574 崩壊の予感
「十二号さん、ちっとも食べていないじゃない。じゃあ、片付けるわね」
「本当、本当に丈夫ねえ……。今日も水も飲まないの?」
乳房の上に“七”と“八”という数字の焼印がある上半身裸身の奴隷が孫空女の牢の前にやってきてくすくすと笑った。
彼女たちは、上半身にはなにも身に付けていないが、下には短い下袍とサンダルを身につけている。
それが、ここの“性奴隷候補生”たちの一般的な服装だ。
もっとも、孫空女には衣服など与えられていない。
まったくの全裸だ。
それは、孫空女がこの
孫空女は壁にもたれさせていた身体を起こして、鉄格子の向こうにいるそのふたりの奴隷仲間に近づいた。
「ね、ねえ、お、お願いだよ……。喉が渇いて苦しんだよ……。水を飲ませて……。ちょっとでもいいから……。お、お腹も空いた……。お、お願いだよ……。た、食べさせてよ」
孫空女は鉄格子の外のふたりに哀願した。
「そこにあるでしょう。遠慮なく、食べればいいじゃないの」
「水だって、飲んでいいのよ。なんだったら、もっと、持ってきましょうか? 皿に足してあげるわよ」
食事当番のふたりが、孫空女の牢の床にあるふたつの皿を指差して、意地の悪い笑いをした。
孫空女は歯噛みした。
錬奴院の宿舎における三度目の夜だ。
ここにおける生活はなかなかに陰惨だった。
昼のあいだは、調教という名の拷問を屋外で受けて、体力と気力を限界まで搾り取られる。
監督官の連中によれば、それは金凰魔王の性奴隷になるための修行だそうだが、要は苛めだ。
その苛めはときには、肉体の損傷を伴うものになる場合もある。
とにかく、陽が出ているあいだは、建物の外で拷問調教を受ける。
そして、陽が落ちれば、やっと室内に戻ることが許され、その際、『治療術』の道術がかかった水を全身に浴びて、身体の手当を受ける。
それから、また、室内で長時間の性的な快感調教を受けるのだ。
野外で体力と気力を削ぎとられた後の快感責めが終わる頃には、孫空女はもうほとんど息をするのがやっとの状態だ。
しかも、孫空女は、外科目にしても、内科目にしても、ほかの女たちより、ずっと苛酷な特別科目が付与されている。
そして、心身ともぼろぼろになって、やっと、牢に戻って休むことが許されるのだ。
それがここであり、錬奴院で調教を受ける奴隷は、全員がいま孫空女がいるような鉄格子のついた牢で休息することになる。
牢はすべて個室であり、廊下の片面に横並びに並んでいる。
“十二号”と名付けられた孫空女の部屋は、番号のとおり、入口から数えて十二番目であり、この階には全部で二十個の牢があるようだ。
これと同じ造りの奴隷用の寄宿牢の層がひとつ上の最上層の階にもあり、ここでは四十人の奴隷候補生を住まわせることができるらしいが、いまは総勢二十人であり、この階しか使っていないらしい。
最上層とその下が奴隷の寄宿用の牢の並ぶ階で、さらに下が、ここでは錬成部屋と呼んでいる室内の調教部屋だ。
つまり、孫空女は陽が照っている昼間は、外の営庭で“錬成”を受け、一度、『治療術』の霊気のかかった水を浴びて身体を回復させて、室内の錬成部屋に移動して、また性調教を受け、深夜になりやっと、ここで休むという日課を三日繰り返している。
食事は、そのときに当直監督官から当番に指名された奴隷が皿に乗せた食べ物を各牢に水とともに配るのだが、孫空女はこの三日、一度もそれを口にしていない。
食事は、調教の終わった夜中と、調教が始まる前の朝に同じように各牢に配られるが、孫空女には食べられないのだ。
このいまいましい大きな首枷のせいだ。
孫空女の首と両手首に嵌っている大きく丸い首枷は、どこをどう動かしても、どうしても首枷が邪魔になり床に置かれた食べ物や水の入った皿に口が届かない。
それがわかっていながら、食事当番の奴隷たちは、故意に孫空女の食事を床にしか置かないのだ。
もちろん、それは、首枷以外はほかの奴隷と待遇は同じなのだが、この三日間、とてつもなく重いこの首枷をずっと嵌められている孫空女には、あまりにも陰湿な嫌がらせだ。
「ね、ねえ、意地悪しないでおくれよ。口に入れてよ。み、見れば、わかるだろう……。あたしは、手も拘束されているし、こんな首枷なんだから、皿に口を直接つけることもできないんだよ……。お、同じ奴隷じゃないか……。お、お願いだよ」
孫空女は牢の外のふたりに言った。
「だって、あたしたち、中に入れないじゃないの。どうやって、あんたに食事を食べさせるのよ」
「そうよ……。あたしたちができるのは、格子の下にある隙間から、この皿を押し入れるだけなのよ。そこに入れるわけじゃないのよ」
ふたりが牢の外で言った。
このふたりの言う通り、牢には道術錠のかかった格子の扉があり、孫空女も当番奴隷も自由に出入りできない。
格子の下に拳大程度の高さの隙間があり、そこから皿を出し入れしているだけなのだ。
「な、なら、み、水をすくう柄杓を伸ばして、く、口に入れて……。後生だよ……」
「嫌よ。これは水桶から皿に水を入れるために渡されている道具よ。その道具をそんな風に使ったら、あたしたちが折檻受けるじゃない」
ひとりが首を横に振った。
もうひとりも同意するようにうなずいている。
「で、でも、いまなら、そばに監督官はいないし……」
孫空女は鉄格子越しに言った。
奴隷を監視する奴隷監督官は、この層の出入り口にある詰所におり、いまはそばには監督官はいない。
このふたりは、詰所の位置で各牢に配る配膳のための食事と食器を渡されて、それを配り歩いているのだ。
だから、少しくらいの規則違反など、ばれるわけはない。
だが、このふたりは、ほんの少しも孫空女のために融通をきかせるつもりはないようだ。冷たく頭を振った。
「嫌よ。あたしたちも、休みたいんだからさげるわ」
ふたりのうちのひとりが言った。
いま、このふたりは、当番奴隷として、配膳から一刻(約一時間)ほど経って食べ終わった食器を各牢から回収しているところだ。
当番奴隷は、この後で、全員の食器と交付のための食事が入っていた食缶を洗浄してから当直監督官に返納するのが役割だ。
ほかの奴隷は食事が終われば寝るだけなので、食べ終わった食器を格子の下に置いて、すでに休んでいるに違いないが、このふたりはすべてが終わって、当直監督官の点検を受けてはじめて休めるのだ。
ここの生活では、なによりも睡眠が重要であり、少しでも早く休息したいという気持ちはわかる。
だが、それがなんだというのだ……。
孫空女は、もうこの三日間、満足に休んだことはない……。
それは、孫空女の拘束のために、ずっと装着されている首枷のためなのだが、孫空女は初日に首と手首に装着された首枷をまだ、一度も外してもらっていない。
それに比べれば、食事当番のこのふたりは、両足首に鎖つきの足枷があるだけで両手は自由だ。
このふたりに限らず、一日中拘束をされているような奴隷は、ここでは孫空女だけだ。
監督長の
孫空女からしてみれば、途方もない冷遇だが、ほかの奴隷たちからしたら、すでに奴隷宮にあがることが決まっている奴隷など、妬みの対象以外の何者でもないのだ。
全員が示し合わせたかのように、孫空女にこういう意地の悪い扱いをするのは、その嫉妬のためだ。
孫空女以外の奴隷候補生の全員が、ここではいつか奴隷宮にあがることを夢見て、果てしない虐待を甘んじて受け続けている。
だが、奴隷宮にあがることなど狭き門であり、大半の奴隷は、ここで拷問調教を受け続けた挙句に、絶望して毒を呷って死ぬ。
自死用の毒は、毎朝、食事とは別に監督官が各牢に配る。
ここでは、自殺はいつでもできる。この錬奴院を脱するのは、金凰魔王の寵愛を受けることが決まって奴隷宮にあがるか、毒をあおって死骸として出ていくかなのだ。
そんな彼女たちからすれば、期限のある一定期間をここで耐えれば、待遇のいい奴隷宮にあがることがわかっている孫空女など、その存在が許せないほどの腹立たしいことのようだ。
それが、こんな意地の悪い仕打ちになるのだろう。
「だ、だったら、あたしが格子のそばに寄るから……。そしたら、せめて首枷の上に皿を載せてよ……。後は自分でなんとかする。お願いだよ」
「嫌よ。そんな面倒なこと……。あたしたちは、この後、全部の皿を洗わないといけないんだからね。いらないなら、さげるわよ」
ふたりは無情にも、手を付けていない皿を回収して、孫空女の檻の前から去っていった。
配膳用の台車とふたりの足音がだんだんと遠くなっていく。
孫空女は絶望の吐息をついた。
これで本当に三日間、食事なしだ。
さすがの孫空女も毎日の苛酷な調教を受けながら、まったく飲食をしないのでは、飢えと渇きと疲労で倒れそうだ。
外調教が終われば、全身に治療効果の道術力のこもった水がふんだんに浴びせられる。
それは身体の洗浄の意味もあるらしいのだが、そのときに、可能な限り、口から水を飲んでいる。
それがなければ、本当に身体の渇きですでに倒れていただろう。
まあ、それも、このままでは時間の問題のような気がするが……。
この首枷が、孫空女を追い詰めているのは、首枷が邪魔をして飲み食いできないことだけではない。
睡眠だ。
この三日、孫空女はほとんど睡眠をとっていない。
最初の昼間、この重い拘束具を装着されたとき、この重さそのものが拷問だった。
両手の自由を奪い、常に孫空女が全身の筋力の全部を使わなければ支えられない負荷を首と肩にかけ続けられるのは、とてつもない苦痛だと思った。
しかし、夜になって、この首枷をしたままでは、目の前にある食事がとれないことを悟るとともに、睡眠すらもできないことがわかって、孫空女は愕然とした。
立っているだけで疲労困憊になる重い首枷を首と肩に背負って一日中調教を受け、それこそ、孫空女は体力の限界であるのに、この首枷が睡眠さえも邪魔するのだ。
別に睡眠を禁止されているわけではない。
むしろ、睡眠はここでは一番大事なことと奨励されている。
一日中、さまざまな拷問調教を受けなければならない奴隷たちには、睡眠で体力を回復することは絶対に必要なことだ。
いまだって、食事当番のふたり以外の奴隷たちは、もう泥のように眠っているに違いないのだ。
しかし、首枷をされている孫空女には、両手と頭を横にして床につけることができない。
いろいろと試してはみたが、仰向けになっても、うつ伏せになっても、鉄の首枷のとてつもない重さが首にかかり、喉に枷が食い込んでくる。
だから眠れない。
せいぜい、首枷を壁にもたれさせて、少しでも重さを軽減させることができるだけだ。
それすらも、ちょっとでも力を抜けば、首枷が傾いて首に大きな力が加わり、孫空女を覚醒させる。
つまりは、この拘束具の真の恐ろしさは、重さそのものよりも、装着された者の食事や睡眠を奴隷から取りあげてしまうことなのだ。
とにかく、この首枷をされている限り、孫空女はどんなに疲れていても、食事も水もとれず、眠ることもできずに、身体の力を振り絞って、姿勢をただして起きていなければならない。
なんとか、横座りになって、少しでも楽な体勢で耐えようと思うのだが、睡魔と疲労で意識が薄れると、どうしても首枷は傾く。
すると、首枷が絞まって、孫空女を苛酷な苦しみに引き戻してしまう。
寝るなと言われているわけでも、食事をするなと言われているわけでもない。
孫空女は、ただこの首枷を外してもらえないだけだ。
しかし、この首枷がある限り、おそらく、長くはもたない……。
この首枷を外す権利は、孫空女専門の監督官ということになった緒里だけが持っているらしい。
孫空女は、いままでに三度、これを外してくれと頼んだが、戻ってきたのは緒里の嬉しそうな嘲笑だった。
孫空女は、彼女の様子から、絶対に外すつもりがないのを悟るしかなかった。
それがわかってから、もう、孫空女は、首枷を外してくれと口にするのはやめることにした。
だが、このままでは、早晩体力の限界はやってくるだろう。
いや、体力の限界を超える前に、もしかしたら、精神の崩壊が先に訪れるのかもしれない。
この二日、ほとんど、まともにものを考えられない気がする。
思考できないのだ。
昨日の晩、ずっと夜のあいだ不自然な恰好で壁に首枷を預けているとき、自分の口が意図しない言葉を突然に発するのを耳にしてびっくりしたことがあった。
愕然とするとともに、大きな恐怖が孫空女を襲った。
もしかしたら、自分が狂い始めているかもしれないという恐怖だ。そんなのは生まれて初めてのことだ。
これが崩壊の予感というものだろうか……?
今夜が三夜目……。
孫空女は、前夜、前々夜と同じように、檻の中で激しい飢えと渇きに苦しみながら、休むことのできない夜をすごし続けた。
寒くもないのに、孫空女の身体は震え続けている。
それがなんの兆候なのかわからず、孫空女はただ怯えることしかできないでいた……。
*
「ほらほら、走るんだよ――。歩くんじゃない――。また、股ぐらに電撃が走るよ。それは、一定速度で動かなければ、自動的に電撃が走るようになっているんだからね――」
緒里が笑いながら孫空女の横で声をあげた。
炎天下での野外調教だ。
錬奴院の営庭であり、結局、三日目の夜もほとんど眠れなかった孫空女は、ほかの奴隷たちとは別待遇で、緒里との一対一の調教を受けていた。
ほかの奴隷たちは、大抵は五名から三名とひと組で様々な調教を受けるのだが、孫空女だけは常にひとりだ。
いま、孫空女がやっているのは、営庭の真ん中に立てた二本の旗を繰り返し往復するという行為だ。
重い首枷で首と両手首を固定されたまま、可能な限り全力で走って旗を折り返して戻る。
戻ったらまた旗を回って、反対側の旗に向かって駆ける。
それだけのなんの意味のない単純な行為だ。
これを陽が出ているあいだ延々と続けるのだ。
「くうっ、はあ、はあ、はあ、はあ……」
孫空女は懸命に足を動かして、この無意味な歩行を続けた。
とまることは許されない。
孫空女は、いま錬成時用の貞操帯を股間に装着されており、それが緒里の定めた速度以下になると電撃を浴びせるのだ。
もちろん、首枷の重みに負けたり、足がもつれたりして転べば、その瞬間に最大限の電撃が走る。
だから、孫空女はどんなに疲れていても、前に進み続けるしかない。
重い首枷を背負っている孫空女には、ただ立っているだけで、体力の限界に近い重労働なのだが、その状態で歩き続けるというのは非常につらい拷問だ。
しかも、この三日の飢えと疲労と睡眠不足が孫空女の全身を蝕んでいる。
はたから見れば、ほとんど幼児が歩く程度の速度なのかもしれないが、いまの孫空女には、かなりの全力疾走に近い。
しかも、すでに今日は、朝から五刻(約五時間)は休息なしで続けている。
その間、緒里は水筒で水をふんだんに飲み、昼食もしている。
「少し設定をあげるよ。もう少し速くだ」
旗と旗の中央付近に椅子を持ってきて座っている緒里が叫んだ。
すると、ぴりっとした軽い痛みが股間に走った。
「ひっ」
思わず孫空女は声をあげた。
そして、慌てて脚を前に出す。
緒里が貞操帯に備わっている電撃発生の設定を道術で変えたのだ。
この貞操帯は、緒里が気紛れで定める速度以下になると、まずは軽い電撃が走る。それで速度をあげれば電撃はとまるが、また速度が落ちれば電撃が襲うという仕掛けになっている。
そうやって、まるで動物が追いたてられるように歩かされる。
しかも、警告の軽い電撃で、速度をあげることができなければ、軽い電撃だった速度がだんだんと強くなる。
最後には最大限の電撃になる。
孫空女は、電撃の恐怖に、懸命に歩みの速度をあげようとした。
しかし、両手を首枷に拘束され、重い首枷のために少しも身体を傾けることを許されない孫空女には、もう、これ以上速度をあげることは難しい。
しかも、三日間で溜まり続けている極限の疲労とこの炎天下の猛暑が、孫空女の頭を朦朧とさせている。
目が回ったようになり、視界も揺れている。
この状態からさらに速く進むなどできない……。
それでも、孫空女はふらふらになりながらも、かなり歩く速度を速めたと思う。
だが、どういう速度に設定したのか、どんなに一生懸命に前に足を進めても、股間の断続的な電撃がとまらないのだ。
しかも、その電撃と電撃の間隔がだんだんと短くなる。
「あ、ああ……ひっ、ひっ……ひっ――お、お願い……もっと、ゆっくりにして……お、お願いだよ……ひいっ……」
孫空女は堪らずに音をあげた。
もうさすがに限界だ。
弱音を吐きたくないなどという意地を張れる限界は、とっくの昔にすぎていた。
いまは、哀願をして、それがほんの少しでも緒里の手加減に繋がるのなら、いくらでもそれを口にする気分だ。
「頑張れるところまで頑張るんだね。動けなくなれば、考えてやるよ、十二号――。なんだかんだ言って、まだまだ頑張れそうじゃないか――」
ちょうど緒里の前を通りすぎたところだったので、緒里が横に置いた水桶から水を飲みながら楽しそうに孫空女を眺めるのが見えた。
緒里のいる場所には、大きな陽避け用の日傘がある。
それに比べれば、孫空女はこの強い陽射しをずっと水も飲まずに浴び続けている。
陽が中天に達する前には、汗だくだった肌には、いまは、身体が完全に乾ききってしまったのか、汗すらも出なくなってしまった。
その代わり、頭ががんがんと痛くなり、吐き気のようなものがずっと襲っている。
しかし、股間の電撃の痛みはどんどんと強くなる。
孫空女は最後の力を振り絞って、足を前に進めた。
「お、お願いだよ……。そ、速度、緩めて……はひっ」
孫空女は泣き喚いた。
しかし、緒里は笑って無視している。
旗を回って折り返した。
しかし、電撃の繰り返しが止まらない……。
「ひぎいいいっ――」
突然、衝撃が股間に走った。
一定の速度に達しない時間が長くなりすぎたのか、股間の電撃がいきなり強いものに変わったのだ。
その衝撃に、孫空女は身体を仰け反らしてしまい、ぐらりと体勢を崩した。
「ひいっ、いやああっ――」
孫空女は悲鳴をあげた。
しかし、一度傾いた首枷は、もう支えられない。
孫空女の身体は重い首枷から先に後ろ向きにひっくり返った。
「はぎいいいっ――」
その瞬間、気を失いそうになるような激痛が走った。
孫空女は起きあがろうとしたが、手足が痺れたようになってどうしても力が入らない。
そして、強い電撃が股間に走り続ける。
「ぎゃああああ」
孫空女は絶叫した。
そして、急に眼の前が真っ暗になるのを感じた。
*
顔に水がかけられた。
一度――。
二度――。
孫空女は大きな口をあけていた。
顔に降りかかった水を懸命に口に入れていた。
それは意思というよりは、生きるための本能のようなものだ。
そして、眼を開けた。
上に緒里の顔が見える。
木桶を持って、孫空女を見下ろしている。
どうやら、孫空女は気絶してしまっていたようだ。
「さあ、さっさと、起きな――。続きをするんだ」
緒里がにやにやしながら孫空女に言った。
すぐに、すっと『心神棒』の先が孫空女に向けられた。
「お、起きる――起きるよ――」
孫空女は悲鳴をあげた。
あの鞭だけは怖ろしい。
懸命に起きあがろとする。
だが、容赦なく『心神棒』が孫空女の腹に押し当てられた。
「ふぎゃあああ――」
孫空女は再び眼の前が暗転するのを感じた。