両方の乳房に合計五十本は釘が埋まっただろうか……。
沙那の美乳は見るも無残に真っ赤に腫れあがっている。
釘の突き刺さった部分のあちこちからが血が滲み出ており、沙那の乳房はまるでなにかの果実のように赤い。
小白香が自ら服を脱いだあと、そのままほかの衣類とともに置き捨てられていたものだ。
蝦蟇婆は、そのサンダルを振りあげて、たくさんの釘を打ちつけられて腫れあがった沙那の乳房を横からぶん殴った。
「あがああっ、ひぐううっ」
針金で椅子に縛られている沙那が、全身を暴れさせて絶叫した。
すでに金凰魔王の道術による縛りは解除しているので、沙那が暴れるのを防ぐために小愛が後ろから椅子の背を支えている。
だから、沙那が暴れて沙那の両手を釘で打ち付けている卓が多少揺れただけですんだ。
数十本の釘を打ちつけられている乳房を横から叩かれる激痛は、凄まじいものだろう。
あの気丈そうな沙那が涙を流して苦痛に顔を歪めている。
「まだ、白状する気にならんのか、沙那? 何発でもいくぞ。釘など数百本はあるのじゃ。まだまだ、つらい身体の部分に打ちつけるぞ――」
蝦蟇婆は今度は反対側の乳房に手を伸ばして、サンダルで上から殴った。
「ぎゃああっ――」
沙那が喉を仰け反らせて絶叫した。
叩いたはずみで数本の釘が抜け出た。
釘でせき止められていた血が乳房から流れ出す。
「さ、沙那――母者の居場所を言え――。め、命令じゃ――命令なのだ――。頼むから、もう白状せよ――沙那――」
小白香は号泣している。
雪蘭に至っては、とても正視などできないのか、必死になって顔を小白香の肩に埋めている。
「ほれ、もう一発じゃ――」
また引っぱたいた。
沙那が悲鳴をあげた。
そうやって、左右の乳房の殴打を数十発は続けた。
途中では、拳に布を巻いて、乳房に拳を叩き込みさえした。
だが、結局、沙那は悲鳴をあげ続けるだけで、意味のある言葉は吐かなかった。
「し、しぶといのう――」
蝦蟇婆は肩で息をしながらサンダルを床に放った。
沙那の乳房からは、埋まっていた釘の半分は飛び出ただろうか。乳房から流れた血が身体に滴り落ちて、椅子と床を血で汚している。
「蝦蟇様、交替しましょうか?」
沙那の座る椅子を押さえていた小愛が言った。
「いや、よい……。そろそろ、乳房の感覚もなくなったじゃろう。それよりも、新しい場所に釘を打ちこむかのう……。小愛、沙那の顔を上にあげさせよ」
蝦蟇婆は、卓の上から新しい釘を取って、沙那の横についた。
小愛が沙那の髪を掴んで、力の限り下に引っ張る。
「んごおおお」
沙那の顔が天井を向いた。
蝦蟇婆は、左手に釘を持つと、その手の小指を薬指で沙那の瞼を強引にあげた。
そして、親指と人差し指で支えている釘の先を強引に開けさせている沙那の眼球に向けた。
「ひっ、な、なに……ひっ、や、やめて――や、やめてぇ――」
朦朧としていた沙那がやっと、自分が次に釘を打たれようとしている場所に気がついて、恐怖の悲鳴をあげ始めた。
「一度しか、聞いてやらんぞ……。白象様はどこじゃ? どの部屋じゃ?」
蝦蟇婆は左手で釘を沙那の眼に当てたまま、右手でげんのうを構えて言った。
「や、やめてっ、やめてえぇ――た、助けて――いやああっ――」
沙那が力の限り顔を振って釘を避けようとする。
しかし、力一杯髪を小愛から引っ張られるとともに、顔を蝦蟇婆の手で押さえられている沙那の顔は、それほどは動かない。
「さ、沙那――言え――とにかく、喋らんか――」
小白香が叫んだ。
蝦蟇婆は少し待った。
だが、沙那は悲鳴をあげて暴れるだけで、やはり、なにかを喋ろうとする気配はない。
蝦蟇婆は沙那の眼に釘を打ちつけた。
顔の骨が砕けては、下手をすれば死んでしまい訊問が続けられないので、力は加減している。
釘は沙那の眼の玉に刺さった。
硬めの果実に釘を刺したような感触だ。
さっき、手の甲に釘を打ったときよりは、眼球の方がやや硬いかもしれない。
沙那の顔に釘が立った。血とともに水のようなものが眼孔から頬に向かって流れた。
「もう、ひとつあるのう? 両眼とも見えなくなれば、根の国に行っても、行き先がわからんで困るぞ。楽に死なせてやるから白象様の居場所を言え、沙那」
蝦蟇婆はもう片方の沙那の眼に、さっきと同じように釘の先を当てた。
「ゆ、許して……」
沙那の身体が恐怖のためにがたがたと震え出した。
ふと見ると、失禁を始めている。
沙那の恐怖は本物のようだ。蝦蟇婆はほくそ笑んだ。
「白状する気になったか、沙那?」
蝦蟇婆は訊ねた。
「や、やめて、やめて、やめて――」
沙那はさっき以上に顔を暴れさせている。
しかし、やはり、白象の居場所を喋る意思はないようだ。
蝦蟇婆は嘆息した。
そして、その眼にも釘を打ちつけた。
「がああっ」
沙那が絶叫した。
釘を打ちつけられた両眼は、完全には瞼は閉じず、その隙間から血がだくだくと流れている。
「かなかなしぶといのう、沙那……。小愛、次は指にいくぞ。一本ずつ押さえるんじゃ。十本の指を全部、卓に打ち付けてやるわい。その後は、爪じゃ。爪の下に釘を打ちこんでやる。それで白状せん人間族はおらん」
蝦蟇婆は小愛を顎でしゃくった。
「わかりました。でも、こいつ、結構まだ力が強いですよ。一応、足も床に打ち付けておいた方がいいと思います。一番大きな釘とげんのうを貸していただけますか、蝦蟇様」
小愛が言った。
蝦蟇婆が釘とげんのうを手渡すと、小愛が沙那の足元にしゃがみこんだ。
沙那の左右の足は、それぞれに左右の椅子の脚に腿、膝の上下、足首を針金で固定されている。小愛は、その沙那の足から靴を脱がせた。
沙那の素足が露わになる。
小愛は、片方の足にとりつくと、沙那の足の指を踏んで押さえながら、沙那の足の甲に釘を打ち始めた。
「ああっ、があっ、はがあっ――」
沙那の身体ががたがたともがく。
しかし、その動きも足の甲に釘の頭が沈むにつれて、やや穏やかになる。
小愛はひとつの足の甲にさらに釘を足し、三本の釘で沙那の足を床に張りつけた。
そして、次の足に移動する。
やはり、同じように三本の釘を打ちこんだ。
沙那がぐったりと脱力した。
どうやら気を失ったようだ。
蝦蟇婆は沙那に道術を込めた。
気絶から覚醒させる道術だ。
すぐに沙那が身じろぎを始める。
そして、がたりと身体を動かして顔をあげた。
しかし、その両眼には、打ちこんだ釘が刺さっている。
「あ、あああああ――」
沙那ががくがくと身体を震わせて叫び声をあげだした。
しかし、その声はさっきまでに比べると、弱々しい。そして、暴れ方も静かになっている。
「沙那、白象殿はどこじゃ……?」
蝦蟇婆は沙那の耳元に近づくとささやいた。
眼の見えない沙那は、蝦蟇婆の声にびくりとなった。
「……た、頼む、もう、沙那を痛めつけないでくれ――。やるなら、わ、わらわにやれ――」
小白香が泣き叫んだ。
その小白香も山芋の汁を局部に塗られていて、全身が真っ赤になって汗だくだ。
雪蘭と狂ったように身体を擦り合わせてながら、顔だけは悲痛な表情をしている。
蝦蟇婆は、随分と奇妙な姿のように思った。
「それは、沙那に言うんじゃな――。わしは、別にこいつの拷問など興味はないのじゃ……。わしの役目はお前の調教だしのう。わしとしては、お前のような高慢ちきの少女の性根を叩き潰すのが、なによりも好きなので、その仕事に早く戻りたいと思うておる。早う、お前も説得せい――。沙那が白象様の居場所を喋れば、それでこんなことは終わりじゃ」
蝦蟇婆は小愛に命じて、沙那の右手の親指を伸ばさせた。
そして、その真ん中の関節の近くに釘を打ちつけていく。
親指の次は人差し指……。
蝦蟇婆は、そうやって両方の指に釘を打って手のひらを拡げた状態で卓に固定していく。
右手の指に釘を全部打ち終わったところで、また、沙那が気を失った。
すぐに沙那を覚醒させて、意識を戻す。
「……む、無駄なことは……や、やめ……て……。わ、わたしが……喋るわけ……ない……」
二度目の覚醒をした沙那がゆっくりと言った。
「そうかのう? 随分と喋りたがっているように思えるがのう……。まあ、いいわい。気が向けば喋るんじゃぞ……」
蝦蟇婆は小愛に押さえさせて、左手の指を卓に打ちつけていく。
やがて、全部の指が卓に打ちつけられた。
最初に打ち込んだ両方の手の甲の釘と併せて、十二本の大中の釘が突き刺さったことになる。
そのすべてが釘の頭まで沙那の手に打ち込まれて、卓に刺さっている。
蝦蟇婆は無造作に選んだ一本の指の爪の下に、一番小さな釘をあてがうと、げんのうで少しずつ叩いていった。
「ぎゃあああ――」
沙那が叫んだ。
しかし、釘で指を卓に打ち付けられている沙那は、爪の下に釘を打たれている指を動かすことはできない。
沙那の絶叫が続いた。
爪の下に釘が喰い込むにつれて、だんだんと爪が浮きあがっていく。
さらにまた一本を追加……。
一本の指に三本ほど打ち込むと、完全に爪が指から離れた状態になった。
「も、もう、やめて、言う――言うから――」
沙那が大声をあげた。
「わかった……。じゃが、まだ、十本のうちの一本ではないか――。もう少し、爪を剥がされてから白状せい」
蝦蟇婆はそううそぶいて、次の指の爪に取りかかった。
完全に沙那を屈服させてから自白させる……。
そうするためだ。
中途半端に痛みつけただけでは、ぎりぎりのところで、白状しようと思っていた言葉を飲み込んでしまうことがある。
だから、急いで白状したいと考えるくらいに追い込むのだ。
結局のところ、それが一番早いということを蝦蟇婆は経験上知っていた。
沙那はだんだんと弱々しくなる悲鳴を続けながら、さらに二本の爪を蝦蟇婆によって剥がされた。
二本目の爪のときに、また沙那が失禁した。
そのとき、さっきもそうだったが、沙那が微かによがるような仕草を示した気がした。尿をすると感じるのだろうか……。
何気無くそんなことを考えた。
「さあ、じゃあ、教えてもらおうかのう……。白象様はどこじゃ?」
蝦蟇婆は訊ねた。
「ほ、宝物庫……。そこ床に隠し穴が……ある……。そ、そこにいる……」
沙那がゆっくりと言った。
「小愛――」
蝦蟇婆は小愛を見た。
白象を捜索中の性奴隷たちに、指示を出させるように、小愛を促したつもりだった。
しかし、小愛は険しい表情をしている。
「……わたしを馬鹿だと思っているの、沙那? あんたが隠れていた宝物庫は、隅から隅まで探したわ。それこそ、道術による探知だって特別にやったのよ。あそこに、床の隠し穴なんてないわ――。そんなことで時間稼ぎして、少しでも苦しみから逃れようという魂胆ね――」
小愛が卓の上の釘を無造作につかむと、鼻を摘んで無理矢理に沙那に口を開けさせた。
そして、釘を口の中に押し込んで、思い切り拳で沙那の頬を殴った。
「んがああっ」
顔を横に跳ばされた沙那が血だらけの釘を吐き出した。
小愛が殴ったときに、口の中に入れられた釘で口の中をあちこち切ったのだろう。
沙那の口からは釘とともに、真っ赤な唾液が吹き出た。
「ま、間違ったわ……。宝物庫の外に……隠し部屋があるのよ……。そこよ……」
沙那の口元がにやりと笑った気がした。
蝦蟇婆はびっくりしてしまった。
「ま、また、こいつ、出まかせを――」
小愛の表情に憤怒の色が浮かんでいる。
「これは、大変なものじゃのう……。この後に及んで出鱈目を言おうとするとはな――」
蝦蟇婆は心の底から驚いた。
ここまで、拷問に耐えるというのは、蝦蟇婆にとっても想定外だ。
しかも、出鱈目の情報でこちらを少しでも惑わそうとするほどの冷静さを残してもいるようだ。
「蝦蟇婆、手こずっておるではないか?」
ずっと見物していた金凰魔王が笑った。
蝦蟇婆は自分の顔が赤らむのを感じた。
こんな人間族の女ひとりに手間取るというのは、調教師としても拷問師としても一流とみなされている蝦蟇婆の名折れだ。
「おい、小白香――。宝物庫の内部や周囲に隠し部屋や隠し床があるのか? 道術契約に基く質問だ。嘘は言えんぞ――」
金凰魔王が小白香に視線を向けた。
「そ、そんなものはない……。わ、わらわの知る限り……」
小白香が泣きながら答えた。
道術契約で白象を渡すと誓っている小白香自身は、白象の身柄を金凰魔王に渡すための指示には逆らえないし、嘘も言えない……。
やはり、宝物庫に白象がいるというのは、沙那の出鱈目のようだ。
これでわかったのは、少なくとも、宝物庫にだけには白象はいないだろうということだけだ。
「しょ、小白香様が……し、知らない……だけ……。白象殿が……知っていた場所……よ……」
沙那がささやくように言った。
「もういいわい――。少し、性根を潰してやる、沙那。訊問の再開はそれからじゃ――。覚悟せいよ――」
蝦蟇婆は再び、自分の荷に向かうと、開口器を取りだした。
小白香の調教に使うために持ってきたもので、樹脂を固めて作った骨で組んだ器具であり、頭の後ろから口の左右に金具を引っ掛けて、装着された者の口を閉じさせないようにする責め具だ。
それを沙那に嵌めさせる。
沙那の口は大きく開かれて動かなくなった。
「頭を押さえますわ、蝦蟇様」
小愛がまた、沙那の後ろに回って、髪の毛を掴んで沙那の頭を固定する。
「はが、が、がが……」
なにをされるかわからない沙那が恐怖の震えをしている。
「知っておるか、沙那……? この世で一番の激痛は歯に対する拷問という話だそうじゃ。まずは、一本ほど打ち込んでやるわ。わしに出鱈目を言えばどうなるか思い知るがよい。あんまり、手間を掛けさせるでないわ……。まったく……」
蝦蟇婆は釘を取ると、指を沙那の口の中に突っ込んで奥歯と奥歯のあいだに釘を当てる。
げんのうを打ち込みやすいように、釘の頭は口の外側に向けた。
沙那が泣き声をあげる。
構わず、口の中にげんのうを入れると、その奥歯と奥歯の根元部分の歯茎に釘を打ち込む。
口から大量の血が流れるとともに、沙那が大暴れた。
それでもどんどんと打ち込んでいく。
沙那の身体の震えは、もがきというよりは痙攣のようなものに変わった。
やがて、沙那が耳障りで嫌な叫び声をあげ始めた。
二本の奥歯の根元に釘が刺さって、歯が強引にやや浮きあがった状態になる。
蝦蟇婆はげんのうを置いて、沙那の口から開口具を外した。
「さて、じゃあ、訊問に戻ろうかのう……。歯に釘の一本くらい刺さったままでも、白象様の居場所くらいは喋れるじゃろう?」
蝦蟇婆は、今度は、まずは紐を取り出して、沙那の肩の下にきつく巻いて縛った。
そして、のみを取り出すと、沙那の右手の手首と肘の真ん中あたりに刃を当てた。
「あがああっ、いぐわああっ、ひがああっ――」
沙那がまた拘束された身体を限界まで仰け反らせた。
蝦蟇婆は、のみの刃で沙那の腕の肉を削ぎ落していっているのだ。
皮膚が剥がれ、その下から腕の内部の組織が見えてくる。
さらにその肉を削いでいく。
肩をきつく縛っているので、大して血は出ない。
沙那もかなり弱っているので、歯に釘を打ちこんだときほどは暴れはしない。
やがて、青白い骨が見えてきた。
蝦蟇婆はその骨にのみを当てて、表面を削るように動かした。
「あああ、ああああっ、あああああ……」
長く尾を引くような叫び声を沙那が放った。
蝦蟇婆は少し力を入れて、露出している骨を削った。
「白象様は、どこじゃ?」
蝦蟇婆は言った。
「も、もう、こ、殺して……」
全身に釘を打たれている沙那がぐったりと呻いた。
「白象様を見つけられれば、殺してやろうぞ……。さもなければ、もっと苦しめるぞ。お前など想像もできんくらいの残酷な拷問などいくらでもあるのじゃ。人としてあり得んような苦しみの中で死にたいか、沙那……?」
蝦蟇婆はささやいた。
「こ、殺し……て……」
「白状すれば殺してやる……」
蝦蟇婆はのみで骨を削った。
「こ、ろして……」
「白象様はどこじゃ……?」
「わ、わかった……い、言う……」
「ならば言え」
蝦蟇婆は再びのみを沙那の骨に当てたまま言った。
「そ、その……小愛が……白象殿よ……。道術で……変身……してるのよ……。こいつは偽者……。あ、ああ……、白象殿……すみません……ばらしてしまいました……」
沙那が息も絶え絶えに言った。
「お、お前、また、そんな出鱈目を――」
小愛が激怒して叫んだ。
蝦蟇婆は息を吐いた。
小愛は本物だ……。
いくらなんでも、白象が化けていたら、帯びている霊気の違いですぐにわかる。
蝦蟇婆は、沙那が、まだ嘘をつこうという心の余裕を残しているという事実に、驚きを通り越して、呆れてしまった。
この女はどこまで心が強くできているのだろう……?
そして、沙那の腕の骨をさらに削ってやろうと思って、のみを持つ手に力を込めようとした。
しかし、なぜか、そののみが手から離れて、からりと音をたてて卓の上に落ちた。