※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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61  虜囚となった王女

 黄袍魔(おうほうま)は、妖魔城の一室でまどろみから目を覚ました。

 夢を見ていた。

 悪夢だ。

 まだ、生まれる前の黄袍魔の母親が殺される場面であり、殺したのは、この国の王だった男だ。

 もちろん、黄袍魔がそれを覚えているわけじゃない。

 だが、黄袍魔を育ててくれた青蔡(あおさい)が教えてくれた母の死の情景だ。

 それは、血が沸騰するような復讐心とともに、黄袍魔の頭に染みついている。

 

「妖魔王よ……」

 

 すると、部下が入ってきて、“品物”が届いたという知らせをした。

 いずれにせよ、どうやら、居眠りをしていたらしい。

 

「わかった、行く」

 

 黄袍魔は、執務室のような部屋から、最上階の私室に跳躍する。

 

 すでに、品物は最上階の私室に届けられているという。

 白骨(はっこつ)を見張らせていた小妖から、白骨が品物を入手したという報告を受けたのは昨夜のことだったから、約束通りに白骨は手を付けないまま、この椀子(わんし)山の妖魔城に運んできたのだろう。

 

 自分は、あの“品物”をどうするべきだろうか。

 あれほど渇望した品物だ。

 だが手に入れてみると、黄袍魔は自分の戸惑いに驚いていた。

 “白骨夫人”という名で通っている冷酷無比の女奴隷商人に、宝象国の第三王女を浚わせたのは、それが現国王が眼の中に入れても痛くないくらいに、愛情を注いでいるという噂を耳にしたからだ。

 それも、近隣の諸国にも伝えられるくらいの美女のようだ。

 また、気も強くてお転婆だとも聞いた。

 

 だからこそ、一介の人間の奴隷商人に浚われてしまうという隙を作ってしまうのだろう。

 もっとも、その第三王女の性格などどうでもいい。

 黄袍魔にとっては、その品物があの王家の大切な娘だという事実さえあればいいのだ。

 

 王家にとって、もっとも大切にされている娘をこの妖魔王の慰みものにして、最後には最下層の妖魔の奴隷にする。

 それだけが目的だ。

 

 三人いる王女のうちから、百花(ひゃっか)姫という第三王女に狙いをつけたのも別段の意味があるわけではない。たまたま、現国王がもっとも可愛がっているという噂があったからだ。

 それに、第一王女と第二王女は、すでに人の妻となり子もなしていた。

 それに比べれば、年齢の離れている第三王女は、まだ十八で、子はおろか、まだ伴侶もいない。

 だから、その百花姫に決めた。

 そういえば、黄袍魔の母親だったという雌妖が殺されたのも、同じ十八歳だったはずだと思った。

 

「妖魔王様、ご機嫌うるわしゅう……」

 

 跳躍すると、そこには美しい人間族の女性がいた。

 歳は三十を超えているはずであり、人間族の女としては若い個体ではないらしい。

 だが、美貌の女ということで有名とのことだ。黄袍魔はちっともそう思わないが……。

 なんとなく、心の汚れが外観に浮き出ているような気がするのだ。

 まあ、仕事の相手としては有能なのは理解しているが……。

 一方で、可憐としかいいようのない少女が目の前の結界に包まれた部屋の中に横たわっている。

 

 百花姫だ。

 その百花は、準備してあった部屋の寝台に寝かされている。

 薬でも使って眠らされているのだろう。

 まったく目を覚ます気配はない。

 ところどころ着衣が乱れているのは、この奴隷商人の白骨によって、この椀子山にある波月(はつき)城に連れて来られるまでに随分と抵抗したのかもしれない。

 この波月城は、宝象(ほうぞう)王国の領域であるが、辺境のさらに外として、人外地とされている奥深い山中にある黄袍魔の城だ。

 家来の妖魔は千匹程いるが、当面は、この百花の世話をする雌妖以外は、この最上階の部屋に近づかないように申し渡してある。

 

 この部屋は、百花を監禁するために特別に準備させた部屋であり、この最上階には下に降りる階段がない。だから、『移動術』を使える妖魔でなければ、ここには来れないし、立ち去ることもできない。

 特に道術力などない人間の娘である百花には、この階から逃げる手段がないはずだ。

 それだけではなく、百花にはこの階だけではなく、部屋からも出られないようにした。

 

 この部屋で百花を抱き潰す――。

 

 そして、飽きたら、階下の妖魔たちの慰み者に落とすのだ。

 かつて、宝象国の国王だった男が黄袍魔の母親だった雌妖にやったように――。

 

 それにしても、美しいという評判の姫だったが、黄袍魔は、百花が世間の噂以上の美女だと思った。

 黄袍魔は人間の女にそんな感情を抱いてしまった自分が意外だった。

 

「さすがは白骨だな」

 

 白骨は人好きのするであろう笑顔を見せた。

 美貌の人間族の女だが、その白骨がどこにでもいる市井の中に埋もれている女にも化けられる。

 だが、実際は、依頼があれば、人間であろうと妖魔であろうと、非道な手段を使ってでも手に入れてくる希代の奴隷商人だ。

 腕もいい。

 依頼料は高いが、それなりの実力もある道術遣いでもある。

 

 もっとも、白骨も妖魔の依頼を受けるのは、初めてだと言っていた。

 しかし、その妖魔の依頼で、人間の娘――しかも、この国の王女を浚うというのは、白骨にとって躊躇いの対象ではなかったようだ。

 だが、人間族が妖魔王の依頼を受けるなど怪しい。そもそも、妖魔の地位の低い宝象国で、妖魔と対等の付き合いをするなど異常でもある。

 もしかしたら、黄袍魔を嵌める罠かと思い、念のために、密かに見張りの小妖を付けてもいたがそれは杞憂だったようだ。

 

「苦労しました。とにかく、この王国の本物の第三王女ですから……。まさか、王宮に忍び込んで浚うわけにもいかず、今回の依頼は難しいと考えていた矢先でした」

 

「苦労の分は支払う。約束のものは受け取ったか?」

 

「さきほど、黄袍魔様の家妖殿から……。約束にものにさらに上乗せして頂いきました。お礼申しあげます」

 

 家妖というのは、この波月城の束ねをさせている妖魔だ。

 椀子魔(わんしま)といい、この城の名にもなっているが、もともとは、この椀子山を支配していた妖魔だったが、黄袍魔に屈してからは、完全な黄袍魔の筆頭家来となっている。

 千匹を超える面倒な妖魔たちの支配は、この椀子魔に一手に引き受けさせている。

 

「確かに、それに見合った仕事はしてくれたな。よくやってくれた」

 

 黄袍魔は短く言った。

 

「恐れ入ります」

 

「評判に違わぬ美しい人間の姫のようだ。さぞや、国王は悲しむのであろうな」

 

「しかし、美しさの中には、かなりのじゃじゃ馬が隠れていますよ。なにせ、国王に外出を禁止されていたのに、侍女たちを脅してまで王宮を抜け出てくるくらいですから。もっとも、そのお陰で、考えていたよりも、ずっと簡単に連れて来れましたが」

 

「ところで、ここに百花を連れてきたことは誰にも悟られていないだろうな、白骨?」

 

「それは勿論。この白骨の仕事ですよ。王宮の道術師が相手でも、ここまで辿ることはできないでしょう。それに、この白骨の仕事が確かであることは、あたしにつきまとっていた小妖が報告したのではないのですか?」

 

 白骨が試すような視線を黄袍魔に送った。

 黄袍魔は驚いた。

 白骨を見張らせた小妖は、影に隠れることにかけては、一流の能力を持つ。悟られているとは考えもしなかった。

 

「知っていたのか?」

 

「これでも、術遣いです。消したつもりでも、妖魔の気配はわかります。あたしほどの能力を持つ術遣いは大勢おります。それが思わぬ仕事の失敗に通じることもあります。今後もこの白骨に仕事を依頼するつもりがあるのであれば、あたしらへの監視はお慎みください。はっきりいって、迷惑です」

 

 白骨は、初めて厳しい視線をした。

 これが、奴隷商人としての白骨の本当の顔なのだろう。

 このくらいの眼ができなければ、部下を束ねることはできないし、浚った女奴隷たちの管理はできないのだろう。

 

「ならば、はっきりと言おう。俺は、人間族を信用する気にはならない。だが、お前の仕事は評価した。こうやって、依頼した品物を届けてくれたからな。だから、いままでに、お前がやった雌妖狩りは水に流してやる。今後、同じことを繰り返すことがなければ、俺はお前の友人でいてやれるだろう」

 

 女奴隷商人の白骨の裏の本業は、人間でも妖魔でも浚っては奴隷に仕立てる奴隷商人だが、表の顔は、妖魔を家畜として売買する妖魔商だ。

 この国では、人間を売り買いすることは犯罪だが、妖魔を売り買いすることは合法なのだ。

 

「黄袍魔様の縄張りであるこの椀子山の支配域内で、妖魔を狩ったことはありませんが?」

 

「この百花の父親が、宝象国内の人間族の庇護者なら、この黄袍魔は、宝象国内で虐げられているすべての妖魔の庇護者のつもりでいる。この辺境域は、人間どもが勝手に、妖魔の巣の人外地として線を引き、自分たち人間が立ち入ってはならない場所としただけのこと。俺は、この椀子山のみが、妖魔域と思ったことはない。妖魔域であろうと、その外であろうと、妖魔もまた、人と同じように生きる権利を持つ」

 

 白骨は、しばらく黙って黄袍魔を見つめていたが、やがて口を開いた。

 

「……新しい妖魔の王は、随分と情け深い王なのですね?」

 

「俺を慕って集まる妖魔たちに対してはな」

 

「しかし、この白骨にもほかの仕事があります。妖魔の注文も……」

 

「黙れ」

 

 黄袍魔は声をあげた。さらに続ける。

 

「お前を使ってやったのは、この黄袍魔の慈悲だと思え。本当なら、これまで妖魔を家畜として売り買いしてきたようなお前は、俺の爪を突き立てる対象でしかないのだ」

 

「ふん、あの青蔡のじじいだって、昔は、あたしと同じ仕事をやってたんだよ」

 

 白骨が、表情を一転させて、不満な顔をすると鼻を鳴らした。

 黄袍魔は、爪を刃物のように尖らせると白骨の首に突き立てた。

 白骨の首から、ひと筋の血が流れる。

 だが、白骨は身じろぎひとつしなかった。

 ただ、不敵に黄袍魔を睨み返してくる。

 

「……この宝象国の中では、妖魔狩りはしない……。それでいいのかい、黄袍魔?」

 

 白骨は、黄袍魔に視線を向けたまま静かに言った。

 黄袍魔は、白骨に突きつけていた爪を引っ込めた。

 白骨は、首の傷を手でひと撫でした。

 すると、なにもなかったかのように、傷が消滅した。

 

「それでいい、白骨」

 

 黄袍魔は言った。

 

「だけど、商売もしなくちゃいけないからね。ほかの国から手に入れた妖魔は、今まで通り、売り買いをさせてもらうよ。この国では、妖魔を売買するのは、合法なんだよ。文句があるなら、こんなところに隠れていないで、堂々と人間族の国王にでも喧嘩を売りな、妖魔王」

 

「隠れているつもりはない。いまは、宝象国では、この椀子山のみが、我ら妖魔が安心して、生きることのできる場所だが、いずれは、すべての場所を同じくするつもりだ。そのときには、お前たち人間が、妖魔によって、家畜として売り買いされる対象になるのであろうな。いまの俺の力では無理だ。だが、いつかはそれだけの力を手に入れて見せる」

 

「結構なことさ。どうせ、そんな時代になる頃には、このあたしの寿命も尽きている。知ったこっちゃないね」

 

「そうだな……。お前には関わりのないことだった……。お前は、俺の依頼に応じて、本当にこの国の王女を浚ってきた。感謝をすべきことだ。いまはまだ、表立って国王と争うつもりはない。この国の王も、俺には一応の敬意を示して、椀子山に入り込んだ人間については、狩り捕り自由という約をしているしな。だから、お前の表の商売は、気に入らんが、俺の庇護を受けている妖魔に手を出さなければ、文句は言わん」

 

「あんたが、本当にこの国の王になれば、あたしは、妖魔ではなく、人間を家畜として売り買いする商売をするよ。あたしにとっては、人間族も妖魔族もないさ。どちらも、飯の種さ」

 

 白骨は言った。

 黄袍魔は、思わず微笑んだ。

 

「ならば、俺たちは協力し合えるということだな。表の商売にする妖魔なら、この地下には、俺に逆らった妖魔が牢に繋いである。どうせ、餌として食べるだけの存在だが、あれの中でよければ、餌代程度の代価と引き換えに譲ってやろう。家畜として売り飛ばそうが、檻に入れて見世物にしようが、好きにすればいい」

 

「慈悲に感謝いたします、黄袍魔様」

 

 白骨は、にっこりとほほ笑んで、口調を改めた。

 その豹変ぶりには、黄袍魔も呆れてしまった。

 

「ところで、なぜ、王女になど構うのです? それも、妖魔の売買を許している国王への酬いというわけですか、黄袍魔様?」

 

「それは、お前が知る必要があることなのか、白骨?」

 

 黄袍魔は、白骨を睨んだ。

 「いいえ」白骨は首を横に振った。

 

「……ただの好奇心ですわ。なにしろ、この仕事は、あの青蔡殿の口添えですから。昔はともかく、いまの青蔡殿は、人にも妖魔にも情けある善人の塊りのようなお方。それが、妖魔の慰み者にするために、第三王女を浚えという黄袍魔様の依頼を仲介してきたのですから――。あたしじゃなくても、仰天しますわ。王家と青蔡殿と黄袍魔様と、どのような因縁がおありなのですか?」

 

「つまらん話だ。お前にとっては、聞く価値もない……」

 

 黄袍魔はそれだけ言った。それ以上、黄袍魔が口を開かないので、やがて、白骨は、微笑みを浮かべたまま小さく息を吐いた。

 

「まあ、確かに、あたしには関わりのない話ですね。それで結構ですが……。話は戻りますが、国王が、百花姫の行方を探し当てるなんの痕跡も残してはおりません。それは、この奴隷商人の白骨が請け負います」

 

「だが、おそらく、あの国王は、百花の行方に莫大な賞金を懸けるに違いない。欲にかられて、お前が情報を売れば、それこそ、妖魔の矛先が、まずは、お前とお前の仲間に向かうと思っておいてくれ」

 

「依頼人を売るようなことはしません。これでも、白骨夫人といえば、裏の世界では、名の売れた存在なのです」

 

「だが、人間族だ。人間は信用ならん。お前は、信用できても、お前の仲間はわからん」

 

「あたしの部下が、裏切れば、黄袍魔様の手を煩わせる必要はありません。あたしが殺します。あたしに仕事を依頼するに当たっては、あたしの評判もお調べになったのでは、黄袍魔様?」

 

「調べた」

 

「それで?」

 

「人柄は信用はならん。だが、仕事は信用できる。依頼料を支払った客を裏切ることはない」

 

 すると白骨が微笑んだ。

 

「黄袍魔様は、多くのものを頂きました。だから、この白骨が裏切ることはありませんよ」

 

「仕事振りは評判以上だ。まさか、こんな短い時間で百花を連れてきて来れるとは思わなかった。この仕事は、俺自身の手でやってもよかったが、それでは、どうしても、妖魔の魔力の痕が残ってしまう。できれば、家来の妖魔たちを関わらせたくはなかった。俺自身も問題だからな」

 

「代価は頂きました。黄袍魔様の事情は、もうお伺いしません。どうぞ、ご存分に。もう、黄袍魔様の品物です」

 

 ふたりで結界の刻んでいる部屋に入る。

 白骨は、百花を視線で指した。

 百花姫は確かに美しい。

 銀色の長い髪、細い顎、桃色の唇、細く白いうなじ。服に包まれた胸は若さに相応しい均整のとれた膨らみがあり、その下の腰は細く抱けば簡単に壊れてしまいそうだ。

 

「いまは、お前の道術の力で眠らせておるのか、白骨?」

 

「あまりにもうるさいので……。喚き散らす状態のまま、黄袍魔様の前に連れて行くのは失礼かと思いまして……。しかし、本当に、調教してからでなくてよろしいのですか? あたしは、普通、浚った雌妖や女は、それなりの調教をしてからお渡しするものですから」

 

「必要ない」

 

「余分な代金は頂いております。こんな小娘の心を砕くくらい数日もあればできる仕事です。この白骨にお預けになりませんか? あっという間に、家畜としての躾をしてみせますが?」

 

「それは、どうでもいい。この娘は、ただ俺が犯すためだけに浚わせただけだ」

 

 黄袍魔は、魔術で百花の身に着けている衣装を斬り割いた。

 あっという間に、眠っている百花は、下着だけの姿になる。

 黄袍魔は、百花の右の腕に黒色の腕輪を嵌める。

 

「それはなんですの、黄袍魔様?」

 

「この百花を、この城に繋ぎとめるための霊具だ。この霊具をつけている限り、俺の霊気が示す範囲でしか動くことはできん。当面は、この部屋に繋ぎとめる。牢などなくても、これで百花は、この部屋に囚われの身ということだ」

 

「面白い霊具でございますね」

 

 白骨は、にこやかに笑った。

 だが、この白骨こそ、人間の裏社会はおろか、妖魔の世界にも名を届かせているもっとも有名な奴隷商人だ。

 非道な手段を使い、依頼された対象を誘拐しては奴隷として売り飛ばす。

 この女にかかれば、たとえ、一国の王女といえども、哀れな獲物でしかなかったということだ。

 その本来の白骨は、さっきの会話の中で、少しだけ垣間見ることができた。

 

「それよりも、そろそろ、起こせ、白骨」

 

「わかりました」

 

 道術が、眠っている百花に注がれたのがわかった。

 白骨は部屋の隅に退き、木の椅子を引っ張って来てそこに腰を降ろした。

 どうやら、黄袍魔が、百花を犯すのを見物する気でいるようだ。

 

 百花の眼がゆっくりと開いた。

 事態が把握できないのだろう。

 身体を起こして、周りを見回している。

 その視線が、腕組みをしている黄袍魔に向く。

 

「えっ? えっ、えっえっ、きゃああああ」

 

 百花が悲鳴をあげた。

 そして、自分が小さな胸当てと股間を覆う薄物だけの下着姿であることにやっと気がついた。

 

 百花は、両手で胸を覆うと、解放されている部屋の出口に向かって走り出した。

 だが、すぐに見えない力に遮られて撥ね返される。

 ぎょっとした顔をしている。

 何度か同じことを繰り返し、やっと、戸口はおろか、この部屋の壁にすら触ることができないのに気がついたようだ。

 百花は恐怖の色を顔に浮かべて、黄袍魔を見た。

 そして、部屋の隅に座っている白骨を認めた。

 

「ど、どうして、妖魔が――? 百虎(ひゃっこ)夫人――。こ、これは、どういうことです」

 

「このお方が、あなたを買い取ったこの妖魔の城の支配者であられる黄袍魔様です、百花姫」

 

 白骨が言った。“百虎”というのは、この奴隷商人の女が、白骨を捕えるために使った偽名なのだろう。

 

「か、買い取るとはなんですか? わ、わらわは、品物ではありません。ひ、人です」

 

「いいえ、姫様は商品です。品物です。奴隷なのです」

 

「奴隷?」

 

 怒りのせいか、百花の顔が真っ赤になった。

 

「百花、お前の相手は俺だ」

 

 黄袍魔は、ゆっくりと百花ににじり寄った。

 その百花の顔が急に恐怖に染まる。

 

「こ、来ないで」

 

 百花は、あとずさりして、逃げようとするが、見えない力に押し戻されて、行く手を阻まれる。

 

「く、来るな、け、けだもの。こ、この獣(けもの)――」

 

 百花は叫んだ。

 

「獣(けもの)か……」

 

 黄袍魔は、身を護るように自分を抱く百花の腕を二本の腕で掴んだ。

 妖魔にとっては人間の女の力など、まるで存在しないのも同じだ。

 簡単に百花の腕は胸からもぎ取られて、空中に引きあげられる。百花の身体は宙に浮く。

 

「よく聞け、百花。お前は俺に犯される。そのために、俺はこの奴隷商人からお前を買ったのだ」

 

「買った? わらわをか――。わ、わらわを誰だと思っているのです。わらわは、宝象国第三王女にして……」

 

 黄袍魔は、百花を二本の腕で宙吊りにしたまま、道術を使ってさらに胴体から二本の腕を出した。

 百花が、それを見て悲鳴をあげた。

 

 その口を黄袍魔の口が塞ぐ。

 百花は暴れて逃げようとするが、宙に引きあげられた両腕だけではなく、黄袍魔のもう二本の手が、ぐいと百花の細い腰を抱き寄せている。

 四本の腕に抱かれる百花には逃げることなど不可能だ。

 

 口から黄袍魔の唾液を注ぎ込む。

 黄袍魔の唾液は、猛毒にもなれば、万病を治す薬にもなる。

 百花に飲ませた唾液は、老婆であろうとも、たちまちに発情し、淫欲に支配されるほどの強力な媚薬だ。

 それを百花の口中に注ぎ込む。

 

 顔を捩じって逃げようとする百花の顔を腕で固定する。

 百花は、黄袍魔の二本の腕で宙にあげられ、もう二本の腕で、腰と頭を固定されている。

 黄袍魔から与えられる唾液を受けとめるしかない。

 

 百花にとっては、永遠にも感じるほどの時間だろう。

 黄袍魔は飽きるほどの時間、百花の口の中を堪能した。

 その頃には、媚薬が効き始めた百花の顔が虚ろになり、激しかった抵抗が弱いものに変わっている。

 黄袍魔はやっと口を離し、腰を抱いていた腕で、下着を引きちぎる。

 あっという間に、百花は黄袍魔により空中に吊りあげられたまま全裸になる。

 

「いやああああ――。た、助けてええ――だ、誰かあ、誰かあ――」

 

「誰が、助けるというのだ、百花。ここは、妖魔の城だぞ」

 

 黄袍魔は、もう、淫液で涎を流し始めている股間に触れた。

 百花の身体がびくりとなった。

 

「もう、濡れているのか?」

 

 すると、百花が逃れようと、また暴れはじめた。

 だが、空中に吊られている身では、抵抗にも限界がある。

 黄袍魔は、ゆっくりと百花の股間をほぐしていく。

 股間に愛撫を受ける百花の声が、次第に艶めかしいものに変化する。

 

「聞こえるか、百花。これが、お前の淫液の音だ。ちょっと、触っただけで、これ程の悦びを示すとはな。お前は、ただの下品な雌だ」

 

「け、汚らわしい――。離して――は、離して――お、おぞましい……。お、お前のような獣が――」

 

「そうだ。おぞましいであろう。俺は妖魔の王にして、この辺境域を支配する黄袍魔だ。お前たち人間族が蔑み、虐げ続け――、そして、非道な扱いを受けてきた妖魔だ。その妖魔に、お前は犯されるのだ」

 

「ああ……や、やめて……き、気持ち悪い……。け、汚らわしい……」

 

 言葉とは裏腹に、百花の口調には、はっきりとした情感が混じりはじめる。

 全身はすでに上気し、すでに体内で暴れはじめた黄袍魔の与えた媚薬の効果により、百花の全身は、汗で濡れはじめる。

 

「汚らわしければ、たかが妖魔の愛撫で、こんなにも濡らしているお前はなんだ? それでも、一国の王女か――。近隣の王国にも聞こえた美貌の姫として名高い百花姫なのか」

 

「ああっ――な、なんで……こ、こんなにも……」

 

 百花は、黄袍魔の唾液に媚薬の効果があることなど知らない。

 自分の身体の変化に、激しく動揺するとともに、恐怖すら感じているだろう。

 

「なにも考えるな、百花。お前は、俺に犯されるだけの品物だ。奴隷らしく、ただ、俺の与える快感に溺れておれ。せいぜい、俺に気に入られるように励むのだな。飽きれば、この下に巣食っている妖魔たちの性処理用に回す」

 

 黄袍魔は、百花を部屋の端にある寝台に投げつけた。

 百花は上に重なろうとする黄袍魔から逃げようとするが、簡単に黄袍魔はその身体を掴み、片手で百花の両腕を頭上に抑え込む。

 残った三本の腕で、両方の乳房と、股間を刺激する。膣孔からはびっくりするほどの淫液で溢れている。

 媚薬の効果もあるのだろうが、もともと、こういう刺激に弱いのかもしれない。

 

「いやあ……これ、これ以上……や、や、やあ……ああっ――あああ……」

 

 百花の声が、彼女が快楽の絶頂に向かっていることを示しはじめる。反応が激しくなる。

 

「堕ちよ、百花――。無様だな。俺の与える快楽に溺れる雌になれ」

 

「ああ……ああ――あああ――。な、なんですか、これ……。なにが……ああ――」

 

 百花の反応が激しくなる。震えはじめる。

 

「どうした、百花。感じているのか。お前たちが卑しむ妖魔に抱かれて、情欲を感じているのか?」

 

「そ、そんな……こと――ああ、あああ――」

 

 黄袍魔は、百花に与える刺激を強くする。

 

「い、嫌……。い、嫌……。妖魔に抱かれる……など――。はああ――ああ――ひゃああ――」

 

 肉芽の皮を剥く。

 そこに軽く指を当てて、魔力を注ぐ。

 百花にはなにが起こっているか理解できないだろう。

 

「ひぎいいいい――」

 

 たちまちの大きく百花の身体が弓なりになり、愛液が淫孔から噴き出した。

 

「はああ……。い、いま、いまのは……」

 

 百花が、激しく息をしながら虚ろな表情で天を仰いでいる。

 

「いまのが“いく”ということだ。百花は、初めていったのか?」

 

「は、初めて……。な、なに……が……」

 

 百花の身体の震えはまだ続いている。

 その四本のうちの二本の腕で、百花の両足を掴み左右に開く。

 片手はまだ、百花の両腕を掴んだままだ。

 

「もう、十分だな――」

 

「いやあ――。お願い……それだけはやめてください――百虎、百虎夫人――お、お願い、助けて、助けて――」

 

 なにをされるのかわかっているのだろう。

 百花は、まだ絶頂の余韻が残っているだろう身体で死にもの狂いの抵抗をしようとしている。

 だが、黄袍魔にとっては、まるで力が入っていないのも同じだ。魔術で全裸になり、露出して勃起している肉塊を百花の秘裂に押し当てた。

 

「ひぎぎいいいい――」

 

 ゆっくりと黄袍魔の肉棒が百花の淫口に埋まっていく。

 生まれて初めての“男”を受け入れる痛みに百花の顔が苦痛に歪んでいる。

 黄袍魔は、この圧倒的な征服欲の感情に任せて、一気に突き差したい欲求に耐える。

 しかし、焦らずに、じわじわと突き挿していく。

 唾液と同じように、黄袍魔の精液は強力な媚薬でもある。

 滲み出た淫液が直接に体内に刷り込まれて、あっという間に、百花の股間は欲情の塊りに変化するはずだ。それまで待つ。

 すぐに百花の様子が変わりはじめる。

 王国の第三王女としての清楚な百花の表情が、完全に“雌”の顔になった。

 

「百花、性奴隷がいくときは、“いく”と叫ぶのだ。わかったな――」

 

 黄袍魔はそう言いながら、いよいよ最後まで自分自身を百花に埋めていく。さっきとは違う反応を百花が示し始める。

 

「ああ……や、やめて……。こ、怖い……、だ、誰か……怖い……い、やあ……ああ……あああ――」

 

「いくと言え、百花。気持ちがよければ、いくと叫べ。それが奴隷だ。叫ぶのだ」

 

 百花の様子がどんどんと浅ましいものに変わっていく。

 黄袍魔の男根から染み出る強力な媚薬が身体を犯しているのだ。

 百花の態度と声が狂乱したものになる。

 

「いぐうううう――」

 

 半分ほどのところで、吠えながら百花が果てた。

 それでも、深く突き入れる。

 黄袍魔の肉棒が百花の子宮口に届いたのがわかる。その入口をほんのかすかに突く。

 強力な魔力の籠った媚薬とともに与えられる官能の刺激に、百花の身体は、また、絶頂の痙攣を起こし始めた。

 

「ひぎいいいいい――。いぐううっ――」

 

 百花は、教えられたばかりの言葉を叫びながら、仰け反って、白目を剥いた。

 

「百花、俺の子を産め――」

 

 気を失いかけている百花の身体の中に、黄袍魔はそう言いながら、熱い精の塊りを注ぎ込んだ。

 黄袍魔は、ひくひくと震える百花の身体から自分の肉棒を抜いた。真っ赤な血を混じった淫液がどろりと百花の股間から垂れ落ちた。

 

「素晴らしいですわ、黄袍魔様――。処女の百花を最初の性交で快楽に気を失わせるとは」

 

 白骨が両手を叩きながら、そう言った。

 

「なにが言いたい、白骨?」

 

 黄袍魔は、白骨の微笑みの中にある揶揄のような響きがあることに気がついた。

 

「王家に恨みのあるような感じだったので、どんなに荒々しく百花を犯すのかと思ったら、あの娘に性の快感を教えてしまうとは……」

 

「悦ばせたつもりはない。この姫は、妖魔に犯されるという屈辱にまみれた。汚らわしい妖魔に、自分の純潔を奪われたのだ」

 

「殿方の本質は、女の抱き方でわかります」

 

「俺の本質がなんだというのだ、白骨?」

 

 白骨の物言いがなにか、黄袍魔になにか不快なものを与える。

 

「随分とお優しい方であられますね、黄袍魔様は」

 

 白骨が言った。

 黄袍魔はむっとした。

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