ぐらりと体勢が崩れた。
「くううっ」
しかし、孫空女は、なんと片足を踏ん張って倒れるのを防いだ。
「効いているわ――。もう一度よ――」
「わたしは膝の裏をくすぐるわ」
「あたしは股よ」
「あたし、胸――」
辛うじて転倒は耐えたが、そのために全力を込めている尻穴への力が抜けそうになる。
孫空女は、慌てて、お尻の力を元に戻す。
しかし、四方から柔らかい刷毛の繊毛が孫空女に敏感な身体に襲いかかり、孫空女から集中力を奪っていく。
「や、やめろっ――」
孫空女は歯を喰いしばった。
身体を刷毛からそらせようとするが、重い首枷は孫空女に素早い動きを許さない。
結局、孫空女は全身を五本の刷毛に無防備に晒すことになる。
そして、乳首や股間に刷毛を伸ばされて、そこを刺激されると、どうしても力が抜けてしまい、重い首枷を抱えている上体が大きく揺れる。
重い首枷の揺れを支える筋肉は、さわさわと前後左右から襲い掛かる女たちの刷毛が力を削いでしまう。
孫空女は、あっという間に追い詰められてしまった。
「ほう……鞭よりも、刷毛の方がつらそうじゃないかい、新入り――。これなら、崩壊も近そうだね」
「う、うるさい……。ひんっ、はああっ――そ、そんなの卑怯だよ――いひいいいっ、くううっ――」
悪態を返そうと思ったら、今度は左右の脇の下を同時にくすぐられた。
しかも、両方の乳首には別の刷毛が襲っていて、もう一本は孫空女の行く手を阻むように、孫空女の進む前で、刷毛を上向きにして待ち置かれるようにされている。
前に進むには、その刷毛で股間を刺激されながらでなければ進むことができず、孫空女は泣き声をあげた。
噴き出した汗が眼に入り、それも視界を妨げる。
二度の薬剤を抽入された肛門の崩壊は近い……。
孫空女自身が、誰よりもそれを予感していた。
しかも、二周目ともなると、一周目のときの徹底的な鞭打ちの疲労が蓄積し、さんざんに鞭打たれた筋肉の力も著しく失ってもいた。
そこに前後左右からの刷毛責めだ――。
孫空女は右に、左にと大きく体勢を崩しながら、それでも脚を前に進み続けた。
「刷毛が湿ってきましたわ……」
「じゃあ、あたしは後ろからくすぐるわ……」
孫空女を責めている女たちが連携して、刷毛を股間に迫らせる。
歩き進む孫空女の股間の前後にぴたりと刷毛を前後に密着させるのだ。
これをされると、孫空女は前後左右のどこに逃げようとも、敏感な股間を刷毛に刺激されなければならず、どうしても速度を落としてしまうのだ。
さらに、宝玄仙に調教されたこの敏感な身体では、刷毛のような柔らかいもので刺激されると、そこから大きな快感を抉り取ってしまう。
「うわああっ、んひいいいっ」
すると自分でも泣きなくなるくらいに、力が奪われて、ぐらりぐらりと首枷が揺れる。
しかし、この状態では、わずかな体勢の揺れも命取りだ。
だが、迫っている排便は、孫空女にじっととまることも、これ以上速度を落とすことも許さない。
そんなことをすれば、致命傷の崩壊が待っている。
もう、孫空女にはどうしていいかわからない。
「ほらほら、新入り、また速度が落ちたよ――。ふふ……なるほど、お前は鞭打ちよりも、刷毛責めが随分と効果があるようだね――。ほら、お前ら、気合入れて、この新入りをいたぶるんだよ――」
外側から見守っている鄔梨李が声をあげた。
そのあいだも乳首に股間に尻にと、刷毛が孫空女の全身を刺激し続ける。
「ああ……、も、もう、いや……だ、だめっ……」
この瞬間にも、引き締めている肛門が緩みそうだ。
左右から乳首が襲われ、体勢を崩させようと、脇の下から脇腹をしつこく刷毛で舐めあげられ、さらに股間の前後に刷毛の道だ――。
一歩進みたびに、どんどんと力が奪われる。
力を入れたくても、入らない……。
孫空女は、追い詰められた。
「お、お前たち、や、やめておくれよ――。ご、後生だから――」
孫空女は駄目で元々と思い、女たちに訴えた。
しかし、その孫空女の弱音に、却って女たちは歓声をあげて悦び、刷毛の責めを加速させる。
「くう……、ああっ、あっ、ああっ……」
孫空女は堪らず声を放った。
それでも孫空女は前に進んだ。
女たちはしつこく、刷毛でなぶり続ける。
全身からは信じられないくらいに大量の汗が流れている。
汗が眼に入り、視界を邪魔する。
「ひいっ、ひゃっ、ひいっ、ふうっ……」
もう孫空女は絶え間のない嬌声を吹きこぼしていた。
尻穴の崩壊も、快感の崩壊も、どちらも紙一重のところに追い詰められている。
だが、最後の最後の気力が、その両方の崩壊を支えていた。
「なかなか、頑張るじゃないかい。よく、ここまでもったよ、新入り……。お前は頑張った――。だから、もう、これでいいじゃないかい……。お前の根性は見せてもらったよ。それだけ頑張れば、お前がただ者じゃないことはわかった。ここで終っても、誰もお前を笑わないよ……。だから、もう、諦めな……」
鄔梨李が一転して、孫空女を褒めだした。
そうやって、孫空女の気力を削ごうと思っているのだ。
その手には乗るかと、孫空女は歯を食い縛った。
とにかく、一歩でも前に……。
それだけを考えて、快感と戦いながら進んだ。
「残り、三分の二よ――。もっと、責めなきゃ――」
女たちのひとりが焦ったような声をあげた、
はっとして、孫空女は虚ろになりかけている視線をあげた。
全身を震わせる。
まだ、そんなものかと思ったのだ。
もう、どこを歩いているのかもわからなくなりかけていた。
まだ、半分以上……。
孫空女は本当に泣きそうになった。
「それだけあれば十分だよ。こいつは、体力も気力も限界だ――。いままでのように責め続けな――。いや、刷毛をもっと動かすんだ。いっそ絶頂させちまいな――。さすがに、達してしまえば、排便を我慢できやしないよ――」
鄔梨李が笑った。
女たちが元気よく返事をした。
すると、心なしか孫空女に襲いかかっている五本の刷毛がねちっこい動きに変わったような気がした。
「いやああっ、うふうううっ」
軟らかな刷毛で呼び起こされた疼きが全身を駆け巡る。
孫空女はすでに追いつめられていた。
いままでの刷毛の責めだけで、孫空女の身体はすっかりと官能の波に蹂躙されて、烈しい淫情の嵐が荒れ狂っていたのだ。
そこに、さらに快感を掘り起こそうとするような刷毛の動きが追加する。
自分でもわかるくらいに、歩く速度が落ちている……。
「乳首なんて、可哀そうなくらいに尖っている……。つらそうね、あんた? でも、感じているみたいね……」
女のひとりがくすくすと笑った。
すると、ほかの女たちも同調するように笑い声をあげる。
「どうも、お尻が感じるみたいね……。さっきから、ここだけは反応が激しいように思うわ……」
背後から尻穴を専門に刷毛を責めたてていた女が、一転して刷毛を前後に強く動かしだした。
いままでは、どちらかといえば、歩くのを邪魔するように、後ろから刷毛を置くような感じだったのだ。
それが速い速度で尻穴の周りを掃き始めた。
「はあっ、はっ――あっ、あああっ――」
お尻は弱い。
だから、それがばれないように反応すまいと思っていたのに、ここにきて、その刺激を与えられては、さすがに激しい反応を示してしまうしかない。
支えていた首枷が完全にぐらりと前に倒れた。
「きゃあ」
前にいた女たちがびっくりして飛び退く。
「ぐうっ」
しかし、孫空女は膝を曲げて踏ん張った。
歩みをとめてしまったが、なんとか倒さずに済んだ……。
ほっとしたが、孫空女はもう次はないことも悟った。
次に体勢を崩せば、絶対に孫空女は倒れるだろう。
あるいは、耐えているものが、尻穴から吹き出すに違いない……。
「生意気だねえ――。まだ、倒れもしなければ、排便も撒き散らさないのかい――」
苛ついたような鄔梨李の声がした。
構わずに孫空女は再び歩き出した。
当然、女たちの刷毛も襲い掛かっていくる。
もう、刷毛を避けるような動きはできない。
それをすれば、体勢が崩れる。
全身の筋肉が悲鳴をあげている。
わずかな動きの変化で、重い首枷は地面に落ちる。
おそらく、そうなったら立ちあがるために、もう脚を踏ん張れない……。
「ああっ、いやっ、はっ、はあっ……」
孫空女は悶えながら進み続ける。
「めちゃめちゃ、股が濡れているわ。もうすぐ、達すると思うわ――」
股間を責め続けている女が叫んだ。
呼応するように五本の刷毛が全身を動き回る。
限界の身体を四方から責めたてる刷毛が、大きな快美感となって一瞬ごとに全身を貫かせる。
「ちっ、貸しな――。そうこうしているうちに、半分以上すぎちまった――。本当にしぶといな、この人間族――」
鄔梨李がまた、怒声をあげた。
そして、女たちのひとりから刷毛のついた棒を取りあげたのが見えた。
「この道具をどう使おうが、自由だろうからね。これは反則じゃないよ、新入り」
鄔梨李が言った
すると硬いものが肛門に食い込んできた。
「うくうっ――だ、だめだよ――はがあっ――ぐううっ――」
孫空女は鋭い悲鳴をあげた。
なにをされているのかわかった。
鄔梨李は女たちが責めている棒をひっくり返して、柄の部分を孫空女の肛門に伸ばし、その柄の先を孫空女の尻穴に食いこませようとしているのだ。
この状態で柄を尻穴に入れられるのは、恐怖そのものだ。
「だ、だめ、だめ、だめ、だめええっ――」
孫空女は必死になって尻穴に力を入れた。
侵入を許せば終わりだ。
確実に糞便はその場で巻き散ってしまう。
「お、お願いだよおお――」
孫空女はついに脚を止めた。
それでも、鄔梨李は力一杯、柄を入れようとする。
漏れる……。
孫空女は崩壊を自覚した。
全身にがくがくと痙攣のような震えが走る……。
孫空女は眼を閉じた。
我慢していたものがついに……。
「豚のように出しな――」
鄔梨李が嬉しそうに言った。
その悪態ではっとした……。
ぎゅっと尻穴を締め直す。
ぎりぎりのところで踏ん張る……。
それにしても……。
いま、一瞬だけ、自分が諦めたような気がしたことに愕然とした。
こんなことで、負けてたまるか……。
気力を振り絞るのだ……。
最後まで諦めない……。
孫空女は、自分自身に言い聞かせた。
鄔梨李の棒を避けるように前に出た。それだけじゃなく、歩く速度をあげた。
柄が責めたてれば、大きく左に、右にと腰を振って逃げた。
どうせ、途中で崩壊するのだ。
だったら、刺激を与えないように耐えるのは無駄だ――。
そう思った。
大きな動きで、首枷の重みに耐えられなくて、引っくり返っても同じだ。
いずれにしよ、もう護りに入ることは無意味だ。
どうせ、途中で崩壊するなら、いま刺激を小さくする努力は無意味なのだ。
途中で崩壊してもいい……。
引っくり返ってもいい……。
駄目で元々なのだ――。
開き直ると、どこから湧くのだと思うほどに力が出てきた。
進むことが、どういう意味があるかわからなかった。
どうせ、間に合わない……。
しかし、このまま、女たちや鄔梨李の責めに身を委ねて、崩壊させられるくらいなら、自ら強く動いて崩壊してしまった方がいい。
「な、舐めやがって――」
すると、鄔梨李が苛ついた口調で叫んだ。
「お前らは刷毛責めを続けな――。あたしは、もう一度鞭打ちしてやる――。なんとしても、成功させはしないよ――」
鄔梨李が再び乗馬鞭を取り出したのがわかった。それをずっと腰に差していたのだ。
女たちの刷毛責めに加えて、鄔梨李の鞭が飛んできた。
「ふあああっ、がああっ、ひいっ――」
刷毛の愛撫を受けながらの鞭打ちは強烈だった。
快感に刺激されている孫空女の肌は、完全に痛みには無防備だ。
そこに鄔梨李の重くて鋭い鞭が襲いかかってくるのだ。
その激痛に孫空女は悲鳴を迸らせた。
前に進む脚を中心に、鄔梨李が鞭を飛ばす。
太腿からふくらはぎにわたり、痛打が降り注ぐ。
それは一周目のときの比ではない。
孫空女は、一周目は、あれでも鄔梨李は手加減をしていたのだとわかった。
まさに、皮膚が破けるような鞭打ちだ。
そして、そのとおり、孫空女の両方の脚からは破けた肌のところどころから血が流れ出してくる。
しかし、孫空女にしてみれば、それはありがたい刺激でもあった。
あのまま刷毛で官能責めにされ続けた方が、孫空女はもたなかっただろう。
だが、うまい具合に、快感が痛みで中和される。
強い痛みで刷毛の刺激も気にならなくなってきた。
孫空女はさらに歩みの速度をあげた。
「もっと、責めたてな――。いや、もう刷毛はいい。その棒の柄で打て――。どこでもいい。行かせるな――」
鄔梨李が悲鳴のような声をあげた。
もう残りは四分の一ほどだ。
女たちが刷毛を一斉に引きあげた。
今度は、それを持ち変えて、棒にして孫空女の身体を打ち始めた。
それでも孫空女は歩く速度を落とさなかった。
すでに限界は超えている。
いまは気力だけの戦いの時間だ。
しかし、刷毛によるくすぐり責めだけなら、とっくの昔に始まっていただろう崩壊が、鞭打ちと棒打ちに変わったことで、孫空女に勝機が見えてきた。
「脚だよ――。脚を狙うんだ――。骨を折ってしまえ――」
鄔梨李の声が高くなる。
もう、目的地は近い。
最後の直線を残すだけだ。
棒が次々に脛に向かって飛んできた。
それでも孫空女は進んだ。
尻穴に力を注ぎ込む。
いまや、全身に残る力を総動員して、尻穴を閉じている。
これを少しでも緩めれば、終わりだ……。
押し寄せる便意の波は、もう少しも弱まらない。
まるで爆発寸前の火山のようだ。
猛烈な力が内側から尻穴に寄せ続ける。
だが、もうすぐ――。
腕組みをして待っている緒里の姿が目前に迫る。
「本当に生意気な人間族だよ――」
前に出てきた鄔梨李が立ちはだかった。
顔が引きつっている。
その鄔梨李が棒を横に振りかぶった。
顔に向かって棒が飛んでくる。
「はぎいいっ」
眼の前に火花が飛んだ。
大量の汗のようなものが、どっと額から眼に流れた。
そこから滴った汗を舐めることで、それが汗ではなく血であることを知った。
ふと見ると、鄔梨李の持っていた棒が半分になっている。
どうやら、孫空女の顔を棒で殴ったときに、柄を折ったようだ。
そして、その打撃で孫空女の額が割れたらしい。
女たちが気を削がれたかのように、距離を取っている。
鄔梨李が奇声をあげて、女たちのひとりから、さらに刷毛付きの棒をもぎ取った。
それが、また、顔に向かってきた。
今度は顔の斜め横からそれが当たった。
「ぐっ」
一瞬だけ視界が消滅して、身体が揺れた。
しかし、孫空女の身体は次の瞬間には体勢を戻していた。
三発目はなかった。
すでに、逆回りで出発地点に戻ってきていたからだ。
孫空女はついに、二周目を歩き終えた。
「畜生――」
鄔梨李が地面を二度三度と踏んだ。
なにが口惜しいのかわからない……。
いや、本当は孫空女がまわりきろうと、まわりきるまいと、鄔梨李からすればどうでもいいはずだ。
だが、長く続けているここでの監督官としての生活が、鄔梨李に奴隷に対する異常な支配欲を作ってしまったのだろう。
それが覆されたために、鄔梨李は理不尽な想いをさせられた気になっているに違いない。
とにかく、孫空女は、
しかし、血のせいで前がよく見えない。
そうでなくても、頭が朦朧としている。
全身はこれ以上ないというくらいに火照りきり、全身の筋肉はぼろぼろだ。
もう、力はまったく出ない。
「お、終わったよ……。や、約束だ……」
孫空女は緒里に挑むように言った。
「ああ、立派なものだ……」
緒里が道を開けるように、営庭の中心にある布で囲まれただけの厠を示した。
孫空女は重い首枷をつけたまま、そこに向かって進んでいった。
誰も口をきかない……。
孫空女に圧倒されたように、息を呑んでいるのがわかった。
「鄔梨李、入営の準備だ――」
緒里が鄔梨李になにかの指示をした。
そして、鄔梨李が何人かのほかの監督員を連れてどこかに去っていく。
構わず、孫空女は示された場所に進み続けた。
一瞬の気の緩みも許されない。
緒里が孫空女を追い越して、布で囲まれていた場所から布の壁を取り去った。
するとただ掘られているだけの穴が見えた。
この首枷を外すつもりはないようであり、あそこで、周囲に晒させながら、孫空女に排便させるつもりのようだ……。
でも、それでもいい……。
とにかく、穴に屈み込めば――。
「お前ら、集合だ――」
緒里が叫んだ。
すると、さっきの場所に留まったままだった女奴隷たちと、残りの監督員がわらわらと孫空女を追い越していく。
その全身が緒里のいる穴を囲んだ。
孫空女はやっと穴の前にきた。
穴まで残り数歩……。
「よく頑張ったな、新入り」
穴の前には、緒里が立っている。
その緒里がすっと腰の『心神棒』を抜いて、孫空女の腿に当てた。
「ぎゃあああ――」
なにが起きたのかわからなかった。
孫空女はその場に前のめりに倒れていた。
緒里がこの期に及んで、孫空女にあの『心神棒』を浴びせたのだとわかったのは、全身を弛緩するような衝撃がやっと知覚できてからだ。
眼の前に穴がある。
しかし……。
漏れた……。
全身が痙攣を起こしている。
緩むことがなかった尻穴がすでに緩んでいる。
孫空女は尻の亀裂に浸みた糞便が外に噴き出したと思った。
だが、はっとした……。
まだ、洩れていない……。
少しは出たかもしれないが、かろうじて、まだ耐えている。
それは奇跡そのものだった。
しかし、同時に、孫空女の身体に怒りが込みあがる。
「お、お前――」
孫空女は首枷に固定された顔を緒里に向けた。
「なんだい、文句があるのかい、新入り? 奴隷は、鞭に怯えて生きるんだ。そういうものだと教えただろう――。まあ、洩らさなかったのは立派だよ。大したものさ」
緒里が笑った。
「くっ」
孫空女は視線を眼の前の穴に戻した。
もう、立ちあがれない……。
孫空女は、なんとか首枷を浮きあがらせて、穴に向かって這い進んだ。
やっと、穴に達した。
孫空女は、跪いた膝を穴の両脇に位置させた。
周りには大勢の女が囲んでいる。
尻穴の解放は、恥辱の開始でもある。
しかし、考えることなどできない……。
孫空女の尻穴から糞便が噴き出た。
凄まじい衝撃だ。
いつまでも終わらないかのような糞便が下の穴に向かって噴き出し続ける。
「ああ、あはっ、はあ、はあ、はあ、あははは、ははっ」
しかし、その解放感もまた素晴らしかった。
訳のわからない声が自分の口から漏れ出てくる。
耐えに耐えた糞便を解放するのは、耐え難い恥辱ではあるが、それが酔いのようなものを孫空女に与えもしていた。
気持ちいい……。
孫空女はがくがくと身体を震わせていた。
「お、お前、排便しながら、感じているのかい? 大した変態ぶりだねえ――」
緒里が揶揄するように笑った。
しかし、監督員を含めたほかの女たちは同調しなかった。
ただ、黙って、孫空女の痴態を見つめている。
やっと糞便が終わると、どこからか持ってこられた水桶が横に置かれて、指名された女たちの何人かが、糞便で汚れた孫空女の尻穴と腿を洗ってくれた。
孫空女はもう気力も尽きてしまって、ただされるままでいた。
やがて、孫空女の身体が荒い終わり、その水も穴に捨てられ、その上に土が少し被せられた。
孫空女はその横で首枷を地面に預けて四つん這いの姿勢で、ただ肩で息をしたままでいた。
「準備できました……」
鄔梨李の声がした。なにかを運んで戻ってきたようだ。
孫空女は、視線をあげた。
ぎょっとした。
運ばれてきたのは、真っ赤に焼けた石炭の入った小さな鉄釜だった。
その釜に十本ほどの金属の棒が差してある。
「いま、奴隷番号の欠番はあったけねえ、鄔梨李?」
緒里が鄔梨李に振り向いた。
「十二番ですね。
「わかった……。孫空女の上半身を起こせ――」
緒里が言うと、大勢いた監督員の女兵がわっと孫空女に群がる。
孫空女の鉄の首枷を持って、声をかけて引き起こし、孫空女の上半身を真っ直ぐにした。
「な、なにすんだよ――」
孫空女は狼狽えた声をあげた。
あれは、焼印だと思った。
眼の前にあるのは、家畜に印をつけるときに使う焼印だ。
あの真っ赤に焼けた石炭に刺さっているのは、おそらく、孫空女の肌を焼く鉄印に違いない。
「うわあああっ」
孫空女は恐怖で本能的に暴れた。
しかし、それを取り囲んでいる監督員の女たちが阻む。
緒里が孫空女の前に立ちはだかった。
その緒里の横に、鉄棒の刺さった鉄釜が運ばれた。
「第一の掟が、奴隷は常に鞭に怯えることだとは教えたね……。そして、二つ目の奴隷の掟は自殺についてだ。ここでは自殺は自由だ。死は常に選べる……。毎朝の食事のときに、食事とともに、即効性の毒液が渡される……。それを飲む、飲まないは自由だ――」
「わ、わかったよ――。そ、それよりも、やめろったらああっ」
孫空女は叫んだ。
緒里の横では焼けた鉄釜の中で鉄棒が差し込まれていて、それを取り出そうとしている。
「ただし、この錬奴院を出られるのは、奴隷宮にあがるときだけだ。それ以外は、ここを出られることはない――。そして、錬奴院にいる限り、毎日、苛酷な調教や拷問を受け続けなければならない……。その代わり、死はいつでも選べる……。それが第二の掟……」
鉄釜から抜いて組み合わせた二本の鉄の棒が緒里に渡された。
すると、それが孫空女の左の乳房に近づいてくる。
真っ赤に焼けた鉄印は、“十二”の番号が逆向きになっている。
「い、嫌だよう――」
孫空女は悲鳴をあげた。
しかし、身体を押さえつけられている。
真っ赤に焼けた鉄印が無造作に乳房に押しつけられる。
「ひぎゃああああ――」
肉が焼ける匂いとともに、激痛が孫空女を襲った。
「そして、第三の掟は、ここではお前の人格など一切存在しないということだ。お前は、ここにいる限り、ただの十二番だ。お前がどこのどんな女で、本当はなんという名であるかなんて、あたしたちは興味がないし、知るつもりもない……。奴隷宮にあがらない限り、お前は永遠に十二番だ――。いいね――。それとも、渡される毒で死体として出ていくかだ」
緒里が焼印を力いっぱい孫空女の肌に押しつけながら言った。
(第86話『調教は続く』終わり)