「降車だ──。外に整列しろ──。亜人ども──」
檻車の扉が勢いよく開いた。
朱姫は微睡みの中から目を覚ました。
「しゅ、朱姫さん──」
声をかけたのは
すでに、
「もたもたするな、亜人──。その列に一匹入れ──。二列の集団を作って並べ──」
檻車の外から甲高い命令が聞こえてきた。
亜人収容所というところに到着したのだろうか……。
「こらっ、お前ら、早く外に出ろ──」
すると、檻車を移送してきた兵がひとり、檻車に駆けあがってきた。
「朱姫さん、早く──」
華耶が、まだ座ったままの朱姫に声をかけてから追いたてられるように檻車の外に出る扉から梯子に向かった。すでに摩耶は降りたようだ。
「降りろと言っているだろう──」
朱姫はまだ目が覚めたばかりで、立ちあがってもいなかった。
その首輪をむんずと掴まれて立たされた。
「行かんか──」
思い切り扉方向に尻を蹴飛ばされた。
「くっ」
朱姫は、痛みに顔をしかめるとともに、体勢を崩しながら扉の下の梯子に向かった。
「さっさとしろ──」
梯子の下では、別の兵士が二名待ち構えていた。
下から身体を掴まれて、地面におろされる。
「列を作っているところまで走れ──」
少し離れた場所に、朱姫と同じように首の後ろに両手を繋げられて、鎖のついた足枷をしている女が二十人ほど整列していた。
走れと言われても、足首には枷がつけられて鎖で繋げられているのだ。
朱姫は馬鹿馬鹿しくて、ゆっくりと歩いた。
そして、歩きながら周りを見た。
怖ろしく高い塀に囲まれた広場のような場所だ。
そこに朱姫たちが乗ってきた檻車のほかに二台の檻車があり、そこから女たちがおろされたばかりのようだ。
広場のような場所の向こうには、三階建ての大きな建物と、その横に並ぶ粗末なたくさんの長屋のような平屋の建物も見える。
やはり、どうやら、ここが亜人収容所のようだ。
ならば、あの集まっている女たちも、全身が亜人もしくは半妖なのだろうか……。
「いぎいっ」
そのとき、朱姫は、いきなり横から胴体を思い切り鞭打たれた。
「ぼうっとするな、そこの亜人──。あの列に並べ──」
鞭打ったのは、屈強な身体の女兵だった。
朱姫は数歩だけ小走りに進むふりをしたが、すぐにゆっくり歩く速度に戻った。
その女兵が朱姫から目を離して、朱姫たちを連れてきた者たちと雑談を始めたからだ。
なにか、有益な情報があれば耳にしたいと思った。
「
その女兵に話しかけたのは、朱姫たちをここまで移送してきた移送隊の指揮をしていた将校だ。
それに対して、真媛子と呼ばれた女兵もその隊長に随分と馴れ馴れしい態度だ。
すると、あの真媛子も将校なのだろうか?
女兵は、いま連れてこられた亜人の女囚が並んでいる場所にもうふたりいる。
ここからでは、女兵の将校と兵の服装の違いまではわからない。
「国都で大規模な隠れ亜人狩りがあったのよ。
「なるほど、国都でなあ」
「このところ、この女囚城にも毎日大量に移送されてくるわ──。お陰で収容限界はいっぱいよ。まあ、役に立たない子供や年寄りを屠殺処分をして、なんとか帳尻を合わせているけどね。とにかく、三匹は受け取ったわ。用事は終わりでしょう。早く、出て行きなさい」
真媛子が応じている。
「ちっ、連れねえなあ……。たまには、そいつらの貞操帯を外して、俺たちにいい目を見せてくれてもいいだろうが。いつもいつも、ただ、亜人の雌を渡して終わりじゃあ、つまらねえよ」
「どうせ、移送中になぶって遊んだんでしょう? あんたらが移送してきた女囚は、前回も移送中に代わる代わる口で奉仕させられたと言っているわ。あの生真面目な女隊長に報告するわよ」
「けっ、
将校が檻車の周りにいる兵に声をかけた。
移送隊には普通の将兵のほかに、黒衣の道術師隊のふたりもいたが、その姿はすでにない。
移送隊が亜人収容所に到着した時点で、任務が終わりのはずなので、先に去ったのだろうか……。
いずれにしても、どうやら、朱姫たちをここまで移送をしてきた隊は戻るようだ。
そんなのをぼうっと見ていると、真媛子が、まだ朱姫がそばにいたのを認めて、驚いたように表情を変えた。
「お、お前、まだ、そこにいたのかい──。並べと言っただろう──」
そして、腰のベルトの横からなにかをさっと抜いた。
『
護送隊長が持っていたものと同じものであり、朱姫の額に埋められた石を通じて、激痛を頭に与える霊具だ。
そう思ったときには、頭が割れるかと思うような頭痛が襲いかかっていた。
「ひがああっ──ぎいいいい──や、やめて──並ぶ──並びます──」
朱姫は地面に転げまわって悲鳴をあげた。
「ほらっ、痛みを緩めてやったわ。並べ、並べ──」
真媛子が追いたてるように、朱姫の尻を蹴りあげた。
確かに頭の激痛は弱まったが、それでも凄まじい痛みだ。
朱姫は這うように、二列に並んでいる女囚の列に辿りついた。
やっと頭痛がとまった。
「朱姫さん、大丈夫ですか……?」
「こっちに……」
そこにすでに列に入っている摩耶と華耶がいた。
朱姫はそのあいだに立った。
「歩け──」
すぐに鞭で追いたてられた。
二列になった列が前の建物の方向に進み始める。
二十人の亜人たちの列を追いたてるのは、さっきの真媛子という名の女兵を始めとした三人だ。
余程にこういうことに慣れているのか、手慣れた動作で長い革鞭を操って、地面を叩いたり、列からはみ出した女を打って歩みを急がせる。
朱姫の見たところ、半分くらいは、朱姫や摩耶や華耶のような若い女だ。
残りは年齢はまちまちだ。子供や老人もいる。
亜人といっても、朱姫の眼から見ても、全員が人間族にしか見えない。
さっきの真媛子たちの話によれば、「隠れ亜人狩り」で連行されたとか言っていたので、見た目は人間族と変わらないのだろう。
しばらく歩くと、建物に近い場所に木の垣根があり、そのまま列を作ってさらに前に歩かされた。
やがて、広場から見えた三階建ての建物の入り口に到着した。
「右の列から一匹ずつ入れ──」
真媛子が地面をぴしゃりと革鞭で叩いた。
どうやら、ここでは、収容所に入れられる亜人は人扱いはされないらしい。
なんとなく、この収容所における朱姫たちの扱いが予想できる気がして、朱姫は暗い気持ちになった。
朱姫と双子の姉妹は、右の列の最後尾だ。
前に続いて、朱姫は建物の中に入った。
そこは、ひとつながりの巨大な部屋になっていて、朱姫より先に入った女たちは、両手を上にあげた体勢に直され、その両手を天井から伸びる鎖に繋がれて、建物の中を歩かされているようだ。
しかも、全裸だ。
女囚の両手を繋げた鎖は、天井にある長い溝にあるたくさんの滑車に一本ずつ繋がっていて、その滑車が溝に沿って動いて、鎖に繋げている女囚の手枷を引っ張っるようになっていた。
そして、ところどころに、新しくやってきた女囚の身体の検査をする男女がいて、それぞれの場所でなにかの点検をしている。
天井にある溝は、ずっと先の奥に幕のようなものがあるところまで続いていて、そこに向かって天井から繋げられた鎖が移動するようになっているようだが、幕から先については見えない。
しかし、それ以上の観察の余裕はなかった。
朱姫も建物に入ったところで、さっそく、手枷を首輪から外され、天井から一本ずつ伸びる鎖に繋ぎ直されて、両手を大きく上方に向けるように伸ばされた。
朱姫たちの拘束を繋ぎ直すのは、どうやらここの女囚のようだ。
四人いた。
その四人は、拘束はされていなかったが、女囚であることはひと目でわかった。
朱姫がいましているのと同じような首輪をしているし、額に石が埋められている。
胸が隠れるだけの丈の短い袖のない上衣と腰が隠れるだけの怖ろしく短い下袍を身に着けていた。
服の地の色は白のようだが、汚れていて灰色になっている。四人とも同じように暗い顔をしている。
また、素肌が露出している四人の腹の部分には、それぞれに“一”から“四”までの数字が刻まれている。この数字はなんだろう……。
さらに、その四人の後ろに剣を持った女の兵がふたりいて、新入りの抵抗などの不測事態に備えるとともに、仕事をさせている女囚を監督しているようだ。
女囚たちは、新入りの入所検査のために、作業員として駆り出されたのだろうか。
四人の女囚たちは、口を開くことなく淡々と作業をしている。
その四人によって、朱姫は、手枷を天井から延びている鎖に繋ぎ直された後で、足枷を外された。
すると、両手を繋がれている鎖が動きだした。
その鎖に引っ張られるように前に進む。
しかし、ちょっと行くと鎖がとまった。
少し前のところで、今度は女兵がふたり待ち構えていたのだ。
朱姫の前を進むのは摩耶で後ろは華耶だ。
女兵がいる場所には、まだ、先に進む摩耶がいるので、朱姫を引っ張る天井の鎖はその手前で一旦停止した。
「きゃああっ」
前の摩耶が悲鳴をあげた。
女兵が、摩耶の身に着けているものを刃物で切断して素裸にしているのだ。
股間の貞操帯もそこで外されている。
悲鳴は素っ裸にされたことに驚いた摩耶の声だ。
「一人前に恥ずかしがるんじゃないよ、亜人のくせに──」
摩耶の素裸にした女兵が馬鹿にしたように笑って、摩耶の剝き出しの尻たぶをぴしゃりと叩いた。
「ひゃん」
摩耶がまた泣き声をあげた。
そして、摩耶の両手を繋げている鎖が進み出し、前に進んでいく。
「次──」
同じ女兵が声をあげた。
朱姫が頭上にあげた両手の枷に繋がっている鎖がまた動き出す。
その女兵の位置に到着した。
慣れた手際で肩のところを刃物で切断されて、服を足首までおろされて抜き取られる。
胸当ても取られ、貞操帯を外された。
あっという間だ。
随分と手慣れた感じだ。
「おや、ここの毛が無毛の種族なのかい……? それとも、剃っているのかい?」
朱姫の無毛の股間を見て、女兵が珍しそうに言った。
「おや、ほんとだ。亜人というのは、だいたい毛深いのが多いからね。逆に無毛というのは珍しいねえ?」
もうひとりが股間の亀裂に手をやって、毛孔を確認するようにぐいとめくる。
「ちょ、ちょっと、待って──。い、いやっ──」
朱姫は声をあげた。
しかし、両手を上方に拘束されているので抵抗もできない。
「おやっ、綺麗に毛がないようだねえ……。毛孔からも産毛もないようだよ」
「本当だ……。もともと生えない種族かい?」
ふたりが朱姫の股間をめくって凝視し始めた。
「そ、剃っているのよ──。もともとじゃないわよ──。も、もうやめてったら──」
同性とは言え、股間を無造作に拡げられる恥辱に、朱姫は堪らず声をあげた。
しかも、そのふたりは朱姫が嫌がるのが愉しいのか、やたらにしつこく、朱姫の秘部を凝視し続ける。
かなりの長い時間、そのふたりの女兵に朱姫は股間を悪戯された。
「こらっ──。次がつかえているんだ──。終わったら、さっさと、前に送らんか──」
すると、少し前で待っている老人が、朱姫のところにいる女兵に声をあげた。
「はいはい……。よし、行け──」
女兵が声をかけると、また鎖が進みだした。
さっきの老人の前にきた。
そこには、摩耶もいない。
点検が終わって、さらに前に進んでいるようだ。
老人は、軍装ではなくて、赤い着物を帯で締めており、民間人のような服装をしている。
今度は老人とはいえ、異性に全裸を晒すことに羞恥を感じた。
しかし、その老人は女の裸など見慣れているのか、欲情のようなものは垣間見えない。
「口を開けろ──。もっとだ──」
その老人が朱姫の顔を掴んで言った。
朱姫は仕方なく口を開く。
老人が朱姫の口を覗き込むような仕草をしたかと思ったら、いきなり鼻の穴を上に向けられた。
そして、次は眼を拡げる。
その手つきは医師を思わせる。
もしかしたら、本物の医師なのかもしれない。
「舌を出せ──」
朱姫は舌を出す。
「股を開け──。がに股だ」
老人が言った。
「えっ」
さすがに朱姫は動揺した。
しかし、老人はさっと手首を朱姫に向けた。
はっとした。手首にはあの『禁錮具』を巻きつけてあるのだ。
恥ずかしいが、慌てて、がに股になる。
「おう、面倒を起こさせんのはいいな」
老人は、無表情で朱姫の性器をぐいとめくって、顔を近づけて、朱姫の股間を覗き込んだ。
朱姫は屈辱を歯噛みして耐えた。
「処女ではないな。かなり使い込んでいるようじゃな……」
老人は板のようなものを横の台に置いていて、それになにかを書き込んだ。
「後ろじゃ」
老人が卓から顔をあげて言った。
「えっ?」
「後ろを向けと言っておるのだ──。今度は身体を屈めて尻をこっちに突き出せ」
老人が言うと、天井から吊られていた鎖が不意に緩んで、ゆとりのようなものができた。
仕方なく、反対を向いて老人にお尻を突き出すような格好になる。
老人が尻たぶをめくって、朱姫の尻穴を凝視している。
恥ずかしい……。
「動くなよ……」
老人が言った。
その直後、冷たい棒のようなものが尻穴にいきなり挿し込まれた。
「ひいっ」
朱姫は思わず身体を仰け反らせた。
「動くなといったじゃろうが──。まあいい……。病気の兆候はなしじゃ」
棒が抜かれた。すぐにまた、鎖が天井に引きあげられて、自動的に朱姫がまっすぐに腕をあげる状態で固定された。
そのあいだに、老人は卓の上の板に、さらになにかを書き込んでいる。
「向こうを向け」
朱姫が老人に背を向けると、老人は、その板に付いていた細い鎖を朱姫の首に回し、板の留め具に鎖を引っかけて朱姫の背中側にぶらさげた。
なにが書いているのかは、板が背後なのでわからない。
「ところで、名は?」
朱姫の背中に板をかけると老人が訊ねた。
「えっ?」
いきなりだったので、思わず訊き返してしまった。
「名前だ。亜人でも名前はあるのじゃろうが? 早く言わんか──」
苛ついた口調で老人が言った。
「しゅ、朱姫です」
そう言うと、老人はさらになにかを背中に吊るした板に書き込んだ。
「次に行け」
老人が言うと、鎖が動き出した。
次に待っていたのは、痩せた若い男だった。
「印のある場所に足を置いて開け──。ここで、愛液を採集検査する。簡単な検査だ。すぐ終わる……」
まるで感情のないような抑揚のない口調だ。
朱姫が示された床を見ると、確かに白い印がふたつある。
かなりの広さだ。
つまりは、ここでこの若い男の前で、大股開きをしろということだ。
だが、さっきの老人と同じで、眼の前の男には女の裸など珍しくもなんともないような雰囲気がある。
その態度によって、朱姫は改めて、ここの女囚は、女扱いどころか、人扱いもされないのだということを思い知らされる気がした。
朱姫は、指示されるままに印のある場所に足を置いて、大きく足を開いた。
「……非処女だな……」
男は、一度朱姫の背中の板を覗いてから呟いた。
そして、背後から張形を思わせる筒状の器具を取り出した。
表面に油剤のような物質が塗られているのがわかった。
板を確かめたのは、非処女であり、こういう器具を挿入しても問題がないかどうかを確認したようだ。
処女であれば、もしかしたら、ほかの検査方法があるのだろうか……?
男が無表情で器具を朱姫の女陰に沈めだした。
器具の表面の油剤は潤滑油の役割があるようであり、また、器具は細かったので、特に抵抗もなく朱姫の膣は、その器具を受け入れた。
すると、朱姫の中で器具が張りついたようになった。
男が手を離したが、膣で締めるようなことをしなくても、下に落ちるような気配はない。
「くっ……」
朱姫は思わず声を出してしまった。
体に入り込んだ器具がだんだんと膨張して、小刻みに振動を始めたのだ。
霊具のようだが、それを操るということは、眼の前の男は道術遣いなのだろうか……?
それにしても、目の前の男の手つきは完全に無感情であり、そのことが却って、朱姫に侮辱を感じさせる。
女隠の中の器具が普通の男根の太さくらいになり、淫らに振動を続ける。
こんな検査のためだけの刺激に感じてしまうのは口惜しかったが、どうしても朱姫の身体は反応してしまっていた。
「あっ、く……ああ……うはあっ、ああ……」
いつの間にか、朱姫の身体は熱くなり、女陰が濡れるのも感じた。
いつしか、朱姫は声ははっきりと声をあげて、身体を震わせていた。
しかし、まったく唐突にいきなり器具が引き抜かれた。
あまりにも乱暴な動作だったから、朱姫は悲鳴をあげてしまった。
「足はそのままだ。そこで、小便しろ」
男は抜き出した器具になにかの粉をかけて卓の上に置き、今度は、小さな器を朱姫の股間の下にあてがった。
さらに、その下の床に、大きな桶を足で押して置いた。
桶の中にはかなりの尿が溜まっていた。
「小便だ。早くしろ──。檻車の中では、貞操帯をされていたから、我慢していただろう。早く出せ。道術で無理矢理させてもいいが、少し痺れるぞ。それが嫌なら、自分からすることだ」
男が冷たく言った。
その顔に、女の小便姿になど、まったく興味などないという感じがありありと出ている。
確かに尿意はある。
朱姫は観念して、股の力を緩めた。
足のあいだから尿が垂れだす。
最初に出た尿だけを男は器で受け、さっと手を引いた。
残りの尿は足のあいだの桶にそのまま垂れ落ちる。
桶に落ちる尿がじょろじょろと音を立てる。その音が朱姫の羞恥を誘う。
「面倒なしに小便をしたのは、この組ではお前が最初だな。普通は、道術で強引に膀胱を緩めさせるのだがな……」
男が顔の頬を緩めて、初めて感情を表した。
男は尿を集めた器に小さな紙を入れた。
そして、その紙の色の変化を確認している。
終わると、器に取った朱姫の尿を、まだ尿が垂れ落ちている桶の中に捨てた。
さらに、さっきの筒に視線をやった。
金属の色だった表面が桃色と白のまだら模様に変化している。
その色がどういう意味なのかは朱姫にはわからない。
やっと尿がとまった。
「股を閉じていいぞ」
男はさっきの無機質な口調に戻って言った。
足のあいだの桶は、足で引き抜かれた。
股間を拭くようなものは与えられない。
どうしていいかわからなかったが、仕方なく、そのまま脚を閉じる。
男は朱姫の背後に回って、さっき老人が背中に掛けた板になにかを書き込み始めた。
「次に行け──」
男が言った。
朱姫の両手を引っ張る鎖が再び前に進み始めた。