599 三人の半妖
「じゃあ、ふたりとも来て──。あたしの口に、同時に二本とも入れて」
朱姫は言った。
「二本同時だあ? 馬鹿か──。どうやって、その口の中に二本も入れるんだ? お前の口は一個しかねえぞ」
朱姫は三人の兵たちに囲まれていた。
ひとりは、すでに精を抜いているから残りはふたりだ。
とにかく、どんな手を使ってでも、口だけでふたりから精を出させればいいのだ。
そして、あの双子からの関心を削ぐ……。
「いいから、言う通りにしてよ。あたしの口に二本とも近づけてくれればいいのよ」
朱姫は言った。
こうなったら、単なる作業も同じだ。
朱姫の舌技を駆使して、さっさと終わらせてやる。
面白がったふたりの兵が、朱姫の前で下袴をおろしてそれぞれの肉棒を突き出した。
まだ半勃ちの性器だ。
朱姫は舌を伸ばして、顔を左右に動かして、二本の性器を行ったり来たりさせて、先端を唾でくるんで舌で舐め回した。
「ほおおっ……。こりゃあ、気持ちいいぜ」
「しかも、お前と一緒かよ……。これはこれで、おかしな気分になりそうだな」
「やめろよ──。気持ち悪いこと言うんじゃねえよ」
ふたりが軽口を言いながら笑っている。
それでも、ふたりの男根は、あっという間に逞しく勃起した。
朱姫は一方の怒張を口で咥えると、舌先を駆使して棹の部分に粘っこく擦りつける。だが、一方のかける時間は数瞬程度だ。
すぐに横の怒張に移動して、同じ刺激を加える。
そして、数瞬すれば、また元の肉棒に戻り、別の刺激を加える。
さらに、すぐに横の怒張に移動して、また舌の愛撫をしては、男の快感の余韻が戻らないうちに、すぐに刺激を足す。
朱姫の口は忙しく、右に左にと激しく移動し続けた。
「んんっ……なるほど、二本同時に咥えるとはこういうことか……。しかも、こいつ上手いな……」
「くうっ、まったくだ……。お前、何者なんだよ──。獅駝の城郭を占拠していた亜人軍に味方した半妖だとか聞いていたが……」
男たちの怒張がぴんと屹立し、それぞれに精の涎を先端から滲み出し始めた。
醜悪な匂いがぷんと朱姫の鼻を襲う。
朱姫はさらに、ふたりへの奉仕を加速した。
「んんっ……」
朱姫も舐めながら鼻声を出す。
本当は吐気がするほどに嫌なのだが、女も気持ちよさそうな声を出すと、男の射精が早いことを朱姫は知っているのでそうしているのだ。
しかも、わざと舌や唾液でふたりの肉棒をしゃぶりながら音も出す。
「へへ、こいつ、俺たちの一物をしゃぶっているうちに、気持ちよくなってきたらしぜ……。おお、今度はこっちか……。出してやるから、もっと頑張りな……」
「おお、もう、そこまで来ているぜ。遠慮なく、とびきり濃いやつを飲ませてやるからな。お前も、いきたかったらいってもいいぜ……。そう言えば、お前は、口で受けた精を全部飲む淫乱なんだってな……」
男たちが口々に嬉しそうに朱姫をからかうような言葉を吐く。
朱姫は懸命に奉仕を続けながら、男たちの滑稽な姿に鼻を鳴らしたくなる。
男というのは、なんて馬鹿馬鹿しい生き物なのだろう。
そう思いながらも、男たちを“いい気”にさせるために、男に征服されて、性に呆けそうになっている淫女を演じた。
それにしても……。
この男たちが洩らした言葉によれば、朱姫は、
今更ながら、あの
心の優しい女であり、獅駝の城郭の住民の命を護るために、自らを犠牲にした聖女だということになっているが、一方で半妖に対する朱姫に対する扱いの酷さはなんなのだろう……。
また、朱姫も垣間見た獅駝の城郭における「亜人裁判」のときの亜人たちへの残酷な処刑だって、よくもこんな惨たらしいことができるものだと思うほどに、醜悪で残酷な仕打ちだった。
李媛の優しさと気高さは、同朋の人間族にのみに発揮されるものであり、異種族だとみなした亜人や半妖には、その反動のように酷い態度が取れるのが、あの李媛という貴婦人の正体のようだ。
朱姫が奉仕を続けている兵のひとりの身悶えが激しくなった。
喘ぎ声のようなものも出し始めた。
朱姫は奉仕をその男に集中した。
とにかく、さっさと終わらせるのだ……。
窒息を覚悟で、喉の奥まで怒張を頬張る。
そして、喉、口、舌のすべてを使って、男の怒張を絞る。
「うおっ、おおっ、飲め──全部、飲め──」
いま咥えている男の本格的な射精が始まった。
かなりの量の精だが、朱姫はそれを一滴残らず、飲み込んだ。
「へへ、最高だったぜ……。いい口だ……」
精を出し終った男が満足したように声をあげた。
すぐさま、朱姫は、最後の男の肉棒に食らいついた。
すでにふたり終わっているから、眼の前の男に集中すればいい……。
舌技の得意な朱姫からすれば、精を出したがっている男から精を出させるなど簡単な作業だ。
あっという間に三人目の男も、朱姫の口の中に精を発した。
「お、終わったわ……」
朱姫は激しく息をしながら言った。
三人分の精が喉や胃の中に貼りつているようで気持ち悪い……。
「おう、よくやったな……。外で待っている連中にも言っておくぜ。これからは、朱姫が三人分の精を引き受けると言ってな。もっとも、あと半日もすれば、収容所に到着だ──。おそらく、次の一回くらいしか、お前の三人技の機会はねえだろうがな。これは、俺からの褒美だ──」
最初に朱姫が奉仕した男が突然に、朱姫の髪を掴んで自分の腰に向けた。
もう、終わったと思っていたので、朱姫は驚いたが、いつの間にか大きくなりかけている肉棒が剝き出しになっていて、朱姫はそれを無理矢理に咥えさせられた。
「んんっ──」
朱姫は一物を口に含まされたまま悲鳴をあげた。
その男がいきなり、朱姫の口の中でおしっこを始めたのだ。
「そら、一滴残らず飲みやがれ、半妖──」
男が朱姫の髪を強く掴んで、朱姫が口を離せないように、自分の股間に顔を密着させて、朱姫の口の中に尿を出し続けている。
朱姫は、あまりの屈辱と苦痛に涙を流しながら、男が朱姫の口の中でする放尿を懸命に飲み干した。
「げほっ、けほっ、がはっ、けはっ……」
男はすっかりと朱姫の口の中に小便をし終ると、満足したように朱姫を後ろの壁に突き飛ばした。
「あぐううっ」
両手を首の後ろに拘束されていて、受け身の取れない朱姫は、身体を思い切り檻車の壁に打ちつけられる。
「精だけじゃなくて、小便もさせるとはいいな……。確かに、半妖だっだら便器にするにはちょうどいいぜ……。そう言えば、俺ももよおしてきたぜ……。どらっ……。じゃあ、俺は、こっちの見物するだけだった半妖娘の口に小便でも垂れるかな」
すると、今度はたったいま、朱姫が精を絞った兵のひとりが言った。
「いいな、じゃあ、連れ精の次は連れ小便といくか……」
もうひとりも笑って、ふたりが下袴にしまったばかりの性器を再び外に出して、
「ひいっ……」
「か、華耶……」
ずっと檻車の端っこで、朱姫が受けている仕打ちを怖ろしそうに眺めていたふたりが、同時に悲痛な悲鳴をあげた。
「や、やめて──。あんたらのおしっこも、あたしが飲むわよ──。だから、ふたりに手を出さないで──」
朱姫は叫んだ。
摩耶と華耶に性器を押しつけていたふたりの兵だけでなく、その摩耶と華耶自身も、朱姫に驚いたような視線を向けた。
「へえ、俺たちの小便まで独り占めしてえのか……。欲張りな半妖だぜ……。じゃあ、折角だ──。欲しければ、くれてやるよ」
華耶に向かっていた兵が朱姫に性器を向けた。
朱姫はそれを口に咥え直す。
すぐに、口の中で放尿が始まった。
朱姫は一生懸命に喉を動かして、それを飲み干した。
その男が終わったら三人目だ。
三人目も朱姫の口に尿を出した。
すべてが終わると、三人は満足したように、檻車の外に出て行った。
「くっ……はあっ……はっ……」
三人が出ていき、再び檻車に三人の女だけになると、朱姫は三人の精を吸い取り、さらに三人全員の尿まで飲まれた屈辱と苦しさに壁にもたれかかった。
さすがに苦しいし、気持ち悪い……。
朱姫は壁にもたれかかったまま、込みあがる吐気を押さえるために、眼を閉じて息を整えた。
その朱姫に影が落ちた気がした。
「ご、ごめんなさい……。華耶や摩耶たちのために……」
「しゅ、朱姫さんでしたよね……。あ、ありがとうございます……」
眼を開けると、両手を頭の後ろに拘束されている摩耶と華耶のふたりが、申し訳なさそうな表情で朱姫を見下ろしていた。
「い、いいのよ……。こんなの慣れている……ということはないけど……、まあ、耐えられるわ……。どうということない……。それより、やっと口をきいてもらえたわね……」
朱姫は無理矢理に笑顔を作って、それをふたりに向けた。
「そ、それもごめんなさい……。だ、だって、怖くて……」
すると、華耶が言った。
「怖い? あたしのこと……?」
朱姫は驚いた。
そして、完全にもたれかかっていた壁から身体を起こして、姿勢を真っ直ぐにした。
「きっと、怖ろしい亜人なのかと……。でも、いま、兵の方々が、朱姫さんのことを半妖だと言ったので……」
摩耶が言った。
「亜人が怖いの?」
「も、もちろんです」
華耶が当然だというような表情をした。
「ということは、つまりは、あなたたちは、亜人軍の中にいた者じゃないのね? あの獅駝の城郭で暮らしていたの?」
朱姫は訊ねた。
当然、そういうことになるはずだ。
彼女たちの言葉通りなら、ふたりは朱姫のことを亜人だと考えて、恐怖を抱いていたことになる。
まあ、これは亜人収容所行きの檻車なのだから、そこに囚人として乗っているということは亜人なのだと思うだろう。
朱姫自身も、摩耶と華耶のことを亜人だと思っていた。
亜人族には多様な種があるが、見た目が人間そっくりの種族も多い。
普段の朱姫なら、醸し出す霊気で相手が亜人族なのか、人間族なのかは、大抵わかるのだが、いまの朱姫の道術は額に嵌められた石のために、相手の霊気を感知する能力もなくなっている。
だから、判断がつかない。
その辺りは、摩耶も華耶も同じかもしれない……。
いずれにしても、人間族は、亜人族を忌み嫌う傾向にあるが、同時に怖ろしく野蛮な集団だと恐怖も抱いている──。
もっとも、実際には、人間族とその性質も社会も大差はないことを朱姫は知っているが……。
いずれにしても、摩耶と華耶が亜人を怖がるというのは、彼女たちが人間族の社会で暮らしていたということになる。
亜人族の中で暮らしていた半妖が、亜人というだけで相手を怖がるわけがない。
「摩耶たちは、獅駝の城郭にある小さな酒場の娘です。亜人族を見るのは、あの亜人軍が城郭を占領したときが初めてです」
摩耶が言った。
「ああ、そうだったの」
朱姫は、檻車の中でずっと摩耶と華耶が朱姫を避けていた理由に合点がいった。
そして、ふたりは代わる代わるに話し手を交替しながら、自分たちの身の上を語りだした。
摩耶と華耶のふたりは、半妖といっても、実際には亜人の血が混じっているのは、四分の一であるらしい。
本当の半妖だったのはふたりの母親であり、霊気の高かったふたりの母親に比べて、摩耶も華耶もほとんど霊気はないようだ。
半妖だった彼女たちの母親が、獅駝の城郭でいまも酒場を経営している父親と一緒になり、摩耶と華耶のふたりが産まれたのだという。
しかしながら、母親は、ふたりが幼い頃に病気で死に、それからふたりは、ずっと人間である父親によって育てられたということだ。
いまのふたりは十六であり、もう、父親の酒場を手伝うようになって、もうかなりになるらしい。
亜人の血が混じっているといっても、半妖だった母親が死んでからも随分と経つし、物心ついてからずっと人間の社会で暮らしていたので、半妖であるという自覚はなかったようだ。
だが、今回、獅駝の暫定司政官となった李媛が「亜人追放令」という法を出し、獅駝の城郭においては、亜人族だけでなく、半妖についても、城郭に存在するだけ罪であるということにした。
しかも、李媛は、人間社会に隠れている亜人族を排除するために、密告を奨励し、それに高い報奨金を出すことにもしたらしい。
それで、彼女の母親が半妖だったことを覚えていた住民のひとりが、摩耶と華耶のことを密告し、やってきた道術師隊に突然に逮捕されたということのようだ。
朱姫は、なんの罪のない住民をいきなり罪人にしてしまうその法に強い憤りを覚えた。
「ところで、朱姫さんは……そのう……、娼婦さんなのですか……? さっき兵の方がそう言っていたから……」
華耶が真剣な表情で訊ねた。
朱姫は思わず笑ってしまった。
「違うわ……。ただの旅の女よ……。ただ、あたしの女主人の道術遣いが、女同士の性愛が好きな人でね……。それでお互いの股間に道術で生えさせた男根もどきを舐め合う遊びをすることがあるの……。それで覚えたのよ……。でも、あたしも、実際に男のものを口にすることは滅多にないわ」
「えっ?」
朱姫がそう言うと、華耶が絶句した。摩耶もその後ろで目を丸くしている。
酒場の娘だといっても、性愛についてはあまり世慣れしていないようだ。
考えてみれば、檻車の中で兵たちの性器を舐めさせられるときも、まるで生娘のように泣きじゃくって嫌がった……。
まあ、酒場の娘だから生娘ということはないだろうが、あまり性に慣れてもいないのは確かだろう。
「そして、あたしも実は女好きなのよ……。あんたちのような可愛い娘は大好物……」
朱姫が冗談めかしく言うと、華耶はぷっと吹き出し、摩耶は顔を赤くして眉をひそめた。
同じ顔で、まったく同じように育ったといっても、性質は少しは違うようだ。
そんなことを朱姫は思った。
それから、朱姫は、今度は簡単に自分の生い立ちを語った。
自分がここから遥かに遠い国の小さな農村で産まれたということ。
亜人と普通の人間のあいだに産まれ、「妖魔狩り」に遭って両親を殺害されたこと……。
それから、ずっとあちこちをたったひとりで転々としたこと……。
約三年前に、宝玄仙という旅の道術遣いの女と供と出遭い、それから、一緒に旅をしていること……。
獅駝の城郭には、たまたまやってきて、亜人軍の侵略に巻き込まれたのだと説明した。
ついでに、実は亜人軍にずっと捕えられていて、性調教を李媛や
李姫はともかく、李媛のことは、できるだけあちこちで辱めてやれと思った。
朱姫をこんな目に遭わせた李媛へのせめてもの抵抗だ。
「まあ、あの李媛様とご一緒に……」
すると、摩耶が驚いたように息を吐いた。
その表情には、畏敬というか、同情というか、複雑な感情が浮かんでいる。
そう言えば、獅駝の城郭では、李媛の名は、亜人たちに捕らえられて辱められながらも、隙をついて亜人軍の魔王を殺害して、城郭を解放した英雄だということになっていることを思い出した。
摩耶も華耶も、ずっと城郭にいて、青獅子軍が城郭を占拠したときのことを知っているのだから、李媛に対する感情も、一般市民のものと同じものを共有していているのだろう。
その李媛の作った悪法のために、自分たちが無実なのに逮捕されて、収容所に送られようとしているという気持ちには、まだなっていないのかもしれない。
「でも、だったら、どうして、捕えられたのです? 李媛様と李姫様とご一緒だったのなら……」
摩耶が不思議そうに言った。
「もちろん、あたしが半妖だからよ。あんたたと一緒よ──。あの李媛は、そういう女なのよ……。あたしが半妖なのを知って、王都から呼び寄せた道術師隊にあたしを捕らえさせたのよ──」
「えっ、そんなこと……」
「あの李媛様が……?」
摩耶も華耶も困惑した表情になる。
「しかも、信じてくれなくてもいいけど、城郭を占拠していた青獅子軍の将軍級の軍人を屠るにあたっては、このあたしも、一緒に戦い、少なくない功績があったのよ。その李媛は、そういうこともすべて承知していて、あたしを逮捕させたのよ──」
朱姫は言った。
それにしても、思い出しても腹がたつ。
李媛に対してもそうだが、あのとき、おかしな気紛れを起こして、三日も滞在を伸ばしてしまった朱姫自身に対しても……。
もしも、救出されることがあれば、あの沙那も怒るだろうし……。
まあ、助かることがあればの話だが……。
宝玄仙にしても、沙那にしても、孫空女にしても、まだ亜人の捕らわれ人として苦しんでいるはずだ。
彼女たちは朱姫が、こうやって、李媛に捕らえられて、反対側の国都にある亜人収容所に送られたということを知ってくれることがあるだろうか……。
「ほ、本当であれば、酷いことです」
だが、華耶はすぐに憤慨したように言った。
「で、でも、信じられません。あのお優しい李媛様が……。それに李媛様や李姫様と一緒に監禁されていたとすれば、半妖だとしても、李媛様は手を回して助けてはくれなかったのですか……?」
摩耶は半信半疑のようだ。
「いい加減にしなさいよ。あの悪法を作ったのは、その李媛自身なのよ──。それに、あんたたちだって、李媛の作った不当な法のために、無実の罪で酷い目に遭ったんでしょう──。一緒に恨もうよ、あの李媛を──」
朱姫は言った。
「それもそうですね……。考えてみれば、あの法は李媛様が作ったんですものね。あたしたちが捕えられたのは、李媛様のせいよ──」
摩耶は朱姫と一緒に怒ったような言葉を吐いた。
「で、でも……」
一方で摩耶は、まだ複雑な表情をしている。
「まあ、もっとも、あたしについては、あんたたちのように、完全に無実とも言えないところもあるんだけどね」
朱姫はおどけて言った。
すると、摩耶と華耶は不思議そうな表情になった。
「李媛の娘の李姫とあたしは、実は百合の仲なのよ。それで、ちょっとばかり、羽目を外して李姫と大人の遊びをしたら、それが李媛に見つかっちゃたのよ……。それで、李媛が怒って、あたしを収容所送りにしたというわけ」
朱姫は笑った。
摩耶も華耶も唖然とした表情になった。
それでも、朱姫は一生懸命に笑った。
笑えば、いつか不幸だってどこかに行く……。
苦しいときこそ笑うのだ──。
ふたりのうち、華耶だけが朱姫の笑いに貰い笑いを返した。
「……とにかく、亜人収容所というところが、どんなところか知らないけど、あんたたちも希望を捨てちゃだめよ……。あたしの仲間は、それは凄い人たちなのよ……。きっといつか、あたしを助けに来てくれる……。もちろん、あたしも機会があれば、収容所を脱してみせる──。だから、あんたらも……」
すると、朱姫の言葉に華耶がしっかりと頷いた。
「……あ、あたし、口の奉仕は自信ないけど、次はおしっこだったら飲むわ。それくらいならできる──。朱姫さんばかりに迷惑をかけない……」
華耶が強く言った。
「そ、そうね……。あ、あたしも……」
釣られるように摩耶も言った。
朱姫はふたりに頷き返した。
「そうよ──。強くなるのよ──。いずれにしても、希望を捨ててはだめ。希望を捨てなければ、知恵も湧くし、勇気も生まれる──。絶対に希望を捨ててはならないわ──。生きていれば、いつかいいことがある──。あたしは、それだけを信じてずっと生きていた。ひとりぼっちであちこちを彷徨いながら、ついに家族と呼べるような人たちに出遭えた──。希望さえあれば、絶対にいつか不幸を乗り越えられるものよ」
朱姫はきっぱりと言った。
すると、がくんと檻車が揺れた。
また、檻車が北に向かって進み始めたようだ。