「わたしを小白象様に譲るという真言の誓いに承知してくれないのであれば、わたしは、次の責めを開始することにします……。いますぐに、着ているものを脱いでください……」
沙那の口調は淡々としている。
いやな感じだと思った。
この女、正気に戻ったらどうしてやろう……。
「い、いい根性じゃないかい、沙那……」
宝玄仙は沙那を睨む。
だが、沙那は全く動じる様子もない。
まったくもって、忌々しい……。
「どうです? もう、観念して真言の誓いに応じていいんじゃないですか、ご主人様? ご主人様は罠に嵌まって捕らえられた孔雀と同じですよ。鳥の女王と称される孔雀も、檻に入れられれば、見世物にされようが、焼いて食べられようが観念するしかありません。ご主人様も無駄な抵抗はやめませんか?」
「何度同じことを言わせるんだよ、沙那──。お前は、わたしの供だよ──。なにがあろうともね。絶対に連れていくよ」
宝玄仙は大きく声をあげた。
沙那が大きく嘆息する。
「……ねえ、ご主人様……。わかってください。わたしは、ご主人様や孫空女や朱姫との旅が嫌なものだったとは思っていません……。そりゃあ、故郷の城郭で、ご主人様に騙されて、罪人として城郭を連れ出されたときは、恨みもしましたし、正直、ご主人様をいつか殺してやろうかと考えていましたが、いまは、それもよい思い出です」
「う、うるさいよ──」
「でも、愛陽の城郭しか知らなかったわたしを旅に強引に連れ出してくれたことに感謝しているんです──。でも、わたしは、ここで天職を見つけてしまったのです」
「なにが天職だよ……。お前の天職はわたしが与えてやったろう──。一生、わたしに仕えるんだよ。それがお前の天職だ」
「ご主人様……。わたしは、愛陽にいた頃は、女のみでありながら千人隊長として武術に励んでいました。だけど、実はわたしは、武芸以外に、書物がすきでした。書物の虫でした。古今東西の書物を可能な限り読みふけっていたのです……。でも、それは役にたたないものと思っていました」
「役に立っているよ──。いまだから言うけど、お前の知恵には、ほんのちょっと感謝している。お前がいなければ、野垂れ死にしていたかもしれないということだけは認めてやるよ」
宝玄仙は言った、
すると、沙那は目に見えて驚いていた。
自分が褒め言葉を口にするのがそんなに意外なのだろうか。
「と、とにかく、わたしがここで与えられた役割は、国を築くことなんです。それには、わたしがその頃に読み耽った書物の知識が役にたちます。書物で得たことを実地で試すのです。わたしは、ここで夢を抱きました」
「夢だって?」
「ここで国を作ります。白象宮という国はありますが、この国は随分といびつであり不完全です。この国をわたしの手で、周辺で最強の国に仕立てあげます。それがわたしの夢です。わたしは、この白象国を作るのです。この国を新しく強い国に築きあげるのです──。それが、わたしの夢です」
「くだらないことを言うんじゃないよ、沙那──。国を築くなんてどうでもいいことだろう……。王様にでもなるつもりかい?」
宝玄仙は吐き捨てた。
「あなたは、そういう権力欲のない方です……。でも、それは美点であり、同時に欠点でもあります」
「欠点だって?」
「ご自分の途方もない霊気を社会に生かそうという意思をお持ちになりません。その気になれば、たくさんの人々を救う力があるのに、ご主人様はそれをご自分の役割とは考えられません。それは、間違いなく欠点です……。ねえ、ご主人様は、世の中の苦しんでいる多くの人々を助けたいとは思いませんか?」
「苦しんでいる者がいれば助けるさ──。そうしたいと思ってときはね。だけど、会ったこともない者を助けなきゃならないとも思わないね。なんで、そんなことをわたしが考えなきゃならないんだい──?」
「でも、考えるべきなのではないですか? ご主人様には、その力がおありです……。ねえ、ご主人様、ここで一緒にやりませんか? 亜人の世界というのは、未熟な人間の社会と同じです。この社会は成熟してはしません。だからこそ、思い切った施策ができます。亜人たちは人間族よりもずっと純粋です。一緒にここで新しい国を作りましょうよ。わたしたちも参加して……」
「い、や、だ、ね」
宝玄仙ははっきりと言った。
「でも、魔域なんて、もともと、なんの用事もないじゃありませんか。魔域に行くだなんて、ご主人様が東方帝国を逃亡するための口実であり、隠れ蓑だったんですよね……。だったら、旅の目的地がここでもいいはずです。わたしが、この土地でご主人様のやりがいを見つけて、ご主人様を幸せにしてみせます。どうか、一緒に……」
「嫌だと言っているだろう、沙那──。その話は終わりだよ。それに、わたしは魔域に行くよ。わたしにも目的ができたのさ。魔域にはわたしに助けを求めている者がひとりいる。そいつを助けにいく。会ったことのない大勢の人々なんてどうでもいい……。わたしは、わたしの知っているそいつを救う。そのためにも、絶対に魔域に行くよ」
宝玄仙が言い切ると、沙那はまた深く嘆息した。
「わかりました……。ご主人様のことは諦めます……。もしからしたらと思いましたが、やはり、噛み合いませんでしたね……。やっぱり、ここでお別れです……。ご主人様、お世話になりました……。わたしは、ここに残ります」
「駄目だと言っているだろうが、沙那──。お前は、わたしの言葉がわからないのかい──。さっさと檻を開けな──。とにかく、『主従の誓い』を解除して来いと言っているだろう──。それを先にするんだよ。この馬鹿垂れが──。何度言えばわかるんだよ。お前はあの小娘に操られているんだよ」
「操られてもいいです──。ここがわたしの天職であることは間違いないのですから」
「お前が『主従の誓い』による感情の操りが消えても、同じことを思うかどうか見ものだよ……。逆に言えば、『主従の誓い』を解消して、同じことを言うなら、お前の言葉は考えてやるよ……」
宝玄仙は言った。
もちろん、沙那を手放す気は皆無だが、嘘は言っていない。
考えると言っただけで、従うとは口にしていない……。
「本当ですか──。ならば、誓ってください。ご主人様がわたしを譲ると誓うなら、わたしは『真言の誓い』を解除してもらいます」
「それじゃあ、なんにもならないだろうが──。もういい──。議論は終わりだよ。お前は永遠にわたしの供であり、性奴隷だよ」
「そうですね。議論は終わりですね。それは同感です……」
すると沙那が横の卓の操作盤に手をやった。
「あぎいいっ──」
宝玄仙は引っくり返った。
また、床に強い電撃が流れたのだ。
慌てて、頭上の横棒に飛びついた。
「な、なにすんだい──」
宝玄仙は鉄棒を両手で掴んで身体を宙に浮かせてから、声を引きつらせて叫んだ。
しかし、すでに腕の力は限界だ。
もう、長い時間など両腕で身体を支えられない……。
「さっき、言いましたよ。服を脱いでくださいとね……。随分と待ちました。じゃあ、また、頑張ってください……。今度は二刻(約二時間)ですから……」
沙那は無表情で言った。
「わ、わかった──。脱ぐ──。脱ぐよ」
「脱ぐんですね?」
「脱ぐから、床の電撃をとめておくれ。も、もう、落ちる……」
宝玄仙は歯を喰いしばって、鉄棒を握る拳に力を入れた。
だが、もう腕が震えていて、そう長く保てない。
「じゃあ、脱いでください。下着もなにもかも全部ですよ」
沙那が操作盤に指をやったのが見えた。
宝玄仙は力尽きて床に落ちた。
電撃はとりあえず止まっていた。
ほっとした。
「途中でやめたり、脱ぐのを逆らったら電撃を復活します。そのときには、本当に二刻(約二時間)のあいだ床に電撃を流しっぱなしにします」
沙那は、例の手のひら大きさの携帯の操作盤をこれ見よがしに示した。
ぐっと込みあげるものがあったが、いまは耐えた。
沙那はやるときはやる。
冷静な視線で宝玄仙を観察しながら、宝玄仙を追い詰める手段を次々に打ってくるに違いない。
沙那は宝玄仙を屈服させて、宝玄仙に沙那を譲るという真言の誓いを結ばせるか、あるいは、激怒させて、とにかく沙那に仕返しをしたいと思わせるようにしている。
どちらかというと、いまのところ、宝玄仙を怒らせて、沙那に仕返しをしようという強い感情に陥らせようとしているように思う。
沙那は、宝玄仙が感情的だと知っているので、それが一番可能性があると計算しているかもしれない。
しかし、沙那に仕返しをするためには、先に真言の誓いで、沙那を譲ると小白象とかわさなければならない。
それが、沙那の思惑なのだ。
だが、それを先にしてしまうと、今度は、宝玄仙の心に、沙那を譲るという心が刻まれてしまう。
それだと、沙那は、宝玄仙の供には戻らない……。
とにかく、いまは我慢することにした。
「どうしたんですか、ご主人様……? 服ですよ。服。もう警告はしませんよ」
沙那が卓に身体を預けるようにしながら言った。
「わ、わかっているよ──。う、腕に力が入らなくて、うまく動かせないんだよ」
宝玄仙は服に手をやりながら怒鳴った。
事実だった。
「だったら、もう一度、電撃を流しますね……。服が脱げないなら、仕方ないですものね」
「脱ぐって言っているだろう──」
宝玄仙は大声をあげた。
そして、歯ぎしりするような屈辱を感じた。
どうして沙那ごときの命令に……。
その想いはどうしても拭いがたい。
だが、眼前に迫っている電撃床の恐怖には抵抗できない。
宝玄仙は両手を服のぼたんにかけた。
「ご主人様、踊りながら脱いでください。見物人たちに愉しませるようにね……」
沙那が言った。
「見物人?」
思わず問い返した。
見物人など、沙那ひとりであろう……?
沙那が卓上を操作した。
すると、沙那の背後の壁ががらがらと音をたててあがりだした。
「あっ」
宝玄仙は驚いて叫んだ
しかし、その宝玄仙の声を大きな歓声がかき消した。
床がせり上がって消滅すると、壁の向こうの部屋とひと続きになり、その向こうにいた大勢の男の兵らしき者が現れたのだ。
兵たちの数は三十人ほどだろうか……。そこは、かなり大きな部屋であり、中では男の亜人兵たちが、椅子や床に座って談笑したり、武器の手入れなどをめいめいにしていたようだったが、床がせりあがりだすと、わらわらとこちらに寄ってきた。
そして、その亜人兵たちが、宝玄仙に向かって一斉に拍手した。
「な、なんだい、こいつらは──?」
宝玄仙は身体を硬直させて声をあげた。
「実は、ここは離宮の中でも、衛兵の詰所に隣接する拷問室なんです。少し前に、この離宮で騒動がありまして……。それで、この離宮にも本殿と同じように衛兵を常駐させるように変えたんですが、その衛兵たちに眼の保養をさせてあげようと思っているんです……。彼らには、もしかしたら、人間族の女の裸を見物できるかもしれないと予告していました……。どうか、ご主人様の裸身を彼らに見せてあげてください」
沙那がにやりと笑った。
そして、沙那が声をかけると、亜人兵たちがこちら側にやってきた。あっという間に宝玄仙のいる金網の檻は、亜人兵の男たちに取り囲まれた。
「さあ、どうぞ……。脱いでください。脱いだ服はさっきの水筒を送った白い円の中に置いてください。こっちに回収しますから……。そして、さっきの言葉を忘れないでくださいね。止まらないことですよ……」
沙那が冷たい声がした。沙那は、金網の回りに兵がたかっている兵の後ろだ。
亜人兵の身体越しだが、沙那の作ったような笑みがしっかりと見える。
宝玄仙はかっとした。
「お、お前、ふざけるんじゃないよ──。こんなことをして承知しないよ、沙那──」
宝玄仙は激昂して服のぼたんに手をかけたまま叫んだ。
「怒ったんですか? 怒ったら、どうぞ仕返しをしてください。わたしにお仕置きをしたくなったら、いつでも言ってください。わたしの責めは中止して、小白象様をお呼びします。この兵たちもさげます……。そして、真言の誓いを結んでもらってから、わたしはご主人様に罰を受けます。そのときは、どうぞ心置きなく、わたしを嗜虐してください」
「兵をさげるには及ばないよ……。お前をこいつらの前で嗜虐してやるよ。裸にひん剥いて、徹底的な色責めにしてやる──。いや、こいつらに道術をかけて、お前を輪姦させてやるよ──。お前なんか、一から躾のやり直しだ──」
すると、沙那の顔色がさっと蒼くなった。
だが、ほんの少しの沈黙のあとで、沙那は口を開いた。
「わ、わかりました……。存分にしてください……。ご主人様には、それをする資格があると思います。彼らの前でご主人様の嗜虐を受けます……。輪姦も覚悟します……。でも、その代わり、先に小白象様と真言の誓いをしてください……」
沙那は真剣な表情で言った。
「くうっ」
宝玄仙は歯を噛みしめた。
これは沙那の手だ。
どうにかして、宝玄仙を怒らせて、もう先のことなどどうでもいいから、目の前の沙那に仕返しをしてやるという気持ちにさせようとしているのだ。
そして、宝玄仙は、その手に乗りそうになっている自分を自覚した。
もう、沙那を譲るという真言の誓いなどさっさと結んでから、こいつを懲らしめてやろうとさえ思った。
そのときに沙那を正気に戻す方法はあるのだ。
だが、それだと、先に小白象と宝玄仙が真言の誓いをした時点で、宝玄仙の心が拘束される。
それは、駄目だ……。
冷静を保てと、宝玄仙は自分に言い聞かす。
宝玄仙は一度深く深呼吸した。だが、それでも苛つきは収まらず、もう一度した。
それで、少しは落ち着いた。
「お、覚えてなよ、沙那──。あとで正気に戻ったときに、ゆっくりとわたしの言葉を思い出して噛みしめな──。お前の調教は最初からやり直しだからね──」
宝玄仙はそう怒鳴ると、手を動かして、上衣のぼたんを外す作業を再開した。
宝玄仙が服を脱ぎ出すと、周りの亜人兵たちが歓声あげてを拍手をした。
ぐっと歯噛みして、宝玄仙はひとつひとつ留め具を外していった。
腕は重い……。
まるで鉛でも入っているかのようだ。それでも、顔が強張るのを感じながら宝玄仙は一個一個とぼたんを外す。
上衣から肩を外して、腕を抜く。
内衣は薄物の貫頭衣だ。
とりあえず、上衣を丸い円の中に投げた。
「踊りながらと言ったじゃないですか、ご主人様──。電撃を床に流しますよ」
兵の後ろから沙那の声がした。
「ちっ」
宝玄仙は舌打ちして、腰をくねり、腕を曲げ伸ばししながら、下袍の紐を外す。
周囲の兵がやんやの喝采をした。
天教の儀式には、「祈り舞い」というものもある。
八仙だった宝玄仙も、当然、祈り舞いはできる。それを思い出しながら、腰を振り、脚を曲げて身体を捻る。
「あっ……」
すると、布地に肌が擦れて、思わず宝玄仙は声をあげてしまった。
さっきたっぷりと媚薬を飲んだ。
その効果が完全に身体に浸透しているのだ。
不必要に舞い動くと、服に肌が擦れるだけで、淫情の声が洩れてしまう。
とにかく、下袍は脱いだ。
宝玄仙はその下袍も、また白い円に向かって放った。
亜人兵が拍手をする。
そして、また、舞をしながら内衣を脱ぐ。
ついに下着姿になった。
「皆さん、どうぞ、存分に見物してくださいね……。さあ、胸当てを取ってください、ご主人様。それを取ったら、乳房を揺らしながら、周りの衛兵の全員がよく見物できるように回ってください」
沙那の声だ。
その指示に、また腹が煮えそうになる……。
だが、それは沙那の手だと、自分に言い聞かす。
沙那は宝玄仙の性格をよく知っている。
どんな内容をどういう表情と口調で言えば、宝玄仙の逆鱗に触れ、怒らせることができるかということをおそらく、三人の供の中で一番よく知っているだろう。
その沙那が、なんとか宝玄仙を怒らせ、冷静さを失わせて真言の誓いに応じさせようとしているのだ。
落ち着かなければ……。
「こ、これでいいのかい──」
宝玄仙は胸当てを外した。
胸当てをまた隅の円に投げると、両手で乳房を隠し持つようにしながら、乳房を動かしてその場で回転する。
「それじゃあ、見えませんよ、ご主人様──。乳首をちゃんとみんなに見せてください。ご主人様の胸は相変わらずに綺麗ですよね。それをみんなに見せてあげてくださいね」
沙那の声に、自分の眉間にきっと皺が寄るのがわかった。
こいつに対する憎しみでさえ、こみあがる気がする。
だが、仕方がない……。
宝玄仙は、もう捨て鉢な気持ちになり、両手から胸を手を外すと、両側から押さえるようにして、左右に乳房を揺らしながら身体を回転させる。
「踊りはどうしたんですか?」
沙那の声──。
宝玄仙は腰をくねって舞の動作に戻る。
亜人兵たちは大喜びだ。
「さあ、最後は腰布ですね。どうぞ……」
三回ほど舞いながら回転したところで、沙那が声をかけた。
宝玄仙は、腰の下着の横に両手をかける。
「そうだ……。全部、脱がなくてもいいですよ。まずは、お尻だけを剝き出しにしてください。その方が、いやらしいですものね。それが終わったら、とりあえず、踊りはいいですよ。腕を脇に置いて真っ直ぐにしてください」
「なっ」
思わず怒鳴ろうとして、宝玄仙はすぐに口をつぐんだ。
沙那の魂胆はわかっているのだ。
懸命に心を落ち着けようとする。
宝玄仙は沙那の命令に従って、小さな下着の後ろ側だけを剝き出しにした。
前の部分は、股間の下の部分だけに、ちょっとだけ引っ掛かったようなかたちになる。
中途半端なこの状態は、むしろ全裸よりも恥ずかしい気がした。
さすがは、沙那だとは思う。
人を追い詰めるやり口をよくわかっている。
「なにっ?」
突然、最初に靴を脱がせたときに、沙那が使った『道術手』が眼の前に出現した。
沙那の手元までは、亜人兵の身体で見えないが、沙那が卓の位置で再び『道術手』を遣ったに違いない。
その『道術手』が宝玄仙の乳房をぐいと掴んで揉み始める。
「ああっ……ちょ、ちょっと──」
宝玄仙は思わず悲鳴をあげて、胸を両手で隠した。
胸は
改造されたあちこちの身体は、道術で回復させたのだが、薬物を使われて感度をあげられた乳房だけは、なかなか元には戻らなかった。
その胸をいきなり揉まれたのだ。しかも、たっぷりと飲んだ媚薬が宝玄仙の全身を熱くしている。
それをこんな大勢の男の亜人兵たちの前で揉まれるのは堪らない。
「動いちゃだめじゃないですか、ご主人様──。それよりも、床電撃がいいですか?」
沙那が言った。
胸は宝玄仙の胸の手前で宙に浮いている。
「わ、わかったよ……。す、好きにしな──」
宝玄仙は怒鳴りながら、身体を真っ直ぐにして、両手を身体の横に戻した。
「わたしはご主人様が嫌なことはしませんよ。ただ、ご主人様が揉んで欲しければ揉みます。胸を揉んでいるあいだは、床に電撃は流しません──。それだけです……。さあ、どうしますか?」
沙那が亜人兵を掻き分けて前に出てきた。
その顔が赤い。
沙那が興奮しているのは確かだ。
冷静に宝玄仙を責めたてている沙那だが、いまは、宝玄仙を責めるということで、少し淫情を覚えているようだ。
沙那の冷静な仮面の下に出現した淫らな顔に、宝玄仙は思わず頬を緩めた。
よく考えれば、なにしろ、宝玄仙が三年以上にわたって、さまざなま痴情を教え刻んだ沙那だ。
真言の誓いで感情を殺されていても、宝玄仙がしつけた身体と心は、あの烈情と愛欲を忘れるわけがない……。
「どうなのです……。揉んで欲しいのですか……?」
両側に亜人兵が集まる中心で、沙那が金網の向こう側から言った。
「わ、わかったよ……。揉んでおくれ……。だ、だけど、電撃だけは勘忍しておくれよ……」
そう言うしかない。
「そうですか……。じゃあ」
金網の向こうの沙那が茶色い手袋をした手を揉むように動かした。
すると檻の中の『道術手』が宝玄仙の乳房を掴んで、ゆっくりと揉みだした。
「はああっ」
宝玄仙は腰が砕けそうになり、思わず大きな声をあげた。
「随分と感度がいいですね? どうしたんですか、ご主人様──?」
金網の向こうに沙那が嗜虐に酔ったような表情で微笑んだと思った。