「ぐひいっ──」
乳首になにかが軽く突き刺さる。
そして、思い切り引っ張られる。
「動くな──。皿の分際で」
叱咤が飛ぶ。
朱姫は身体を緊張させた。
裸体に載せられた食べ物が、ぐりぐりと股間になすりつけらえる。
ぴたりと閉じた股間に肉のたれがあるのだ。
それを朱姫の身体に載せた肉をつけて兵たちが食べる。
なぜ、そんなことをしているかというと、朱姫が皿になることを選んだからだ。
孫空女とともに、
激しい戦闘が起こったが、最初に捕えられてしまった朱姫と孫空女には、その戦闘は無関係に発生し、そして、終了した。
沙那と宝玄仙は、なんとか『移動術』で逃亡に成功したようだ。
いずれにしても、自分が半妖であることは、まだ感知されていないようだ。
だから、連れていかれた孫空女とは違い、警戒は緩かった。
いまも、まったく拘束はされていない。
おそらく、侍女代わりの平凡な人間族の少女と考えられていると思う。
拘束しなくても逃げられないと考えているのだろう。
朱姫の身体からは、霊気の探知が難しいというのもあるだろう。道術を封じる霊具のようなものもない。
だが、孫空女と引き離された以上、朱姫は機会を持つことにした。
囚われた場所は、
ちょっとした砦だ。
助けに来てくれるだろうか……?
だったら、大人しくしておくべきかとも考えた。
帝国に拡がり、圧倒的な権威として君臨する天教だが、帝国領を抜けた諸王国領となると、その影響も天教本院のある帝国から離れるにつれ、教団施設の数も少ないはずだ。
そうだとすれば、逃亡に成功した宝玄仙が、この場所を特定し、ここに辿りつくのは難しいことではないだろう。
沙那もいる。
問題は百人もの天教の教団兵が詰めているこの砦に対して、あの気まぐれな変態巫女が、朱姫や孫空女を救出するために乗りこむ気があるかどうかだ。
ともかく、朱姫はこの五荘観院に連れ込まれてすぐ、地下室のような場所にあった牢に放り込まれた。
孫空女は網に入った状態で厳重に拘束され直してから、網から出されて、鎮元仙士が、そのままどこかに連れて行った。
一方で朱姫は、しばらくしてやってきた兵たちに、牢の中でよってたかって素裸にされた。
そのとき、誰かが、朱姫の耳と口に中になにかを入れた。
すると、孫空女の声が聞こえてきた。
どこか別の場所で、孫空女は性的な拷問を受けているようだ。
責めているのは、やはり教団の兵のようで、孫空女に「朱姫を凌辱にかけることに同意せよ」と迫っている。
朱姫には、彼らがなぜそのようなことをしているのかがすぐにわかった。
孫空女の中にある宝玄仙の『道術返し』を消失させようとしているのだ。
道術の源である霊気は、自然の中にあり、道術遣いや妖魔、即ち亜人族に備わる力の一種であるが、それを動かすのは“精神力”だ。
だから、精神が弱まれば、霊気も弱まり、道術の防護力も薄れてしまう。
鎮元仙士たちは、「色責め」で孫空女の精神力を削ごうとしているのだ。
精神力が削がれれば、道術力が弱まり、敵の道術を受け入れる身体になる。
兵たちに素裸にされた朱姫は、再び現れた鎮元仙士から、ここにいる兵の全員に凌辱されるのがいいか、“皿”になるのがいいかと言われた。
“皿”になるという意味がわからなかったが、朱姫は、当然、それを選んだ。
その結果がこれだ──。
朱姫は大きな台の上に仰向けに寝かされ、裸体の上に食べ物を並べられた。
料理を載せる皿ということらしい。
拘束はされていないが、皿であることを拒否して動けば凌辱だと言われた。朱姫は逃げるわけにはいかなくなった。
「あくうっ」
朱姫は、またもや悲鳴をあげた。
股間の敏感な場所にぐりぐりと肉が擦りつけられたのだ。
朱姫に手を出すなと命令されている兵たちの欲求不満による嫌がらせだ。
わざと刺激して、朱姫を感じさせようとしているのだ。
台に横たわったまま連れてこられたのは、兵が詰める兵舎の食堂のようだ。
裸体に肉を並べた朱姫が現れると、ものすごい数の男たちのどよめきが起きた。
しかし、食べること以外に手を出してはならんと
直接触ってはならんという命令も出された。
その代わり、なにをされても、朱姫はじっとしていなければならない。
“皿”になりきれず、耐えられなくなって、暴れ出せば、本当に百人を相手に犯されることになる。
そして、始まった。
兵たちは、裸体に載った肉を取る振りをしながら、股間に乳首に無遠慮に箸を延ばす。
とにかく、許される限りの嫌がらせで、朱姫に抵抗を強要しようとしてきた。
十人ずつくらいの集団が次々に交替で朱姫に載った肉を囲む。
無遠慮に身体中を箸で突かれたり、肉を擦りつけられたりしながら、身体中を刺激される。
肉がなくなれば交替らしい。
また、肉が並べ直されて別の集団がやってくる。
いったいどれだけの長い時間続ければいいのだろう。
些細な刺激ではあるが、刺激され続けることで、兵たちの攻撃が疼きとなって、朱姫の身体に積み重なる。
しかも、耳からはずっと聞こえ続ける孫空女の嬌声や兵たちが朱姫の身体を批評する嘲笑の言葉が聞こえ続けるのだ。
それらのすべてが、朱姫の身体と心を蝕む。
しかも、それだけじゃない──。
日に三回やることを義務付けられているお尻の自慰をまだやっていない。
朱姫の身体は途方もなく疼き始めていた。
肛門が熱いのだ。
じわじわと痛みのような疼きがそこから全身を蝕んでいく。
「ここは感じるか、どうだ、皿?」
ひとりの兵が、肉を朱姫の脚の下に肉を掴んだ箸を差し込み、朱姫の肛門をぐりぐりと刺激した。
「あひいっ。だ、駄目えっ」
宝玄仙に開発され尽くした肛門から電撃のような快感が迸った。朱姫は身体を仰け反らせた。
「ほう、この皿は、尻が弱点のようだな」
ほかの兵の掴んだ肉が一斉に、朱姫の肛門を襲う。
「か、勘忍して――。そ、そこだけは――」
朱姫は思わず叫んだ。
しかし、ますます抉るような朱姫の肛門への攻撃は激しくなる。
「ほら、もっと動け。身体の肉を振り落とせ――。そして、俺たち全員といいことしようぜ」
朱姫は拳を握りしめて、その快感に耐え続けた。
だが、こうしているあいだも、宝玄仙に装着されている首の霊具のために、身体が淫らに欲情する。
反応が大きくなった朱姫の身体を面白がって、兵たちが拍車をかけて悪戯する。
「皿のくせに、みっともなく達っしたら、“皿”じゃなくて、俺たちに犯されることを選んだということにしませんか、清風隊長」
ひとりの兵が声をあげた。
「……いいだろう。一度でも、この娘がいったら、お前たちに凌辱させる」
室内に爆発するような歓声が起こった。
「ひっ」
朱姫は血の気が引くのを感じて、悲鳴をあげそうになった。
だが、慌てて、声を飲み込む。勝手に声を出しても、皿でないと見なされるかもしれない。
また、次から次へと延びてくる肛門へのいたぶりが始まった。
朱姫は歯を食いしばった。
「朱姫、ここにいる男たちに犯されたいか──?」
無遠慮な尻への愛撫に耐えている朱姫に、清風という隊長が言った。
「い、いやだよ──。か、勘忍して……、ひいいっ」
その清風の指が朱姫の肛門に突き刺さったのだ。
朱姫は尻の穴を指で抉られて、思わず跳ね除けそうになった。
だが、皿でいなければ犯される。
なんとか耐える──。
「嫌だったら、お前の代わりに、
孫玉蔡?
孫空女のことか?
だけど、孫空女を裏切れ?
「な、なんで?」
なぜ、そんな取引を言ってくるのかわからない。
どういう罠なのだ?
「あひいっ」
清風の指が肛門の内側を指で掻くように動く。猛烈な快感があがってくる。
「だ、だめっ。も、もう──、ああっ」
あがってくる……。
容赦のないものが込みあげる……。
今度は耐えられない。
「孫玉蔡の声が聞こえるだろう、朱姫? あいつは、もうすぐ、お前を凌辱しろと口にするぞ。それよりも早く、お前があの孫玉蔡を売れ。お前が孫玉のどちらか、先に仲間に売られた方が凌辱されて売った方は助かる。どっちがいい?」
「そ、そんなこと──くああぅ」
そんなこと絶対にできない──。
孫空女を売るなど。だけど、
このままでは……。
また、耳からは、ほかの場所にいる孫空女が淫らな責めで追い詰められている声が聞こえる。
確かに、朱姫を売れと強要されている。
「ならば、このまま達するか? 達すれば、その瞬間から凌辱される。ここにいる全員の兵がお前を犯す。それこそ、何十日も続けてな──。お前のような小娘など確実に壊れるだろうな。ほらっ、もう、いきそうだろ? 早く、孫空女を犯してと、口にしろ」
我慢できない……。
清風の指の動きが激しくなった。
周囲の兵の歓声も激しくなる。
「うああっ──ああっ──ああっ──うくうっ──」
「よがっていないで口にしろ。お前の喋る言葉は、孫玉にも聞こえている。お前が裏切る言葉を聞かせてやれ。それとも、お前がここにいる全員に犯されるか?」
指一本なのに……。
朱姫は、歯を食いしばる。
だが、もう我慢できない。
いく──。
いきそうだ──。
犯される。
自分は、壊される。
耳の中からは、孫空女の嬌声と悲鳴が聞こえ続けている。
孫空女だって耐えられるわけがない。
あんなに媚薬でどろどろの身体だったのだ。
清風の指がお尻の中を掻きしごく……。
いく──。
やだ。
嫌だ。
男になんか犯されたくない。
嫌だ――。
嫌だ――。
嫌だ――。
「もう崩壊寸前だな。どうせ、俺たちの狙いは孫玉だけだ。お前は助けてやる……。孫玉を売ればな──。孫玉を裏切る言葉をあいつに聞かせてやれ」
「そ、孫姉さんを……」
朱姫は口にしていた。
もう限界だ。
これ以上、時間を延ばすことは不可能だ。
込みあげる……。
快感が全身を支配する。
孫空女を屈服させる材料として、朱姫が裏切る言葉を孫空女に聞かせようというのだろう。
わかっている……。
だけど、このままでは朱姫が犯されるのだ。
「孫姉さんと呼んでいるのか? 孫姉さんをどうする? それとも、お前が犯されるのか? どっちだ? 孫玉か、それともお前か?」
「孫姉さんを……」
清風の指が朱姫の肛門を出入りする。
朱姫の股間から垂れ下がった淫液がびしゃびしゃと音を鳴らすのが聞こえる気さえする。
肛門の内部で指が曲がった。
「んひいっ」
指でぐりぐりと抉られる。
もう、駄目──。
絶対にいく──。
だけど、裏切れない──。
孫空女を裏切れない──。
でも、このままではいってしまう。
「孫姉さんを……を凌辱して──」
朱姫は迸った快感とととともに、その言葉を叫んだ。
*
孫姉さんを凌辱して──。
耳の中に、朱姫の悲痛な叫びが飛んできた。
「ふふふ……どうやら、お前の仲間は、先にお前を売ったようだな」
鳴り響く鈴の音とともに、耳元でささやかれた。
「き、気持ちいい……。このまま、いかせてください……」
孫空女は、もう何十度目かのその言葉を口にした。
しかし、張形は止まらない。
孫空女の股間の中で跳ね回る。
快楽から逃げられない。
いや、逃げたくない……。
逃げたくないけど逃げたい。
つきあげる──。
頭が真っ白になる……。
「くはあああっ」
だが、ぴたりと張形がとまる。
孫空女はがっくりと身体の力を抜いた。
「本当に、これでいいのか? そうだ。次からは、張形をとめる言葉を変えてやろう。“もっと、もっといじめてください”。次からはそう言え。そうすれば、股間の淫具はお前をいじめてくれる。寸止めでな」
「う、うるさいよ、く、くそが……」
孫空女は熱い息とともに悪態をついた。
「いきたいか、孫? いきたければいかせてやるぞ。お前を売った仲間を凌辱しろと言えばな」
「く、……糞野郎……」
「わかった。だったら、無条件にいかせてやろう……。一回だけな。一回だけなら許可してやる。一回だけは仲間を売ったことにはならない。これでどうだ?」
「ほ、本当か?」
孫空女は頭をあげた。
「ああ、だから、口にしろ。朱姫を犯し殺してくれ、とな……」
その男が言いながら、布越しに孫空女の股間の淫具を揺すった。
三人のうち、その男だけがやたらにしつこい。
孫空女の心をもてあそぶようにねちっこく追い詰める。
「あひっ」
「口にしろ。朱姫を殺せと。もう、朱姫はすでにお前を裏切ったぞ」
別の男が孫空女の首輪の鈴を指でいじくった。張形が動く。
「いひいいっ」
喉から声が迸る。だが、男が手を離すと、張形がとまる。
「裏切りの言葉を言え。もう、限界だろう?」
男の指が鳴った。
張形が激しく動き出す。
「あはああっ──はああっ──ああぁああああ──」
「次は、そのままいっていいぞ」
いってもいい……。
その言葉が頭で繰り返される……。
この三日間の宝玄仙の責めの後に加えられたこの性の焦らしの責め苦……。
孫空女は自分の身体も心も限界だということがわかっていた。
だから、一度だけいっておけば……。
「だから、朱姫を殺せと言え……」
耳元で囁かれた。
「もっと……」
股間の中で張形が跳ね動く。
限界を過ぎている孫空女の意識が飛んでいく。
「なんだ?」
耳元で言葉をささやいていた男が不審な声を吐いた。
「もっと……いじめて……ください……」
張形がとまった。
孫空女はもう絶頂の寸前だったのだ。
精神力──。
それだけで支えていた。
一度、心が折れれば、もう立ち直れない。
「しぶといな……。熟れきった雌のくせに……。おい、しばらく身体をいじくってやろうぜ。隊長は、犯すなとは言ったけど、裸にしてはならんとは言わなかったぜ」
「そうだな」
ひとりの男の言葉に同調して、残りのふたりも孫空女の身体に手を伸ばした。
孫空女は、もうなにか言葉を言い返す気にはなれなかった。勝手にしろと思っただけだ。
廊下から慌ただしい物音がした。
誰か近づいてくる。
孫空女の身体から衣類を引きはがそうとしていた男たちが手を止めた。
部屋の扉が開いた──。
「妖魔が──」
叫んだ兵がそこで崩れ落ちた。その背後に獣人がいた。
いや、妖魔だ。小さいが額に角がある。
「何者だ──?」
部屋の中で孫空女をいたぶっていた三人の兵が身構える暇もなく獣人が跳んだ。
獣人の爪が三人の兵の喉を斬り割く──。
「孫姉さん──」
獣人が叫ぶ。
「しゅ、朱姫なの?」
もう、人間の姿に戻りかけているが、それは朱姫だった。
「あたしのことを半妖だとは、思っていなかったようです。だけど、それ程長い時間は、この獣人の姿を保てません」
朱姫の腕が孫空女が縛られていた柱を砕いた。
拘束しているものの一部を失った『魔縄』が下に落ちる。
朱姫は、もう娘の姿に戻った。
朱姫は裸だ。
全身が返り血にまみれている。
孫空女は立とうとしたが立てなかった。
長い時間、色責めをされていた身体がいうことをきかない。
「あたしの眼を見て、孫姉さん──。あたしの『縛心術』で孫姉さんの身体を石みたいに感じなくします」
すぐに身体が楽になる。
暴発寸前の疼きの塊りのようなものがなくなったわけではないが、これなら動ける。
「『
耳から取り出した『如意棒』を振りあげた。
これは、見つからず、取りあげられなかったのだ。
「ここにいたぞ」
「捕えろ──逃がすな──」
武器を構えた兵たちが、部屋に雪崩れ込んだ。
『如意棒』をひと振りする。
五、六人の男が吹き飛ばされて、さらに後方の集団に飛ばされる。
「逃げるよ──、朱姫」
「はい」
孫空女は壁を砕いた。
その空いた穴に飛び込む。
朱姫も続く。
どこかの空き部屋だ。
孫空女が開けた穴から兵が追ってくる。
穴を追ってきた兵を『如意棒』で穴に押し返す。
その兵が穴に挟まり、少しだけ時間が稼げる。
孫空女は反対側の壁を砕いた。
廊下に出た。
出くわした三、四人の兵がぎょっとした表情をした。
『如意棒』を振る。
それで、もう兵たちは動かなくなる。
窓が見えた。
いまは夜のようだ。
その窓を砕く。
外に通じる穴が開く。
ここは三階だ。
穴から覗くと、この館のあちこちから兵たちが武器を持って、眼下の広場に出てくるのが見える。
館を囲む外壁に配置し、孫空女たちの逃亡を防ごうとしている。また、この建物も囲みつつある。
「朱姫、あたしの背に乗って――」
「わかりました、孫姉さん」
朱姫の体重が背中に感じるのを待ち、孫空女は、外の広場に向かって飛んだ。
空中で孫空女は『如意棒』を振り回しながら着地する。
地上に降りると同時に『如意棒』に触れた兵が、宙に舞う。
「あたしに、もう容赦はないよ。死にたくないなら道を開けな──」
孫空女は、朱姫を地面におろした。
走る──。
朱姫もついてくる。
『如意棒』を振り回す孫空女を阻める者などいない。
五人、十人と前を阻む兵を跳ね飛ばす。
やがて、兵が逃げ出した。
孫空女の駆ける前が、潮が引くように開ける。
この館を囲んでいる壁が見えた。
門は兵で固められている。
関係ない──。
眼の前に敵兵はいない。
壁があるだけだ。
ぶち抜く──。
孫空女は『如意棒』を構えた。
しかし、不意に股間の中の張形が激しく動き出した。
官能の嵐が稲妻のように全身を貫く。
全身の力が抜ける……。
「くあああっ」
「孫姉さん──。あたしの『縛心術』が取り消された──。
朱姫が後ろで叫んだ。
孫空女は片手で股間を押さえて、その場にうずくまってしまった。
張形が跳ね回る。
これまでに感じたこともない最高の愉悦が全身を貫く。
「鳴門、跳躍先はどこでもいい。移動術の門をここに開け――」
朱姫が怒鳴った。
「駄目だね。ここには結界が張ってある。移動術を邪魔するね」
鳴門の返事に、朱姫が舌打ちしたのがわかった。
「だったら、猪公──。お前が孫姉さんを担げ」
身体が浮きあがる。
猪公に身体を抱きあげられた。
「孫姉さん、しっかり」
朱姫が泣きそうな声で叫んだ。
猪公の背中で、快楽の絶頂が孫空女の身体で爆発する。
とにかく、孫空女は、この三日間待ち望んでいたものについに達することができた。
それでも張形はとまらない。
もう、次の波が孫空女の中に襲い掛かる。
「お前は、妖魔だったのだな、朱姫」
鎮元仙士の冷静な声が近づいてくる。
焦りのない鎮元仙士の声で、孫空女はもう自分たちが逃亡できる機会が逸したことを悟った。
大勢の武器を構えた教団兵に囲まれた。
「駄目だね、主殿──。もう、逃げる場所がないね……」
「……しゅ、朱姫、さっきのお前自身の変身の道術は……?」
「駄目です、孫姉さん。『獣人術』の魔術は、あたしの道術の全力なのです。あの術を使うと、しばらく、なんの術も使えないのです。遣えるのは、使徒の術くらいで……」
「……なら、朱姫、
「孫姉さん──、待って」
朱姫が奏を出した。朱姫の操る三匹目の使徒だ。
ばさばさという羽根がはばたく音がする。
「……お前は、奏に担がれて逃げろ、朱姫──。あひいいっ──」
孫空女はそれだけを言った。
そして、絶頂に達した。
すぐに三度目もきそうだ。
もう身体が壊れてしまう。
「そんな、孫姉さんを置いていくなど──」
「迷うんじゃない、朱姫――。早く――」
奏一匹では朱姫ひとりなら抱えられるが、孫空女までは無理だ。
「か、必ず、ご主人様と戻ってきます──。猪公、鳴門、孫姉さんを頼む」
奏が飛びあがった。
羽音があっという間に遠くなる。
「しまった。逃げたぞ──」
「矢を使え──。射ち落とせ──」
「追え、追うのだ。追跡隊を編成しろ──」
飛び交う命令を耳にしながら、孫空女は快楽の爆発と戦っていた。
膣で暴れる張形は肉芽も同時に前後左右に動かし続けている。
「ひぎいいいっ」
また達した。
もう、いやだ──。
それでも、張形は孫空女の淫孔の中で跳ね回る。
猪公と鳴門に向かって、数十名の教団兵が一斉に棒を向ける。
二匹が姿を消す。
孫空女は地面に投げ出された。
「おおおおっ」
またもや絶頂だ。
孫空女は快楽に任せて獣のように吠えた。
「……やってくれるではないか、孫玉」
鎮元仙士の声がすぐそばにあった。
縄が身体の上に被される。
その縄が勝手に動いて孫空女の身体を拘束した。
やっと股間の淫具がとまる。
「お前の心を砕いて、俺の道術を受け入れるようにすることはやめる。お前は、殺す、孫」
もうどうでもいい。
とっとと殺せ……。
「この広場の真ん中に穴を掘って、首だけ出して埋めておけ」
鎮元仙士が言った。
「ついでに、そこに『小便場』と立札を立てましょう、鎮元仙士様。頭だけ出した孫空女の顔は上を向かせておいてね。小便がよく飲めるように」
そう言ったのは、明月という鎮元仙士の部下だ。
「好きにしろ、明月。こいつの処刑は明日だ。それと、朱姫を逃がすな。どうせ遠くには逃げれん」
「わかりました。それと、朱姫については、すでに清風が追っています。すぐに朱姫も戻るでしょう」
「わかった」
鎮元仙士が立ち去ると、明月の足で孫空女の腹が蹴りあげられた。
二度──三度──四度──。
「お前の処刑は明日だ、孫──。それまで、腹いっぱいに兵どもの小便を飲んでおけ」
また、明月の足が腹に食い込んだ。