「……どうか、この白女真の身体を存分に犯してください……」
「よし、よくわかった。望みどおりにしてやるぜ……。その前にちょっとした余興をしてくれたらな……。おう、この女騎士殿の縄を思い切り緩めてやれ……。ただし、暴れるんじゃんねえぞ、白女真──。縄が緩んだからといって暴れたら、今度こそ
「もう、覚悟はしているのよ……。せめて、お嬢様の爪先立ちだけは勘忍してあげて……。後生です──」
縄が緩んだので、白女真は、その場で思い切り身体を屈めて頭をさげた。
「そんなものじゃあ、頭をさげたことにはならねえよ、女騎士さんよ。お前さんたちは、これから奴隷商に売り飛ばされて、奴隷になるんだぜ。奴隷のお辞儀は土下座に決まっているぜ」
白女真に頬を叩かれて、その部分をまだ赤くしている石文が冷ややかに言った。
首の縄は、いまは完全にたるんでいる。
土下座をしようと思えばできる。
「ほ、本当に土下座をして頼んだら、お嬢様を許してもらえますか?」
「それは、お前がやってから考えてやるぜ」
黒松林が嘲笑とともに言った。
白女真はその場に膝をつけて座り直すと、火の玉のような口惜しさを飲み込んで、地べたに手と頭をつけた。
「この通りです……。わたしはどうなっていて構いません。どうか、お嬢様だけは助けてください……」
白女真は大きな声ではっきりとそう口にした。
その途端、これまで気を張っていたものががらがらと崩れた気がした。
激しい嗚咽が込みあがり、次第に泣き声が迸る。地面をぼたぼたと涙が濡らした。
「じゃあ、その場でくるくると廻れ。犬の鳴きまねをしながらな」
黒松林が言った。
周りの男たちがどっと笑った。
頭をさげて泣いている白女真は、その言葉にすっと全身が凍る気がした。
だが、こうなったら屈辱も口惜しさも捨てるしかない。
「わん、わん、わん……」
白女真は犬の真似をしながら、くるくるとその場で全裸で回る。
「おい、もっと明かりを近づけてやれ。股ぐらがはっきりと見えるようにな。それと膝をつくな。膝で歩く犬がいるものかい」
夜闇を明るくするために、そばには幾つかの行燈が置いてあった。
それらが白女真のそばに置かれ直す。
白女真は血を吐く思いで、四つん這いの膝をあげた。
「わん、わん……」
股が見えたとか、肛門のかたちがどうとか、毛がどこまで伸びているとかという賊徒たちのからかいを浴びながら、白女真はいつ許されるのかわからぬ、屈辱の動作を続けた。
「じゃあ、最後に、片足をあげてその場で小便しな。それでとりあえず、愛麗の縄は緩めてやる。それだけじゃなく、奴隷商人に売り飛ばすまでは、手はつけねえでいてやる。何度も言うが、俺は子供には興味はねえんだ」
黒松林の言葉に、賊徒たちが手を叩いて爆笑した。
あまりの酷い命令に、白女真の頭からすっと血がさがる。
全身が屈辱で震えた。
「早くしろよ、女──。どうせ、昼間に捕まえられてから、まだ小便はしてねえだろう。溜まっているはずだ。お前の主家の娘はさっき垂れたんだ。その護衛のお前が恥をかかないわけにはいかんだろう」
黒松林が愉しげに酒を呷りながら声をあげた。
だが、女の白女真に、四つん這いで片足をあげて小便をしろとは、あまりもの命令だ。
さすがに、それだけはできないと思った。
白女真はぶるぶると身体を震わせて動かないままでいた。
「おい、愛麗をぶらさげろ」
黒松林の無慈悲な声がした。
愛麗が悲鳴をあげた。
「ま、待って──。します──。やりますから──」
白女真は声をあげた。
愛麗の悲痛な悲鳴に、わずかに残っていた自尊心も吹き飛ばされた。
白女真は片足をあげた。
股間の力を抜く……。
「うう……」
自分の股から一条の水流が迸る。
すると、賊徒たちが一斉に白女真に近づいてきて、放尿を続けている白女真の股間を覗き込むようにした。
「いやっ、来ないで──」
白女真は片足をあげて放尿を続けながら叫んだ。
集まった賊徒たちがどっと笑った。
白女真は気を失うほどの恥辱を味わいながら、やっとのこと排尿を終えた。
「よし、いいだろう。愛麗の縄を緩めてやれ……」
黒松林が言った。
白女真は少しほっとした。
「じゃあ、その場で股ぐらを愛撫して濡らせ。この酒を飲むあいだたけ待ってやる。この盃の酒がなくなったら、俺のところまで四つん這いで歩いて、俺の珍棒の上に座るんだ。お前の女陰を埋めるようにな」
「そ、そんな……」
白女真は次々に与えられる屈辱的な黒松林の命令に、耐えられなくなって声をあげて泣き出してしまった。
「幾ら泣いてもいいが、盃がなくなれば、その股倉で俺の上に座ってもらうからな──。せっかく犬の真似をして小便までしたんだ。それを無駄にはしないことだ。拒否すれば、容赦なく愛麗をぶらさげる……。それに、少し時間を与えてやっているのは、俺の慈悲だぜ。渇いた股ぐらに珍棒を挿されるのはつらいぞ」
黒松林は笑った。
「ああ……」
白女真は涙を流しながら、自分の股間に手をやった。
震える指を使う。
「もっと真面目にやらねえか──。小娘の首縄を引きあげるぞ」
黒松林が怒鳴りあげた。
「ああ、く、口惜しいい──。み、見ないでええ──」
白女真は死にも勝る羞恥を快楽に浸ることで逃れようと、捨て鉢になった気持ちで股間を愛撫する作業に没頭した。
男たちが一斉に哄笑する。
白女真は死んだ気になって、一生懸命に自慰を続けた。
途中で乳房を揉めと言われたので、股間を刺激しながら左手で乳房を揉んだ。乳首を転がすように刺激する。
肉芽も弾くように動かす。
「あ、ああ、ま、まだですか」
眉間に皺を寄せて、呻くように言った。
すでに股間からは淫靡な水音が聞こえだしている。
「せっかくだ。最後までやっておけ」
黒松林が酒を飲みながら言った。
そのときだった。
離れた場所で、なにかのざわめきのような気配がしたと思った。
顔をあげて視線を向けると、十歳くらいの縛られた童女が五名ほどの賊徒に縄尻を取られて、こっちに向かってきているところだった。
少女は薄桃地の左右を合わせて腰帯で締める着物を着ていた。
両腕は前手で縛られている。
その縄尻をひとりの賊徒が持ち、それをさらにほかの四人が囲むようなかたちで、こっちにやってきていた。
白女真は、この賊徒たちが、愛麗よりもさらに幼いこんな娘までいたぶろうとしているのかと思って鼻白んだ。
「頭領、竜飛国の麓の村からさらった娘です」
黒松林のそばまでやってきてから、その中のひとりが言った。
黒松林はそのときになって、初めてその男たちと童女の存在に気がついたようだ。
「な、なんだ? おっ? お前らか……。昼間、竜飛国の農村に人狩りに行かせた連中だな──。だが、随分と遅かったな? それになんでお前らが俺に報告にきたのだ? お前らの長はどうした? だいたい、なんでその子供だけを連れて来たんだ? ほかの獲物はどうした?」
盃の酒を飲んでいた黒松林は不機嫌そうに、彼らに顔を向けた。
「あなたが頭領なのね?」
童女が微笑みながら言った。
その童女の醸し出す不思議な雰囲気に、白女真は股間を愛撫しようとしていた手をとめて見入ってしまった。
「ああ、そうだが……。なんだ、お前は?」
黒松林気を悪くしたようだった。
「わたしは
すると、突然、童女を縛っていた縄がぱらりと外れた。
白女真はびっくりした。
だが、もっと驚いたのは黒松林の反応だ。
なんの反応もしないのだ。
むしろ、ぼうっとしている。朦朧としているといっていい。
そのとき、白女真は、いつの間にか、周囲に無数のふわふわと小さな糸くずのようなものが飛んでいることにとも気がついた。
賊徒たちは気がつかないようだが、その糸くずは風に乗って拡散しながら、ひとつひとつと賊徒たちの首に巻きついている。
「おい、縄が解けたぞ──。だいたい、ただの兵のお前らが、なんで頭領のところに直接やってきたんだ──? そんな子供は戻して檻に入れておけ──」
すると、その童女が石文を指さした。
次の瞬間、石文の首が不意に切断されて、胴体と首が別々に地面に転がった。
「うわあっ」
白女真は思わず悲鳴をあげた。
ほかの賊徒たちも驚いて声をあげたり、ひっくり返って尻餅をついたりした。
「鎮まれ──。静かにしろ──、お前ら──。愛麗と白女真の首縄を外せ──。そして、全員をここに集めろ──。賊徒たちだけじゃねえ。監禁してある女たちも全部、檻から出してここに連れて来い──」
黒松林が立ちあがった声をあげた。
賊徒たちはいきなりの命令に戸惑っている。
だが、大黒林がさらに声をあげると、命じられたことをするために、賊徒たちが散っていった。
しかし、なんだか、黒松林の様子が不自然だ。
白女真は呆気にとられた。
そのうちに、白女真の首縄が外された。
とにかく、白女真は愛麗に駆け寄る。
愛麗はなにが起きたかわからぬ様子だが、拘束を解かれてその場に座り込んで泣きじゃくっている。
白女真はその身体をしっかりと抱きしめた。
抱きしめながら、白女真はさっき見た細い糸がまだどんどん飛び回っていることに気がついた。
糸は賊徒の首に風に漂いながら、賊徒たちの首にあたるとすぐに巻き付き、溶けるように肌に同化していっている。
霊具だ──。
白女真はやっとわかった。
あれは、あの童女が飛ばしている特殊な霊具に違いない。
いまも童女の身体から、その不思議な糸がどんどんと発生して、風に乗って散らばり続けている。
つまり、あの童女は道術遣いだ。
しかも、ただ者ではない。
その証拠に、なんの躊躇もなく、その霊具で石文の首を切断した。
白女真は見ていたが、殺すにあたり、一瞬も表情を変えたりもしなかった。
まるで草でも刈るように、石文の首を刈ったのだ。
こういう殺人に余程に慣れている……。
白女真はぞっとした。
童女がさっきまで黒松林が座り込んでいた場所に、どっかりと座った。
黒松林は、童女の横にまるで護衛でもあるかのように、突っ立って周りを見回し続けている。
「全身が集まったら、さらった女はすぐに解放しなさい、黒松林──。そして、部下が全員集まったら、ふたつの組に分けるのよ。ひとつは強いのから二十人ほどの組……。そいつらには特別な任務を与えるわ──。ほかの男たちはいらないわ……。集まったら全員の首を捩じ切るか、放り出すかするわ」
「わかりました、地湧子様……」
黒松林は言った。
やはり様子がおかしい。
そして、これは『縛心術』だと思った。
また、童女の物言いは、妙に大人びている。
もしかしたら、子供なのは見た目だけで、実際はかなりの大人なのではないだろうか……。
なんとなくそう感じた。
そして、やはり、黒松林がこの童女に操られているというのもわかった。
それは黒松林の様子から明らかだ。
さらに、さっきからふわふわと飛んでいる糸もまた、この地湧子の霊具であり、それは地湧子の意思で糸が巻きついた相手の首を切断のできる霊具に違いない。
すると、地湧子がじっと白女真を眺めていることに気がついた。
「あ、あのう……。ありがとうございます……」
白女真はまだすすり泣いている愛麗をながめながら、とりあえず地湧子に礼を言った。
地湧子が白女真に視線を向ける。
思わず、身体がすくむのがわかった。
地湧子が醸し出す風格は、とてもじゃないが年端もいかない童女のものではない。
やはり、地湧子はかなりの年配の道術遣いだと思う。
しかし、とにかく、この地湧子のお陰で助かったのだ。
一方で、黒松林が集まってきた賊徒たちを集めるために離れていく。
賊徒たちは、首を傾げつつ、ざわめきながら広場に集められている。
それを黒松林が、さっき地湧子が指示をした二十人を抽出するために声をかけ、抽出した組とそのほかの組にわけている。
また、檻に閉じ込められていた多くの女たちや何人かの男も連れて来られている。
「礼はいいわ……。それよりも、お前は亜人なのね。帯びている霊気が見えるわ」
地湧子が言った。
白女真はまたびっくりした。
白女真は亜人ではないが、その身体に亜人の血が少し混じっている。
だから、霊気を帯びているのだが、遣える道術はないし、白女真の霊気は弱いものなので、白女真が半妖であることに気がついた者はいままでいなかったのだ。
「……は、半妖です……」
白女真は言った。
「……可愛い身体をしているわね。美味しそう……。わたしは男は大嫌いだけど、女は好きなのよ……。特に、お前のように気が強そうな女が好きよ……。黒松林たち二十人が、宝玄仙の供をここに連れてくるまで、ちょっと遊んでいましょう……。その娘は放っておけばいいわ。もう大丈夫だから……」
地湧子はそう言って、まだ酒の入っていた黒松林の盃を手に取ると、ぐいと呷った。
次の瞬間、白女真の中になにかの強い霊気が注がれるのがわかった。
「あ、ああ……」
身体が熱くなる……。
なにが起きたかよくわからないが、突然に眼の前の地湧子に抱きつきたい気持ちが沸き起こる。
「おいで……」
地湧子が空になった盃を横に置いて、座ったまま両手を拡げた。
「は、はいっ」
白女真は、その言葉になぜか嬉しくなり、裸のまま地湧子の胸に飛び込んでいった。