猫を膝の上に乗せるようなかたちだ。
ただ、小さな地湧子の膝には、とてもじゃないが大人の身体の白女真は乗りきれない。
だから、膝の上に乗るというよりは、胡坐にかいた脚の上に白女真の裸体が覆い被さるような感じだ。
地湧子は白女真の尻の亀裂を指を撫でて、菊門を探り当てると指でくいくいと押し揉んだ。
「あう……」
地湧子の膝に乗っている白女真が喉を反らせた。
『縛心術』で白女真が地湧子に対して、強い恋愛感情を抱くように操るとともに、全身の性感帯の感度をかなり上昇させている。
いまの白女真は、身体全体を強烈な媚薬で犯された状態に近いだろう。
そのうえに、頭を『縛心術』で混乱させている。
たったいま見たばかりの童女に、いきなり尻の穴をまさぐられるようなことをされても、まったく抵抗のようなものは垣間見えない。
「だ、駄目です……あ、ああ……」
白女真の全身はみるみるうちに上気して、脂汗のようなものが肌から浮き出はじめる。
地湧子がまさぐっている尻穴のさらに奥の女陰からは、すでに蜜がにじみ出ているのが匂いでわかる。
地湧子は肛門を愛撫していた指を白女真の花唇に移動させた。
やはり、たっぷりと濡れている。
地湧子はそのまま卑猥な指遣いで、蜜に濡れた白女真の女陰を掻き回した。
「ああ……あっ、あっ、そ、そんなことしたら……はああ……」
白女真が身体を仰け反らせて震わせた。すでに快感に酔ったようになっている白女真は、淫らに全身をくねらせた。
「すっかりと濡れているじゃない、白女真? 約束通りに罰を受けるのよ……。わたしの前で自慰をしなさい……。わたしのことが好きなんでしょう? だったら、言うことをきくのよ。さあ、そこで跪いて自慰をするのよ」
「そ、そんな……は、恥ずかしいです……。ゆ、許して……」
地湧子は白女真を膝から落ろして、地湧子の前にひざまずかせた。
濡れたら罰というような約束など、もちろん存在しないが、『縛心術』で操られている白女真にはわからない。
地湧子の理不尽な命令に、白女真は泣きそうな顔になっている。
ここの賊徒の頭領の
その女騎士が、賊徒の巣で自慰をするなど恥辱だろう。
地湧子が黒松林を操る直前には、黒松林も同じようなことをさせようとしていた。
そのときは、屈辱に顔を歪めていたが、いまの白女真は違う。
自慰をしろと言われて、顔を赤らめて、蕩けたような表情になっている。
いまの白女真には、そうやって嗜虐されることが快感なのだ。
そのように『縛心術』で心を操っている。
口では哀願をしながらも、表情は口で責められる快感に酔い始めているのは明らかだ。
「早くしなさい。お前を捨てるわよ」
地湧子は言った。
その言葉に白女真はびくんと身体を震わせた。
「あ、ああ……捨てないで……。します……。しますから……」
白女真は“捨てる”という言葉に恐怖を色を示した。股間と乳房に手をやって動かしだす。
「はあっ……はっ……はあ……」
地湧子はさらに白女真の性感帯の感度をあげてやった。
「ふくうっ」
白女真は引きつったような声をあげて、全身を仰け反らせる。
「……広場に集まっている賊徒に聞こえるような声を出すのよ。そうした方が感じるでしょう、白女真? お前は変態的なことをすると感じてしまう変態なのよ」
「ひい……ひっ……わ、わたしは……」
内面から襲いかかる激しい快感に、白女真は淫らな反応をみせる。
一方で、自分の自慰を賊徒たちに眺められているという事実を教えられて混乱を示しだした。
本来の白女真の気高い気質が自慰の姿を他人に見られるということに、強い抵抗感を示し出したのだ。
地湧子は『縛心術』を調整する。
赤の他人に羞恥の姿を見られて快感を覚えるように変化させたのだ。
「わ、わたしは……、へ、変態です……。ああ……は、はしたないわたしを見られたい……。き、気持ちいい……ああっ、あはああっ──いくううっ──」
突然に声が大きくなった。
身体ががくがくと震わせて、絶頂の予兆を表し出す。
「本当に変態ね……。ほらっ、あそこで集まっている男たちが、お前のことをもの珍しそうな顔で眺めていたわよ」
「あ、ああ……言わないで……は、恥ずかしいです……」
白女真が身体をくねらせた。
そして、吠えるような声をあげて、全身を仰け反らせた。
達したのだ。
すると、我に返ったように、白女真は裸身を両手で隠して顔を伏せた。
急に羞恥が込みあがったのだろう。
その可愛らしい仕草に、地湧子は頬を綻ばせた。
これはなかなかの素質かもしれない。
この小綺麗な娘騎士をしばらく猫にして遊ぶのものいいかも面白い。
これで、それなりの武勇があれば、地湧子の護衛として連れていきたい。
「おいで……」
地湧子は言った。
すると白女真が嬉しそうに破顔して、地湧子に抱きついてきた。
「いい子ね、白女真……。ちゃんと命令に従って偉いわ。これはご褒美よ」
地湧子は白女真の顔を引き寄せて口を奪った。
舌を白女真の口中に差し込んで白女真の口の中をしゃぶり回す。
白女真が鼻声をあげて、すすり泣くような顔になった。
そして、地湧子の舌の愛撫に耐えられなくなったように、濃厚に舌をからめ返してくる。
「……恋人はいるの?」
地湧子は白女真から口を離して言った。
「い、いまは……いません……」
白女真の言葉には躊躇いのようなものがあった。
いまはいないということは、かつてはいたということだろう。
もしかしたら、本当はいるのかもしれないが、地湧子に捨てられたくないという気持ちが、とっさに白女真にそう言わせたのかもしれない。
まあ、どちらでもいい……。
すでに完全に白女真は、地湧子の『縛心術』にかけられている。
いまの白女真にとって、この地湧子の十歳の童女の姿は理想の恋人であり、憧れの存在そのものなのだ。
「お前、わたしに捨てられたくないかい……?」
「も、もちろんです──。捨てないでください──」
白女真は目を丸くして驚くとともに、地湧子に捨てられるということに恐怖を示した。
しかし、実際には、捨てるもなにも、地湧子は白女真にとって、なんの存在でもないのだ。
ただ、さっき遭って、たまたま賊徒に犯されることから救われたかもしれないが、いまは地湧子の気紛れで同じようなことを強いられている。
だが、『縛心術』で記憶も混乱させられている白女真には、地湧子のことを長年仕えた女主人のような感覚でいるのだろう。
そのとき、こちらに黒松林が近づいている気配を感じた。
顔をあげると、黒松林が地湧子の前にやってきて前に立った。
その視線が地湧子に抱かれている白女真の裸身に向いているのがわかった。
「お前、わたしの猫を勝手に見るんじゃない──。指示をしたことは終わったの?」
地湧子は強い口調で言った。
黒松林が慌てて視線を逸らせる。
「お、終わりました、地湧子様……」
「わかったわ。お前の剣を白女真に渡しなさい」
地湧子の命令により、黒松林は腰の剣を鞘ごと外して白女真に差し出す。
白女真がそれを受け取った。
「ついてきなさい、白女真……」
地湧子は立ちあがった。
「は、はい……。で、でも、このまま……?」
白女真は全くの裸体だ。
そのままどこかに向かうということに当惑している。
「そうよ……。お前がわたしの家来に相応しいことを示したら、わたしの旅に同行させるし、服も着させてあげるわ」
地湧子は笑った。
白女真が困惑した表情で剣だけを持って、身体を両手で隠すようにして立ちあがる。
地湧子はそのとき初めて、まだ
「おや、お前、まだいたの? もう、大丈夫だから、どっかにお行き」
地湧子は愛麗の前で立ちどまって声をかけた。
しかし、下半身を剝き出しのまま愛麗は泣くばかりだ。
愛麗が剥ぎ取られた下袍と下着はすぐそばに落ちている。
せめて、それくらい身につければいいのだが、それもする様子はない。
地湧子は嘆息した。
「おやっ?」
そのとき、地湧子は初めて、愛麗の身体にも、白女真と同じように、妖魔の霊気がかすかに存在することに気がついた。
「お前も亜人なの……? つまり、身体に亜人の血が混じっているのかという意味だけど……」
地湧子は言った。
だが、愛麗は泣くばかりだ。
地湧子は肩を竦めた。
そして、そばで待っている黒松林に視線をやった。
「お前は先に行っていなさい……。それと、武術に長ける者を二十人選んだはずだけど、そこからふたりを選んでおきなさい」
「はい、地湧子様」
黒松林は一礼をして去っていった。
「さて、どうなの、白女真? 愛麗にも亜人の血が流れているの?」
今度は白女真に声をかけた。
「愛麗様の家は半妖の家系です。それでわたしのような半妖でも、仕えさせてもらえるのです」
白女真は言った。
「なるほどね……」
地湧子は頷いた。
亜人というと、東方帝国では妖魔のことだ。
愛麗は、騎士を部下に抱くような貴族の娘のはずだから、おそらく愛麗の父はどこかの領主くらいの地位はあるのだろう。
妖魔の血が混じっていても、領主という地位が得られるほどの貴族になり得るということに、地湧子は改めて、ここが異邦だということを感じた。
「……じっとしておいで、愛麗……」
地湧子は愛麗の霊気を伝って『縛心術』を刻みながら、愛麗の心に触れていった。
どうやら、あまりの恐怖で頭の線が二本、三本と切れたようになってしまったようだ。
地湧子は、それを道術で繋ぎ直しながら、『縛心術』を注ぎ込んでいった。
やがて、愛麗の泣き声がとまり、地湧子に顔をじっと向けた。
『縛心術』と『治療術』を併用して、毀れかけた愛麗の頭を修復してやっただけだが、やっと眼付きが正気を取り戻したようになった。
まあいい……。
この貴族娘もなにかの役には立つだろう。
この辺りに滞在するあいだ、侍女代わりに使ってやるか……。
地湧子は、さらに道術を注いで、白女真と同じように、愛麗が地湧子に強い恋愛感情を抱くようにしてやった。
たちまちに、愛麗の頬がぽっと明らみ、地湧子を見る視線にうっとりとした恋慕の心が浮かぶだす。
「立ちなさい、愛麗」
「は、はい……」
愛麗が慌てたように立ちあがった。
地湧子はいきなり、愛麗のなにも身に着けていない股間を掴んだ。
「ひゃあ、な、なにを……」
愛麗が真っ赤な顔で狼狽えた声をあげた。
だが、手でそれを払い除けようとはしない。
できないのだ。
愛麗の心には、地湧子に対する絶対的な恋愛感情と服従心を注ぎ込んでいる。
いまの愛麗には、どんなことをされても地湧子には逆らえない。
「わたしは地湧子という者よ。お前がわたしの侍女となって仕えるのであれば、そばに置いてやってもいいわよ」
地湧子は指を動かして、愛麗の未発達の肉芽を探り当てた。
道術でその部分の感度を急上昇させながら、指でゆっくりと刺激を与えていく。
「ひうんっ──うっ、ううっ……」
愛麗は衝撃を受けたように腰をがくりと落としかけた。
しかし、股間を下から地湧子に触られているので、濡れた股間を地湧子の手のひらに押しつけるようなかたちになっただけだ。
「白女真、後ろからこの娘の胸を揉みなさい。小さくても胸は胸だし、少しは快感もあるさ……」
「そ、そんな、わたしがお嬢様にそんなまねを……」
白女真が驚いたように声をあげた。
さすがに主家の娘に手を出すことには、操られているとはいえ、抵抗が強いのだろう。
しかし、『縛心術』でその主家に対する服従心というものを小さくしてやると、白女真は愛麗に対する詫びのような言葉を口にしながら、愛麗の背後に回った。
「お、お嬢様、申し訳ありません……」
白女真が服の上から愛麗の小さな胸の膨らみを揉み始める。
すかさず、愛麗の胸の感度を上方させる。
感度をあげられた胸を白女真に揉まれ、股間を地湧子に弄くられている愛麗は、たちまちに耳まで真っ赤にしてよがり始める。
「ふううっ、な、なんで……ああっ、ああっ、わらわは……ああっ……はあ……」
「お前、何歳なの、愛麗……?」
「じゅ、十二……」
「自慰はしたことあるわね……? どのくらいやるの……?」
「わ、わらわは、そんなこと……」
快感に感極まった様子で愛麗が小さく首を振った。
「嘘をつくんじゃないわよ、愛麗──。お前を捨てていくわよ……。わたしは嘘つきは嫌いなのよ」
「そ、そんな……す、捨てないで……。ああっ、はっ、はっ……そ、そんなにされたら……」
愛麗が幼い身体を悶えさせる。
「自慰はするんでしょう? どのくらいするの?」
「い、いままでに八回……い、いえ、十回くらいは……」
「気持ちよかった?」
「は、はい……」
愛麗の息はすっかりとあがっている。
ふと見ると、白女真の顔も酔ったように赤い。忠誠心を薄められたとはいえ、主家の娘をこうやってふたりがかりで責めるという行為に、白女真が倒錯の悦びを感じ始めているのは確かだ。
「わたしに仕えるかい、貴族娘? お嬢様じゃないわよ。侍女として仕えるのよ。わたしの服を洗い、食事の支度をし、わたしの性の相手もするの。それをするなら、お前も連れていってやるわ……」
地湧子は愛麗の股間の刺激をさらに強めた。
一番身体の小さい十歳の童女の姿の地湧子が、十二歳の愛麗をいたぶり、それを大人の女の白女真が背後から胸を揉むなどという行為は、はたから見れば滑稽かもしれない。
なんとなく地湧子は愉快な気持ちになった。
愛麗はもういきそうなようだ。
荒い息をする小さな口から、つっとよだれが垂れた。
「わ、わらわは、地湧子様の侍女になります──。だ、だから、捨てないで──あぐうううっ──」
愛麗が喉を突き出して頭を振った。
そして、彼女の身体がぶるぶると震える。
ついに気をやったようだ。
地湧子は手を離した。
愛麗の身体ががっくりと崩れたようになったので、白女真が慌てて、それを背後から支えた。
「お、お嬢様?」
白女真が心配そうな声をあげた。
「後でもっと遊んでやるわ、愛麗──。そのまま、休んでていいわ。白女真はこっちに来るのよ」
地湧子は歩き出した。
「は、はい──」
白女真は、愛麗をその場に座らせると、慌てるように地湧子を追いかけてきた。
少し離れた場所に、この砦にいた者たちが勢ぞろいしていた。
全部で三つの塊りにわかれている。ひとつは黒松林が抽出した精鋭の二十人だ。
もうひとつは残りの賊徒たちであり、さらにもうひとつはさらわれて監禁されていた者たちだ。
さらわれていた者は大部分は若い女だ。
子供もいる。数名は男もいるが女のように顔の綺麗な者ばかりだ。
「これで全部です、地湧子様……」
地湧子の操り状態にある黒松林が地湧子に頭をさげた。
「一緒に、ついておいで」
地湧子は黒松林を従えて、まずはさらわれていた者たちの前に進んだ。
「あんたたちは、これで自由よ──。いきなさい──」
地湧子が言うと、事態を理解できないような表情ながらも、さらわれていた者たちが立ち去り始める。
すぐにぞろぞろと砦の出口から消えていった。
次に地湧子は、黒松林が選ばなかったその他大勢の賊徒の前に来た。
「前の列、一歩前に出なさい──」
集団はなんとなく、列を作ったようになっていた。
前の列の賊徒たちが進み出る。
地湧子の指示に従うというよりは、地湧子の後ろにいる黒松林に従っているという感じだ。
彼らは、なぜ頭領の黒松林が、こんな年端もいかない童女に従っているのか理解できないだろう。
次の瞬間、最前列の十名ほどの首が飛んでその場に倒れた。
すでにこの砦の賊徒全員の首に糸の霊具が巻き付いている。
地湧子の好きなように、誰の首でも簡単に捩じ切れるようになっているのだ。
「うえあああ──」
「ひえええ──」
「ぎゃああ──」
いきなり首を失って死んだ十人を目の当たりにして、残った者が騒ぎ出した。
そのまま逃亡しようとする者も現われる。
地湧子は逃亡する者は逃げるままにさせた。
「お前たちはそのままでいなさい。お前たちの中で逃亡を図ろうとした者がいれば、全員の首を切断するわ。お互いに見張っていなさい」
地湧子はもうひとつの組の二十人に声をかけた。
その二十人は、恐怖で凍りついたようになっている。
再び、その他の賊徒に向き直る。
「ほらほら、走るのよ──。どんどん、逃げなさい──。そのまま、ひたすら走るのよ。明るくなるまでに、この砦から十里(約十キロ)以内の場所にいたら、日の出ともに首が取れるわよ」
事実だ。
すでにそういう道術を霊具に刻んでいる。
この賊徒たちが生き残るためには、地湧子の霊気が届きようもない距離である十里(約十キロ)の外に出るしかない。
それに、そう言っておけば、先に砦を出た女たちに再びちょっかいを出す者はいないだろう。
地湧子は、何度もそう怒鳴りながら、逃亡をしない者については、適当に選んでどんどんと首を狩っていく。
そのうちにやっと砦から人影がほとんどなくなり、静かになった。
黒松林や白女真、そのほかの二十人の賊徒たちは、恐怖で震えている。
広場に残っている首のない死骸は三十ほどであろうか……。
「さて、お前たちには、やってもらうことがあるわ──。黒松林、お前が指揮をして、この女たちを砦に連れてきなさい。もうすぐ、
地湧子はそう言って、懐から宝玄仙とその供三人の人相書きを黒松林に手渡した。
黒松林はその人相書きに眼をやった。
「殺しては駄目よ。生きたまま連れてくるのよ。おそらく、この中の宝玄仙というのは、お前たちでは手が出せないと思うから、その供を狙いなさい。供のひとりでもさらうことができれば、宝玄仙はその供を助けにこの砦に勝手にやってくるから……。いい──。どんなことをしても、見つけ出して戻ってきなさい。任務を果たせば、お前たちは自由にしてやるわ──。だけど、任務を放棄して逃亡しようとしたら、こうなるわよ」
地湧子は集まっている二十人の中から、一番背の低い男を指さした。
「ばん──」
その男の首が胴体から離れて転がって崩れ落ちる。
二十人が一斉に悲鳴をあげた。
半分くらいは、腰を抜かしたように尻餅をつく。
「頼むわよ、黒松林」
「任せてください──。なんとしても、この四人のうちの少なくともひとりをさらってきます」
黒松林は言った。
この男は完全な操り状態だ。
逃亡を図ろうとする者がいても、しっかりと見張るだろうし、これだけ脅せば賊徒たちも、必死になって宝玄仙の供をさらってくるに違いない。
「ところで、さっき指示した二名は選んでいる、黒松林?」
地湧子は言った。
「おい──」
黒松林が言った。
ふたりの賊徒が恐怖に包まれた表情で前に出てきた。
「白女真、このふたりと剣で戦うのよ。お前が勝てば、わたしの護衛として連れていくわ。わたしに捨てられたくなければ戦いなさい──。それと、お前たちふたりは、白女真を倒すことができれば、それで許してやる。つまり、そのまま立ち去ることを許すわ」
地湧子が言った。
「や、やります……」
白女真が渡されていた剣から鞘を抜いて前に出てきた。
ふたりの賊徒の表情も変わった。
白女真を倒せば許してやるという言葉に生気を取り戻したようになっている。
ふたりは白女真を挟むように、剣を抜いて進み出る。
地湧子は白女真の武術の腕を見たかったのだ。
騎士だというから、それなりに腕は立つのだろうが、もしも、それなりの猛者だとすれば拾い物だ。
「うおおお──」
「うっしゃああ──」
賊徒二名が素っ裸で剣を持つ白女真に襲いかかった。
白女真は避ける様子もない。
ふたりの剣が白女真に斬りかかる。
「うわっ」
「ひっ」
勝負は一瞬で終わった。
気がつくと、白女真の前でふたりが手首を押さえて、うずくまっていた。
ふたりの剣は遠くに飛んでいっている。
なにが起こったのかもよくわからなかった。
とにかく、倒すどころか、それすらも必要のないくらいの力量差だったのだ。
地湧子は白女真の強さに思わず頬を綻ばせた。
「よくやったわ、白女真。とどめを刺しなさい──。そうすれば、お前はこの瞬間に、わたしの大切な猫よ……」
地湧子が言った。
白女真は剣を一閃させた。
うずくまっていた賊徒ふたりが、喉から血を噴き出してその場に崩れる。
ふたりは悲鳴をあげる暇もなかった。
「よくやったわ、白女真……。さあ、本格的に可愛がっていあげるわ。愛麗も連れて、建物の中に行くわよ……。黒松林は生き残った者を率いて、すぐに出立しなさい。五日以内には戻るのよ。五日以内に、その四人が街道を通過するのは間違いないのよ──。夢々、見逃すことがないようにね──。それから、出発前に転がっている死体は埋めておいてね。臭くなるのは嫌いなの」
地湧子がいうと、黒松林は残りの十七名に声をかけて指示をしはじめる。
だが、もう地湧子は黒松林に興味を失った。
あとは、あの連中が宝玄仙の供のひとりでも捕らえてくるのを待つだけだ。
「地湧子様……」
白い肌に返り血をつけた白女真が、愛おしそうに地湧子に駆けてきた。