奴はいないのよ――。お前など、考えもつかないような悪辣なことを平気でするわ――」

 

 白象がまくしたてだした。

 

「それは母者の知ったことではないわ――。わらわが知りたいのは、ただひとつじゃ。母者は女好きじゃ。性の相手も女だけであり、母者の性欲を解消するための奴隷はひとり残らず女だ――。わらわの知る限り、過去にも今も、母者の周りに男の愛人は皆無だ。そんな母者が、どうやって、わらわを身ごもったのじゃ? わらわの父親は誰じゃ? わらわはそれを知りたい」

 

「そ、それは……」

 

 白象は注意深く口を開く仕草をした。

 しかし、途中から安心したような表情になる。

 

「お前の父親は、金凰魔王よ」

 

 白象はあっさりと言った。石の色は青だった。つまり、事実ということだ。

 

「やはりな……」

 

 小白香は頷いた。

 予想の通りだった。

 男子禁制の離宮にやってきたことのある男は、金凰魔王と青獅子と青獅子の部下くらいのものだ。

 その中でも、もっとも頻繁に白象宮の離宮に出入りをしていたのが金凰魔王だ。

 白象に子種を授ける可能性があるとすれば、伯父の金凰魔王に間違いないと思っていた。

 

「ならば、わらわは、金凰魔王と母者のあいだに産まれた子ということになるのだな……。母者が、わらわの父親のことを隠しておった理由も納得いったぞ……。実の兄とはしたなく乳繰り合って産まれたのが、わらわだとは言い難いであろうからのう……。だが、そんなに気にしなくてもよかったのだぞ、母者――」

 

「ま、待って、小白香……」

 

「いや、どうせ、わらわたちは、これほどの変態じゃ。いまさら、汚点のひとつやふたつ増えたところで、どうということはない……。どれ、じゃあ、最後にもう一度、母者を愛撫してやろうか。別れの愛撫じゃ。ふふふ、母者が明日の朝までに、どうなるのか愉しみじゃ……」

 

 小白香は、震える白象の股間に再び手を伸ばした。

 

「ご主人様、お待ちください――」

 

 すると、沙那が突然に小白香を遮った。しかも、すっと手を出して、小白香を遮ったのだ。

 小白香は苛ついた。

 

「沙那、なんのつもりじゃ――?」

 

「待ってください……。もしかしたら、とても大事な話なのかもしれないのです……。どうか、わたしに、白象殿に質問させてください」

 

 沙那が強い口調で言った。

 

「はあ?」

 

「いいから、ご主人様、任せてくれませんか?」

 

 沙那は、もう小白香を見てはいなかった。

 小白香を無視したように、白象をじっと見ている。

 仕方なく、小白香は小さく舌打ちしながら、サンダルを履き直した。

 これが、主従の誓いの影響なのか、小白香には沙那に対する信頼感が離れない。

 とにかく、沙那に任せるべきという感情に支配される。

 

「……ところで、ご主人様、その前に、お伺いしたいのですが、例えば、わたしとご主人様で結んだような道術契約で、なにかを秘密にするように約束をしたとすれば、なにがなんでも真実は言えなくなりますか? または、先程、伺った大地との道術契約という”呪い“のものとか……?」

 

 突然、沙那が小白香に視線を向けた。

 小白香は一瞬、すぐには答えられなかったが、しっかりと首を縦に振った。

 

「まあ、一般的にはそうじゃな」

 

 小白香は言った。

 

「一般的というのは?」

 

「言葉の通りじゃ。大抵はそうだということじゃ」

 

「じゃあ、道術契約のようなもので、真実を言わないことを約束していても、真実を伝えることはできる場合もあるということですね?」

 

「まあ、どういう契約を結んだかによるな。大抵の道術契約は、言の葉に乗せたことにお互いに縛られる……。たとえば、“真実を語るな”という道術契約と、“真実を伝えるな”という言の葉は異なる。前者の場合は、真実を語る代わりに沈黙をするだけだ。後者の場合は、なんとしてでも相手に伝えないように、嘘を言うであろうな」

 

 小白香は答えた。

 

「そ、そうよ、小白香――。そうなのよ、沙那」

 

 白象が興奮したように声をあげた。

 小白香は呆気にとられた。

 

「なるほど……。だったら、白象殿は、なんらかの道術契約の縛りを受けているのかもしれません。真実を告げないようにと……」

 

 沙那が言った。

 

「真実を告げるなと? なんの真実じゃ?」

 

 小白香は声をあげた。

 

「それを探るための質問を続けることは、もしかしたら、ご主人様の心を傷つけることになるかもしれません……。でも、それをしていいですか? いまは、それが必要なことのように思えるのです」

 

 沙那の物言いに小白香は噴き出だしてしまった。

 

「なにを言っておるか――。実の母者を処刑しようとしているわらわが、いまさら、なにに心を傷つけられるものか――。なんでもいい。訊ねたいことがあるなら、訊ねるがいい、沙那」

 

 小白香は笑った。

 

「では、お許しを得て続けます……。さっきから、白象殿は、奇妙な言葉しか使っていません。“わたしが腹を痛めた子だ”と……。でも、逆に、ただの一度も、実の娘だとは言われていません……。白象殿、お伺いますが、ご主人様……、いえ、小白香様は、白象殿の実の娘ですか?」

 

「……しょ、小白香は……」

 

 すると白象は、苦しそうな表情になった。

 また、さっきのように口を開いて、なにかを語りたいかのように口が動く。しかし、続く、言葉は出てこない。

 そして、白象は無念そうに息を吐いた。

 

「わ、わたしは、小白香の……母よ……」

 

「微妙に質問に答えていませんね、白象殿……。答えは一字一句正確にお願いします……。小白香様は、あなたの実の子ですか?」

 

「……しょ、小白香は、わたしが腹を痛めて産んだ子よ……」

 

 白象は悲しそうにそう言った。

 もちろん、胸の『真実の石』は、そのふたつの質問のいずれに対しても青い光を放っている。しかし……。

 

「母者、わらわは、母者の実の子ではないのか?」

 

 小白香は唖然として訊ねた。。

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