※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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613 監獄心理

「い、痛い──。あがああっ──」

 

 折檻部屋の方向から、けたたましい女の悲鳴が響いた。

 楊姫(ようき)は何事だろうと思って、そっちに向かってみた。

 このところ、芽衣(めい)という亜人の童女の調教にかかりきりで、ほとんど繁殖囚の世話をすることができなかった。

 しかし、芽衣もやっと一人前の男の男根に見立てた張形を飲み込むことができるようになり、ひと段落となったので、久しぶりに繁殖囚の状況を直接見にいくことにしたのだ。

 

 もっとも、繁殖囚の世話といっても、実体としては、割り当て希望でやってくる人間の男兵を午前と午後のそれぞれの種付け作業に三人ずつ割り当てて性交させるだけの作業なので、それほど面倒なことはない。

 だから、毎日の報告さえ受ければ、楊姫に割り当てられている三人の監督囚に任せ切りで十分なのだ。

 

 だが、折檻部屋から聞こえる悲鳴はただ事ではない気がする。

 楊姫はそっちに行ってみた。

 折檻部屋に近づくにつれ、女の絶叫はますます大きくなっていく。

 楊姫は解放されていた折檻部屋の入り口から部屋の中に入り、出入り口の横の壁に背をもたれさせて、中で行われていることを見物する態勢になった。

 

 どうやら、折檻部屋には、楊姫の管理している十人の繁殖囚の全員が集められているようだ。

 出産待ちの腹の大きい繁殖囚もいる。

 また、三人の監督囚もいる。

 

 全員の視線の先には、中央の太い柱に背を向け、両手と両足首を柱の反対側に回されて拘束されているひとりの小柄な女囚がいた。

 あの女囚は、この前、入れたばかりの新入りの女囚のはずだ。

 名は思い出せない。

 その新入りの女囚が、拘束された柱を背にして泣き叫んでいる。

 

 楊姫の管理している十人の繁殖囚のうち、半分はすでに懐妊しており出産待ちの状況だ。

 残り半分のうちふたりは妊娠の兆候があり、種付けを中断して一箇月の判定待ち期間に入っている。

 妊娠していることが判明すれば、そのまま出産まで専用の独房で待機の期間に入り、妊娠していなければ再び種付け作業に戻る。

 残り三人は、このあいだ繁殖囚にしたばかりの新入りだ。

 毎日のように種付けをしているから、もう妊娠している可能性も高いが、まだ、期間が短すぎて判断できない。

 妊娠の兆候が見つかるまでは、毎日の午前と午後の種付け作業を継続することになる。

 

 いまは、その午後の種付けが終わったくらいの時間だ。

 繁殖囚には、種付けの性交と出産のための安静以外にやることはないので、いまの時間は夕の点呼までの自由時間のはずだ。

 

「あっ、楊姫様──」

 

 折檻を受けている女囚の近くにいた三人の監督囚のうち、最古参となる年長の監督囚が入り口近くの壁を背にしている立っている楊姫に気がついて、直立不動の姿勢になった。

 残りふたりの監督囚と床に座っている繁殖囚も慌てたように、姿勢をただした。

 

「いいわ、続けなさい……。でも、なにをしているの?」

 

 楊姫は柱に向かい合う場所に急遽支度された椅子に案内されながら、古参監督囚に声をかけた。

 古参監督囚の女が椅子に腰掛けた楊姫の横に立ち、残りの監督囚に続けるように指示をする。

 折檻を与える役目の監督囚のうちのひとりが、手に白い器と筆を持っている。

 どういう懲罰なのだろう……?

 

「はい……。じゃあ、懲罰を継続するわよ、朱姫──。しっかりと反省の言葉を叫びなさい──」

 

 折檻を受けている女囚の名は、朱姫というようだ。

 それで楊姫は思い出した。

 朱姫というのは、あの亜人が一時期占拠した獅駝の城郭から移送されてきた一番新しい繁殖囚のひとりだ。

 この朱姫は、亜人を退去させた城郭の暫定司政官となった侯爵夫人から、直接の声がかりで入所してきた半妖だったと思う。

 なにがあっても、一生そこに監禁しておいて欲しいという侯爵夫人の依頼だった。

 言われなくても亜人は、一生監禁するのが決まりだ。

 

 そういえば、二、三日前に、その侯爵夫人から、今度は逆に朱姫を釈放して欲しいと頼んできたと、所長が言っていたのを思い出した。

 亜人収容所は、入所は簡単だが、出所はあり得ないと所長は断わったらしい。

 楊姫にも、所長から後でその話があり、貴族女の気紛れには付き合えんと、所長が笑っていたのを覚えている。

 

 報告では、この朱姫は、入所以来、なにかにつけ反抗的な態度が目につき、監督囚にしばしば悪態や命令不服従を繰り返しているとあったと思う。

 監督囚に服従しようが、服従しまいが、繁殖囚の役割は、要は懐妊して、商品用の奴隷亜人の赤ん坊を産めばいいのであり、楊姫は気にもしていなかったが……。

 

「はい、実は、あの朱姫が、ほかの繁殖囚に、監督囚への不服従を扇動していたということがありまして、それで見せしめとして罰を与えているところなのです」

 

 古参監督囚が説明した。

 

「扇動?」

 

 楊姫は古参監督囚に視線を向けた。

 

「はい──。けしからん女囚です。それを華耶(かや)が発見して、いま折檻しているところです。あわせて、他の女囚にも、朱姫に従ったら、どういうことになるかをこうやって見せつけているところです」

 

「華耶って……? ああ、わかったわ。いま朱姫に直接折檻している若い監督囚のことね」

 

 楊姫は、華耶というのは、三人いる監督囚のうちの新入りの監督囚であることを思い出した。

 その華耶は、朱姫を叱りながら、柱に拘束した朱姫の股間に筆でなにかを塗りつけている。

 そう言えば、その華耶もまた、獅駝の城郭で朱姫と一緒に送られてきた女囚だったと思うが……。

 

 だから、朱姫と摩耶は同郷の同期囚ということになる。

 しかし、見たところ、華耶は朱姫に対して威圧的で、同郷の情なようなものは皆無だ。

 あれが、監督囚全体を束ねている愛甲などが最近唱え出した“監獄心理”というものだろう……。

 

「それで、具体的には、なにを扇動したの?」

 

 楊姫は訊ねた。

 

「食事制限や洗浄制限に抗議しようと、ほかの女囚を焚き付けていたのです。同じ女囚の監督囚に対して言葉遣いや挨拶が悪かっただけで、食事などの罰を受けるのはおかしいから、みんなで抗議しようと言って回っていたのです。生意気な女です」

 

「ふうん……」

 

 楊姫は言った。

 古参監督囚も随分と憤慨しているようだ。

 食事や洗浄の制限の罰というのは、監督囚たちが繁殖囚を従わせるためにやっている懲罰の一種であり、なにか決まり事を守れなかったり、態度が悪かった者に対して、食事を減らしたり、用便をしたあとの股間の洗浄水を渡さなかったりする罰だったと思う。

 楊姫がさせているものではなく、ここを預けている監督囚たちが、いつの間にか始めたことだ。

 性奴隷調教で手がいっぱいの楊姫としては、ここの実質的な管理は、愛甲(あいこう)が回してくる監督囚に任せるしかないので、放っているのだが……。

 

 楊姫は摩耶と朱姫を見た。

 摩耶は手に持った容器に入っている液体のようなものを筆に浸け、それを朱姫の股間に繰り返し塗っているようだ。

 そんなことをすれば、朱姫はくすぐったさでよがりそうなものだが、朱姫の口からは吠えるような苦痛の悲鳴しか聞こえない。

 

「なにを塗っているの?」

 

 楊姫は訊ねた。

 朱姫は、脂汗でびっしょりになり、拘束された全身を暴れさせまくっている。

 涙を流しながら悲鳴をあげ続けているところをみると、あの股間に塗っている汁にその理由がありそうだ。

 

「あれは辛子汁です。しかも強烈な」

 

 古参監督囚が言った。

 

「辛子汁ですって?」

 

 楊姫は声をあげた。

 朱姫は両脚を柱の後ろに回されて、足首をそこで拘束されているので、自然に脚を開いて腰を突き出すような体勢になっている。

 そこに、強烈な辛子汁を敏感な女陰の粘膜や肉芽に塗りたくっているということのようだ。

 それであんなに発狂するような悲鳴をあげているらしい。

 

「なるほどねえ……。よくも、そんな残酷な罰を思いつくものね。わたしも性奴隷調教で使ってみようかしら」

 

 楊姫は苦笑した。

 正直にいえば、楊姫の管理している女囚のうち、性奴隷にする女たちについては、徹底的な服従を叩き込むために、ああいう懲罰も繰り返しやるが、繁殖奴隷については、多少の生意気な態度は問題ないと楊姫は思っている。

 繁殖囚とは、つまりは腹に赤ん坊を妊娠すればいいだけの役割なので、反抗的で監督囚に立てつこうが問題はないからだ。

 だが、楊姫のこれまでの経験では、監督囚になった女囚は、楊姫が強要しているわけではないのに、監督義務を与えられた女囚たちに、徹底的な服従の躾をする傾向にある。

 それが、最近、愛甲が主張している「監獄心理」というものらしい。

 

 本来は、監督囚もほかの女囚も同じ女囚であり、上下の関係はない。

 ただ、ここの収容所の人出不足を解消するために、やむなく同じ女囚の一部に相互監督をさせているというだけのことだ。

 監督囚制度は、実は女囚側だけであり、男囚側では行っていない。

 力のある男囚でそんなことをすると、監督囚が中心となり、大きな叛乱を起こす可能性もあるからだ。

 

 しかし、不思議なことなのだが、女囚で行っている監督囚は、与えられている自由裁量権と懲罰手段を活用し、ほかの女囚たちを集めて収容所を管理する兵に反抗するどころか、積極的に収容所の規則に女囚たちを服従させようとするのだ。

 この「監獄心理」については、観察研究も行われていて、試しに、男囚にも採用してはどうかと愛甲がいっている。

 そうすれば、かなりの人手不足の解消施策になり、男囚管理に回している収容所管理の兵を手薄気味の警戒などに回すことができる。

 

 愛甲によれば、監督囚には、特別な素養は必要ないのだそうだ。

 すなわち、監督囚に指名するのは、別段、最初から収容所に服従的な者や同じ女囚に対して冷酷な管理ができそうな者を選んで指名しているわけではない。

 そんなことは、入所したばかりではわからない。

 しかし、監督囚に指定された女囚は、決まってほかの女囚に、支配的で強圧的なやり方で、収容所にしっかりとした秩序を作り出してくれる。

 

 愛甲によれば、必要なのは、監督囚にする者は最初から監督囚にするということだけなのだそうだ。

 つまり、絶対に、ほかの女囚を経験した者を選ばない。

 そして、徹底的に監督される側の女囚とは別に優遇して管理し、ほかの女囚たちを管理して、罰則を与える権限と手段を与える。 

 これだけのことで、後は勝手に亜人同士で収容所を管理し合うようになるという……。

 

 本当だろうか……?

 

 いずれにしても、監督囚制度を採っている女囚側が、確かにそういう傾向にあるのは事実だ。

 監督囚に選ばれた女囚は、もともとの性格がどんなものであるかに関係なく、なぜか同じ女囚の者たちに対して命令口調になり、口頭による侮辱も多用するようになる。

 また、いまのように、収容所の規則も拡大解釈して、積極的に懲罰を与えるようにもなる。

 

 そもそも、収容所の規則では、兵に対する叛乱扇動は懲罰対象だが、同じ女兵の監督囚に対する不服従扇動は罰の対象ではない。

 それに、楊姫は、本当は繁殖囚に対する食事制限や身体の洗浄制限の罰は望ましくないと考えている。

 場合によっては、胎児出産の妨げになるからだ。

 ただ、監督囚の積極弟な囚人管理を邪魔したくないので、なんとなく黙認しているだけだ。

 

 しかし、いま、朱姫は、その監督囚の食事制限等の罰を当然という前提で、それにおかしいと抗議したことに対して懲罰を与えられているようだ。

 楊姫は、そのことを興味深く思った。

 

「ほら、反省の言葉は、朱姫──?」

 

 華耶が怒った表情で、もうひとりの監督囚に朱姫の肉芽の皮を剝き出しにさせて、そこに辛子汁を塗り足している。

 朱姫は苦痛に顔を歪めて絶叫している。

 

「ひっ、ひいっ──。ぐっ、ぐうっ……。だ、誰が……。あ、あたしは、食事制限はおかしいと言っただけじゃないのよ──。なんの権限でそんなことをやっているのよ──。馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿──」

 

 朱姫が噛みつかんばかりに叫んだ。

 あれだけの責めを受けても、なおもあれだけの反抗的な態度をとる朱姫に、楊姫は少しばかり感心した。

 余程に強い心を持っているのだろう……。

 

「こ、このうっ──。ね、ねえ、この朱姫の顔を押さえて上を向かせてもらえませんか」

 

 怒りで顔を真っ赤した華耶が、一緒に朱姫を責めているもうひとりの監督囚にいった。

 そして、手に持っていた器と筆を床に置く。

 なにをするのだろうと思っていると、もうひとりに朱姫の顔を上に向けさせて押さえさせ、柱の後ろ側に置いていた木桶を取り、朱姫の顔の上に持ってきた。

 

「な、なによ──?」

 

 朱姫が眼を剥いて驚愕している。

 

「薄める前の原液の辛子汁よ──。たっぷりと飲みなさい──」

 

 そして、朱姫の口に強引に、その木桶をあてがうと、嫌がる朱姫の口と鼻の穴に、だくだくと注ぎ始めた。

 だが、楊姫はびっくりした。

 そんなことをすれば、下手をすれば臓器が壊れてしまう。それは、繁殖囚としては致命的だ。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい──」

 

 楊姫は、罰を中止させるために、慌てて立ちあがった。

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