「な、なんでじゃ──? 沙那、なんで裏切ったのだ──?」
宝玄仙の足の下に移動させられた
白象は、突っ立ったまま、呆然とその状況を見守っていた。
小白象には、あまりにもあっけなく終わった沙那の変心の理由が理解できないようだが、それは白象も同じだ。
とにかく確かなのは、沙那が突然に態度を豹変させたということであり、それは、宝玄仙がなにかをすることによって、『主従の契約』という真言の誓いが解けたことが理由であることだ。
それで、沙那は、本来の女主人である宝玄仙に対する忠誠を取り戻して、宝玄仙を監禁していた道術封じの檻を解除してしまった……。
つまりは、そういうことなのであろうが、白象には、小白象の同意なしで沙那の心を縛っていた『主従の誓い』が解除されてしまったからくりがわからなかった。
道術で他人の真言の誓いを解除させることなど不可能なはずだ。
しかし、現実に、眼の前で起きたことはそういうことだ。
一体全体、いま、なにが起きたのだろう?
「うるさいねえ、小娘……。すでにお前の身体からは、霊気を抜き取ったよ。もう雁字搦めにした道術の縄から抜け出す方法はないはずだ。諦めな。そして、小娘の分際で身の程知らずにも、この宝玄仙に敵対しようとした酬いを受けな」
宝玄仙が笑った。
そして、その宝玄仙がちらりと白象を見た。
びくりとしたが、白象については問題ないと思ったのか、すぐに宝玄仙は視線を足元の小白象に戻した。
いずれにしても、白象の霊気では宝玄仙の敵ではないのはわかっている。
白象にも抵抗の意思はない。
「沙那、なぜなのだ? わらわをなぜ裏切った?」
小白象はまだ叫んでいる。
その顔は悲痛だ。
小白象は沙那の心変わりが信じられないというよりは、信じたくないようだ。
「本当に小うるさい娘だねえ……。ちょっと、黙ってな」
宝玄仙が言った。
すると、小白象の声がぴたりととまった。
どうやら、小白象の口が閉じて開かなくなったようだ。
それにしても、宝玄仙は、沙那になにをしたのだろう……?
宝玄仙は、沙那の身体からなにかを抜いた……。
その途端に、沙那の態度が一変した……。
沙那に、なにか仕掛けがあったのか……?
白象は改めて沙那を見た。
沙那は、まだ、操作盤に位置で立ったまま蒼い顔をして震えている。
そのとき、白象はなんとなく、沙那に対する違和感に気がついた。
「霊気……?」
すぐには、その違和感の正体がわからなかったが、それがなにであるかは、すぐにわかった。
沙那がずっと帯びていた霊気がまったく消滅しているのだ。
そういえば、宝玄仙が沙那の身体からなにかを抜いたときに、沙那がずっと帯びていた霊気が一瞬にして消滅したような……。
沙那の身体からなにを抜いたのだろう……?
白象は、宝玄仙が手に持っているものに眼をやった。
もの凄く高い霊気の結晶体だ。
「魂の欠片……?」
思わず呟いた。
あれを沙那から抜いたのか……?
そう言えば、宝玄仙の操る道術手が沙那の体内に一瞬だけ沈んだように見えた。
あれは、『魂の儀式』の道術だったかもしれない……。
『魂の儀式』とは、道術遣いの魂を入れたり抜いたりする道術であり、道術遣いの『魂の欠片』を出し入れする超高等道術だ。
白象は、金凰魔王がそれを操るのを見ているので、その道術を見知っているが、おそらく、そうだと思う……。
つまり、沙那の身体の中に『魂の欠片』が置いてあり、それが抜き取られたということか……?
そのとき、白象は脳天を打たれたような衝撃を感じた。
突然、頭にからくりが浮かんだのだ。
「ああっ、そういうことだったのね──。沙那はただの人間なのね──」
白象は大きな声をあげてしまった。
つまりは、単純な話にすぎない。
真言の誓いは、原則として、亜人や道術遣い、すなわち霊気を帯びる者のみにしか行えない──。
これは、道術原則の基礎中の基礎だ。
例外は、『結婚の儀』と呼ばれる真言の誓いであり、これについては、両者の魂が混ざり合うという行為なので、片方が道術遣いであれば、もう一方が霊気の帯びない人間であっても、真言の誓いと同じ効果が刻まれる。
但し、この唯一の例外を除けば、真言の誓いは双方の当事者が霊気を帯びた存在でなければ成立しない──。
真言の誓いとは、道術を扱う者が帯びる霊気……。
つまり、それぞれの霊気を帯びる魂と魂の結びつきだ。
だから、そもそも霊気を帯びていないただの人間には、真言の誓いを結びつけるものが存在しないのだ。
沙那は、なんらかの手段によって、霊気を強引に帯びさせていた“ただの人間”だったのだ。
亜人社会には、霊気を帯びていない者などいないから、白象も沙那が霊気を帯びていたのを当たり前のように思っていたが、人間では霊気を帯びている方が珍しいと聞く。
沙那もそういう当たり前の人間のひとりであり、おそらく、あの『魂の欠片』を体内に入れることで、強引に霊気を帯びさせていたのだと思う。
宝玄仙がやったのは、その仕掛けを取り除いて、沙那を本来の人間に戻すことで、真言の誓いの前提を外してしまったのだ。
すると、宝玄仙がにやりと白象に微笑かけた。
「まあ、そういうことさ、白象……。沙那は人間だよ。しかも、道術遣いの素質の片鱗すらないね……。その沙那に、わたしはずっと長いあいだ、わたしの『魂の欠片』を入れて、無理矢理に霊気を帯びさせていたのさ……。だから、この小娘は、沙那と『主従の誓い』という真言の誓いを交わせることができたが、実際には、沙那はただの人間だから、本来は真言の誓いは不可能だ」
「そういうこと……」
「ああ……。わたしがこの『魂の欠片』を沙那の中に入れていたために、それができただけのことでね。つまりは、小娘との真言の誓いを結んだのは、この欠片と結んだだけの話であり、沙那の本来の魂は純粋のままだったということだよ。そして、いま、こいつから、真言の誓いを刻まれた部分を取り出してしまったので、この馬鹿垂れは、やっと正気に戻ったのさ。まあ、もともと、『魂の欠片』は、こいつにとっては異物だ。真言の誓いを結んでいる魂の部分を抜き取っても、なんの問題もないしね」
宝玄仙は、『魂の欠片』の結晶体をかざしながら言った。
「さて、沙那、こっち見な……」
そして、まだ、卓のところで蒼い顔をして震えている沙那に視線を向けた。
沙那の身体が、びくりと動いたのがわかった。
その沙那の視線が凍りついたように宝玄仙に向ける。
沙那の表情には、完全な怯えが映っている。
余程、宝玄仙のことが怖ろしいらしい。
この白象宮にやってきて以来、気の強い沙那のあれほどの怯えた姿は初めてだと思う……。
「あ、あの、ご主人様……。こ、これはですね……。その……その……」
沙那は懸命に言葉を探しているようだが、舌まで震えているのか、うまく喋ることもできないようだ。
沙那の怯えが心からのものであることがわかる。
そして同時に、『主従の誓い』という縛りがなくなった沙那は、やはり、白象宮や小白象など、まったく眼中にもないようだ。
沙那がさっきから見ているのは、ひたすらに宝玄仙だけだ。
宝玄仙の足元で床に転がされている小白象のことなど一瞥すらしないし、沙那に対する小白象のさっきの悲痛な声も、まるで聞こえていないかのようだった。
白象は大きく息を吐いた。
所詮は偽物の心だ……。
本物の心にはかなわないか……。
やっぱり、白象宮に残りたいとか、宝玄仙たちと別れたいとかいう言葉は、『主従の誓い』が産み出した作り物の感情だったようだ。
「どうしたんだい、沙那? なにか言いたいことがあるなら聞いてやるよ……。口がきけるうちに、なんでも言い訳しな──」
宝玄仙が言った。
「あ、あの……で、でも……だって……」
沙那はしどろもどろだ。
「なかなかに愉しかったよ、沙那……。まあ、いろいろとやってくれたじゃないかい……。床電撃……、蒸気地獄……おまけに性技勝負では、まあ、凝った小細工をしてくれたねえ……。全部、お前の知恵なんだろう、沙那……?」
「うっ……。も、申し訳ありません……、い、いえ……そうです……。わたしの知恵です……。あ、あのお許しを……。い、いえ──。そ、そうだ──。あれは遊びです──。いつもの……」
沙那が作り笑いをしながら言った。
「遊び?」
宝玄仙が怪訝な表情になった。
「そ、そうです──。遊びです──。いつもやるじゃないですか。ほらっ、お互いに攻守入れ替えて嗜虐したり……。あれですよ。あれ……。わ、わたしがご主人様を責めたのは遊びです──」
沙那が言った。
すると、宝玄仙がにやりと笑った。
横で見ている白象でさえも、ぞっとするような微笑だった。
沙那が硬直した。
「……わかった……。遊びかい……。お前の言いたいことはそれだけだね……。賢しい沙那……。なかなかの根性じゃないかい……」
宝玄仙が言った。
「ご、ごめんなさい──」
沙那がいきなり動いた。
さっき身体の中から『魂の欠片』を抜いたから、沙那の服ははだけたままだったが、そのままの姿で、沙那は宝玄仙の足元にひれ伏した。
「も、申し訳ありません、ご主人様──。この通りです──」
沙那が宝玄仙の足元に土下座をした。
「さて、沙那……。一応は、金網の檻を解除したのは褒めてやるよ……。ただし、褒めるのはそれだけだ──。もちろん、なにからなにまで、覚えているんだろうねえ……? 『主従の誓い』は心を縛るだけで、別に記憶を失くすわけではないからねえ……」
今度は宝玄仙が沙那に視線を向けた。
「わ、わかんないんです……。な、なんであんなことをしたのか……。なんで、あんなこと思ったのか……。で、でも、わたしは、みんなと一緒に……ご主人様と一緒に旅がしたいです……。お許しください──」
沙那が頭をさげたまま、まくしたてた。
すると、怒ったような表情だった宝玄仙から、すっと怒りの表情が消えた。
おそらく、沙那の言葉に満足したに違いない。
そして、同時に、宝玄仙の顔に浮かんだのは、心からの安堵の表情だった。
その変化は一瞬だけだったので、宝玄仙の足元にいる沙那にはわからなかったと思うが、それは確かに、宝玄仙の安心したような嬉しそうな顔だった。
もしかしたら、宝玄仙としても、不安だったのかもしれない。
『主従の誓い』の影響だと思っていても、その真言の誓いが解除されて、沙那の心が宝玄仙に戻るかどうかの保障はないはずだったからだろう。
しかし、沙那の心には、実際にはまったくの揺るぎもなかったようだ。
沙那は一瞬の躊躇もなく、小白象を見捨てて、宝玄仙を助ける行動をとった。
小白象としては、衝撃だっただろうが、沙那は迷う素振りも見せなかった……。
このふたりの絆は、それだけ、もともと強かったということだろう。
その沙那の心を不当にも小白象は強引に自分へ忠誠心を抱くように捻じ曲げてしまったのだ。
小白象の罪は重い……。
白象は、必死の態度で宝玄仙に謝罪をしている沙那を見て、つくづくそう思う。
小白象にしても、白象にしても、こんなに強く心が結ばれている主従の仲を裂こうとしていたのだから……。
「まあ、お前が一緒に旅がしたいというなら、それは許してやってもいいさ……。この小娘に心を操られて、このわたしを嵩にかかって責めたててきたときには、くそ生意気なその態度は、絶対に許さないと思ったものだったが、操りが解けた瞬間に神妙な態度になったのはいいさ……」
「あ、ありがとうございます──」
沙那が床に頭をつけたまま叫ぶように言った。
その口調には、媚びを訴える響きがある。
あの沙那がこれほどに、宝玄仙を恐れるのかと少々呆れてしまった……。
「すぐに檻を解放してわたしを解放し、こうやって謝罪の態度を瞬時に取ったのも評価していいだろうね……。だが、それは、八つ裂きにするほどの罰を与える程の予定が、その一歩手前で許してもいいという気分になっただけの話だ……。覚悟はいいだろうね、沙那……」
宝玄仙が作ったような怒りの表情に戻って言った。
「ひっ」
沙那が土下座をしたまま竦みあがるのがわかった。
「……い、いえ、どうか罰を与えてください……。で、でも、どうか、これからもみんなと一緒に……」
沙那は、まだ頭を床にさげたままだ。
「まあいいよ……。だけど、そんなに言うなら、早く謝ったらどうなんだい、沙那……? お前、さっきからちっとも謝らないじゃないかい──」
「えっ……」
沙那がちょっとだけ顔をあげた。
きょとんとした顔をしている。
宝玄仙は、小白象を踏んでいた足を離すと、その足を足元でひれ伏している沙那の頭に載せた。
どんという音がして、沙那の額が床にぶつかった音がした。
「うぐっ」
沙那が大きく呻いた。
強く頭を床に打ったようだ。
「許して欲しければ、ちゃんと謝るんだよ、沙那──。許すかどうかは、ちゃんとした謝罪の態度をとってからだろう……。そう思わないかい、沙那……? いつから、わたしの供は、服を着たまま、わたしに謝罪するようになったんだろうねえ……? ちょっとばかり操られて、わたしへの忠誠心を失ったら、わたしへの謝り方も忘れたのかい、沙那?」
宝玄仙がそう言って、沙那の頭の上に載せていた足を除けた。
沙那ががばりと上体を起こした。
すぐに身に着けているものを脱ぎ始める。
だが、上着と下袴を脱いだところで、はたとその動きがとまった。
沙那は、宝玄仙との性感勝負のために、脱ぐのに時間がかかる紐のたくさんついている革の上下ひと繋ぎの下着を身に着けている。簡単には脱げないのだ。
「どうしたんだい……? ああ、これは簡単には脱げないのかい──。白象、なにか切断するものを貸しな──」
宝玄仙がこっちを見た。
白象は下袍の下に隠していた護身用の短剣を宝玄仙に渡した。
「ほらよ」
宝玄仙が沙那に短剣を手渡すと、沙那は革の下着の紐の部分を次々に切断して、素っ裸になった。
「も、申し訳ありません、ご主人様」
沙那が全裸で土下座をした。
すると宝玄仙が舌打ちした。
「ちっ、やっぱり、道術陣を使っても、薬剤の影響でお前の性感が停止したままかい。こらっ、沙那。この薬剤はいつ元に戻るんだい? お前へのお仕置きができないじゃないかい──」
宝玄仙が怒鳴った。
おそらく、いま、沙那の身体に道術を送ろうとしたのだろう。
沙那の身体は、宝玄仙の性感勝負に対抗するために、一時的に身体の感覚を凍結させてしまっている。
宝玄仙は道術でその影響を消そうとしたが、できなかったに違いない。
「お前が飲んだ仙薬は、いつ効果が戻るんだと訊いているんだよ、沙那──?」
宝玄仙が怒鳴った。
「ま、丸一日です」
「一日──? だったら、明日までお前のお仕置きはできないということじゃないかい──。仕方ない──。だったら、お前への罰は、明日まで保留だよ──」
宝玄仙が舌打ちした。
「は、はい……」
沙那がちょっとだけほっとしたような表情になった気がした。
「まあいい……。じゃあ、お前、もう一度、卓の操作盤に行きな……。檻をもう一度おろすんだ」
宝玄仙が言った。
「えっ、なんでですか?」
沙那が顔をあげてきょとんとした表情をした。
すると、宝玄仙がどんと足を床で踏んだ。
「ひっ」
沙那がまた、びくりと身体を震わせた。
「わたしに命令されたら、お前はただ言われたことをすればいいんだよ──。いつから、わたしの命令を問い返していいような偉い身分になったんだい──? こらっ──」
「わ、わかりました──」
沙那が裸のまま、慌てたように立ちあがって、操作盤に戻った。
「さて、待たせたね、小娘……。お前の出番だよ……。蒸し地獄の床と痒み棒の張形、媚薬の水浴び、そして、自分を寸止めする責め──。なかなかのものだったよ。それを味わわせてやるよ……。そうだ。ついでに、床電撃も追加だ──。のたうち回りな──。沙那のお仕置きが始まる明日になったら、檻から出してやる。それまで、じっくりとこの宝玄仙に立てついた酬いを受けな──。それが終わったら、本格的な仕返しを考えてやる」
宝玄仙は小白象を部屋の真ん中に蹴り転がした。
「んんんっ──」
床を転がった小白象が、腰を蹴られた痛みで顔をしかめた。
「じゃあ、身体の拘束と閉じていた口を戻してやるよ、小娘──。沙那、檻をおろしな」
宝玄仙が沙那のいる操作盤まで歩きながら言った。
檻が音をたてて落ちた。
沙那もまたまったく躊躇の様子は示さなかった。
いまの沙那が、小白象に対してどんな感情を抱いているかわからないが、少なくとも、宝玄仙の機嫌を損ねてまで、小白象を庇う気持ちは皆無のようだ。
「な、なんじゃ──?」
やっと立ちあがった小白象は、まだ呆然としている。
「さて、お前がどのくらいの時間で、自分で服を脱ぐのか愉しみだよ、小娘──。沙那、蒸し地獄だ」
「は、はい」
沙那が操作盤を動かした。
檻の中の床の全面から音をたてて、熱い湯気が吹き出しだした。
「う、うわっ──。ひいっ──」
小白象が泣き声をあげた。
白象は決心した。
こうなることを見越して準備してあったものを発動することにしたのだ。
白象は、小白象に向けて道術を飛ばした。
小白象の服には、あらかじめ『道術紙』を隠し入れている。
それを発動させるだけなので、霊気の弱い白象にも十分に大きな霊気を刻むことができる。
檻の中の小白象が消滅した。
『道術紙』であらかじめ刻んでいた『移動術』が発動したのだ。
檻の中にいる者は、道術を刻むことはできないが、逆に外からはいくらでも道術をかけることはできる。
「な、なんだい──?」
宝玄仙が声をあげた。
「申しわけないわ、宝玄仙殿……。小白象は魔王なの……。罰を受けさせるわけにはいかないわ……。娘のやったことは、わたしが代わりに酬いを受ける。それで許して」
白象は言った。
「お、お前が、あの小娘をどこかに跳ばしたのかい──? ちっ──。しまったよ……。どこにやったんだい、白象──。別に娘を殺しはしないよ。ちょっとばかり、反省させるだけだ──。娘を出さないと、この白象宮を潰してしまうよ──」
宝玄仙が声をあげた。
「……存分にしていいわ、宝玄仙殿……。このわたしの身もね……。だけど、小白象は渡せない……。あの娘が未熟であり、いろいろと罪深いことをしたことは認めるわ。謝罪もする……。だけど、あの娘は、この領地に君臨する魔王なの。あなたに渡すわけにはいかない──。このわたしの身を差し出すわ。気の済むまで仕打ちしていいわ──。殺したければ殺してもいい」
白象はきっぱりと言った。
金凰軍を潰し、金凰魔王や金凰妃を一瞬で殺したほどの宝玄仙だ。
抵抗には意味はない。
だが、小白象は守らねばならない……。
白象の覚悟は決まっている。
小白象だけは守らなければ……。
いずれにしても、もう、白象の力では小白象は呼び戻せない。
小白象を避難させたのは、塩の谷の長の
そこには、小白象の年齢に近い娘もいるらしく、万が一の際には、一箇月ほど小白象は滞在する手筈になっている。
小白象には、そういう手配をしたのは教えていなかったが、向こうで事情を知るだろう。
ついこのあいだまでは、金凰魔王の呪いと呼ばれる広域道術があったので、この地における『移動術』が制限されていたのだが、それが消滅したので、こういうこともできるようになったのだ。
「ちっ──。仕方がないねえ──。いない者に仕返しはできないしね……。まあ、お前に免じて娘にはなにもしないでおくよ、白象──。ただし、これは貸しだ。あの小娘に言っておきな──。この宝玄仙に対して、貸しがひとつだとね──」
宝玄仙が言った。
そして、ずっと持っていた『魂の欠片』をすっとかざした。
次の瞬間、凄まじい霊気の衝撃波が襲った。
なにが起きたかわからなかったが、宝玄仙が持っていた『魂の欠片』を霊気に戻して消滅させたのだとわかった。
『魂の欠片』というのは、霊気の凝縮体でもあり、あの『道術石』と同じものだ。
だから、それを霊気に還元すれば、『魂の欠片』は消滅する。
固まっていたものが、自然の中に放出されたために発生したのが、いまの風圧だ。
「……白象、これで、お前の娘が沙那と結んでいた真言の誓いの対象は消滅した……。つまりは、もうこれで、あの小娘が望んでも『主従の誓い』は解除できない……。沙那という女は、わたしのものだから取りかえさせてもらうけど、その『真言の誓い』があの小娘の魔王としての性質にいい影響を与えていると、お前が言うのであれば、それはそのままだということだ──。お前に免じて、白象宮も、お前も許してやるよ」
宝玄仙は言った。
「宝玄仙殿……」
白象は呟いた。
確かに、これで小白象の心は、真言の誓いにより部下を受け入れるという気持ちを抱いたまま維持される。
その対象である沙那を失った喪失感はつきまとうだろうが、ほかにも百眼女とも『主従の誓い』を結んでいるようであるし、これからも魔王として、部下を受け入れるという気持ちはそのまま残るだろう。
「あ、ありがとう……」
白象は頭をさげた。
しかし、もう宝玄仙は白象を見ていなかった。
「さて、行くよ、沙那」
宝玄仙は、卓のところにあった細い鎖を見つけると、沙那の首に元々ついていた首輪にそれを結びつけた。
「い、行くってどこにですか、ご主人様──?」
沙那は当惑している。
「いいから、腕を後ろに回しな。背中側で組むんだ──。拘束具はないけど、この宝玄仙の命令は、なによりの拘束具のはずだ。わたしの命令なしに、その腕を離すんじゃないよ──」
宝玄仙はぐいと沙那の首輪を引っ張った。
沙那は素裸で両手を自ら後ろに回したまま、慌てて宝玄仙の引っ張る鎖の方向に歩き出す。
「ど、どこに行くんですか、ご主人様──。ちょ、ちょっと、お許しを──」
沙那が首輪で引かれながら悲鳴をあげた。
「どこって、折角の魔王宮だしね。いろいろと見物させてもらおうと思ってね。ちょうどいいから、お前、案内しな──」
「あ、案内って、こ、この姿で──。か、勘忍してください──。ご主人様、お願いです──」
沙那がまた蒼い顔をになって悲鳴をあげた。
しかし、強引な抵抗はしないようだ。
へっぴり腰で躊躇している姿のものの、首輪で引っ張られれば足も進めているし、両手も背中で組んだままでいる。
「言っておくけど、沙那──。宮殿中を裸行進するのは、罰のうちには入らないからね。お前への罰は仙薬の影響がなくなるまで保留だ──。いずれにしても、お前が小白象の家来じゃなく、この宝玄仙の奴隷であることを示しておくのに、いい機会だ──。とりあえず、孫空女を監禁してある場所に連れていきな。その後は、この宮廷で一番賑やかなところだ──。たっぷりと恥ずかしがりな──。ほらっ」
宝玄仙が嫌がる沙那を強引に引っ張って、廊下に出る扉を開けた。
そして、出ていく。
「あっ、待ってください──」
慌てて、白象はそれを追った。
*
旅の空だ。
白象宮を出立してから四日ほどが経っていた。
すでに
獅駝の城郭は、もう目と鼻の先だ。
沙那は、いつものように、先頭を歩く孫空女と宝玄仙の後ろから最後尾を歩いている。
これで、朱姫が合流できれば、すべて元通りというところだ。
もっとも、なにもかも元通りというわけでもない。
「ねえ、ご主人様、やっと戻ったという感じもするけど、結局のところ、獅駝の城郭であたしらが捕まってから、まだ約一箇月というところなんだね……。たけど、随分と時間が経った気がするよね」
孫空女が歩きながら陽気に言った。
「やっと、ふりだしに戻ったというところかね……。まあ、朱姫を見つけないことには、本当のふりだしとは言えないだろうけどね」
宝玄仙だ。
「とにかく、城郭に入ったら、孫空女とふたりで聞き込みをしてみます。魔王宮に朱姫が移送されたという事実はなかったのですから、朱姫はここにいると考えるべきなんでしょうけど、もしかしたら、なにかあったのかもしれません……。この城郭の暫定の司政官になっている
沙那は言った。
「李媛という女司政官は知らないが、いい土産も白象宮で手に入ったし、朱姫の捜索に協力させればいいさ」
「あんなもの土産になりませんよ、ご主人様……。噂では、その李媛殿は獅駝復活の英雄だそうですから、変なことはやめてくださいね……。とにかく、わたしが朱姫の捜索を仕切りますから」
「わかった、わかった」
宝玄仙は笑った。
結局のところ、白象の協力でわかったのは、朱姫はどの亜人宮にも移送はされていないという事実だ。
沙那や孫空女や宝玄仙が、亜人領に移送されたのに対して、朱姫は、ずっと獅駝の城郭に留まらせられていたと考えられる。
しかも、いまは、暫定の司政官になっているらしい李媛や、その娘の
そして、この獅駝の城郭で、人間族の叛乱があり、一時的にこの城郭を支配していた青獅子やその部下たちの多くは殺された……。
その叛乱に朱姫は関わっていて、亜人軍の掃討の一役も担った……。
白象宮は、そのときに生き残った青獅子軍を自軍の一部として取り入れる工作を進めていたので、獅駝の城郭の叛乱から脱出した青獅子軍の将兵からの聞き取りで、そこまでのことはわかったのだ。
だから、朱姫は、かなり早い時期に亜人軍の支配から脱したことになる。
しかし、それからどうなったかがわからない……。
朱姫の首にも宝玄仙の道術で追跡できる機能があるのだが、宝玄仙がそれで追いかけられないのだ。追跡機能が解除されているというのは、意図的にそれがなされたということなので、つまり、朱姫になにかあったのかもしれない……。
少なくとも、青獅子軍が獅駝の城郭から掃討されたのが半月前なので、朱姫はそれ以降、行方不明ということになる。
朱姫が解放されてから、すぐに金凰宮か白象宮に向かったとすれば、時間的にとっくに、なんらかの接触があってもおかしくないのだが、それはない。白象にも大掛かりな道術も遣った可能な限りの亜人領の捜索もしてもらったのだが、そもそも、朱姫が魔王領のどこかに入り込んだ形跡は皆無だ。
沙那は、朱姫は亜人領側にはやってこなかった可能性が高いと判断した。
亜人領で探れることは、それ以上はない。
朱姫と一緒に捕らわれていた李媛や李姫が、健在であることはわかっているので、彼女たちに訊けば、なんらかのことがわかるとは思うのだが……。
「まあ、朱姫のことだから、この城郭の支配者になったその李媛や娘の李姫あたりをたらしこんで、遊んでいるんじゃないかねえ……。案外人懐っこい女だしね」
宝玄仙が言った。
「あ、あんなのは、人懐っこいとは言いませんよ──。お調子者の嗜虐好きなだけじゃないですか──。わたしは、あの朱姫が、まだ、この城郭に居座っているなら、李媛殿や李姫殿に無謀をしていないか心配です」
沙那は言った。
すると、宝玄仙が大きな声で笑った。
「本当にお前は朱姫が嫌いだよねえ、沙那……。だからこそ、お前への罰は意味があるというものさ──。とにかく、朱姫と合流したら、お前は朱姫に調教される五日間──。それが、これまで保留していたお前の罰だからね。その期間は朱姫の奴隷としてすごすんだ。わかっているね、沙那──。」
宝玄仙が振り返って言った。
「は、はあ……」
沙那はうな垂れて返事をした。
朱姫から調教される五日──。
それが、宝玄仙から申し渡された沙那への罰ということだった。
だが、宝玄仙は、沙那の罰をずっと保留していたと言っているが、沙那としては十分に罰を受けた気持ちだ。
宝玄仙を解放した直後に、素っ裸で白象宮を連れ回され、そのときに飲んでいた身体を無感覚にする薬剤の効き目が切れると、痒み剤にどっぷりと浸けられた服一式を身に着けることを強要されて、半日拘束されて放置された。
そして、この道中のあいだ、夜になれば、ずっと無条件で沙那だけが拘束されて、宝玄仙と孫空女によるふたり責めだ。
百回連続の絶頂責めというのも味わったし、逆に道術で絶頂を封じられた状態で、ひたすら昇天するだけの快感を与え続けられるという責めも受けた。
いい加減に許してくれてもいいと思うのだが、まだ、宝玄仙は沙那の罰は保留だと言う。
結局、沙那の罰は、朱姫が見つかり次第、その朱姫の調教を五日間受けるということになった。
あの朱姫のことだ……。
喜々として沙那への調教に取り組み、相当の無茶をするに決まっている。
それに対して、沙那は一切の抵抗をしてはならないことになっている。
いまから気が重い……。
だが、どうすればよかったというのだ……。
沙那は、小白香と名乗っていた小白象の『主従の誓い』に対して、一生懸命に抵抗した。
だが、あの痒み責めには、もう屈服するしかなかったのだ。
そして、屈服して『主従の誓い』をした瞬間に、自分が自分でなくなった。
いまでも、そのあいだの時間については戸惑いしかない。
『主従の誓い』に支配されているあいだ、確かに、沙那の心は小白象にあった。
小白象に忠誠を誓い、生涯を捧げる気だった。
宝玄仙や仲間について忘れたわけではなかったが、それらは、遠い過去の記憶のように、かすみのかかった存在として沙那の心から退けられた。
いまは、まるで逆だ。
小白象に対して、恨みがないといえば嘘になるが、一度は生涯をかけて仕える気持ちになった大切な存在として心に結ばれてもいる。
ただ、それは遠い記憶としての思い出のようなものだ。
この感情は少し説明しにくい……。
いずれにしても、元に戻ってよかった。
あのまま、偽物の忠誠心に心が捉われていたら、どうなっていたのだろうかと思うとぞっとする。
それにしても……。
そのために、宝玄仙には高い代償を払わせてしまった……。
沙那の身体の中に置いていた宝玄仙の『魂の欠片』を消滅させてしまったのだ。
あれは、小白象との契約のために、純粋なものではなくなったから、宝玄仙としては消滅させるしかなかったのだ。
ともかく、宝玄仙の『魂の欠片』がなくなったいまの沙那は、まったく霊気を帯びていない。
そのために、一切の霊具も遣えなくなってしまった。
だが、それはいい……。
それよりも、これからの危険な旅を考えれば、宝玄仙の命が万が一失われたときに、宝玄仙を復活させることができるものがなくなったということが、沙那にとっては大きな重みであり、心配事だった。
「ねえ、ご主人様、前にも提案しましたけど、わたしの中にご主人様の『魂の欠片』を復活して、そして、わたしと『主従の誓い』を結んでもらうというわけには……」
沙那は言った。
考えたうえでの結論だった。
以前は、宝玄仙は、『魂の儀式』ができなかったが、あのとき、お宝の道術を一時的に自分の身体に取りいれるということをやったので、その道術が遣えるようになっている。
だから、いまの宝玄仙には、あのときにお宝がやった、魂の分離の施術が可能であり、しかも、それを沙那に戻すということもできるのだ。
そして、宝玄仙と『主従の誓い』を先に結んでしまう……。
そうすれば、もうどんなに拷問されても、ほかの誰かと『主従の誓い』を結ぶことだってあり得ない。
あのときの沙那は、誰とも『主従の誓い』を結んでいない純粋な状態だったので、小白象との真言の誓いを許してしまったのだ。
「却下」
宝玄仙は歩きながらあっさりと言った。
「な、なんでですか、ご主人様──?」
「どうせ、もう、お前には道術はないんだ。誰とも真言の誓いは結べないよ。『結婚の儀』は別だけどね。あれは、ふたりの魂を併せたうえに、ふたりで分け合うという儀式なんだ。だけど、それ以外は心配ないさ。これからは、安心して拷問を受けな」
宝玄仙は笑った。
「で、でも、『魂の欠片』を入れても、『主従の誓い』を事前に結べば、今度は、誰かにそれを強いられることはありません。それよりも、ご主人様の『魂の欠片』が失われたままでは、ご主人様に万が一のことがあったときに……」
「いいんだよ──。わたしは、道術で心を操って服従をさせるというのは大嫌いなんだ。そんなのまったく面白くないしね……。心では精一杯反抗するけど、どうしても服従させられる……。そういうのがいいんだよ……。だから、わたしは、お前だけじゃなくて、孫空女の心も、朱姫の心も道術で束縛するつもりはないよ──。いままでも、これからもね」
「はあ……」
沙那は頷くしかなかった。
やがて、城郭の城壁が近づくにつれて、随分と街道を進み人出も多くなった。
「そういえば、あいつどうしかねえ……。
宝玄仙が不意に言った。
もう、城門は目の前だ。
特に閉鎖されている様子はない。
通行する者も自由に往来をしているようだ。
「ああ、そう言えば……」
沙那も思い出した。
その長庚を相手に、宝玄仙が調教師の手管を獅駝嶺の裾野の農村で教え込んでいるときに、沙那が鳥人の女にさらわれ、それを救出しにきた宝玄仙たちが、罠に嵌って捕らわれたのだ。
「あいつがいたとしても、あたしは教材にはならないよ。沙那にやってもらえばいいよ。どうせ、朱姫の調教を受けることになってんだし──」
すかさず、孫空女が口を挟んだ。
そう言えば、あのときの長庚の調教師教育のための教材として、裸で縛られていたぶられていたのは孫空女だった……。
「な、なによ、それ──。酷いわねえ、孫女」
沙那は頬を膨らませた。
「まあ、いいじゃないかい。まあ、いずれにしても、朱姫だね……。でも、なんで連絡してこないのかねえ……」
孫空女が肩を竦めた。
城門を通過した。
城門をすぎたところはちょっとした広場になっている。
すると、いきなり、わらわらと眼の前に三十人ほどの男が立ちはだかって、周囲を取り囲んだ。
まるで風に乗ってやってくるかのように、ぱっと出現したのだ。
『移動術』だ──。
しかも、これだけの人数が同時──?
沙那はびっくりした。
「なんだい、お前らは?」
孫空女は脚を止めて構えた。
すでに、耳から『如意棒』を手に移している。
宝玄仙と沙那は、孫空女のそのすぐ後ろにいる。
しかし、後方も含めて、すっかりとその一団に取り囲まれてしまっていた。
「わたしは、
その中のひとりの若者が、突然にそう告げた。
頭の上から網のようなものが落ちてくるのがわかった……。
(第9章「竜飛国(三魔王の虜囚篇)」終わり、第10章「
*
朱姫救出篇については、章を変えて。第10章として投降します。
なお、獅駝の城郭への移動間のエピソードが「515【番外篇】未亡人と恋の結末」の前段になります。
では、お次の回のお愉しみ……。
*
【西遊記:77回、
(524「主従解散宣言」の後書きの続きになります。)
妖魔の力を開放した金凰魔王、白象魔王、青獅子魔王によって、玄奘に続いて、孫悟空たちも捕らわれてしまいます。
三魔王の洞府(棲み処)に連行されて拘束をされた四人は、さっそく孫悟空たちを食べてしまおうと三魔王が相談するのに接して焦ります。
孫悟空は一計を企て、まずは拘束を解いて、自分の毛を抜いて自分の身代わりを作り、孫悟空自身については、孫悟空たちを釜焚きに変身します。
そして、わざとぬるま湯のままにして時間を稼ぎ、三魔王が釜焚きの場所から離れた隙をついて、道術で魔王兵たちを眠らせて、ほかの三人の拘束を解いて脱走を図ります。
しかし、洞府の外に出たところで三魔王に見つかってしまい、孫悟空を除く三人は再び三魔王に捕らわれてしまいます。
孫悟空を取り逃がしたことで、いつまでも孫悟空につきまとわれないように、すでに玄奘を殺したという噂を流すことにします。
捕らえている沙悟浄や猪八戒にも、玄奘はすでに死んだと嘘をつき、部下にもそう言い含めます。そして、玄奘については鉄の箱に隠してしまいます。
果たして、孫悟空は、虫に変身をして再び洞府に入り込みます。
すると、玄奘は三魔王が食べてしまったと魔王兵が話が耳に入ってきます。驚いて、沙悟浄と猪八戒が囚われている牢に忍び込むと、ふたりからも同じ話を聞かされます。
衝撃を受けた孫悟空は、沙悟浄と猪八戒を救出するのも忘れて、洞府の外にひとりで飛び出していきます。
玄奘が殺されたということを信じた孫悟空は、そのまま天界に向かい釈迦如来に面会を申し出ます。
そして、玄奘の遺志を継いで、経文を受け取る旅を続けたいと如来に告げます。
これに対して如来は、玄奘がまだ死んでいないことを孫悟空を教えます。
さらに、三魔王の力を封じるために、普賢菩薩と文殊菩薩を孫悟空に同行させます。
玄奘救出には、釈迦如来も加わり、孫悟空、普賢菩薩、文殊菩薩の四人で下界におりることになりました。
孫悟空は、如来と菩薩たちを隠れさせて、洞府の前で三魔王を呼び出します。
洞府の前に現れた三魔王は、普賢菩薩と文殊菩薩によって力を封じられて捕らわれます。
三魔王のそのまま天界に連行されて、玄奘たちは救出され、一行は旅を再開します。