「みなさああん──」
距離はあるが、馬車の外から呼び掛ける声がかすかに聞こえた。
そして、林の中に一台の馬車が近づいてくるのもわかった。
夕べ、
どうやら、夜が開けたみたいだ。
しかも、馬車の窓から射し込む陽射しはかなり高い。
宝玄仙は、この六人掛けの馬車の最後部の席に座ったまま、身体を馬車の壁に預けるように眠っていた。
ふと、足元を見る。頭から臍の部分の上半身だけをすっぽりと包み直すかたちに包み直された
一丈青は、上半身が袋詰めで、下半身は股間に装着させている貞操帯だけという奇妙な格好だ。
一丈青が包まれているのは、宝玄仙が作った特別の袋であり、これに包まれると、袋の中の声は一切外には洩れないが、袋の中の一丈青には、外からの声ははっきりと聞こえるというものだ。
また、袋の通気性は十分てあり、袋の中は外気と全く同じ状態に保たれるので、息が詰まることも熱さに苦しむこともない。
「ほらっ、朝だよ、一丈青。今日も調教を頑張ろうじゃないか」
宝玄仙は軽く一丈青の腿を蹴飛ばすと、『女淫輪』を震動させた。
たちまちに、一丈青の身体が床で激しくもがき出した。
袋の力で声は洩れないが、中では大きな声で泣き叫んでいるのだろう。
鎖つきの足枷を足首につけさせているが、その足がばたばたと動いている。
「暴れるなと、何度言えば、覚えるんだい? 今日から二日ほど馬車だ。ちゃんと、豆吊りは馬車の中でもやるからね。馬車は揺れるからつらいよ。いまのうちに、責められてもじっとすることを覚えな」
宝玄仙は、一丈青の貞操帯の小さな穴から外側に出している肉芽に手を伸ばしてぎゅっと握った。
この二日だけで随分と大きくなった。
いまは、小指の第一間接くらいにまでなっている。
それというのも、一丈青の肉芽の根元を締めている『女淫輪』が発情で膨らんだ肉芽が元の大きさになるのを妨げているからだ。
そうやって、この二日間、常に一丈青の肉芽を拡大させ続けるということをやっている。
宝玄仙がその肉芽を掴んで左右に振るように動かすと、袋詰めの一丈青の頭が暴れて、ごつごつと前の座席に頭をぶつけた。
宝玄仙は笑って、やっと一丈青の股間から手を離してやった。
しかし、『女淫輪』に苛まれている一丈青の芋虫のような躍りは続く。
宝玄仙は今度は、前側の四人掛けの席に眼を転じた。
李媛、
あれから、この三人は狂ったような百合の情交をここで続けた。
母親であり、女主人である李媛を、李姫と貞女は素裸にして拘束し、宝玄仙も呆れるほどの激しさで責め続けたのだ。
何度も李媛に奴隷の誓いをふたりは強要し、李媛は股間から女の蜜を垂れ流しながら、命じられる屈辱的な言葉を叫びまくった。
そして、際限なくよがり、際限なく果て続けた。
ただただ快楽をむさぼるだけの雌の姿であり、それを責める貞女と李姫も、二匹の淫獣になっていた。
その三人が寝ている。
李姫と貞女は下着姿であり、李媛に至っては全裸だ。
随分と疲れているようだが起こすべきなのだろうな。
「みなさん――」
そう思っていると、馬車の扉が外から開いた。
「きゃああ」
「ひっ」
「わああっ」
前の三人が飛び起きて、悲鳴をあげた。
開けたのは沙那だった。
その後ろに孫空女もいる。
「あらっ……? まだ、そんな格好……。でも、そろそろ起きて、三人とも……」
そして、沙那は持っていた李媛の服一式を渡しながら、呆れた口調で言った。
そして、宝玄仙に視線を向ける。
「外の荷は、彼が持ってきてくれた馬車に積み直しました。中の荷を移動させれば、出立できます」
中の荷というのは一丈青のことだろう。
ほかにはなにもない。
「いいよ、運びな」
宝玄仙は馬車を降りるために、立ちあがった。
前の三人は、狭い場所で一生懸命に服を着ている。
「お前たち三人は、結局、一緒に暮らすんだろう? だったら、馬車から降りるんじゃない。窓の覆い布も閉じておくんだ。いいね」
宝玄仙はそれだけを言い、李媛の馬車から降りた。
降りるなと厳命したのは、宝玄仙たちに提供する馬車をここまで運んできてくれた長庚の顔を李媛に見せるわけにはいかないからだ。
「わっ、凄い格好──。こ、これは駄目よ……。孫空女、毛布、毛布──」
沙那が一丈青を運び出そうとして覗き込み、びっくりした声を出した。
宝玄仙が降りるとき、まだ着衣の途中の李姫と貞女が慌てたように、宝玄仙に頭をさげた。
しかし、李媛はまだ呆けたような複雑な表情をしている。
宝玄仙はそのまま、歩いて少し離れたところにある馬車のところまで歩いた。
一頭立ての幌つきの小さな荷馬車だ。
一丈青と李媛が行方不明になったのだ。城郭では大騒ぎだろう。長庚は荷でも運ぶ感じで、これを城郭から持ち出したのかもしれない。
荷馬車の後ろ側の陰になる場所に長庚がいた。
ほかにも、
全員が旅装だ。
「お前たちも、このまま、城郭を出るのかい、長庚?」
宝玄仙は言った。
「いい機会なので、商品を運ぶ隊商を組んで、一度国都に戻ることにします……。よく考えれば、僕も旅の途中でしたから……。ここには、僕の店もありますから、いずれ戻りますが、親父にかなり借金もしたし、戻らないと……」
「借金かい? そりゃあ、悪いことを……」
間違いなくそれは、宝玄仙たちを助けようと、あちこちに金をばら蒔いたのだろう。
「いえいえ、まあ、一緒に運ぶ積み荷が無事に国都に着けば、借金を払って釣りが出る予定なんです。この地域をしばらく亜人が占領していたので、この地方産の胡麻油が国都で品不足らしいのです。これを売れば、大儲けできるはずです」
長庚が白い歯を見せた。
その隊商というのは、近くには見えない。
多分、街道にでも待たせてあるのだろうか。
「無事に着くさ……。俺と俺の手の者が同行するんだ。だから、済まないが、俺はあんたらと一緒には
双六が言った。
沙那が考えているのは、大黒山に集まって砦を作っている逃亡亜人たちの賊徒に、亜人収容所を襲わせて、大勢の亜人ごと、朱姫を助け出そうということらしい。
その賊徒の頭領は大黒天といい、たまたま、双六の義兄弟なのだという。
それで紹介状を書いてもらったのだ。
「十分さ、双六……。そして、感謝するよ、長庚もね……。この礼はいつかする……。この宝玄仙の借りだ。それなりの値打ちがあるはずさ」
宝玄仙は笑った。
「宝玄仙さんに、借りなんかありませんよ。僕と百舌は命を救われました。僕はそれを返そうとしただけです」
「そうかい……。ああ、そうだ。これから助けようとしている朱姫という女は、妙な術が遣える女でね……。相手が人間でも、暗示をかけて、心を操ることができるのさ。朱姫を助けたら、お前さんのところの親父さんに、暗示をかけにいってやるよ。お前が百舌という奴隷女と結婚しようと言っても、反対しないようにね」
「それはいいですね。是非、お願いします」
長庚が笑った。
その横で百舌は当惑した表情になり、蝶蝶は愉快そうに微笑んだ。
「ご、ご主人様……、は、運ぶときくらい、振動をとめてくださいよ。もう、暴れちゃって……」
不平のような言葉をあげながら、やって来たのは、一丈青の剥き出しの下半身を毛布でくるんで、孫空女とふたりがかりで肩に担いで運んできた沙那だ。
確かに、ふたりの肩に乗っている一丈青は、『女淫輪』の激しい責めに全身を暴れさせている。
それを見て、宝玄仙は苦笑した。
いずれにしても、その一丈青も荷馬車の幌の下に収まる。
「さて、出発するかね、じゃあ……」
宝玄仙は沙那と孫空女に声をかけた。
ふたりが馬車に乗り込んだ。
「ま、待って……」
そのとき、向こうの馬車から、李姫が走ってきた。
急いで身支度をしてきたようだ。
まだ、髪も服も乱れた感じだ。
「お前たちは、城郭に残るんだろう? だったら、そのまま行きな──。もう、関わりなしだ。李媛のことは許してやるよ。そう言っときな……。お前たちの李媛に対する責めがあんまり激しいから、なんか、わたしの方が興醒めしたよ」
宝玄仙が李姫にそう言うと、李姫は恥ずかしそうに真っ赤になった。
「で、でも、一言、お礼を……。そ、それに、母のことも……。母も本当は感謝しているのではないかと……」
李姫の言葉に、宝玄仙は爆笑した。
「お前たちは、色々なことがありすぎて、頭がおかしくなっているんだよ。わたしらは、お前の母親をさらって酷い目に遭わせた誘拐犯だ。それに礼を言うのかい?」
宝玄仙は笑い続けた。
「それでも、これでなにもかもうまくいきそうです。母の李媛は、早晩、城郭の司政官は辞めて、三人で家の所有する地方の別荘に行くことになると思います……。あ、あと、朱姫お姉様の救出に成功したら、是非、李姫が再会を願っているとお伝えください……。これは、その別荘の場所を書いたものです」
李姫が宝玄仙に封書を手渡した。
「やめときなさい、李姫──。そんなこと伝えたら、あのお調子乗りは本当にやってきて、とんでもない騒動を起こすかもしれないわよ……。あんたらとの別れの夜に、あの娘がやったことは、しっかりと把握してるわ。きっちりと叱っておくから安心して」
荷台から顔を出した沙那が李姫に言った。
その沙那の真剣な顔に、宝玄仙は声をあげて笑ってしまった。
そして、幌馬車が動きだす。沙那と孫空女は馭者台に乗り込んだ。幌の包まれた荷台側にはこないみたいだ。
とにかく出発だ。
「さあて、じゃあ、一丈青、今日も肉芽調教だよ。時間はたっぷりとある。お互いに頑張ろうじゃないか」
そして、宝玄仙は、思念を馬車の隅の一丈青に戻した。
とりあえず、親指の先ほどに膨らんでいる真っ赤な肉芽に、液状の掻痒剤をどぼどぼとかける。
かなりの効き目のはずであり、一丈青はもがき苦しむはずだ。
案の定、上半身を道術の袋に包まれている一丈青が剥き出しの下半身を物凄い勢いで暴れさせだした。
宝玄仙はその滑稽な姿に大笑いしてしまった。