「ふたりとも、遅かったじゃないか。待ちくたびれて、先に朝食にしていたところさ……。沙那、焼き加減を見ておくれよ。こんなものでいいのかい?」
孫空女とともに、宝玄仙が待っている街道沿いの木の下に、沙那が戻ってくると、干した肉が焼かれるいい香りが漂ってきた。
どうやら、宝玄仙自身が荷から干し肉を出して、焚き火で焼いているようだ。
珍しいこともあるものだと思った。
「あっ、すぐにやります。その前に服だけ着させてください。孫空女にもなにか着るものを……」
沙那は宝玄仙のところに駆け寄った。
沙那も孫空女も、足に革靴をはいている以外は、一糸もまとわぬ素裸だ。
孫空女など、さらに両手首を拘束されて、背中側に束ねられたままであり、手で身体を隠すこともできないのだ。
「服? そんなものもうないよ。わたしは、お前とは違って、立ち木から薪を作るなんて芸当はできないからね。ちょうどいいから、お前たちの服を燃やしているところさ。どうせ、びりびりに破れて、しかも、男どもの精液臭い服じゃないか。そんなもの着られやしないよ。山を越えれば、村でもあるんだろう? そこで新しいのを購いな。それまでは、そのままで我慢するんだね」
宝玄仙が高笑いした。
それでやっと、肉を焼くために燃やされているのが、沙那と孫空女が身に着けていた衣類だと気がついた。
沙那は驚いて悲鳴をあげた。
「そ、そんな──。裸で歩けだなんて、勘弁してください──。そ、そんなこと、できるわけがありません」
沙那は叫んだ。
「そんなこと、できるわけがありません……かい?」
宝玄仙が細い木の枝で作った箸で、器用に焚き火に寄せた石の上に乗せた肉をひっくり返しながら、沙那の口調を物まねして、からかった。
そして、沙那を睨む。
「……だったら、できるようにしてやるよ……。沙那、命令だ。別命あるまで、裸で歩くんだ」
宝玄仙がせせら笑いながら言った。
「ああ、そんなあ」
沙那は絶望にうちひしがれた。
“命令”という言葉を口にされたことで、宝玄仙の喋った言葉が沙那の身体に逆らうことのできない道術の縛りとして刻み込まれたのがわかったのだ。
何度も経験しているからわかる。
自分の身体なのに、他人の身体として支配が移る気色の悪い感覚──。
『服従の首輪』の恐ろしい効果が、沙那に入ってきてしまった……。
沙那は愕然とした。
「お願いです。そんなこと……」
沙那は慌てて、宝玄仙の前にひれ伏した。
土下座でもなんでもする──。
そんな気持ちだ。
宝玄仙は、やらせると言ったら、本当に素裸で沙那たちを歩かせるだろう。
そんなことに躊躇などない。
これが、現時点で脅しでも冗談でもないことは、この一箇月の宝玄仙との旅で身に染みてわかっている。
だが、一方で、宝玄仙は、とても気まぐれで気が変わりやすい。
土下座でもなんでもして、宝玄仙の気を変わらせれば、また言うことが変わることもある。
沙那は、なんとか宝玄仙に許しを乞おうと、とにかく地面に頭を擦りつけた。
「あ、あんた、いい加減にしなよ──。そんなことできるわけないだろう──。ここは、天下の街道だよ。そこをあたしと沙那に素裸で歩けと言ってんのかい」
激昂した声が後ろから聞こえた。
孫空女だ。
沙那はぎくりとした。
宝玄仙相手に、なんという口のききかただ。
しかし、沙那は、怒っている孫空女よりも、宝玄仙が怖くて、思わずそっちを見た。
顔を孫空女に向けた宝玄仙が、不気味な笑みをしていた。
やっぱりだ……。
あの顔をしたときの宝玄仙は、とんでもなく残酷な気持ちになったときだ。
沙那にはわかる。
あんなことを言うのは逆効果なのだ。
火に油を注ぐようなものであり、さらに宝玄仙の残忍さに刺激を与えるだけだ。
「そ、孫空女、あんたもお願いするのよ。宝玄仙……いえ、ご主人様は、やると言ったことは本当にやらせるわ。あんたも、お願いして」
沙那は必死で言った。
ここで、孫空女が頭でも下げれば、あの変態巫女の感情も収まるかもしれない。
「こんな変態女にぺこぺこする必要などあるものかい。冗談じゃない」
孫空女が怒鳴った。
沙那は絶望的な気持ちになった。
「……頭をさげるのをやめな、沙那……。お前らは、全裸で五行山を越えてもらう。まあ、こんなところ、滅多に旅人なんていないし、いたところで、お前らの裸を見て、悦んだり、笑ったりする者はいても、怒る者はいないさ。それよりも、さっさと飯を食いな。食ったら、出発だ」
宝玄仙が箸で肉を掴んで、道の上で宝玄仙を睨んで立っている孫空女に干し肉を放り投げた。
街道の土の上に、焼けた肉がばさりと落ちる。
「食いな、孫空女。手は使えないだろうから、口で食べるといいよ。犬のようにね」
宝玄仙が意地悪そうに笑った。
孫空女が怒りで真っ赤になるのがわかった。
「そ、孫空女、怒っては駄目よ──」
沙那は叫んだ。
しかし、次の瞬間、驚くことに、孫空女が後手のまま飛びかかって来たのだ。
沙那は驚愕した。
「うわっ」
だが、孫空女の両足首の
「……まともに怒らないで……。ご主人様のことは、大きな子供だと思って……」
沙那は孫空女を抱え起こしながら、耳元でささやいた。
孫空女はいくらか落ち着いた様子を示した。
「わかったよ、畜生──」
孫空女が足を閉じ合わされたまま、地面に落ちている干し肉に向かって身体を向ける。そのまま、地面に顔をつけて、さっきの干し肉を食べ始める。
沙那は、ほっとするとともに、孫空女に申し訳ないという気持ちになった。
「孫空女も、ちょっと血の気が多いから、刃向かってくるんだろうさ。沙那、これを股に塗ってやりな。そうすれば、いくらもいかないうちに、泣いて哀願するようになるさ」
宝玄仙が荷から小さな容器を取り出して、沙那に手渡した。
渡されたものを見て、沙那はびっくりしてしまった。
「ご主人様、これは『
沙那は声をあげた。
これを局部に塗られて、沙那も何度も死ぬような目に遭ったことがある。これを塗ると、怖ろしいほどの痒みに襲いかかられて、宝玄仙に犯してもらうか、あるいは道術で解放してもらうまで、どんなことをしても痒みがなくならないのだ。
「いいから、あの赤毛の股に塗るんだよ。孫空女、抵抗するんじゃないよ。抵抗すると、電撃で痛めつけるからね」
宝玄仙が怒鳴った。
「な、なにしようとしてんだよ、この変態」
孫空女が顔をあげて、宝玄仙に叫び返した。
「あぎゃあああ」
次の瞬間、沙那の身体に凄まじい電撃の衝撃が襲いかかった。
沙那は激痛にひっくり返った。
「わっ、沙那?」
横で孫空女が声をあげるのが聞こえた。
「ひぐうっ、あぐううっ、があああ」
沙那は全身を抱いて地面に転がりまわった。
「あの赤毛の教育係はお前にするよ、沙那。あいつが口答えするたびに、お前を折檻する。だから、あいつの性根を責任を持って叩きなおすんだ」
宝玄仙の声が聞こえた。
そのあいだも、電撃は続いている。
沙那は悲鳴をあげ続けた。
「や、やめろよ。わ、わかったよ。言うことをきくから、沙那を痛めつけるのはやめろ──」
孫空女は叫んだ。
すると、ぴたりと電撃がとまった。
しかし、沙那はすぐには起きあがれないでいた。
「ほう、盗賊のくせに、一応は他人のことが気の毒と思うような心根もあるんだね。それとも、沙那が気に入ったかい、赤毛?」
「う、うるさい。あたしにはなんでもやりな。その代わり、沙那を痛めつけるな」
孫空女が言った。
その直後、突然に孫空女の大きな悲鳴が聞こえた。
沙那は顔をあげた。
「わっ」
見ると、孫空女が大股開きで仰向けでひっくり返っている。
どうやら、さっきまでぴたりと接触させられていた足首の輪を今度は逆に、限界まで開かされたようだ。
「塗りやすくしてやったよ、沙那。ほら、こいつの股ぐらに塗るんだ。たっぷりとね。わたしは、この生意気な赤毛が泣きべそをかいて、わたしに謝るのを見たいんだよ。手を抜くんじゃないよ」
「で、でも、ご主人様、これは……」
沙那はとりあえず、随喜油を手には取ったものの、これを孫空女に塗るのは躊躇った。
この随喜油の痒みの恐ろしさは、沙那自身が骨身に染みている。
「うがあああ」
だが、また電撃が襲った。
沙那は再びひっくり返った。
「誰が口応えを許したんだい、沙那──。お前は、孫空女の股にそれを塗れと言われたら、塗ればいいんだよ。お前の意見なんかこれっぽちもきいていないよ」
宝玄仙が苛ついたように声をあげた。
「さ、沙那、いいから、塗りな。どうせ、禄でもないものなんだろう。なんでもすればいいのさ」
孫空女のやけっぱちの声がした。
沙那の身体の電撃が停止する。
「はあ、はあ、はあ……」
「埒が明かないねえ。仕方ない……。命令してやるよ……。沙那、いいというまで随喜油を塗るんだ。孫空女の股にね」
宝玄仙が溜息交じりに言った。
「ああ……」
沙那は思わず声を出してしまった。
これで、もう沙那は、手に持っている痒み剤を孫空女に塗るしかない。
沙那は、孫空女が気の毒になった。
「ご、ごめん、孫空女……」
沙那は道の真ん中で大股開きをさせられている孫空女の足のあいだにしゃがみ込む。
手に持っている随喜油の入った小壺の蓋を取り、中にある油剤を指にすくう。
「いいよ、沙那……。あんたの優しい気持ちはわかったから……。とんでもない薬ということはわかったよ……。どうせ、媚薬のたぐいだろう……」
孫空女が捨て鉢のような口調で言った。
「べらべら、喋る暇があったら、さっさとやるんだ、沙那」
宝玄仙が声をかけてきた。
いずれにしても、沙那には、もう首輪の命令が刻まれた。
許可が出るまで、孫空女の股間に、この痒み剤を塗る以外にできることはない。
沙那は、薬剤を載せた指を孫空女の股間に触れさせる。
「んっ」
孫空女の身体がぶるりと震えた。
声を出すのを我慢しているようだ。
沙那は淡々と塗り続けた。
途中で、宝玄仙が陰核の皮をめくれとか、女陰の肉にたっぷりと乗せろとか、もっと指で奥まで突っ込めとか、次々に卑猥な命令を飛ばす。
その都度、“命令”という言葉を足されるので、沙那は抵抗できずに、孫空女を苦しめることになる薬剤をどんどんと足さねばならなかった。
だんだんと、孫空女の息遣いも、甘い声が混じるようになり、宝玄仙がそれを指摘してからかい、孫空女は真っ赤になって言い返したりした。
やっと作業が終わった。
宝玄仙が道術をかけ、開いていた孫空女の足が霊具の足環により、再び小さく閉じ合わされた。
「さて、じゃあ、出発だよ。沙那、荷を持ちな。お前の干し肉は、歩きながらでも食いな。ほら、いくよ」
宝玄仙が立ちあがる。
沙那は慌てて、焚き火のそばの肉を口の中に押し込むとともに、小さくなっていた焚き火を完全に消す作業を開始した。
*
「ち、畜生……。こ、こんなのって……」
後ろから孫空女の呻き声がまた聞こえてきた。
五行山の山街道は、やっと峠を越えて下り坂になっていたが、孫空女の脚は眼に見えて遅くなり、だんだんと宝玄仙と沙那と距離が開くようになっていた。
「ご、ご主人様、ちょっとゆっくり進んであげてください。孫空女が……」
沙那は声をかけた。
だが、この状況を面白がっている宝玄仙は、わざとらしく足早に進み、どんどんと孫空女と距離を開けようとする。
だが、孫空女には、宝玄仙と一定の距離が開くと、怖ろしい電撃が自動的に流されるように、道術をかけたようだ。
少しでも距離が開くと、激痛に襲われる孫空女は、いやでも、宝玄仙と沙那についてくるしかない。
だが、股間に随喜油をたっぷりと塗られて放置されたままである孫空女は、もう脚を進めるのもつらそうだ。
全身は真っ赤であり、おびただしい汗をかいている。
歩きながら懸命に内腿を擦り合わせているのは、すこしでも痒みを紛らわせたいと必死なのに違いない。
「おや、誰か前から来たね」
そのとき、宝玄仙が前を見て答えた。
沙那も顔をあげた。
確かに、向こうから二人組の男の旅人がやってくる。
この五行山越えで、初めて出逢う他の旅人だ。
しかし、沙那は、全くの全裸に背に荷を背負い、腰帯で剣を吊っているだけの姿だ。
思わず、横の草むらに隠れようとした。
「どこにも行くんじゃない、命令だ。手で身体を隠すのも禁止だよ。命令だからね」
宝玄仙がすかさず言った。
「ひっ、そんな」
沙那は愕然とした。
脚が地面に貼りついたように、沙那の意思では動かなくなり、両手はだらりと横に垂れ下がった状態で動かせなくなる。
「わっ、わっ」
一方で孫空女は驚いて、横の草むらに飛び込んで、裸身を隠した。
だが、沙那は動けない。
どんどんと旅人が近づいてくる。
「……なにを言われても、“はい”と言うんだ。命令さ……」
宝玄仙が意地の悪い笑いをして、沙那の耳元でささやいた。
沙那は嫌な予感がした。
やがて、旅人は沙那たちの目の前にやって来た。
だが、素っ裸の沙那を見て、ふたりの旅人はびっくりして、眼を見開いている。
「ちょっと、待っておくれ、あんたら。この先に村はあるかい? こいつが服を失くしてしまってねえ。なんとか、購いたいのさ」
驚きながらも通り過ぎようとしていた旅人を、わざわざ宝玄仙が呼び止めた。
沙那は悲鳴をあげそうになったが、辛うじて自重した。
とっさに、身体を捻って裸身を隠そうとするものの、さっきの命令でそれができない。
仕方なく、沙那は顔を必死で伏せて眼を閉じた。
禁止されていないのは、それくらいしかなかったのだ。
「そ、そりゃあ、気の毒にな……。麓に村はある……。結構、大きな村だから、金子でも、ほかのものでも、服と交換はしてくれるとは思うが……」
眼を閉じているが、男たちの視線が沙那の裸身に突き刺さるのを感じる。
沙那はあまりの羞恥に、気が遠くなりそうだった。
「ああ、これかい? 見る分なら、いくらでも眺めてやっていいよ。実はちょっと頭がおかしいのさ。裸で歩くと気持ちがいいんだってよ。そうだね。お前?」
宝玄仙が沙那に声をかけた。
驚いたが、沙那の口は勝手に開いて、さっきの命令に従い「はい」と応じていた。
沙那は、宝玄仙のあまりの意地悪に歯噛みした。
「き、気持ちがいい……?」
旅人の男のひとりが驚いたように言った。
「そうさ。ほら、見てごらんよ。こいつの乳首、おっ勃っているだろう? こうやって、裸を見られて、興奮している証拠さ……。そうだね?」
「は、はい……」
沙那はそう言っていた。
口惜しさで涙が出るのを耐えた。
それから、しばらく、宝玄仙は、沙那を見世物のように裸体をふたりの男に晒させたあと、やがて、追い払うようにふたりの男との会話を打ち切った。
ふたりの男は、沙那に飛びかかって来るような真似はせず、この先にも盗賊団がいるので、気をつけるように声をかけて立ち去っていった。
「ひ、ひどいです……。あんまりです、ご主人様」
旅人が立ち去ると、命令が解けて、沙那は自由を取り戻した。
しかし、宝玄仙は大笑いするだけだ。
だが、沙那は、この宝玄仙の気性を知っている。
淫乱で嗜虐好きだが、悪意の固まりというよりは、純粋に面白いことが好きなだけだから、嗜虐心が満足されれば、それでからりと気が収まるのだ。
この全裸歩きも、いまので、かなり嗜虐心が満足したのではないだろうか……。
機会はいまだ。
「……ご主人様、もう、わたしも懲りました。もう逆らいませんから、わたしと孫空女に服を着せてください。お願いです。このとおりですから」
沙那は腹が煮えかえるを我慢して、その場に土下座をした。
案の定、宝玄仙はすっかりと機嫌がよくなっていた。
「わかったよ、沙那。そんなに言うなら、試しに作った霊具の
宝玄仙が呆気なく言った。
かこというのは、脚にはく男物の衣類だが、動きやすいので、沙那は軍人時代から、常にそれを着ていた。だが、宝玄仙の霊具だというのが気になった。
しかし、これ以上、なにか言うと、服を買いに行っていいという宝玄仙の気がまた変わるかもしれない。
沙那はとにかく、それを受け入れることにした。
なんにせよ、全裸で村に行かされるよりましだ。
「こらっ、いつまでも隠れていないで、出てこないかい、赤毛──。沙那ひとりに恥をかかせて、それでも、旅の供かい──」
宝玄仙が草むらに向かって怒鳴った。
相変わらず、股間の痒みに苦しんでいる様子の孫空女が、腿を激しく擦り合わせながらやって来る。
「ああっ、ひ、ひどいよ……。も、もう、我慢できない……。た、助けて……」
道に出てきた孫空女は、その場に崩れ落ちるように膝を落とす。
その身体は、苦しそうに悶え続けている。
「ご主人様、孫空女を許してあげてください。孫空女は、まだ一日目です。心の整理がつかないのだと思います。でも、孫空女はわたしよりも強いですから、きっとご主人様のお役に立ちます。どうか、もう許してあげてください」
沙那はもう一度頭を地面に擦りつけた。
自分のことなら、これほど素直になれないが、孫空女を助けるためだと思えば、いくらでも惨めな思いができそうな気がした。
「さ、沙那……?」
孫空女が沙那の名を呼んだ。
「へえ……」
宝玄仙も感嘆した声を出す。
「そんなに言うんなら、そろそろ許すかね……。まあ、条件次第だけどね」
宝玄仙が意味ありげに言った。
「条件?」
沙那は顔をあげた。
「沙那に刻んだ内丹印を完成させるよ。お前に刻んだのは、応急的なもので、いつでも消滅させられる簡易的なものなんだ。だが、昨夜、孫空女に刻んだものは違う。一度刻んでしまえば、わたしの力でも消滅させられることのできない、完全な内丹印だ。それをお前にも刻む。つまりは、お前は、これで二度とわたしから離れられない人形になるということさ」
「受け入れます」
沙那は間髪入れずに言った。
簡易であろうが、完成版であろうが、沙那にはその違いなど無意味だ。
それよりも、この全裸歩きをやめさせてもらうことしか、頭にない。
すると、宝玄仙がにやりと笑った。
「ふたりとも、林の中に入りな。もう少し、人目のないところに行くよ……」
宝玄仙が言った。
※下袴=ズボン