「聞こえなかったわよ、孫空女……。もう一度、言いな」
金凰妃の嬉しそうな声が聞こえた。
だが、孫空女には、なにをもう一度言えと命令されたのかわからなかった。
「な、なに……を……?」
孫空女は辛うじて言った。
「孫空女、よかったね……。首枷を外してもらえるようだよ……。もう一度、奴隷になるって誓えばね……」
それで、孫空女は思い出した。
ここで光の拷問を受けて、頭が狂いそうになった……。
そしたら、金凰妃が姿を見せて、孫空女に奴隷になると誓うのなら首枷を外してやると言ったのだ。
だが、それに対して、自分がなんと答えたのかがわからない。
確かに、なにかを喋った。
しかし、それは、こいつらの奴隷になることに応じる言葉だったのだろうか……?
孫空女の心に恐怖が走る。
「い、いや……。ど、奴隷には……。い、いや、なってもいい……。あたしなんか……。い、生きているだけで……。だ、だけど、奴隷は……」
奴隷にはならない……。
いや、なってもいい……。
だけど、宝玄仙を裏切りたくない……。
宝玄仙を……。
「しぶといわねえ……。いま、はっきりと奴隷になるって言ったじゃないのさ、孫空女」
緒里が苛ついた口調で、髪の毛を掴んで、孫空女の頭を揺らした。
「ひっ、ひいっ」
孫空女は悲鳴をあげた。
ただ頭を揺すられるだけなのだが、激しい吐気が孫空女を襲いかかってくる。
「焦らないのよ、緒里……。こいつは、もう堕ちるわ……。いや、もう堕ちている……。でも、頭を壊されかけているから、自分が喋ったことを長く覚えていられないのよ……。もう一度責めれば、しっかりと奴隷の誓いの記憶が頭に結びつくわ……。ほら、孫空女、跪きなさい。奴隷にならないなら、責め苦の続きよ……。首枷を支えて跪くのよ」
金凰妃が背後から横に回ってきた。
口調は優しいが、扱いは乱暴だ。
道術で孫空女の顔の前になにかを出現させた。
それが鼻鉤だとわかったのは、孫空女の両方の鼻の穴に、その鼻鉤がしっかりと嵌ってからだ。
その鼻鉤は天井から細い鎖で繋がっていて、ぐいぐいと孫空女の顔を上に持ちあげる。
「ひぐうっ、い、痛い――。か、勘忍――。もう、勘忍して――」
孫空女は喚いた。
だが、鼻鉤は首枷の嵌った孫空女の顔を容赦なく上に引きあげる。
そして、孫空女が正座の体勢から真っ直ぐに膝立ちの姿勢になったところで、やっと鎖の引きあげが停止した。
「い、痛いよう……」
孫空女は鼻が千切れそうな痛みに泣いた。
「こんな弱々しい感じの孫空女は初めてですよ、金凰妃様……」
緒里の声がした。
「もう、こいつは、いつもの自分を維持できないのさ――。もう少しだよ。心が崩れそうになり、だんだんと幼児退行を起こしているのかもしれないわね」
金凰妃が笑った。
「さあ、前を見な、孫空女……」
すると、金凰妃の声がした。
もともと鼻鉤で顔を引きあげられているので、顔を背けたくても、それはできない。
「緒里、わかっているわね」
「はい、金凰妃様。道術であの光と音の感覚を遮断します」
「少しでも、気分がおかしくなったら、遠慮なく言うのよ、緒里。わたしたちまで、頭がおかしくなったら、どうしようもないからね……」
背後で孫空女の身体を支えている金凰妃と緒里がなにかを言い合っている。
そして、緒里の両手が孫空女の瞼にかかった。
強引に瞼を上に引っ張られて、眼が閉じれないようにされた。
「ひいっ」
孫空女は、また悲鳴をあげた。
その次の瞬間、また、あの光の点滅が始まった。
今度は、瞼を大きく開かれて、真っ直ぐに光源を見らせられている。
頭の痛みが全身に拡がる……。
全身から汗が噴き出すのがわかった。
眼の前で強い光が激しく点滅を続ける。
「ひいっ、いやああ――。これはいやああっ――」
孫空女は絶叫した。
頭が……。
頭が割れる……。
息ができない……。
意識がすっと消えていく――。
いや、意識がなくならない……。
なくなるのは正気だ。
それがわかった――。
光が――。
息が……。
すると、光が止まった。
手で開かれていた瞼から手も離れる。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
しかし、割れそうな頭痛はとまらない。
しかも、視界が朦朧として、意識がはっきりとしない。
なにか考えをまとめようとするのだが、思考が混濁して、どうしても、なにも考えられない。
「う、うう……。も、もう……や……やめて……」
孫空女は呻いた。
まるで、まだ半分眠っているかのように、頭が働かない。
視点も定まらない。
目の前に顔を見せた金凰妃がぐるぐると回っている。
「奴隷になる決心はついた……? でも、答えを訊ねる前に、もう一度、さっきのをやろうかね」
ぐるぐると回っている金凰妃の顔が愉しそうに笑っている。
ただ、金凰妃の声だけは、まるで刃物のように孫空女の頭に鋭く突き刺さる。
その代わり、ほかのものは、一切が漠然とした雑音のようにしか感じない。
「うわああっ――」
また、光の点滅が開始される。
背後から瞼が強引に開けられる。
強い光の瞬きが再開する。
孫空女の意識がその光の点滅の中に吸い込まれていく……。
意識が遠のいていくのがわかる。
「いやあっ……嫌だよ……もう、もうやめてよ――や、やだああ――」
孫空女は狂ったように叫んだ。
自分という人間がいなくなり、別の意識が表に出てくるような恐怖が襲う。
だが、今度は長い……。
光の点滅が終わらない……。
頭が……。
誰かが悲鳴をあげている……。
それは自分だ――。
狂ったように自分が叫んでいる。
この光から逃げたい――。
だが、鼻鉤がそれを許さない。
しっかりと指でこじ開けられた瞼が瞬きさえも許してくれない……。
狂う……。
本当に狂う……。
そして、やっと光がとまった。
瞼も解放された。
「もう、これ以上は危険ね……。首枷をさせたままでは無理のようね……。このまま、追い詰めてもいいけど、孫空女が狂うよりも先に首の骨が折れるかもしれないわ……。いいわ……。首枷を先に外すわ……」
金凰妃が緒里になにかを話しかけ、それに緒里が頷いている。だが、孫空女には、それが頭に入ってこない。
言葉は聞こえるのに、その内容がまったく理解できないのだ。
孫空女はただひたすらに、息をしようと口をもがかせていた。身体の震えがとまらない。
とにかく寒い……。
身体の震えがとまらない……。
すると、金凰妃が孫空女の耳元で怒鳴り始めた。
「孫空女、聞こえるかい? 首枷を外すけど、この光の拷問が終われば、また嵌め直すよ……。だけど、奴隷になると誓うなら、首枷はなしにしてやろう……」
金凰妃がそう言った。
すると、霊気が孫空女の首を包むのがわかった。
次の瞬間、孫空女の首枷がなくなっていた。
全身の力が一気に脱力した。
「ふぎいっ」
倒れそうになる身体を鼻鉤が阻んだ。無意識に鼻にやろうとした腕が背後に引っ張られる。
手首の下に嵌められていた枷に繋がっていた鎖が縮んだのだ。孫空女の両手は背中側で引き絞られる。
「さあ、首も軽くなったところで、光の拷問を始めるわよ」
金凰妃が言った。
そして、また激しい光の点滅が始まる。
「うぎゃあああ――」
口から悲鳴が迸った。
孫空女の呼吸が荒くなる。
激しい怖気も走る。
もう、孫空女にはどうしようもない。
全身の脂汗がとまらない。
「苦しそうだねえ、孫空女……。そろそろ、奴隷になりたくなったかい?」
金凰妃がくすくすと笑った。
しかし、孫空女はそれに応じることができないでいた。
拒否するというよりは、喋ることができないのだ。
物を考えることもできない……。
この光の点滅を浴びると、意識が急激に低下して、やがて、なにかに吸い込まれそうになる。
点滅が終わった。
孫空女は鼻に鼻鉤をつけられたまま、憔悴して身体を震わせていた。
点滅が終わったのに、それがまだ続いているかのように、呼吸が苦しく、心臓の動悸が激しい。
「さて、そろそろ、次の段階に行こうかねえ……」
すると、孫空女の股間にすっと、金凰妃の手が触れた。
孫空女の身体は、びくりと震えた。
内腿の付け根に金凰妃の手がすっと伸びたのだ。
孫空女の両膝は、さっきまで重い首枷を支えていたので、軽く開かれていた。
その膝のあいだに、金凰妃の片膝が差し入れられ、孫空女の脚が閉じれないようにされて、金凰妃が孫空女の股間を触りだしたのだ。
「はあっ……な、なに……はあ、はあ、はあ……」
呼吸が落ち着かないのに、さらに敏感な股間を刺激されようとしている。
孫空女に新しい恐怖が襲いかかった。
「……ふふふ……。どうやったら、お前を堕とすことができるか、ずっと考えていたのよ。おそらく、痛みや苦痛には、お前は絶対的な強さを持っている気がするよ、孫空女……。だけど、官能責めなら、どうなんだろうねえ……。しかも、この光は絶対に人を冷静にはさせないからね」
「ひいいっ、いやあああっ」
孫空女は悲鳴をあげた。
猛烈な快感が沸き起こる。
だが、それは恐怖だ。
わからない。
なにをされても、恐怖しか感じない。
「この光には、人間族をどうしようもない恐怖に誘う力がある。精神を崩壊させるんだよ……。そうやって、心の弱い部分を剝き出しにされた状態で官能責めを受けたら、どうなんだろうねえ……。さすがのお前でも、ひとたまりもないんじゃないのかしら……」
さらに金凰妃が孫空女の内腿を柔らな手管で触る。
「ひっ、ひいっ、こ、怖い……ああっ……ああっ」
孫空女は込みあがる声を我慢できなかった。
「さあ、始めるわよ」
金凰妃が孫空女の内腿を愛撫しながら言った。
「さあ、しっかりと、見るんだよ、孫空女――。少しも眼を逸らすことができないように、また、おめめをぱっちりと開けてあげるね」
緒里がまた笑いながら孫空女の両瞼を引きあげた。
強烈な光の点滅の洪水が孫空女に襲いかかる。
「ひゃあっ、ひゃあああ――やああ――」
孫空女はがくがくと全身を震わせた。
凍えるような寒気が全身を包む。
その孫空女の股間を金凰妃が触っている。
熱い……。
いや、苦しい……
身体の感覚が引き千切られる……。
「こうやって、性器ぎりぎりのところを擦られると効くわよねえ、孫空女……。だんだんと性器に近づけていくよ……。でも、性器には触ってやらないわ……。ほら、官能責めに遭いながら、心が毀れていく感覚を味わうのはどう?」
金凰妃の指が孫空女の敏感な秘唇のぎりぎりのところを何度も往復する。
自分でもはっきりとわかるくらいに、愛蜜が溢れ出るのがわかる。
そのあいだも光の点滅が続く。
また、意識が吸い込まれる……。
それなのに、金凰妃の触れている部分だけが、取り残されて、そこだけが意識を持ったように荒れ狂う。
「触って欲しいかい、孫空女……? もっと、擦ってやろうか……。でも、お預けよ……。わたしたちの奴隷になると誓えば、気持ちのいい場所に刺激を与えてあげるわ……」
金凰妃がくすくすと笑って、指がさらに際どい部分に触れてくる。
「……ひ、光……、と、とめ……て……」
激しい光の点滅がいつまで経っても終わらない……。
長すぎる……。
頭がおかしくなる……。
意識が遠くなる……。
だが、孫空女にはわかった……。
光の点滅が作るのは、この意識が途切れる寸前の状態だ。それが繰り返し襲いかかる。
だが、絶対にその先はない。
この光は、孫空女に意識を失わせるというような優しいことはしないのだ。
この状態のまま、数刻でも維持し続ける……。
しかし、孫空女の心がそれに耐えられるわけがない……。
だから、その行きつく先は、失神ではなく発狂だ――。
それがわかった途端、孫空女にこれまで以上の恐怖が襲いかかった。
「そんなことは訊いてないわよ……。もっと快感が欲しいかと訊ねているのよ……。ちゃんと、お願いできないのなら、お預けよ……。いつまでもね……。これを終わって欲しければ、奴隷の誓いをするのね」
金凰妃は愛撫については、徹底的な焦らしで孫空女を追い詰める。
女陰のぎりぎりの部分を何度も何度も擦り、肉芽の周辺や、恥丘の寸前まで刺激するのに、一番敏感な部分には絶対に触れてこない。
「じゃあ、あたしも参加するかな……。殴ったり、蹴ったり、『心神棒』で痛みつけるのもいいけど、たまには、こうやって官能責めをするのもいいわねえ……」
ずっと孫空女の瞼をこじ開けていた緒里が、孫空女の眼から指を離した。
だが、もう、孫空女の眼は点滅する光に吸い込まれたようになり、眼を離すことができない。
そして、緒里の手が背後から乳房を揉み始める。
緒里もまた、乳輪の周りを動き回るが、乳首には触れてこない。
光の点滅が与えるものと同じだ。
激しい光は、孫空女の意識を飛ばしかけるが、ぎりぎりのところで失神をさせてくれない。
一方で、金凰妃と緒里の愛撫も、ぎりぎりのところまで孫空女を追い詰めるが、絶対に最後の快感を与えようとはしない。
「ああ、はああ、くうう、はあっ、はっ、はっ……」
孫空女は息を求めて口を大きく開いた。
だが、空気は入ってこない。
「孫空女――、わたしたちの奴隷になると誓うわね――」
前側から孫空女を襲っている金凰妃が言った。
光の点滅は続く――。
乳房への刺激……。
股間への愛撫……。
失いたくても失えない意識……。
いきたくてもいけない焦燥感……。
孫空女は激しく息をするだけで、金凰妃の問いかけには答えなかった。
答えれば、自分がなにを喋るのかわからなかった。
怖い……。
もう、なにに対して怖いのかわからない……。
屈服したくない……。
宝玄仙を裏切りたくない……。
「無視するつもりね……。だったら、この光はとめてあげないわ……。この指も肝心な場所には触ってあげられない……」
金凰妃が笑った。
「あ、ああ……」
孫空女は身悶えた。
すると鼻に激痛が走る。
だが、いまの孫空女には、その鼻の痛みよりも、光が怖い……。
焦らし責めにあらぬことを口走りそうな自分が怖い……。
気がつくと、いつの間にか、孫空女の腰の動きが淫らで大きなものになっていた。
全身から夥しい汗が流れている。
それが、官能の熱による汗なのか、光の点滅を浴びせ続けられることによる脂汗なのかわからない。
おそらく、両方なのだろう。
「ひゃあああ――。いぐううう――」
孫空女は限界まで眼を見開いて叫んでいた。
なんの予告もなく、金凰妃の指が孫空女の肉芽を強く擦ってきたのだ。
孫空女の全身は硬直した――。
「あああ――だめえっ――」
孫空女は身体を仰け反らせた。
いく……。
鼻に激痛が走ったが、もう、それはどうでもいい……。
この快感を――。
しかし、まさに寸前で、金凰妃の指が離れた。
孫空女の淫情は、宙ぶらりんのまま取り残された。
そして、消滅しない光の点滅が襲う。
光――。
闇――。
光――。
闇――。
光――。
光――。
光――。
そして、闇……。
孫空女は絶叫していた。
「お、お願い……だよ、も……もう――」
孫空女は腹の底から泣き叫んでいた。
苦しさが膨れあがる……。
なにかが圧倒する。
光を……。
光の点滅をとめて……。
孫空女は悲鳴をあげ続けている。
しかし、光はとまらない。
狂う……。
狂う――。
いや、もう、狂っているのか……?
「ううっ、あああっ、ややあああ……、ああ……」
金凰妃がまた肉芽を強く刺激した。
孫空女は悲鳴をあげた。
だが、達しそうになると指は離れる。
意識が遠くなる……。
快感も……。
いや、快感はそこにある。
意識も……。
「うあああ――うあああ――あああ――」
孫空女は泣いていた。
号泣してた。
自分が維持できない。
なんで 泣いているかもわからない……。
「本当に毀れてきたねえ……。さあ、誓うのよ――。奴隷になるわね――。さあ、答えなさい、孫空女――」
このとき孫空女は、これまでに感じたことのない快感の中にいた。
意識が消える寸前の気持ちよさと、昇天しそうで昇天できない快感が混ざり合い、なぜかそれが強烈な快感に変化していっている。
目の前が暗くなる。
「ほらっ、もう一度、凝視だ、孫空女――。光を見続けるんだ」
乳房から手を離した緒里が再び、孫空女の顔を光に真っ直ぐに固定して、瞼をこじ開けた。
「いやあああ――もう、いやああ――」
孫空女は大きな声で泣いた、
もうなにも考えることができない……。
身体が――。
心が……。
限界……。
なにも……。
考えられない……。
頭が朦朧と……。
光が――。
いや、闇だ――。
真っ黒いものが孫空女を――。
「奴隷になるわね――?」
はっとした。
孫空女はやっと自分がなにを耐えているのかを思い出した。
だから、耐える――。
だが、また闇が大きくなる……。
光の闇が……。
金凰妃の指が肉芽を擦る……。
圧倒的なものが孫空女を包む――。
「誓うのよ、孫空女――。この先にあるのは快感だけよ――。さあ、楽になるのよ。お前たちは、一緒に堕ちるのよ。宝玄仙も堕ちる……。お前も一緒に堕ちなさい……。それとも、宝玄仙だけを地獄に堕として、お前はここに残るのかい――?」
金凰妃が耳元で言った。
宝玄仙――。
一緒に堕ちる……。
ご主人様……。
一緒に……。
もう、なにも考えられない……。
点滅が……。
孫空女の口がなにかを喋った。
しかし、自分がなにを口走っているかがわからない。
するといきなり平手が頬に飛んだ。
少しだけ、孫空女の頭が戻った。
だが、焦点が合わないのは変わらない。
「もう一度、言え――。奴隷になるわね……。もっと、しっかりと言うのよ――。お前も宝玄仙も一緒に奴隷よ――。奴隷になると誓うのよ――」
宝玄仙と一緒に……。
その言葉が、頭にはっきりと響き渡った。
孫空女は、自分が首を大きく縦に振るのがわかった。
「言いなさい――。言葉にするのよ――」
金凰妃が叫んだ。
「ど、奴隷に……なる……」
「誓うね……」
「ち……か……う……」
孫空女はそう言っていた。
「よく言ったわ……。もう拒否はできないわよ。お前の頭には、奴隷の誓いがこびりついたわ。この光を浴びさせれば、すぐに奴隷状態になる……。お前は、これで永遠に奴隷よ……。さあ、とにかく、いまは、よくそう言えたご褒美をあげましょうね……」
金凰妃がこれまでになく激しく指を動かしだした。
同時に、点滅を続けていた光が、ぱっとやんだ――。
孫空女の心が闇に吸い込まれていく。
「がっ、あああっ、がああっ」
孫空女は吠えた。
やっと訪れた絶頂の快感の奇声をあげているのか、それとも、闇に吸い込まれる恐怖の悲鳴のどちらなのかわからない……。
全身ががくがくと震えた。
一瞬、顔ががくんと弾んだ。
だが、鼻鉤がそれを阻み、激痛を孫空女に与えた。
それでも、その痛みは孫空女の意識を復活させることはできなかった。
鼻を引きあげていた力が不意に消滅した。
金凰妃が天井と繋がっていた鎖を切断したのかもしれない……。
孫空女の全身は力を失い、そのまま床に倒れていく……。
顔が床に当たるのがわかった。
それとともに、大きな解放感が孫空女を包む。
孫空女は達していた……。
意識が途絶えた……。
「お前はわたしたちのなんだい……?」
消えそうになる意識の中で、金凰妃のその質問が辛うじて聞こえた。
いま、失神したのか……?
わからない……。
いずれにしても、それは一瞬でしかないだろう。
「お前はわたしたちのなんだい……?」
もう一度、金凰妃の声がした。それとともに、頭が思い切り蹴飛ばされた。
「ど、奴隷……」
孫空女はそう言った。
どうして、そんな当たり前のことを訊くのだろう……。
そんな不審を抱きながら、孫空女は大きな幸福感の中に自分の最後の意識を委ねていった。
自分の心が深い深い闇の中に潜っていくのがはっきりとわかった。